63 / 88
63話 鈍感!(クリストファー)
しおりを挟むシアはギルの姿を見るなり慌てて走り寄ってきた。
ギルに抱きついて名前を呼びながら泣くシアを見て、自分のせいで谷を落ちたギルの事が心配だったんだと思った。
ギルはシアとは親友だけど、自分が告白した事でシアに気まずい思いをさせてると言っていた。
だけど、今のシアにはそんな事関係なく、ただギルが生きていた事を心の底から喜んでいる。
そんなシアをギルは優しく包み込んでくれている。
シアの様子を見ると、シアはギルを振ったみたいだけど、ギルの事をかなり信頼し、大切に思っているように思える。
何で振ったんだろう?
レティシアには色々と聞きたいことがある。
なので、とりあえず他の方には部屋で休んでもらうことにして、僕はレティシアを連れて部屋に入った。
王子2人は僕がレティシアではなく、クリストファーだと分かっていた。
という事は、クリスのフリをしているレティシアが女だということもわかっている。
風呂も別々で何も言わなかったので確定だろう。
だけど、ギルは知らない。
ギルが居なくなってから打ち明けたのか、ギルが信用出来ないのか・・・シアの様子を見ていると、後者はないように思うんだけど・・・
だとしたら、シアが女に戻れば問題ないんだよね、なのに、シアは何か戸惑っている様子。
「シア、僕が用意した服、何で着なかったの? 」
シアにこのままクリスとしてギルを騙し続けるのか聞いても返事がないので、僕が用意した服を着なかった事を問い詰めてみた。
「あれは・・・ドレスだった・・・」
「うん、女の子が着るものだよ? 僕のだけど、シアは女の子なんだから着ればよかったのに。」
その言葉にシアは俯いて顔を逸らすと、耳の横の短い髪を触りながら呟く。
「こんな髪じゃ男にしか見えないよ・・・」
その言葉に、僕の心臓がキュッと締め付けられる。
僕を探すために男として生きて来たシアの髪はショートカットで、女性なら長い髪が当たり前のこの世界では、髪の短いシアは可愛い男の子に見られるだろう・・・
「そんな事ないよ、シアは可愛いから、髪が短くたって似合うと思うけどな。」
シアはギルの事をなんとも思っていないのかもしれないけど、ギルがシアの本当の姿を知らないのは可哀想だと思った。
だから、風呂に入る前、ギルが居ることを知らないシアにドレスを渡してみたんだけど、シアはドレスではなく、自分の服(男の格好)で出てきた。思惑は外れた。
「ギルには話さないの? 話すなら女の姿を見せた方がギルも納得すると思うけど。」
簡単な事だ、ギルに自分は女なんだと話せばいいだけだ。
ギルも、自分は男を好きになった訳じゃなかったと安心するだろう。
なのに、何でそんなに躊躇するんだ。
「・・・・・・クリスは・・・ギルの事をどう思う? 」
シアが僕に質問をしてきた。
「ギル? 男の僕から見てもかっこいいし、優しくて良い奴だよね。」
シアは僕にそんなことを聞いてどうするつもりだろう?
「・・・そっかー、クリス、ギルと仲良くしてたけど、ギルの事好きになった? 」
そう聞かれて、僕は物凄く違和感を感じた。
シアのこの言葉は嫉妬にしか聞こえない。
シアはギルを振ったんじゃないの?
「・・・そうだって言ったらどうする? 」
カマをかけようとわざと言ってみると、シアは一瞬、僕を見た後、寂しそうな表情になった。
「そっかー、クリスは男同士でも気にしないんだね、ギルは良い奴だよ、きっと、ギルもクリスの事を好きになるよ。」
「それは、僕とシアが同じ顔だからって言いたいの? 」
自分が振ったギルが、同じ顔だからという理由で僕を好きになるって言えるシアに腹が立った。
ギルをバカにしてる。
「シアはギルの事をそんな風に見てたのか? 」
「え? 」
僕の言ってる意味がわからないのか、シアは突然怒り出した僕に戸惑っている。
「クリス? どうしたの? 」
「ギルの気持ちはそんな簡単なものじゃない! 」
数日しか一緒に居なかったけど、ギルは本当にシアのことを愛してくれてると思った。
振られた後でさえ、シアのことだけを考え、自分の気持ちは殺して、シアの為なら何でもすると言っていた。
「甘えてくるなら甘やかしてやる。
そばに来るなと言われれば距離を取る。
だけど、どんな時も自分はクリスを思っている。」
と僕に打ち明けてくれた。
その気持ちを、シアは簡単に裏切る言葉を言った。
「・・・どういう事? 」
戸惑うシアにイラッとする。
鈍感!
「ギルから聞いたよ、ギルを振ったんでしょ? 後ろめたいから僕とくっついて欲しいの? 」
僕のその言葉を聞いて、シアが息を飲むのがわかった。
「・・・聞いたんだ・・・」
シアはしばらく黙り込んでなにかを考えていたけど、顔を上げて僕を見る。
「・・・そうかもしれない。自分が振ってしまったギルに後ろめたさがあるから、クリスとならギルも幸せになれるんじゃないかって、勝手な事思ったんだ。」
「シア、最低だよ! わかった、僕がギルを幸せにするから、シアは手出ししないでよね! 」
僕はそう言うと、シアの顔を見ることなく部屋を出て行った。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる