侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。

さらさ

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63話 鈍感!(クリストファー)

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シアはギルの姿を見るなり慌てて走り寄ってきた。

ギルに抱きついて名前を呼びながら泣くシアを見て、自分のせいで谷を落ちたギルの事が心配だったんだと思った。

ギルはシアとは親友だけど、自分が告白した事でシアに気まずい思いをさせてると言っていた。
だけど、今のシアにはそんな事関係なく、ただギルが生きていた事を心の底から喜んでいる。
そんなシアをギルは優しく包み込んでくれている。

シアの様子を見ると、シアはギルを振ったみたいだけど、ギルの事をかなり信頼し、大切に思っているように思える。

何で振ったんだろう?

レティシアには色々と聞きたいことがある。
なので、とりあえず他の方には部屋で休んでもらうことにして、僕はレティシアを連れて部屋に入った。

王子2人は僕がレティシアではなく、クリストファーだと分かっていた。
という事は、クリスのフリをしているレティシアが女だということもわかっている。
風呂も別々で何も言わなかったので確定だろう。
だけど、ギルは知らない。
ギルが居なくなってから打ち明けたのか、ギルが信用出来ないのか・・・シアの様子を見ていると、後者はないように思うんだけど・・・

だとしたら、シアが女に戻れば問題ないんだよね、なのに、シアは何か戸惑っている様子。

「シア、僕が用意した服、何で着なかったの? 」

シアにこのままクリスとしてギルを騙し続けるのか聞いても返事がないので、僕が用意した服を着なかった事を問い詰めてみた。

「あれは・・・ドレスだった・・・」

「うん、女の子が着るものだよ? 僕のだけど、シアは女の子なんだから着ればよかったのに。」

その言葉にシアは俯いて顔を逸らすと、耳の横の短い髪を触りながら呟く。

「こんな髪じゃ男にしか見えないよ・・・」

その言葉に、僕の心臓がキュッと締め付けられる。
僕を探すために男として生きて来たシアの髪はショートカットで、女性なら長い髪が当たり前のこの世界では、髪の短いシアは可愛い男の子に見られるだろう・・・

「そんな事ないよ、シアは可愛いから、髪が短くたって似合うと思うけどな。」

シアはギルの事をなんとも思っていないのかもしれないけど、ギルがシアの本当の姿を知らないのは可哀想だと思った。
だから、風呂に入る前、ギルが居ることを知らないシアにドレスを渡してみたんだけど、シアはドレスではなく、自分の服(男の格好)で出てきた。思惑は外れた。

「ギルには話さないの? 話すなら女の姿を見せた方がギルも納得すると思うけど。」

簡単な事だ、ギルに自分は女なんだと話せばいいだけだ。
ギルも、自分は男を好きになった訳じゃなかったと安心するだろう。

なのに、何でそんなに躊躇するんだ。

「・・・・・・クリスは・・・ギルの事をどう思う? 」

シアが僕に質問をしてきた。

「ギル? 男の僕から見てもかっこいいし、優しくて良い奴だよね。」

シアは僕にそんなことを聞いてどうするつもりだろう?

「・・・そっかー、クリス、ギルと仲良くしてたけど、ギルの事好きになった? 」

そう聞かれて、僕は物凄く違和感を感じた。
シアのこの言葉は嫉妬にしか聞こえない。
シアはギルを振ったんじゃないの?

「・・・そうだって言ったらどうする? 」

カマをかけようとわざと言ってみると、シアは一瞬、僕を見た後、寂しそうな表情になった。

「そっかー、クリスは男同士でも気にしないんだね、ギルは良い奴だよ、きっと、ギルもクリスの事を好きになるよ。」

「それは、僕とシアが同じ顔だからって言いたいの? 」

自分が振ったギルが、同じ顔だからという理由で僕を好きになるって言えるシアに腹が立った。
ギルをバカにしてる。

「シアはギルの事をそんな風に見てたのか? 」

「え? 」

僕の言ってる意味がわからないのか、シアは突然怒り出した僕に戸惑っている。

「クリス? どうしたの? 」

「ギルの気持ちはそんな簡単なものじゃない! 」

数日しか一緒に居なかったけど、ギルは本当にシアのことを愛してくれてると思った。
振られた後でさえ、シアのことだけを考え、自分の気持ちは殺して、シアの為なら何でもすると言っていた。
「甘えてくるなら甘やかしてやる。
そばに来るなと言われれば距離を取る。
だけど、どんな時も自分はクリスを思っている。」
と僕に打ち明けてくれた。
その気持ちを、シアは簡単に裏切る言葉を言った。

「・・・どういう事? 」

戸惑うシアにイラッとする。
鈍感!

「ギルから聞いたよ、ギルを振ったんでしょ? 後ろめたいから僕とくっついて欲しいの? 」

僕のその言葉を聞いて、シアが息を飲むのがわかった。

「・・・聞いたんだ・・・」

シアはしばらく黙り込んでなにかを考えていたけど、顔を上げて僕を見る。

「・・・そうかもしれない。自分が振ってしまったギルに後ろめたさがあるから、クリスとならギルも幸せになれるんじゃないかって、勝手な事思ったんだ。」

「シア、最低だよ! わかった、僕がギルを幸せにするから、シアは手出ししないでよね! 」

僕はそう言うと、シアの顔を見ることなく部屋を出て行った。





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