侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。

さらさ

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67話 魔法(クリストファー)

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ギルの部屋の前まで来ると、ドアを軽くノックして開けた。
ギルは眠てるはずだ。だから、軽くノックだけして入る。

だけど、中に入ると、シアが来ていた。

「シア? 来てたの? 」

僕も驚いたけど、シアも僕が来たことに驚いているみたいだ。

「うん・・・クリス、さっきはごめん。クリスが怒るのは当然だよね・・・」

シアは僕を見るなり謝ってきた。

「いや、あれは僕も悪かった。シアの気持ちもよく考えないで・・・ごめんね。」

ちょうどいい、シアの所に聞く手間が省けた。
僕はシアが椅子に座るベッド横まで行くと、ギルの寝ているベッドに腰を降ろしてシアと向き合った。

「ねぇシア、シアはギルを振ったの? 」

僕の質問に、シアは頷いて答える。

「シアはギルを好きなんじゃないの? 」

 僕の問いかけに、シアは顔を赤くして俯く。
やっぱりそうだ。シアはギルを好きなんだ。

「・・・何でギルを振ったの? 」

「・・・僕が女だから。」

「は? 」

シアは何を言ってるんだ?
女だから? それの何処がいけないんだ?

「ギルが好きなったのは男の僕で、僕が女だって分かったら嫌われるんじゃないかと思ったんだ。」

・・・ああ、そういう事か、レティシアの意気地無し・・・その場でちゃんとシアも告白してれば、こんなにこじれること無かったのに・・・

「バカだな・・・ギルがそんなくらいで嫌いになる人間だと思う? 」

「・・・思わない・・・」

シアは僕なんかよりよっぽどギルの事を分かってるだろうに、何でそんなふうに思うんだろう?

「僕が男だって嘘ついてたことが分かったら、今までみたいに接してくれなくなるんじゃないかって怖いんだ。」

そんな心配しなくてもいいのに、シアはこんなに臆病だっけ?
・・・あ、そうだ、めちゃくちゃ臆病だった。
まだ幽霊怖いのかな?
さすがにもう怖いなんてことないよね。

「ギルに本当の事を話すのが怖くて逃げてたけど、ギルが目を覚ましたら告白する。」

あれ? どういう心境の変化? 僕が出て行った後何かあったのかな?
なんか急に決意を固めたみたいだ。
でも、それなら心配はいらないか。

「うん、頑張って。」

僕の言葉に、シアは僕をじっと見る。

「クリスは・・・まだギルに何も言ってないの? 」

「言ってないよ。」

「そっか、僕が先に言ってもいいの? 」

ん? シアはなんの心配をしてるんだ?
別に、僕は何も問題ないけど・・・

「クリスもギルが好きなんでしょ? 」

あ、そうだった、「僕がギルを幸せにするから手出しするな」って言っちゃったんだった。

「シア、ごめん、あれは嘘、僕ギルのことはなんとも思ってないから。」

「本当に? 」

「うん、本当、僕 別に好きな人いるし。」

「え? そうなの? 」

魔族の国で、まさか好きな人がいるなんて思っていなかったのか、シアはとても驚いたようだ。

「うん、だから、僕に遠慮なんて必要ないよ。」

僕が心配要らないと笑ってみせると、シアは頷いた。

さて、ギルを目覚めさせるかな。
僕は魔力を使って、シアに会えたことで興奮して眠れないだろうギルに、精神安定の術をかけて眠らせてある。

「じゃあ、ギルを起こすよ? 」

僕がシアに覚悟を促すと、一度頷いてから、僕をもう一見る。

「え? 起こすの? 起きるまで待ってるよ。」

「今ギルは僕の術で眠らせてあるから起こさないと起きないよ。」

「え? そうなの? 術? 」

「魔法、シアは知らなくて当然だよね、人間の世界で何故かはるか昔に使われなくなった術だからね、僕は魔族の国に来て魔族が魔法を使うのを見た時、魔族にしか使えないんだと思った。
だけど、人間も魔族ほど高い魔力は無いけど、人によっては魔力を持ってる人もいるって聞いたんだ。
だから、僕も魔力の使い方を教えてもらって少し使えるようになったんだよ。
ただ、負担のかかる魔法を使う時は魔力を分けてもらわないと、僕の魔力では身体が持たないんだけどね。」

僕の説明を、シアは信じられないという顔で聞いていた。

「クリスは魔法が使えるんだ、凄いね! 」

シアは本当に嬉しそうに、目をキラキラさせて僕を見る。

「まあね。」

本当は、魔力を使ってギルの身体も治してやれたらいいんだけど、魔族は強靭な肉体がある代わりに治癒魔法を使えない。
僕も自力で、自分の傷なら少しは治せるけど、人の傷は治したことがないし、治癒魔法はかなり負担が掛かる。
だから、少しずつギルを回復させてはいるけど、急に治ったって感じには出来ないんだ。

本来、かなり重症だったギルが10日程でここまで回復出来たのは、自分を良くやったって褒めてやりたいけど・・・まぁ、それは言わないでおこう。

「いい? 」

もう一度確認すると、シアは頷く。

「ねぇクリス、またクリスの好きな人の事、教えてね。」

「うん、この後紹介するよ。」

僕はシアに約束すると、ギルを目覚めさせた。





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