侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。

さらさ

文字の大きさ
73 / 88

73話 双子の入れ替わり

しおりを挟む



和やかな夕食の後、ギルはまたレイに連れられて部屋に戻った。

レイは本当に気さくだし、優しいし、魔王には見えない。

「そう言えば、聞きそびれたけど、クリスがレイの伴侶って・・・どういう事? 」

僕とクリスはギルとレイの後をついて行きながら話していた。

「言葉の通りだよ。」

にこにこと笑うクリスは幸せそうだけど・・・
伴侶って、妻夫って事だよね?

「・・・男同志で結婚なんてあるの? 」

「ああ、魔族の間では自由恋愛が普通で、男同志、女同士も結構いるよ。」

軽く言うけど、クリスはそれでいいんだろうか? 
魔王様の伴侶ってのは凄いけど、跡継ぎとかどうするんだろう?
・・・って僕が心配する事じゃないか・・・

「くすくす、シアは考えを隠すの下手だね、大丈夫みたいだよ? レイがなんか手があるって言ってたし。」

「そうなんだ。」

「ああ、それは俺たち夫婦の問題だ、深く聞くなよ。」

レイにそう言われて一気に恥ずかしくなる。
夫婦の問題・・・深く聞くなって・・・なんか僕とんでもない事聞いちゃったかも・・・

「くすくす、シアは純粋だね、真っ赤になってる。可愛いなー。」

「おい! あんまりシアをからかうなよ、そいつは本当に純粋なんだから。」

ギルがクリスに注意してるけど、僕はそんなに純粋に見られてるのか・・・なんか複雑。

「そっか、ギルは純粋なシアをずっと守ってくれてたんだね、・・・エロイね。」

「何でそうなるんだよ! 」

ギルが真っ赤になって怒ったけど、僕も怒りたい、何でエロいの?

「あはは、ごめんごめん、」

クリスはふざけて笑ってる。
僕をからかって遊んでるんだ、なんか天使は成長して小悪魔になってましたって感じだな・・・

でも、この関係、楽しいな・・・
ずっとこのまま居られたらいいのに・・・


ギルを部屋まで送り届けて、その日は解散した。


翌日、約束通りカルロス様とクリスの手合わせが始まった。

カルロス様が強いのは知ってる。
だから、最初はクリスを心配したけど、クリスも凄い。カルロス様と渡り合っている。

「レティシアもやると思ってたけど、やるな! 」

「僕もレイに鍛えられたからね! 」

そう言いながら2人は楽しそうに手合わせを続ける。
互角?

そう思ってしばらく見ていると、クリスが魔法を使ったことで決着が着いた。
カルロス様の持つ剣が弾き飛ばされたんだ。

「なっ? 魔法? 」

カルロス様もびっくりしている。

「うん、卑怯な手を使ってごめんなさい。」

ぺろっと舌を出しながら謝るクリスに、カルロス様は笑った。

「いや、それもお前の実力だろう、見せてくれてありがとう。参ったよ。」

カルロス様は負けた後も悔しそうな感じは見せず、平然としている。
さすが、大人だな・・・

僕達が2人に近寄ると、カルロス様がクリスを見てにっと笑った。

「クリス・・・我が騎士団に是非欲しいな。」

その申し出に、クリスもにっこり笑う。

「お誘いは有難いのですが、僕はこの国を捨てるつもりはありません。」

クリスの言葉に、分かっていたことなのに、胸が締め付けられる。

「だろうな。」

カルロス様も分かってて言ったみたい。
クリスの回答に簡単に引下がった。
だけど、僕は聞きたくなかった言葉・・・

「クリス・・・」

「シア、ごめんね、せっかく僕を探しに来てくれたのに、僕はここを・・・レイを捨てることは出来ない。」

クリスが、そう言うだろうということは想像はしてた。
レイの伴侶になったってことは、もう戻らないと覚悟してたからだろう。

「ううん・・・クリスにもう一度会えて、ここで幸せだって分かって良かった。」

クリスにとってはここでの暮らしの方が、僕といた頃よりも長くなってしまっている。
そう簡単に帰るなんて出来ないのは分かる。
だから、僕は最後まで笑顔でいよう。

「君が戻らないと、レティシアがこの先もクリスとして生きる事になってしまう。」

クラウス様が僕の今後を心配して言ってくれる。
確かに、髪が少し伸びるまで、僕は何処かに隠れてて入れ替わればいいかと思ってたけど、クリスが戻らないと、僕はクリスのままでないといけない。

「その点は・・・クリスはレティシアを探し出して、魔物の群れから助ける時に死んだ事にしてください。そして、シアはレティシアに・・・自分に戻ってクラウス様達に助けられたと言って帰ればいい。」

クリスは今までの騎士団のクリスは死んだことにして、僕が助け出されたレティシアだと言って戻ればいいと言っているんだ。

「でも、僕のことはみんな知ってるし、こんな髪型で帰っても誰も僕をレティシアだって信じないよ・・・」

そういう僕を見て、クリスはゆっくりと微笑んだ。

「シア、心配いらないよ。」

そう言った後、クリスは手に持った剣で自分の髪を・・・長くキラキラと光る金糸の髪を切り落とした。

「!!っ、クリス!! 」

思わず叫んだけど、おしりまであった長い髪をバッサリと切り離されて、クリスの髪は肩より上でなびいていた。

何で? とても綺麗な髪を、ずっと伸ばしてたって言ってたのに、何で突然切り落としちゃうの?
理由が分からない僕に、クリスはにっこり笑って、今切り落とした髪を差し出す。
 
「僕の髪を使ってカツラを作ればいい。」

「・・・・・・っ・・・・・・クリス・・・・・・っ」

その言葉に、僕の泣かないと決めていた涙腺はあっけなく崩壊した。




しおりを挟む
感想 58

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...