74 / 88
74話 ギルの決断
しおりを挟む「・・・・・・クリスっ・・・僕が勝手にクリスになりすましてただけなのに・・・助けてくれてありがとう・・・」
9年であそこまで伸びたって言ってたのに、クリスは躊躇いもなく一瞬で切り落としてしまった。
僕は自分の意思でクリスのフリをしてきたんだから、クリスが見つからなければ、このままクリスとして生きていくつもりだった。
だけど、ギルと出会ってしまった。
男のままギルと付き合って行くのか、女に戻るのか、それも自分の意思で決めなくちゃいけない。
なのに、クリスは簡単に女に戻れと言う。
なんでそんなに簡単に決断出来ちゃうの?
「当然だよ、僕の大切なレティシアの為だもん。レティシアの幸せの為なら何でもするって言ったでしょ? 」
そう言って笑うクリスはカッコよすぎる。
泣く僕の頬の涙を、クリスがそっと拭ってくれた。
「・・・ひっ・・・く・・・クリス・・・カッコよすぎ・・・」
「ふふっ、今頃気がついた? 」
クリスはそう言った後、僕を抱きしめる。
「レティシア、そんなに泣かないで、僕は男なんだから、髪ぐらい何ともないよ。それより、一緒に帰れなくてごめんね。」
僕はクリスの腕の中で首を横に振って、一緒に帰れなくてもいい、充分だと現した。
「クリス・・・ありがとう。」
「うん、・・・それより、“ クリス”が居なくなると、ルイズウェル家の跡継ぎが居なくなっちゃうね。」
クリスの言葉に我に返る。
本当だ、今までは、結婚は出来ないけど自分が継ぐ覚悟はしてたから、子供は養子を貰えばいいかと思っていた。
「そうだよ、お父様に何て言おう、跡継ぎが居なくなっちゃう。」
僕が顔を上げてクリスを見ると、クリスは困った顔ではなく、嬉しそうな顔に見える。
ん? 何で嬉しそうなのかな?
そう思っていると、クリスはレイに支えられて立つギルを見た。
「ギル、ギルは次男でしょ? ルイズウェル家に養子に入るのになんの問題もないよね? 僕の代わりに後は宜しくね。」
クリスは笑顔でギルに話しかける。
それって・・・僕とギルが結婚するって事?
そう思うと、一気に恥ずかしくなって顔が火照る。
「俺が侯爵家を継いでいいのか? 」
「今すぐにとは言わないよ、だけど、それが一番じゃない? 僕はギルが継いでくれると安心なんだけど、任せていい? 」
クリスの言葉に、ギルは深く頷いた。
「ああ、任せろ。」
「それじゃあ、侯爵には私からギルを紹介させてもらうよ。」
クラウス様がギルの為に後押しをしてくださるという。
「王子の紹介した奴を断るとは思わないけど、それでも渋るようなら俺も後押ししてやるよ。」
カルロス様もにっこり笑って僕達を見ていた。
「ありがとうございます。」
ギルは改まって2人に頭を下げて感謝の言葉を口にした。
王子2人の口添え付きなら、お父様も納得してくれるだろう。
「これで話は纏まったね、後はギルが完治するのを待つだけだね。」
クリスの言葉に、今の状況を改めて思い出す。
そうだ、ギルが回復するまでまだかなり時間がかかりそうだ。
その間どうしよう・・・
「俺達は一度戻らないといけないな、長期間騎士団を離れるわけにはいかない。」
カルロス様の言葉に、クラウス様も頷いた。
「そうだね。」
・・・僕はギルに付いていたい。
だけど、クリスがレティシアを助ける為に死んだ設定の為には、僕はクラウス様達と、レティシアとして帰らないといけないよね・・・
またギルと離れるの? そんなの嫌だ。
「クラウス様、その事ですけど、俺をしばらく行方不明にしといて下さい。」
僕が悩んでいると、ギルがクラウス様に話しかけた。
「行方不明? 」
「はい、どっちみち俺は怪我が治るまで帰れない。だからこのまま置いて行ってください。」
え? ギル、何言ってるの?
「・・・レティシアを連れて帰っていいのか? 」
「ルイズウェル家から双子が居なくなるのはまずいでしょう。
それに、俺は自分の不甲斐なさは散々身に染みている。このままではシアを守ることも出来ない。」
そう言った後、ギルは僕を見る。
「シア、2年、待っていてくれないか?」
「え? 」
2年? どういう事?
「レイとクリスには既に頼んであるんだ。俺はここに残って、もっと強くなる為にレイとクリスに鍛えてもらう。」
その言葉に、僕の頭は一瞬真っ白になった。
「・・・・・・え? 2年? その間ギルに会えないの? 」
「うん・・・俺もシアに会えないのは辛いけど、待っていてくれないか? 」
ここまでの道中を僕一人で来ることは出来ない。
僕の為にカルロス様やクラウス様を付き合わせるのことも出来ないし・・・2年・・・
ギルが強くなる為に努力したいならそれは応援してあげなくちゃいけないよね。
2年も会えないのはとても寂しいけど、ギルがそういう決断をしたならしょうが無い。
「・・・・・・うん、分かった。ギルが戻ってくるまで待ってる。」
僕は出来るだけ笑顔でギルに答えた。
「ギルがいない間に私が奪ってしまってもいいのかな? 」
クラウス様が僕の肩を抱きながらギルに話しかけた。
きっと僕のことを思って言ってくれてるんだ。
「シアがそうしたいならすればいい。俺は文句は言わないけど、クラウス様が無理やり奪うのはダメですよ。」
ギルは余程覚悟を決めているのか、僕が心変わりするのは仕方ないと言ってしまう。
だけど、本当は誰よりも僕を必要としてくれてるのは分かる。
「ギル、僕はずっと待ってるから安心して。 」
僕は笑顔でギルを見ていた。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる