侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。

さらさ

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78話 また逢う日まで【 最終話 】

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「シア、ドレス似合ってる。髪も長いと綺麗だね。」

僕は準備をクリスに手伝ってもらって、ドレス姿になっていた。
ドレスと言っても、旅をするので、丈はふくらはぎくらいで短めだ。

「これで戦えるかな・・・」

「シアは戦う必要ないでしょ、カルロス様のあの強さなら洞窟も抜けられるはずだよ? 」

クリスの言葉に、カルロス様とクラウス様も頷く。

「姫は俺達が守るから任せろ。」

・・・なんか急に女扱いされても戸惑う。

「僕そんなに弱くないよ? 僕も戦えるんだけど・・・」

「今から自分が女だって事に慣れとかないと、大変だよ? 」

クリスの言葉に、そうかと納得してしまう。

「まぁ、シアには見てるだけなんて出来ないだろうから、一応動けるドレスは選んだつもりだけど、無茶はしないでね。」

「うん、ありがとう。」


「レティシア・・・? 」

ギルの声に振り向くと、ギルはレイに肩を貸してもらって立っていた。

「ギル 」

僕がギルの元に駆け寄ると、ギルが照れたように僕を見る。

「シア・・・髪と服だけでこんなに変わるなんて・・・本当に綺麗だな。」

「ありがとう。」

ギルに褒めて貰うとなんか照れる。
でも、一番嬉しい。

「ギルとはここでお別れだね・・・」

ギルはまだ身体が不自由だから、洞窟の入口まで見送りに来てくれるクリスとレイとは一緒に来られない。
とても寂しいけど、一生会えなくなるわけじゃない。
笑顔で「またね」って言うんだ。

「ギルが嫌でないなら、俺がお姫様抱っこで洞窟まで連れてってやるぞ? 」

レイの言葉に、ギルは微妙な顔をする。

「いや・・・お姫様抱っこはさすがに・・・それなら背負って行ってくれないか? 」

ギルもきっと見送りに来たいんだという気持ちは伝わる。
少しでも長く一緒に居たい。

「男を背負うのは嫌なんだが・・・クリスがお願いって目で訴えてるからしょうが無い。連れてってやるよ。」

「ありがとう。」

レイは僕の横で目で訴えているクリスに負けたみたいだ。

「「レイ、ありがとう。」」

僕とクリスは声を揃えてお礼を言った。



僕達はみんな揃ってお城を出ると、馬で洞窟近くまで移動した。
馬を降りてからしばらく歩いた所に入口がある。

「魔王陛下! 」
「クリストファー様!」

2人の登場に、洞窟近くで見張りをしていた兵達がおどろいて一斉に話しかけてくる。

「任務ご苦労。お前達が居てくれるから助かる。」

レイがそう言うと、みんな嬉しそうだ。
こんなに優しい魔王様なら下で働きたいって人多そうだよね。

「みんな、僕が居なくてもちゃんと仕事してくれるから助かるよ。」

「とんでもございません! クリストファー様が城からでも指示を出して下さるので私達は動けるのです。」

兵達の言葉に、そう言えばここはクリスが守ってるって言ってたのを思い出した。
そうか、ここの兵隊さん達はクリスの部下なのかな?

みんな、髪の短いクリスに少し戸惑っているみたいだけど、口には出さないね。
そして、僕をちらちらと見てる。

「あの・・・クリストファー様、そちらの方は? 」

1人が勇気を振り絞って僕の事を尋ねてきた。

「ああ、彼女は僕の双子の姉だよ、よく似てるだろ? 」

クリスは本当に、綺麗に笑うな・・・兵達が顔を赤らめてる。

「そうでしたか、よく似ていらっしゃるので、もしかしたら・・・と思いました。」

兵隊さん達は納得したようだけど、今度はレイに背負われるギルを見てる。

確かに・・・魔王に背負われるギルって何者? って思うよね・・・
その様子を見てクリスはくすくすと笑っている。

そんな和やかな雰囲気に、似つかわしくない荒々しい声が飛び込んできた。

「レイグランド! こんな所まで出てくるとは!お前を魔王の座から引きずり下ろしてくれる!」

突然背後に100人ほどの軍隊が押し寄せてきていた。

「ちっ、レジスタンス・・・こんな時に・・・」

クリスが珍しく舌打ちした。
そして、その場に居た全員が剣を抜き臨戦態勢になった。
唯一、レイに背負われたギルだけはそのままだけど・・・ギルを守らなきゃ。

そう思っていると、ギルがレイに話しかける。

「俺を降ろしてくれ! レイが戦えないだろう! 」

どうやら、レイはギルを降ろす気はないらしく、平然とたっている。
そして、レジスタンスに向かって話しかけた。

「今日は大事な日なんだ、邪魔してくれるな。」

「何が大事だ! そんな事俺たちは知ったこっちゃねー! 」

「邪魔をすると言うなら消えてもらう。」

そう言うのと同時に、レイの手から凄い竜巻が起こった。
驚いている間に、竜巻はレジスタンスを飲み込んで遥か彼方に消えてしまった。

レイの圧倒的な力に、僕達は何が起こったのか状況が呑み込めないまま、あっけに取られて見ていた。

「さすがレイ、僕の出番はなかったね。」

クリスの言葉に、みんなが我に返った。

「とてつもなく凄い力だな。」

カルロス様の表情は笑顔だけど、額に冷や汗が光っている。
僕も、優しいレイが味方でよかったと思った。


イレギュラーはあったけど、僕達は予定通り、洞窟の前で別れた。

「クリス、元気でね。」

「うん、レティシアも。」

「ギル、待ってるから、必ず帰ってきてね! 」

「ああ、必ず戻る。」

一生の別れじゃない。2人はここで生きてる。だから泣かない。
また会える。

僕は2人に抱きつくと、頬にキスをして笑顔を向けた。

「じゃあ、またね! 」




ーーーー  end ーーーー


ここまでお付き合い頂きましてありがとうございました。
至らぬ点が多々あったと思いますが、暖かく見守って頂き感謝でいっぱいです。

クリスとレイの物語は頭の中にあるのですが・・・完全にBLなので書くか思案中です。

ここまでたくさんの応援を頂きまして本当に励みになりました。
ありがとうございました。

また、たくさんの方に読んでいただけた事を、心より感謝致します。

~~~月野さらさ~~~

    
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