侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。

さらさ

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番外編 レティシア

2話 レティシアの社交界デビュー

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パーティーの日はあっという間にやって来て、お父様が用意してくれたドレスに身を包んで、僕はお父様のエスコートで会場に向かった。

馬車を降りて、お父様の腕に手を添えて歩く僕を、お父様はとっても嬉しそうにほくほく笑顔で歩いている。

「まさかこうしてレティシアをエスコートして歩ける時が来るとは・・・」

お父様は嬉しそうに話す。
そんなに嬉しいのかな・・・

会場に入ると、何人かおじ様がお父様に寄ってきた。

「そちらが例のレティシア嬢ですか? とてもお美しい」

「侯爵様、息子さんがお嬢様を助ける為にお亡くなりになったと聞きました。なんと言っていいのやら・・・ご心痛お察し致します。
しかし、ご子息が命をかけて救ったご令嬢がここまでお美しいとは・・・ご子息もレティシア嬢の為なら、命をかけても惜しくないと思われたのでしょうな」

みんなが口々に僕を褒めてくれるけど、僕は張り付いたような笑顔で耐えるのが必死だった。
みんなが知ってるクリスも、レティシアも全部僕なんだけどね・・・

「皆さん、ありがとう、息子のおかげで、大切な娘とまたこうして会うことが出来ました。息子の事は残念で仕方ないですが、こうしてレティシアという希望もまた増えた、クリストファーの為にも、レティシアを幸せにしてみせます」

お父様、泣き真似までして、演技うますぎ・・・

「今後はクリストファーに代わり、レティシアをよろしくお願い致します」

そう言ったお父様の横で、僕はみんなに向かって淑女の礼をした。


「レティシア、よく来たね」

いつの間にか人垣になっていた人達の間から声がして、声の主を見ると、クラウス様が立っていた。
みんなが、クラウス様の登場に、少し間を開ける。

「クラウス様・・・」

「レティシア、パーティーに来てくれるとは、気持ちも落ち着いたか?」

反対側から声がして振り返ると、人垣の間にカルロス様が居た。
こちらもカルロス様の登場に、道が開ける。

「カルロス様・・・」

そして2人が僕の近くまで来ると、みんなが注目する。
なんかとっても恥ずかしいんだけど・・・

「久しぶりだね、元気してた? 」

「クラウス様、ご無沙汰してます」

僕は戻って以来会っていなかったクラウス様の姿に、嬉しくなってにっこり微笑んだ。

「相変わらず綺麗だな」

カルロス様が僕の手を取って手の甲にキスをする。

「カルロス様、そんなお世辞要らないですよ? 」

「お世話なもんか、思ったことを言ったまでだ」

僕の言葉に、カルロス様は当然のように言葉を返す。
カルロス様は僕が女だって分かってから、無茶なことはしなくなったけど、まだ狙われているのだろうか?


「レティシア嬢はカルロス様とクラウス様のお2人に助けられたのでしたな」

お父様と話していた一人が僕達の様子を見て納得したように話しかけてきた。

「はい・・・目の前で弟を失って失望する私を、クラウス様とカルロス様が励ましながら、魔物のいる森を抜けて連れて帰って下さいました。本当に感謝しております」

僕は予め決めていたセリフを、少し悲しそうに演技しながら話した。

「そうでしたか・・・さぞお辛かったでしょう・・・」

「なるほど・・・カルロス様とクラウス様がレティシア嬢をお気にかけていらっしゃる理由も納得です」

「侯爵様、レティシア嬢の将来は安泰なのでは?」

等々、みんなが口々に話す。
将来は安泰って・・・僕がクラウス様かカルロス様のどちらかと・・・って思ってるんだろうか?
僕はギルを待ってるんだけど・・・

「皆さん、私達はレティシア嬢に少しお話があるので失礼しても?」

クラウス様の言葉に、取り囲んでいた人達が道を開け、「どうぞごゆっくり」と通してくれた。

僕はクラウス様とカルロス様にエスコートされて、少し離れた静かな場所に移動した。

「みんなレティシアに興味津々だね」

クラウス様がくすくすと可笑しそうに笑った。

遠くから見ている令嬢がなんか騒いでる気がする。
移動したけど、なんか遠巻きに見られてて落ち着かない・・・

「もう少し待ってね、紹介したいヤツがいるから」

クラウス様にそう言われて、誰だろう? と待っていたら、遠巻きに見ている人垣から一人の男性が現れた。

僕はその人の登場に、クラウス様を見る。
すると、クラウス様がこっそり話しかけてきた。

「リオも落ち込んでるんだ。レティシアとして挨拶してあげてくれないか? 」

僕は、上手くできるか自信が無かったけど、みんなを僕の為に付き合わせてしまってるんだ、僕にできることはしないといけない。と思い覚悟を決めて頷く。

「クラウス様、こんばんは、そちらの方が・・・レティシア嬢?・・・」

リオさんは僕を見るなり、硬直して見つめる。

「ああ、彼女がレティシア嬢だ。クリスによく似てるだろ? 」

クラウス様の言葉が終わる前に、リオさんは見開いた瞳からぽろぽろと涙を零した。

「・・・っ・・・本当に・・・クリスにそっくりだね。初めまして、レティシア嬢、リオ・クラウネルと言います」

リオさんは涙を流しながら僕にほほ笑みかける。
その笑顔に、胸がズキンとなる。
・・・リオさん、ごめんね、僕がクリスだよ。

「初めまして、レティシア・ルイズウェルと申します」

僕は淑女の礼をしてリオさんに微笑んだ。

「クリスも美人だったけど、それ以上に、レティシア嬢は綺麗だね、クリスとギルが命を懸けたのは君がいたからなんだね」

納得したように・・・いや、自分を納得させようとしてるのかもしれない。
リオさんは何とか、2人が居なくなってしまった悲しみを乗り越えようとしているんだ・・・

リオさん、ごめんなさい。
僕は本当に、みんなに好かれていたんだと実感した。











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