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⑮俺の癒し(クロード)
しおりを挟む会わなければいい。そんな事を簡単に思っていた。
その簡単なことがなぜ出来ない。
俺は食事を取りに来ただけなのに。
俺はアルファスト侯爵を睨みつける。
「何故こんなことになった。」
俺はアルファスト侯爵にだけ聴こえるようにボソリと呟く。
「どうしても、陛下にお目通り頂きたいと、言うことを聞かなくて・・・娘たちのことを任せた者が連れてきてしまいたして・・・申し訳ございません。」
「で?一緒に食事を取れと?」
「あ、陛下!」
俺に気がついたひとりが立ち上がり、他もつられて立ち上がる。
皆が一斉に俺を見て、小さく悲鳴をあげる者、顔を真っ赤にする者、じっと硬直して見つめる者様々だが、その中の一人が声を発する。
「皇帝陛下、突然の訪問申し訳ございません。」
少し頭の切れそうな女が話しかけてくる。
「私は面会を許可していない。失礼する。」
俺はそれだけ言うと、その部屋を後にした。
図々しくもこんな所まで入り込んでくる女とは話す気もない。
「陛下、どちらへ?お食事は如何なさいますか?」
俺の側仕えのライルが俺に付いて来ながら話しかけてくる。
「離宮へ向かう。食事はしばらくそこで取るから用意してくれ。」
正直、気分が悪くて食事する気分でもないが、レイラ嬢に会えば気分も晴れるだろう。
「まぁ、ミカ、こんな時間に珍しいわね。」
離宮に行くと、レイラ嬢が笑顔で迎えてくれた。
「レイラ嬢の顔が見たくなったんだ。食事はもう終った?」
「今からですわ。」
「良かった。一緒に食事しよう。」
俺の言葉にレイラ嬢の顔がさらに笑顔になる。
「嬉しいですわ!」
ああ、レイラ嬢は本当に俺の癒しだな。
ほんとうに嬉しそうに笑ってくれる。レイラ嬢の笑顔は白銀の髪がキラキラと光っているように見えて本当に眩しい。
さっきまでのイライラが消えてなくなっていく。
「今日はお食事に来られるなんて珍しいわね、何かあったの?」
レイラ嬢、こういう時だけ勘が鋭いよ。
まあ、イレギュラーな行動をしてるのは俺だから怪しむのは分かるけどな。
「ちょっと疲れてしまって・・・レイラ嬢の顔を見たら疲れが飛んでしまったけどね。」
俺の言葉に、レイラ嬢が反応する。
「まぁ、やっぱり無理しすぎではないの?あまり無理しないでね。」
心配そうなレイラ嬢に、ちょっと申し訳なさが込み上げてくる。
ごめん、俺は沢山嘘を付いている。嫌、嘘ではなく、言っていないことが多い。だけどいつもレイラ嬢はそんな俺を受けいれ、心配してくれる。
「うん。ありがとう。」
「もっと食べないと、元気出ないわよ?」
あまり食欲のない俺をレイラ嬢が心配する。
ここんとこ忙しすぎて、食欲も落ちている。
食べないとレイラ嬢も心配するな。
そう思って少しづつ口に運ぶけど、やっぱりあまり食べれなかった。
「レイラ嬢、明日の朝も一緒に食事してもいいかな?」
食事が終わると、戻る前に確認する。
「ええ、もちろん。お待ちしていますわ。」
「いっその事泊まっていけばいいのに」
後ろに控えていたシドがポツリと呟く。
その言葉に、レイラ嬢が顔を真っ赤にして反応している。
「シド・・・」
俺の無言の攻撃に、シドはしまった、余計なことを言ったという顔をしていたが、無視する。
「今日は帰るよ。レイラ嬢、おやすみ。」
そう言って俺はレイラ嬢のおでこにキスを落とす。
「おやすみなさい。」
レイラ嬢が見送ってくれる中、俺はまた仕事へと戻った。
最近よく眠れていないので、ゆっくり休みたいが、早く終わらせないといけない案件もある。寝ている暇はない。
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