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14話 騙された・・・
しおりを挟む「・・・・・・あの、本当にこれを着るのですか? 」
「好みじゃなかった? とても似合うと思ったんだけど 」
レオンハルト様は私の目の前にある衣装を残念そうに眺める。
今日はディアルド王国への出発の日。
私は迎えに来てくれたレオンハルト様に今回の衣装を見せてもらった所なんだけど、これは何?
「いえ、好みとかの問題じゃなく! 」
「じゃあ、何が問題? 」
「これ、ドレスですよ? 」
「うん、そうだね、それが? 」
「私はレオンハルト様の侍女としてディアルドに行くのでは? 」
「侍女だなんて、誰がそんな事言った? 」
え? レオンハルト様の言葉が理解できません。私はなんの役でディアルドへ行くの?
心当たりがなくて首を傾げる私を見て、レオンハルト様はくすくすと笑う。
「エリシア嬢、君には私の恋人、婚約者として一緒に来て欲しいんだ 」
「は? ・・・はあぁ???」
レオンハルト様の突拍子も無い言葉に、思わず大きな声を出してしまう。
「ちょっと待って、そんなこと聞いてないわ 」
「そう言えば、言ってなかったかな? でも、侍女ってのも言ってなかったよ? 何でそう思った? 」
確かに、侍女とは言われていない。
一緒に行って欲しいとしか言われてないけど・・・
「私の身分ではレオンハルト様の婚約者役は向いていません。レオンハルト様のお側仕えとしてご一緒する方が身分としては正しいと思ったんです 」
私の身分は子爵令嬢。王子様の婚約者だなんてとんでもない。遊びならともなく、公式の場に連れていくにはどう考えても不釣り合いだわ。
そもそも、恋人って何? 絶対いやだわ。
「そんな事気にしなくていいよ、私は第二王子なんだから、そこまで身分は気にしない 」
「レオンハルト様はそうかもしれませんけど・・・そもそも恋人って何ですか? 私それなら引き受けません 」
こんな役だとわかってたら最初から絶対引き受けなかったわ。
キッパリと断る私を、レオンハルト様はニヤニヤと笑いながら見る。
「あれ? あれから何度も図書館に足を運んでたみたいだけど? もう権利は行使しちゃったんだよね? 」
レオンハルト様の言うことは最もだ。
既にレオンハルト様に頂いたフリーパスで何度も禁書を閲覧してしまっている。
・・・今回先にくれたのはこの為か・・・やられた!
「でも、最初からちゃんと話してくださっていればお受けしませんでした! 」
「内容をちゃんと確認しなかったのはエリシア嬢だよね? 」
それを言われると身も蓋もない。
「それはそうですけど・・・ 」
確かに、勝手に侍女だと決めつけて思い込んでいたのは私。深く聞きもしなかったのは立ち入って深く関わりたくなかったから。
でも、今回は失敗したわ、ちゃんと聞いておくべきだった。
「フリーパスの条件、話したよね? 」
レオンハルト様に念を押されて、確実に私に分が悪いと覚悟を決めて顔を上げる。
「今回だけですよ、それと、何のために婚約者役が必要なのか、何故私を選ばれたのか、教えてください 」
「うん、いいよ、その前にそろそろ出発しよう、すっかり遅くなってしまった。理由は道中で話すよ 」
そう言われて、出発時間をとうに過ぎていることに気がついた。
「分かりましたわ 」
私は出かける準備をしてエントランスに向かった。
「エリシア、気をつけて、特にレオンハルト様は油断ならないからね 」
ジルフレアお兄様がお見送りに出てくれて、私にこっそり耳打ちする。
「ええ、レオンハルト様が油断ならないのは十分身に染みてわかってますわ 」
「なら大丈夫か、行ってらっしゃい、せっかくの旅だ、楽しんでおいで 」
お兄様は優しく微笑みながら手を振って見送ってくれる。
「行ってきます 」
馬車に乗り込むと、早速ディアルドへ向けて動き出す。
王子様の旅なので、私たちの乗る馬車の他に侍女が乗る馬車や護衛の方が前後に20人ついていて大仰な旅路の出発になる。
そう言えば、転生してから旅って初めてだわ。
そう思うと、この目で外国を見ることが出来るのがとても嬉しくてワクワクする。
馬車はしばらく街中を走り、郊外へと出る。
郊外へはあまり出たことがなかったので、景色を眺めるだけでも楽しい。
「そんなに窓にかじりついてると顔だけ焼けるぞ 」
そう言われて、ずっと窓から見える景色に釘付けになっていたことを自覚する。
・・・ん? ぞ? レオンハルト様はそんな言葉遣いだったかしら? そこは「焼けるよ」じゃない?
なんてことを思っていると、いつもの声色とは違う低めの声が響く。
「さっきの話の続きだけど、何でエリシアが必要か、だよな 」
エリシア? さっきまで呼び捨てなんてしてなかったのに、レオンハルト様の言葉遣いがおかしい。声もワントーン下がった。でもこの声も素敵だわ・・・
「俺にはまだ婚約者が居ないからな、ディアルドでは他の国の代表も沢山来る。その中で、俺の婚約者候補にと、娘を連れて来るやからも多い 」
・・・・・・レオンハルト様の説明の言葉が入ってきません。
俺? レオンハルト様は一人称「私」じゃなかった?
さっきからの言葉遣い、あまりの変化に頭が付いてこないけれど、これがもしかしてレオンハルト様の素? 今まで猫かぶってたってこと?
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