『 私、悪役令嬢にはなりません! 』っていう悪役令嬢が主人公の小説の中のヒロインに転生してしまいました。

さらさ

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46話 油断は禁物

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クリスティーナ様との関係も本の人気も上々で、ディアルドの機関車事業も上手くいってる。
今私は人生で最高に充実していて幸せなんじゃないかしら。
最近の私の周りの出来事に私自身とても満足していた。
だから忘れていたの。ディアルドでの出来事を・・・



「ーーー?! 」

幸せな気持ちで眠っていると、夜中に突然誰かに口元を塞がれた。
突然の事に心臓が跳ね上がり、恐怖で身体が強ばる。何? 誰?
そして次の瞬間には目の前が真っ暗になっていた。



ーーーーー・・・ここは? 

目を覚ますと真っ暗な闇、ガタガタと揺れている。馬車の中?しかも、手足を縛られて目と口も塞がれてる。
もしかして、私は誘拐されたの? 誰に? 何の目的で? どこに連れていかれるの? 殺される?

怖い怖い怖いーーー

状況を理解して、一気に恐怖で震えが止まらなくなる。
誰か助けて! レオンハルト様!

馬車は市街地を抜けたのか、さらに揺れが酷くなる。
舗装されてない道を走ってるんだわ、どれくらい走ったかしら、このまま永遠に着かなければいいのに・・・そんな事を思いながら、何とか抜けだせないかと手足を動かしてみるけれど、全然動かない。

しばらくすると馬車はが静かに止まった。
着いてしまったの? 私はどうなるの?
耳を済ませていると、しばらく外で何人かが話す声が聞こえていた。
私をどうするか話し合ってるのかしら、そもそも、私をその場で殺さずに誘拐したって事は、すぐに殺すつもりがないってことよ、
このまま殺されるなんてことはないわよね?
そう自分に言い聞かせて震えを少しでも抑えようとする。

しばらくして足音が近づいてきた時には心臓が飛び出しそうなくらい早く打った。
扉が開く音がして、誰かが私を抱え上げる。

大きな手、男の人の手だ、怖い。
そう思った時、遠くから馬の走る音が聞こえてきた。
こっちに向かってきてる? 

「なんだ? 誰が来てる? 」

私をさらった人達が口々に話し合っている。
仲間ではない? 誰かが助けに来てくれた?

「エリシアを離せ!! 」

聞こえたその声は紛れもないお兄様の声だ。
良かった、助けに来てくれた。

「なんだ?お前は? 」

「エリシアの兄だ、エリシアを返してもらう 」

お兄様がそういった時、バラバラと足音が増えて、囲まれたような気がした。

「俺たちにお前らが適うのか? 」

どうやら誘拐犯たちは余程腕に覚えがあるらしく、余裕の下卑た笑いをする。
何人いるのか知らないけど、お兄様大丈夫なの? そもそもお兄様は文官で剣の腕は全然ダメなのよ、お兄様までやられちゃう。

そう思ったのも束の間、剣を交える音が響いて、どうやら誘拐犯たちがやられている声が聞こえる。
あれ? お兄様、いつの間にそんなに強くなったの?

「おい! この女がどうなってもいいのか! 」

優勢っぽいお兄様に少し安心しかけていると、急に引っ張られて喉元にヒヤリとするものを当てられた。
これって・・・剣が首に突きつけられている?

「・・・・・・命が惜しかったらエリシアを今すぐ離せ 」

「は? 今命乞いするのはお前だろ、この状況が分からないのか? 」

ええ、ええ、お兄様、私殺されそうなのよ、変な所でカッコつけないでちょうだい!

そう思っている間に、私を押さえ付けていた男のうめき声が上がって、私は誰かの手に抱き抱えられていた。

「馬鹿だね、私に気を取られるからこういう事になるんだ 」

お兄様の声が違う方から聞こえる。
じゃあ、私を抱えているこの人は誰?
さっきの流れからすると、敵ではないわよね?
そう思っていると、その人が目隠しを外してくれた。
前を見ると、間近にレオンハルト様の綺麗な顔があった。

「レオンハルト様! 」

猿轡も外してくれたので思わず叫ぶと、シッっと言って人差し指で口を押えられてしまった。
冷静になって考えると、こんな所に王子が居るなんてバレるとまずいのかもしれない。
分かったと頷いて返すと、指を離してくれた。

「エリシア、無事か? どこも怪我してないか? 何もされなかったか? 」

レオンハルト様は縛られていた手足の紐を解いてくれた後、私の事を確認するようにあちこち見回す。

「大丈夫です 」

「エリシア、無事でよかった 」

賊の処理を指示していたらしいお兄様も私に駆け寄ってきて、ぎゅっと抱きしめてくれる。

「私は大丈夫よ、お兄様、レオンハルト様、助けに来てくれてありがとう・・・・・・ 」

そう言ったあと、お兄様の温もりに安心して涙が溢れた。

「エリシア、ごめん、俺のせいだ 」

後ろから私の頭を撫でながらレオンハルト様が言う。
レオンハルト様のせい?




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