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1. いつもの朝
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もう会えない、もう会わない。そう思っていた。
ようやく次に進もうと決めたところだった。
それなのに、見えない糸をたどるように目の前にまた現れた“運命の人”。
忘れたかった。でも、忘れたことなんてなかった。
どうしても、どう頑張っても忘れられなかった。
夏の晴れ渡る青空を映してキラキラと光る真っ直ぐな髪も。
秋の柔らかな日差しを灯す淡い色の瞳も。
冬の透明な空気に響くやや低めの声も。
そして、春の暖かな風に溶ける優しくて甘い香りも。
何もかも忘れられるはずがなかった。
本当は、ずっと会いたかった。
◇◇◇◇
容赦のない音の繰り返しが今日という日が来たことを知らせ、維人はのそのそと布団から顔を出した。目覚めはいい方だからアラームが鳴る前に起きてはいるが、特に寒い日というのは布団にたまる温もりから離れがたい。
もう少しだけ、と誘うぬくぬくの布団への未練を何とか断ち切ると、まずはトースターに5枚切りの食パンを一枚入れ、焼いている間に顔を洗う。
パンに塗るのはイチゴジャム。一時期ブルーベリージャムに浮気したこともあったけど、結局は元の鞘に収まった。
飲み物は牛乳をコップ一杯。冬はホットになったり、たまにコーヒー牛乳の元を入れたりする。
食べ終えたら後片付けをして、身支度を整えてから写真の中で優しく微笑む母に手を合わせて完了。こうして維人の今日が始まる。
中学二年の時に母が亡くなり、高校入学直前に父が海外に単身赴任となってからずっと一人でこの毎日を繰り返している。
「おはよ~、一」
家を出てからも基本的にはほぼ変わらないが、数カ月前から少しだけ変化があった。維人が一人暮らしをしているアパートを出ると、同級生である田所一が待っているようになったのだ。
一とは実家が隣同士で、生まれた頃から一緒にいるいわゆる幼馴染。保育園から高校までずっと一緒だから、もう家族のようなものだ。
三年生になって部活を引退すると、突然こうやって維人が部屋から出てくるのを待っているようになった。それからは毎朝一緒に登校している。
理由を聞いたら「一緒に行きたいから」だって。中学から打ち込んでいた短距離を部活の引退と共にすっぱりと辞めたせいもあってちょっと寂しいのかな、なんて想像だけしている。
「おはよう、維人。後ろ寝癖ついてる」
盛大に跳ねた維人の後頭部を一が大きな手で覆う。こうやって昔から一は世話を焼きたがる。「別にいいよ」なんてやり取りをしながら、十二月の冷たい風に凍えて枝を震わせる木々たちが並ぶ通学路を歩いていく。
維人のアパートから学校までは徒歩五分。通い慣れたこの道を歩くのもあと数カ月。
高校を卒業したらこの繰り返しの毎日も多少は変わるだろうか。いや、きっとそんなことない。歩く道と向かう先が変わるだけ。
言うなれば車のマイナーチェンジだったり、アプリがバージョン1.18から1.19になったりするだけの所詮は軽微な変更。フルモデルチェンジとか、バージョンが2.0になるとか、大幅な仕様変更は発生しない。
そんな平凡で平和な毎日の繰り返しを疑ったことなんてなかった。
教室という名の小さな箱に並ぶ机の中で、維人の席は窓際の前から五番目、後ろから数えるなら二番目。窓の外には大きなグラウンドが広がり、朝から運動部員たちが青い春を謳歌するように汗を流している。
維人は幼い頃から自他ともに認める運動音痴で、正直どんくさい。足も遅いし、何もないところで転ぶ。一がやたらと維人の世話を焼きたがるのもこれが一因だ。
だから、自分の描いた通りに走れたり、道具を扱えたりするというのは気持ちがよさそうだと、少し羨ましく思いながらいつも見ていた。
とはいえ、それだって努力のたまものであるということもわかっている。自分の理想を実現するために努力ができるということも才能の一つ。維人には“運動”に振る才能がなかった、ただそれだけの話。
その代わり、勉強に全振りした“才能”は、目標としていた大学への推薦入試合格という形できちんと自分に還ってきているからそれで十分。
そんなことを思っていると、ガラッという建付けの悪い引き戸が勢いよく開いた音が聞こえ、目線をグラウンドから教室の入口へと向けた。と思ったが、なぜか一瞬にして視界が一面の黒に覆われた。
顔に触れるフワフワと柔らかい繊維の感触と、冷たい空気に混ざった晴れた春の日のように暖かくて優しい、甘い香り。埋もれた鼻先からダイレクトに伝わるその香りにうっとりと脳内を浮かび上がらせていると、頭上にあった重みが少し位置を落とし、古い掃除機のように乱暴な吸引音が耳元に響いた。
「あぁぁ癒される……」
「おはよう、諒。大丈夫?」
「おはよ、維人。電車でΩが正面にいて、もうほんと最悪だったわ……」
この世界には男女の性のほかに、二次性と呼ばれる三つの性がある。
優れた容姿と能力を持ち、社会的に地位が高い人の多いα。
一番人口が多くいわゆる“普通の人”であるβ。
そして、最も人口が少なく、男女ともに妊娠可能なΩ。
Ωには一定の周期でヒートと呼ばれる発情期が訪れ、その期間中は自制できないほどの強い性衝動に支配される。おまけに、ヒートの際に発する特殊なフェロモンはαを無自覚に誘惑してしまう。
そのため、過去にはフェロモンを発端とした事故、事件が多発していたが、現在ではヒートを抑える抑制剤が発達し、Ωもαやβとほとんど変わらない社会生活を送れるようになった。
今、維人に覆いかぶさっているクラスメイト、木暮諒はその容姿も、能力も家柄も全てが秀でた典型的なα。
ところが、諒はαのみが感じられるΩのフェロモンに過剰に敏感で、本来であれば抑制剤を服用していればほとんど感じられないはずのΩのフェロモンを常時嗅ぎ取ってしまうらしい。
しかもそれが“良い香り”と感じられるのであればまだよかったが、諒曰く、「デパートの香水売り場と洋菓子売り場を混ぜ込んだようなひたすら甘いだけの香り」で、直に嗅いだ日には吐き気、めまいを引き起こす、とのことだった。
諒は「発情しないだけまし」なんてあざけているが、体質というものはどうしようもなく、一応と付けているマスクも、Ωのフェロモンの影響を受けにくくするためのα用の抑制剤も気休め程度の効果しかないらしい。
とはいえ、フェロモンを全く感知できないβである維人は当然フェロモンの香りなんて嗅いだこともない。だから、正直なところ「毒ガスじゃあるまいし」なんて話し半分どころか、話し三分の一程度に聞いていた。
でも、毎日のように真っ青な顔で登校してくる諒を見てからはそんなこと冗談でも言えなくなった。
今日もまた“甘すぎる毒”にノックアウトされ気味の諒は、維人に覆いかぶさったままマスクをずらすと、今度はすんすんと維人の首元に鼻を当てながら大きくため息を吐いた。
「維人の匂いならいつまでも嗅いでられるんだけどなぁ」
「まぁ僕のはフェロモンじゃないからね」
そんな特異体質の諒は、なぜかβである維人の香りを心地よく感じるらしく、ことあるごとにこうやって維人を抱え込んでは『猫吸い』ならぬ、『維人吸い』をしている。
当然、βからはフェロモンなんて出ないから、維人の場合はいわばただの体臭。
いくら良い匂いと言われようが、“匂いを嗅がれる”という行為は相当羞恥心を煽るもので、もちろん初めのころは拒否していたし、いまでも恥ずかしい。でもそれを三年間毎日のように繰り返されれば嫌でも慣れた。
それに、維人自身も諒からほのかにする香りにどこか心地よさを感じる。だから多分、お互い様。
でも、βである維人の香りは所詮まがい物、よくて代替品。αである諒が求めているものとは違うのだ。
「早く運命の番に会えるといいね」
互いのフェロモンに誘引されるαとΩの間には、『番』と呼ばれる特別な関係がある。さらにその中でも特別に強い結びつきを持つ『運命の番』とは出会った瞬間から本能的に惹かれ合い、求め合うという。
他のΩはダメでも、その『運命の番』ならばきっと諒も受け入れられるだろう。
それなのに諒は維人がそれを口にするたび「そんなものいらない」と眉を顰める。βである維人は『運命なんて素敵じゃないか』と単純に思うのだが、本能に振り回されるなんて絶対にイヤだ、と諒はよく吐き捨てていた。
今もまたいつも通り、ふてくされながらぐりぐりと維人に頭を擦り付けている。
「運命はいらないけど、維人は一部屋に一つ欲しい」
「人を家電みたいに言わないでよ」
「いや、維人はマジで空気清浄機だから」
こうしてしつこく維人に張り付く諒を一が引っぺがすところまでがお決まりのパターン。このやり取りも、もうおなじみの光景だ。
今ではこんなふうにすっかりと維人に気を許している諒だが、実は高校入学当初、出会った頃はそれはもう目も当てられないほどにひどい態度だった。
諒は世間に疎い維人でも名前くらいは聞いたことがあるほど、この地域で有名な政治家一家の長男で、いわゆる跡取り息子。詳しくは聞いていないが、ずっと家が作った箱の中で生きている、なんて言うほど制約と制限にまみれた生活を送ってきたらしい。
そんな家庭環境のせいか、高校に入学したばかりのころの諒は反抗期をこじらせ、まるで針を出して膨らむフグのように、シャーっと爪を立てる猫のように――そんなかわいらしいものに見えていたのはおそらく維人だけだが――来るものすべてに「近寄るな」と言わんばかりの威圧的な態度をとっていた。
当然クラスメイトたちは諒から距離を取っていたし、教師ですらも『触らぬ神に祟りなし』と言わんばかりの扱いだった。
それでも、マスク越しにもわかる整った顔立ちと、秋の柔らかな日差しを灯したような淡い色の瞳から目が離せなかった。仲良くなりたい、そう思った。
思ったからには有言実行。出席番号順で前後の席だったことも幸いに、毎日諒に話しかけた。
朝、登校したら「おはよう」。昼の時間になれば「一緒に昼ご飯食べよう」。帰る時には「また明日」。といった具合に。
でも、声を掛ければ睨まれ、肩を叩けば手を叩き落とされる毎日。そんな様子をクラスメイトが遠巻きに見守る中、諦めることなくそれはもう果敢に挑んだ。
そういう“努力”ができることも維人が持つ“才能”の一つ。きっと、その時の諒には迷惑極まりなかっただろう。
そんな日々が続いたある日の体育の時間、維人は諒とペアになってストレッチをすることになった。当然、諒はあからさまに不機嫌な態度を取り、「俺に触るな! 近寄るな! 気色悪い!!」なんてこれまでで一番ひどい暴言を維人に吐いた。
これまで何を言われようとも、どんなひどい態度を取られようとも何も言い返さなかった維人だったが、その時はなぜだか無性に悲しくて、やるせなくなった。
努力は実らないこともあるということは理解しているし、ましてや、人相手の努力は自分が何をしてもどうしようもないことの方が多い。
それでも実って欲しかった。こちらを向いてほしかった。どうしてそこまで思ったのかはわからないが、それはもう祈りのような、願いのような、果てのないものだった。
もしかしたらその時、諒の言葉に“努力の終わり”を感じてしまったのかもしれない。
「僕はただ仲良くなりたいだけなのに……。この自意識過剰! 万年反抗期!! 足の小指ぶつけろ!!!」
ぷっつりと何かが切れたように思いつく限りの暴言を返し、少しだけ滲んだ視界で近くにあったバスケットボールを思いっきり諒に投げつけた。が、そこはさすがの運動音痴。ボールは諒にかするどころか、明後日の方向に弧を描いて壁にぶつかり、そのまま維人の顔面にクリティカルヒット。
白み始めた視界に入ってきたのは、これまで不機嫌な様子しか見たことのなかった諒の淡い色の瞳に浮かんだ驚きと焦り。そんな顔もできるんじゃん、なんて思いながら薄れていった意識が再びクリアになったときには、もうすでに保健室のベッドの上だった。
「起きたか」
目を覚ました時一番に目に入ったのは諒のキレイな形の薄い唇。いつもマスクをつけているし、昼ご飯の時間は一人でどこかへ行ってしまうせいでそれまで口元を見たことが一度もなかった。
初めて見た諒のフルフルの素顔は思っていた通りやっぱり美形。思わずポカンと口を半開きにしたまま見惚れていると、唐突に諒は吹き出した。
「な、なんで笑うの?!」
「だっておまえ、自分で投げたボールが顔面に当たって気絶するって……今時漫画でもそんなベタなこと起きないだろ」
マジでウケる、と腹を抱えて大笑いする様子にむうっと唇を尖らせる。するとそれを見た諒はまた笑った。
「もう! いい加減に、」
「悪かった」
しばらく収まらなかった笑いから一転。トーンの落ちた声に驚いて思わず「えっ」と声を上げると、諒は維人から目をそらし、視線を下げた。
「中学の時にもおまえみたいに何かと声をかけてくるやつがいたんだ。まぁ普通に仲良くなって、友達だと思ってた。でも、向こうは俺が『木暮』の息子だから声を掛けただけだった。親に仲良くしとけって言われたんだってさ。だからおまえもそう言うたぐいなんだろうって……」
そう苦笑交じりで言う諒の手を維人は咄嗟に掴んだ。
その時の諒の顔があまりにも寂しそうで、消え行ってしまいそうで、繋ぎとめなきゃと思ったんだ。
「僕の父さんは建設会社の社員で、今はアフリカで橋を作ってる。母さんは二年前に病気で死んじゃった。だから、僕にはそんなことを言う親はいないし、“木暮さんちの息子”と仲良くするメリットはないよ! 僕は、ただきみ自身と仲良くなりたいんだ」
でも、言った側から何を言ってるんだと恥ずかしくなって、目を丸める諒からパッと手を離すと、諒はなぜか維人の肩に頭を乗せ、グリっと額を押し付けた。
「なぁ、おまえの下の名前ってあれ、なんて読むの」
「えっ?? 『いと』、だけど」
突然の接触に驚いて固まっていた上に、今までの会話の流れを無視した質問に頭に疑問符を浮かべながらも素直に答える。
「へぇ。ちょっと変わってんね」
“維人”の“維”という文字には“つなぐ”とか、“結びつける”という意味がある。それに“人”という字を合わせて『人との結びつきを大切して欲しい』という願いを込めて亡くなった母が付けてくれた名だ。そう得意げに話すと、顔を上げた諒は「ふーん」と気のない返事をした。
自分から聞いておいて感じが悪い。いや、意味までは聞かれてなかったかも。
「木暮くんの下の名前はごんべんに京都の京で『りょう』だよね」
「あぁ。俺のはおまえみたいに意味なんてねーけどな」
吐き捨てるような言い方に思わず眉間にしわが寄る。自分のことを言われたわけでもないのに、なぜか、本当になぜだか悔しい気持ちになった。
「そんなことないでしょ。えっと、『諒』って言う字は……へぇ、“まこと”、とか“言葉がはっきりしていて偽りのないこと”とか言う意味なんだ」
諒が持ってきてくれたらしい荷物の中から引っ張り出したスマホの検索結果を読み上げる。諒は自分の想ったことを良くも悪くもはっきりばっさり口にするからぴったりだ。
「きっと木暮くんの名前は『正直者』って意味だな」
ヒヒっといたずらっぽく笑って見せると、諒はもともと大きな切れ長の眼をまん丸に見開いてあからさまに驚いた顔をしたあと、プイっと拗ねたように横を向いた。
「なんだよそれ、勝手につけんなよ」
「えーだって意味なんてないとか言うからさ。これは僕の持論だけど、意味のないものなんてこの世の中にはないよ。もし本当にどうしても見つからなかったとしてもさ、その時は自分でつけちゃえばいいだけじゃん?」
「……おまえ、変なやつだな」
「木暮くんに言われたくないね」
「……諒でいい」
「じゃー僕のこともおまえって呼ぶのやめて」
諒は少しだけグッと息をつめてから、「わかった」とまた維人の肩に顔をうずめた。そんな諒がなんだかかわいらしく思えて、肩に乗せられた小さな形の良い頭をぽんぽんと撫でると、諒は急に維人の首筋に顔を当てたまますんすんと鼻を動かした。
「えっ、なに?! 汗かいてるからやめてよ」
「いや、なんかいい匂いするなって。香水とか付けてる?」
「そんなの付けないよ。何だろ? 柔軟剤とか?」
「そういう感じじゃないけど……でもいい匂い。落ち着く」
「なにそれ。さっき俺に近づくなとか触るなとか言ったのはどこのどちらさまでしたっけ」
「うっ……」
「気色悪いとも言われたなぁ」
「わ、悪かったよ。ほんと、ごめん」
「ふふっ、いいよ。万年反抗期さんだから大目に見ましょう」
「おまえ、結構いい性格してんな」
「おまえって言わないでくださーい」
そのあと二人で大笑いして以来、諒は周囲が驚くほど維人にべったりと懐き、その様子を見たクラスメイトから維人は『猛獣使い』なんて呼ばれるようになったとか、ならなかったとか。
と、まぁ今思い出しても諒との出会いはなかなかに青春っぽい。
一人でそんなことを思い出してにまにまとしていたから、一に引きずられて大人しく後ろの席に座った諒がグレーのマフラーを外しながらきょとんとしている。
多分、大学は別々になるけど、諒とはきっとこれからもいい友達でいられる。
そう思っていた。
ようやく次に進もうと決めたところだった。
それなのに、見えない糸をたどるように目の前にまた現れた“運命の人”。
忘れたかった。でも、忘れたことなんてなかった。
どうしても、どう頑張っても忘れられなかった。
夏の晴れ渡る青空を映してキラキラと光る真っ直ぐな髪も。
秋の柔らかな日差しを灯す淡い色の瞳も。
冬の透明な空気に響くやや低めの声も。
そして、春の暖かな風に溶ける優しくて甘い香りも。
何もかも忘れられるはずがなかった。
本当は、ずっと会いたかった。
◇◇◇◇
容赦のない音の繰り返しが今日という日が来たことを知らせ、維人はのそのそと布団から顔を出した。目覚めはいい方だからアラームが鳴る前に起きてはいるが、特に寒い日というのは布団にたまる温もりから離れがたい。
もう少しだけ、と誘うぬくぬくの布団への未練を何とか断ち切ると、まずはトースターに5枚切りの食パンを一枚入れ、焼いている間に顔を洗う。
パンに塗るのはイチゴジャム。一時期ブルーベリージャムに浮気したこともあったけど、結局は元の鞘に収まった。
飲み物は牛乳をコップ一杯。冬はホットになったり、たまにコーヒー牛乳の元を入れたりする。
食べ終えたら後片付けをして、身支度を整えてから写真の中で優しく微笑む母に手を合わせて完了。こうして維人の今日が始まる。
中学二年の時に母が亡くなり、高校入学直前に父が海外に単身赴任となってからずっと一人でこの毎日を繰り返している。
「おはよ~、一」
家を出てからも基本的にはほぼ変わらないが、数カ月前から少しだけ変化があった。維人が一人暮らしをしているアパートを出ると、同級生である田所一が待っているようになったのだ。
一とは実家が隣同士で、生まれた頃から一緒にいるいわゆる幼馴染。保育園から高校までずっと一緒だから、もう家族のようなものだ。
三年生になって部活を引退すると、突然こうやって維人が部屋から出てくるのを待っているようになった。それからは毎朝一緒に登校している。
理由を聞いたら「一緒に行きたいから」だって。中学から打ち込んでいた短距離を部活の引退と共にすっぱりと辞めたせいもあってちょっと寂しいのかな、なんて想像だけしている。
「おはよう、維人。後ろ寝癖ついてる」
盛大に跳ねた維人の後頭部を一が大きな手で覆う。こうやって昔から一は世話を焼きたがる。「別にいいよ」なんてやり取りをしながら、十二月の冷たい風に凍えて枝を震わせる木々たちが並ぶ通学路を歩いていく。
維人のアパートから学校までは徒歩五分。通い慣れたこの道を歩くのもあと数カ月。
高校を卒業したらこの繰り返しの毎日も多少は変わるだろうか。いや、きっとそんなことない。歩く道と向かう先が変わるだけ。
言うなれば車のマイナーチェンジだったり、アプリがバージョン1.18から1.19になったりするだけの所詮は軽微な変更。フルモデルチェンジとか、バージョンが2.0になるとか、大幅な仕様変更は発生しない。
そんな平凡で平和な毎日の繰り返しを疑ったことなんてなかった。
教室という名の小さな箱に並ぶ机の中で、維人の席は窓際の前から五番目、後ろから数えるなら二番目。窓の外には大きなグラウンドが広がり、朝から運動部員たちが青い春を謳歌するように汗を流している。
維人は幼い頃から自他ともに認める運動音痴で、正直どんくさい。足も遅いし、何もないところで転ぶ。一がやたらと維人の世話を焼きたがるのもこれが一因だ。
だから、自分の描いた通りに走れたり、道具を扱えたりするというのは気持ちがよさそうだと、少し羨ましく思いながらいつも見ていた。
とはいえ、それだって努力のたまものであるということもわかっている。自分の理想を実現するために努力ができるということも才能の一つ。維人には“運動”に振る才能がなかった、ただそれだけの話。
その代わり、勉強に全振りした“才能”は、目標としていた大学への推薦入試合格という形できちんと自分に還ってきているからそれで十分。
そんなことを思っていると、ガラッという建付けの悪い引き戸が勢いよく開いた音が聞こえ、目線をグラウンドから教室の入口へと向けた。と思ったが、なぜか一瞬にして視界が一面の黒に覆われた。
顔に触れるフワフワと柔らかい繊維の感触と、冷たい空気に混ざった晴れた春の日のように暖かくて優しい、甘い香り。埋もれた鼻先からダイレクトに伝わるその香りにうっとりと脳内を浮かび上がらせていると、頭上にあった重みが少し位置を落とし、古い掃除機のように乱暴な吸引音が耳元に響いた。
「あぁぁ癒される……」
「おはよう、諒。大丈夫?」
「おはよ、維人。電車でΩが正面にいて、もうほんと最悪だったわ……」
この世界には男女の性のほかに、二次性と呼ばれる三つの性がある。
優れた容姿と能力を持ち、社会的に地位が高い人の多いα。
一番人口が多くいわゆる“普通の人”であるβ。
そして、最も人口が少なく、男女ともに妊娠可能なΩ。
Ωには一定の周期でヒートと呼ばれる発情期が訪れ、その期間中は自制できないほどの強い性衝動に支配される。おまけに、ヒートの際に発する特殊なフェロモンはαを無自覚に誘惑してしまう。
そのため、過去にはフェロモンを発端とした事故、事件が多発していたが、現在ではヒートを抑える抑制剤が発達し、Ωもαやβとほとんど変わらない社会生活を送れるようになった。
今、維人に覆いかぶさっているクラスメイト、木暮諒はその容姿も、能力も家柄も全てが秀でた典型的なα。
ところが、諒はαのみが感じられるΩのフェロモンに過剰に敏感で、本来であれば抑制剤を服用していればほとんど感じられないはずのΩのフェロモンを常時嗅ぎ取ってしまうらしい。
しかもそれが“良い香り”と感じられるのであればまだよかったが、諒曰く、「デパートの香水売り場と洋菓子売り場を混ぜ込んだようなひたすら甘いだけの香り」で、直に嗅いだ日には吐き気、めまいを引き起こす、とのことだった。
諒は「発情しないだけまし」なんてあざけているが、体質というものはどうしようもなく、一応と付けているマスクも、Ωのフェロモンの影響を受けにくくするためのα用の抑制剤も気休め程度の効果しかないらしい。
とはいえ、フェロモンを全く感知できないβである維人は当然フェロモンの香りなんて嗅いだこともない。だから、正直なところ「毒ガスじゃあるまいし」なんて話し半分どころか、話し三分の一程度に聞いていた。
でも、毎日のように真っ青な顔で登校してくる諒を見てからはそんなこと冗談でも言えなくなった。
今日もまた“甘すぎる毒”にノックアウトされ気味の諒は、維人に覆いかぶさったままマスクをずらすと、今度はすんすんと維人の首元に鼻を当てながら大きくため息を吐いた。
「維人の匂いならいつまでも嗅いでられるんだけどなぁ」
「まぁ僕のはフェロモンじゃないからね」
そんな特異体質の諒は、なぜかβである維人の香りを心地よく感じるらしく、ことあるごとにこうやって維人を抱え込んでは『猫吸い』ならぬ、『維人吸い』をしている。
当然、βからはフェロモンなんて出ないから、維人の場合はいわばただの体臭。
いくら良い匂いと言われようが、“匂いを嗅がれる”という行為は相当羞恥心を煽るもので、もちろん初めのころは拒否していたし、いまでも恥ずかしい。でもそれを三年間毎日のように繰り返されれば嫌でも慣れた。
それに、維人自身も諒からほのかにする香りにどこか心地よさを感じる。だから多分、お互い様。
でも、βである維人の香りは所詮まがい物、よくて代替品。αである諒が求めているものとは違うのだ。
「早く運命の番に会えるといいね」
互いのフェロモンに誘引されるαとΩの間には、『番』と呼ばれる特別な関係がある。さらにその中でも特別に強い結びつきを持つ『運命の番』とは出会った瞬間から本能的に惹かれ合い、求め合うという。
他のΩはダメでも、その『運命の番』ならばきっと諒も受け入れられるだろう。
それなのに諒は維人がそれを口にするたび「そんなものいらない」と眉を顰める。βである維人は『運命なんて素敵じゃないか』と単純に思うのだが、本能に振り回されるなんて絶対にイヤだ、と諒はよく吐き捨てていた。
今もまたいつも通り、ふてくされながらぐりぐりと維人に頭を擦り付けている。
「運命はいらないけど、維人は一部屋に一つ欲しい」
「人を家電みたいに言わないでよ」
「いや、維人はマジで空気清浄機だから」
こうしてしつこく維人に張り付く諒を一が引っぺがすところまでがお決まりのパターン。このやり取りも、もうおなじみの光景だ。
今ではこんなふうにすっかりと維人に気を許している諒だが、実は高校入学当初、出会った頃はそれはもう目も当てられないほどにひどい態度だった。
諒は世間に疎い維人でも名前くらいは聞いたことがあるほど、この地域で有名な政治家一家の長男で、いわゆる跡取り息子。詳しくは聞いていないが、ずっと家が作った箱の中で生きている、なんて言うほど制約と制限にまみれた生活を送ってきたらしい。
そんな家庭環境のせいか、高校に入学したばかりのころの諒は反抗期をこじらせ、まるで針を出して膨らむフグのように、シャーっと爪を立てる猫のように――そんなかわいらしいものに見えていたのはおそらく維人だけだが――来るものすべてに「近寄るな」と言わんばかりの威圧的な態度をとっていた。
当然クラスメイトたちは諒から距離を取っていたし、教師ですらも『触らぬ神に祟りなし』と言わんばかりの扱いだった。
それでも、マスク越しにもわかる整った顔立ちと、秋の柔らかな日差しを灯したような淡い色の瞳から目が離せなかった。仲良くなりたい、そう思った。
思ったからには有言実行。出席番号順で前後の席だったことも幸いに、毎日諒に話しかけた。
朝、登校したら「おはよう」。昼の時間になれば「一緒に昼ご飯食べよう」。帰る時には「また明日」。といった具合に。
でも、声を掛ければ睨まれ、肩を叩けば手を叩き落とされる毎日。そんな様子をクラスメイトが遠巻きに見守る中、諦めることなくそれはもう果敢に挑んだ。
そういう“努力”ができることも維人が持つ“才能”の一つ。きっと、その時の諒には迷惑極まりなかっただろう。
そんな日々が続いたある日の体育の時間、維人は諒とペアになってストレッチをすることになった。当然、諒はあからさまに不機嫌な態度を取り、「俺に触るな! 近寄るな! 気色悪い!!」なんてこれまでで一番ひどい暴言を維人に吐いた。
これまで何を言われようとも、どんなひどい態度を取られようとも何も言い返さなかった維人だったが、その時はなぜだか無性に悲しくて、やるせなくなった。
努力は実らないこともあるということは理解しているし、ましてや、人相手の努力は自分が何をしてもどうしようもないことの方が多い。
それでも実って欲しかった。こちらを向いてほしかった。どうしてそこまで思ったのかはわからないが、それはもう祈りのような、願いのような、果てのないものだった。
もしかしたらその時、諒の言葉に“努力の終わり”を感じてしまったのかもしれない。
「僕はただ仲良くなりたいだけなのに……。この自意識過剰! 万年反抗期!! 足の小指ぶつけろ!!!」
ぷっつりと何かが切れたように思いつく限りの暴言を返し、少しだけ滲んだ視界で近くにあったバスケットボールを思いっきり諒に投げつけた。が、そこはさすがの運動音痴。ボールは諒にかするどころか、明後日の方向に弧を描いて壁にぶつかり、そのまま維人の顔面にクリティカルヒット。
白み始めた視界に入ってきたのは、これまで不機嫌な様子しか見たことのなかった諒の淡い色の瞳に浮かんだ驚きと焦り。そんな顔もできるんじゃん、なんて思いながら薄れていった意識が再びクリアになったときには、もうすでに保健室のベッドの上だった。
「起きたか」
目を覚ました時一番に目に入ったのは諒のキレイな形の薄い唇。いつもマスクをつけているし、昼ご飯の時間は一人でどこかへ行ってしまうせいでそれまで口元を見たことが一度もなかった。
初めて見た諒のフルフルの素顔は思っていた通りやっぱり美形。思わずポカンと口を半開きにしたまま見惚れていると、唐突に諒は吹き出した。
「な、なんで笑うの?!」
「だっておまえ、自分で投げたボールが顔面に当たって気絶するって……今時漫画でもそんなベタなこと起きないだろ」
マジでウケる、と腹を抱えて大笑いする様子にむうっと唇を尖らせる。するとそれを見た諒はまた笑った。
「もう! いい加減に、」
「悪かった」
しばらく収まらなかった笑いから一転。トーンの落ちた声に驚いて思わず「えっ」と声を上げると、諒は維人から目をそらし、視線を下げた。
「中学の時にもおまえみたいに何かと声をかけてくるやつがいたんだ。まぁ普通に仲良くなって、友達だと思ってた。でも、向こうは俺が『木暮』の息子だから声を掛けただけだった。親に仲良くしとけって言われたんだってさ。だからおまえもそう言うたぐいなんだろうって……」
そう苦笑交じりで言う諒の手を維人は咄嗟に掴んだ。
その時の諒の顔があまりにも寂しそうで、消え行ってしまいそうで、繋ぎとめなきゃと思ったんだ。
「僕の父さんは建設会社の社員で、今はアフリカで橋を作ってる。母さんは二年前に病気で死んじゃった。だから、僕にはそんなことを言う親はいないし、“木暮さんちの息子”と仲良くするメリットはないよ! 僕は、ただきみ自身と仲良くなりたいんだ」
でも、言った側から何を言ってるんだと恥ずかしくなって、目を丸める諒からパッと手を離すと、諒はなぜか維人の肩に頭を乗せ、グリっと額を押し付けた。
「なぁ、おまえの下の名前ってあれ、なんて読むの」
「えっ?? 『いと』、だけど」
突然の接触に驚いて固まっていた上に、今までの会話の流れを無視した質問に頭に疑問符を浮かべながらも素直に答える。
「へぇ。ちょっと変わってんね」
“維人”の“維”という文字には“つなぐ”とか、“結びつける”という意味がある。それに“人”という字を合わせて『人との結びつきを大切して欲しい』という願いを込めて亡くなった母が付けてくれた名だ。そう得意げに話すと、顔を上げた諒は「ふーん」と気のない返事をした。
自分から聞いておいて感じが悪い。いや、意味までは聞かれてなかったかも。
「木暮くんの下の名前はごんべんに京都の京で『りょう』だよね」
「あぁ。俺のはおまえみたいに意味なんてねーけどな」
吐き捨てるような言い方に思わず眉間にしわが寄る。自分のことを言われたわけでもないのに、なぜか、本当になぜだか悔しい気持ちになった。
「そんなことないでしょ。えっと、『諒』って言う字は……へぇ、“まこと”、とか“言葉がはっきりしていて偽りのないこと”とか言う意味なんだ」
諒が持ってきてくれたらしい荷物の中から引っ張り出したスマホの検索結果を読み上げる。諒は自分の想ったことを良くも悪くもはっきりばっさり口にするからぴったりだ。
「きっと木暮くんの名前は『正直者』って意味だな」
ヒヒっといたずらっぽく笑って見せると、諒はもともと大きな切れ長の眼をまん丸に見開いてあからさまに驚いた顔をしたあと、プイっと拗ねたように横を向いた。
「なんだよそれ、勝手につけんなよ」
「えーだって意味なんてないとか言うからさ。これは僕の持論だけど、意味のないものなんてこの世の中にはないよ。もし本当にどうしても見つからなかったとしてもさ、その時は自分でつけちゃえばいいだけじゃん?」
「……おまえ、変なやつだな」
「木暮くんに言われたくないね」
「……諒でいい」
「じゃー僕のこともおまえって呼ぶのやめて」
諒は少しだけグッと息をつめてから、「わかった」とまた維人の肩に顔をうずめた。そんな諒がなんだかかわいらしく思えて、肩に乗せられた小さな形の良い頭をぽんぽんと撫でると、諒は急に維人の首筋に顔を当てたまますんすんと鼻を動かした。
「えっ、なに?! 汗かいてるからやめてよ」
「いや、なんかいい匂いするなって。香水とか付けてる?」
「そんなの付けないよ。何だろ? 柔軟剤とか?」
「そういう感じじゃないけど……でもいい匂い。落ち着く」
「なにそれ。さっき俺に近づくなとか触るなとか言ったのはどこのどちらさまでしたっけ」
「うっ……」
「気色悪いとも言われたなぁ」
「わ、悪かったよ。ほんと、ごめん」
「ふふっ、いいよ。万年反抗期さんだから大目に見ましょう」
「おまえ、結構いい性格してんな」
「おまえって言わないでくださーい」
そのあと二人で大笑いして以来、諒は周囲が驚くほど維人にべったりと懐き、その様子を見たクラスメイトから維人は『猛獣使い』なんて呼ばれるようになったとか、ならなかったとか。
と、まぁ今思い出しても諒との出会いはなかなかに青春っぽい。
一人でそんなことを思い出してにまにまとしていたから、一に引きずられて大人しく後ろの席に座った諒がグレーのマフラーを外しながらきょとんとしている。
多分、大学は別々になるけど、諒とはきっとこれからもいい友達でいられる。
そう思っていた。
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