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身内用 身内が読み終え次第削除 【でんしゃー】仮
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「無前進電車」
この世界は仮想現実説というのがあるのを御存知だろうか。
他にもシミュレーション説やゲームの中の世界説と言った近しい説も幾つか存在する。
これらの説を簡単に説明するとこの世界はVR世界で自分たちの意識は高度な文明により作り出されたという説だ。
正直、非現実的で馬鹿馬鹿しく有り得ない話だと思う。
だけど、世界の数々の有力者がこの説を推している事実もあるので一概にもこの説が有り得ないと言えないのだ。
俺自身、このような話は半信半疑で見たり聞いたりしているが「もし、本当にこの説が正しかったら」というIFの妄想がこの話は捗って夢があるので非常に好きだ。
このようなジャンルの内容の番組がやっていれば必ず録画して視聴し、本があれば買ってその日の内に読んでいる程好きなのである。
そんな俺だが、今もその内容の本を読みながら始発電車に乗っている。
何処へ行くのかというと実家に帰るのだ。
実家へは学業や大学の友達付き合いなどもあり中々帰省出来ず、今日の帰省は役三ヶ月経つか経たないかぶりだ。
久しぶりに家族と会えるとなると少し楽しみだ。
本は帰省の道中の時間潰しとして読んでいる。
今、読んでいる本は「この世界はゲームの中だった!?」というタイトルの三百ページくらいある本で昨日の夜に今日の時間潰し為に購入した物。
初めの数ページしかまだ読んでいないがもう面白い。
そう感じる度に俺はつくづくこのような内容が好きなのだなと改めて自覚して少し落ち込む。
これを好きな事自体は悪い事では無いのだが、大学生にもなってこんな内容を好む人は自分の周りには全く居らず、熱く語れる事が無いので自分が皆と同じような事を好む人間だったらなと思ったりして落ち込むのだ。
にしても眠たい。
昨日、帰省の準備とかもあって就寝したのが夜中の一時頃だった。
今日、始発電車に乗る為に朝起きたのが四時なので睡眠時間がたったの三時間。
そりゃ、眠たくもなる。
まだ降りる駅まで一時間近くかかるので寝ても良いのだが本を読みたい欲が強過ぎて寝るのを拒んでいる。
俺は何とか寝ないように頬を強く抓ったり、乗車している車両に人がいないので席から立ち上がって少し体を動かしたりしていたのだが、限界が来て俺は眠ってしまった。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
次に起きたのは降りる駅の一つ前の駅から発車してすぐのトンネルに入っている時だった。
俺が乗車している車両にも三人乗ってきていて、その人ら全員眠っていた。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
俺は何気なくスマホを一度開けて時間を確認する。
5:47分と表示されていた。
俺はスマホを閉じて、本の続きを読み始めた。
このトンネルを抜けると降りる駅に到着する。
抜けるまでは十分程だから十一ページくらいは読めるなと頭の中で計算しながら読み進めた。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
何か違和感のある走行音が電車の揺れと一緒に体の内に侵入してきたがそんなの気にならない、気が付かない程、俺は本に集中していた。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
俺の集中力が途切れた時にはもう本を読み終えていた。
本はこの世界がゲームの中だという根拠等の説明やこの世界はゲームの中なのでもしかしたらバグのような現象が起こる可能性があるという事も書かれていて非常に面白く満足した。
俺は御満悦で本を閉じて鞄の中に片付けて、「本当にゲームの中だったら」という妄想をして読み終えた後もしっかりと楽しんだ。
ガタンゴトッ…
電車はまだトンネルを抜けておらず、何をして時間を潰そうかと考える。
もう一回寝ようかと思ったがトンネルを抜けたらすぐ降りる駅に到着するのでそれは止めて、スマホで次に読む本を探す事にした。
俺はズボンのポケットからスマホを取り出して開き、検索ツールを開いた。
―
スマートフォンがインターネットに接続されていな
いため、ページを開くことができ
ません。
―
「は?何で?」
ガタンゴトッ…
俺はスマホの上部に表示されている通信回線状況を示すアイコンを見てみると圏外となっていた。
トンネルに入っているからか電波が届かないのかと思ったりしたがそれはないとすぐに否定した。
実家に帰る時、いつもこの路線を利用するが今までこのトンネルで電波が無くなったのを見た事がないからだ。
ガタンゴトッ…
それにトンネルと言っても電波は弱くなるかもしれないが届かなくなる事はないだろう。
スマホの不具合かもしれないと思い、再起動させてみたが圏外という表示が変わる事はなかった。
直らないならしょうがない。
ガタンゴトッ…
時間潰す手段が無くなりはしたがあと少しで駅に着くだろう。
トラブルに対応している時間で少しは潰せたからな…
待てよ、俺は目を覚まして本を読み始めてから今までにどれだけの時間を潰した?
ガタンゴトッ…
途中から読み始めたとしても三百ページもある本を読み終えるには少なくとも一時間はかかるはずだ。
なら、もうトンネルを抜けていてもおかしくはないというか抜けていないとおかしいのにまだこの電車はトンネルの中にいる。
ガタンゴトッ…
もしかして、本に集中するあまり乗り過ごしてしまったのか?
いや、それはないだろう。
読む事に集中してはいたがアナウンスには気を付けていた。
ガタンゴトッ…
俺の記憶を辿ってみても、本を読み始めてからアナウンスは一回も流れてこなかった。
それに他の乗客も俺が起きた時と人数も座っている位置も寝ている事も何も変わっていないのだ。
という事は乗り過ごしたという可能性は極めて低い。
ガタンゴトッ…
なら、この状況どういう事なのだ?
俺は何の意図もなく衝動的にスマホを開けて時間を見てみる。
5:47
俺が最後にスマホを見た時から時間が全く経っていない。
ガタンゴトッ…
これも不具合かと思い、再起動を何回かしてみたが変わらず5:47と表示されていた。
あり得ない。
俺は確実に本を読み終えたし、体感時間も一時間は経っていなくても読み始めてから一分は優に超えている。
ガタンゴトッ…
何だ、今何が俺に起こっているというのだ。
あと何故だ、いつもは気にならない走行音が今日は際立って雑音に聞こえる。
何だ、この気持ち悪い音は。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
変なところで音が途切れやがって。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
え?音が途切れている?
リズムが一定じゃないなる事はあるが音が途切れるなんて事はあるのか?
走っている限り無いだろ、明らかにおかしいだろ。
俺は窓の外を見て電車がちゃんと進んでいるか確認する。
窓から見えるのはトンネルの壁で分かりにくいが何か異変があれば分かるようにじっくりと全ての意識をそこに集中させていた。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
異変は、あった。
確認するのが大変だったが走行音が途切れてまた鳴り出すタイミングで壁に付いているライトの位置が一瞬で変わっていた。
恐らく、信じられないが、あり得ないが、今、ループしている。
同じ場所を永遠に電車はぐるぐる走っている。
時間も全く経っていなかったところから5:47をループしているのだろう。
こんな事が本当に起こるのか?俺は起きたと思っているが実際はまだ寝ていてここは夢の世界なのではないのか?
俺は自分の頬を手加減なしに抓ったがただ激痛が頬に走っただけだった。
「夢じゃないのか…」
何だ、今何がどうなっているのだ、俺は何の現象に巻き込まれているのだ。
不安だ、どうすればいい、これは本当に夢ではないのか?
夢であってくれ、俺は一生この車両に取り残されてしまうのか?
嫌だ、元の世界に戻りたい、速く進んでくれ。
ネガティブな思考が収まる事を知らない。
そんな時、不意に寝ている乗客が目に入った。
そうだ、この状況下にいるのは俺だけじゃないんだ。
そう思うとネガティブ思考が収まってきて落ち着きを取り戻した。
俺は乗客の一人のスーツを来たサラリーマンと思われる人を起こす事にした。
「すいません、起きて下さい、起きて下さい」
もしかしたら起きないのではないかと不安になったりしたが、体を数回揺さぶると起きた。
「どうしたんですか?」
口調は優しいが無理に起こしてしまったから不機嫌というのが顔を見て分かる。
「今、ヤバい状況です。信じられないかもしれないですが、時間がループしています」
寝起きというのもあったのだろう、俺の言葉を聞いたサラリーマンっぽい人は唖然とした後、怒鳴ってきた。
「起こしてまで言いたかった事がそれか!?そんな事ある訳ないだろう!俺を馬鹿にしているのか!?」
怒るのも当然だ。
気持ちよく寝ているところを無理やり起こされて、言われたのが馬鹿みたいな事。
そんな事されると俺だって怒るだろう。
だけどここで話すのを止めると俺が不安に陥って何も考えられなくなるし、この状況も変わらないかもしれないので俺は気持ちを強く持ち話しを続けた。
「してません!聞いて下さい!僕はこの電車がトンネルに入っている時に目が覚めてそこからこの本を読み始めて読み終えました」
俺は鞄から読んだ本を取り出して見せつけた。
「あぁ、それがどうしたんだよ。ただ読み終えただけだろ?」
「そうですけど違います、僕はこの三百ページある本を起きてから読み始めて、このトンネルの中で読み終えたんです。おかしいと思いませんか?」
「何がおかしいって言うんだ」
「あ、その前にあなたはこの路線をいつも使用しますか?」
「いつも使用するよ、それがどうした」
「なら、このトンネルに入って抜けるまでの時間は何分くらいか分かりますよね」
「分かるよ、十分程度だろ?」
「でしょ?それを踏まえて僕の言った内容を思い出してみて下さい。僕が読み始めたのは駅から発車してからで読み終えたのがこのトンネルだったんです。どう考えても時間的におかしいでしょ?」
それを聞くとサラリーマンっぽい人の顔が急に青ざめる。
「いや、でも、途中から本を読み始めたんじゃないのか!?だから読み終えるのが早かったんだろ!?」
「確かに途中から読み始めましたが、それでも最初の数十ページ目からでした。読み終えるにしても早くても一時間はかかるんですよ」
「き、君の読む速度が速かったんじゃないのか!?」
「それもあるかもしれないですが」
俺はズボンのポケットからスマホを取り出し、開いて時刻を彼に見せる。
「スマホに表示されている通り今は五時四十七分なんです。僕はトンネルを入っている時に起きて、すぐに時間を確認したんですがその時表示されていたのが五時四十七分で一分も経っていない。一分も経たずに本を一冊読み終えられると思いますか!?どう考えたって無理でしょ!?」
俺の言葉で彼は俯いて黙り、数秒してから頭を強く掻いた。
この状況を理解したのだろう彼がいきなり顔を上げて俺に迫ってきた。
「俺には家族が居るんだ。一生ここから出られない何て御免だぞ。どうやったらここから抜け出せる!?教えてくれ!」
彼が取り乱したので大声を出して落ち着かせる。
「落ち着いて!僕も抜け出す方法を考えているんです!貴方を起こした理由も抜け出す方法を導き出す為だ!一人で考えるより複数で考えた方が答えに辿り着ける可能性は高くなりますから」
俺の言葉を聞いた彼は顔付きが変わり、頼れる雰囲気になる。
「そうか、分かった…やろう。やってやろう。なら、他の乗客も起こした方が良いんじゃないか?」
「そうですね、起こしましょう」
残り乗客を起こそうと視線を移すともう既に起きており俺たちの事をじっと見ていた。
流石に声が大き過ぎたか。
残り乗客は息子と母親と思われる二人組の二人だ。
「なぁ、君。先ずは状況の説明をして、協力し易いようにお互い自己紹介をしよう」
彼からアドバイスを受けてそれを実行する事にして、三人に時間がループしているという状況の説明をした。
彼と同じように初めは信じていなかったが俺の身に起こった事を話すと信じた。
「僕が最初に自己紹介します。佐々木創、二十一歳、大学生です。この電車に乗った理由は実家に帰る為です」
次の自己紹介、名乗りを上げたのは彼だった。
「次は俺が。長谷川斗真、三十五歳、会社員です。乗車理由は会社に行く為です」
彼の後は母親らしい人が名乗りを上げる。
「私は東城清葉と言います。二十九歳で主婦です。隣に居る子は私の息子の東城匠海で七歳、小学生です。乗車理由はディズニーランドに行く為です」
全員の自己紹介が終わり、話し合いを始めた。
匠海は小学生なので話し合いには参加せず、清葉の隣でゲームをする。
「僕が確認した事象から時間がループしているのはほぼ確実です。それにループ地点がトンネルの中という事から入る前までは普通に時間が流れていたと考えていいと思います」
「成程。となると、このループが始まったのはトンネルの中でか。あと一つ前の停車駅の発車時刻が確か五時四十五分だったはずだからトンネルの入口付近で始まったって感じか」
「そうでしょうね。ループが始まった原因が分かれば抜け出す方法に近付けそうなんですが…全く思い付かないです」
「あの、別車両に私たち以外にも人がいると思うんです。その人たちにも協力して貰いましょう。あと車掌さんに話を聞いてみましょう。運転でずっと起きていたはずだからループが起きる直前の事を知っていると思います。それがもしかしたらヒントになるかもしれません」
「確かに」
「そうしましょうか」
俺が車掌さんに話を聞きに行き、斗真が他の車両の人に協力を仰ぎに行き、清葉は匠海と一緒に居る事になった。
流石に子供を一人にさす訳にはいかないからな。
俺を先頭にして前方の車両へ移動しようと扉を開けた時に異変が起こった。
「え?」
俺は確かに扉を開けたはずなのに開ける前の位置に戻っていた。
困惑しながらゆっくり振り返ると斗真は驚愕していた。
「僕、どう、なっていました?」
恐る恐る聞く。
「あ、いや、自分でもおかしいと思っているんだが、冗談抜きで瞬間移動してるように見えた」
「マジですか…気のせいかもしれませんしもう一回やります」
またやっても結果は一緒だった。
「後方は行けるかもしれません、やってみましょう」
後方車両に繋がる扉を今度は斗真に開けてもらったのだが、開けた瞬間に開ける前の位置に戻っていて彼が言った通り瞬間移動しているように見えた。
「これ、他の車両に移動出来ないって事ですかね…」
俺たちの只ならぬ雰囲気を察したのか清葉が駆け付けてくる。
俺は起こった事を説明して、もしかしたら彼女はいけるかもしれないと思いやらせてみたが結果は俺たちと同じだった。
「ヤバいな、俺たちだけで方法を導き出さないといけないのか」
「私たち本当に元に戻れるんですか?無理だったら…」
「そんな事考えても何も生まれません。出来る範囲で考えましょう」
不意にガラス越しに他の車両の中を見る。
中には人がいて、その人らは動いていた、が変だった。
「斗真さん、清葉さん見て下さい。他の車両にいる人、同じ動きを繰り返しています」
「え、何あれ」
「本当だ」
今までの状況を踏まえて考えると電車の外がループしている訳では無くこの車両以外がループしているという事だろう。
俺たちが他の車両に移動出来なかったのは扉を開けた瞬間にループして開ける前に戻ったという事か。
「これは、この車両の中以外がループしているという事か」
斗真が言った。
「恐らく。これでは重要かもしれなかった車掌の話が聞けないからループの原因についてのヒントがない…」
「私たちに共通点があってそれがループの原因を起こしているのかも」
「かもしれませんね。性別は違うし、職も違う、年齢も違う、身長も違う、体重とかって」
「俺は66㎏」
「私は、53㎏…」
「僕は61㎏。もう違いますね」
「過去にやった事とか…虐めたか虐められた事あります?」
「僕はどっちもないです」
「私は虐められた事はあります」
「これも違うな。自分の詳細をお互い話しましょうか」
「そうですね」
「はい」
俺たちは生まれてきてから今までの事を記憶にある限り、赤裸々に全て話した。
人なら一つや二つ話したくはない事もあると思ったので俺が隠したい話も全て話し、それが共通している人がいれば言うという事もしたが、結局何も共通点は見つけられず、抜け出す方法を思いつく今の希望は消えた。
その現実に斗真と清葉の気持ちは完全に沈んでいた。
「俺は家族に会えずに電車の中で人生終えるのかもしれないな…」
「まだ、斗真さんはいいじゃないですか。一人で死ぬんですから。私なんて息子もいるからその息子に死ぬ姿を見せてしまうかもしれないんですよ!?それに息子も死んじゃう」
「いい訳がないだろ!家族がいないところで家族だけを残して死ぬんだぞ!?どれ程、迷惑をかけると思っているんだ!あんたは死んでも残るのは旦那だけだ!何も迷惑をかけないじゃないか!」
「よくそんな事言えますね!経済的な迷惑はかけなくても精神的に迷惑をかけるでしょ!?」
「よくそんな事言えますね、だって!?先に言ってきたのはどっちだよ!」
ヤバい、希望が消えた現実を見たストレスのせいで二人が言い合いを始めてしまった。
この言い合いで得るものは誰も何も無いのに。
こういう時こそ冷静にならなければいけないのに真逆の状態だ。
「二人共落ち着いて下さい!」
「何も分からない学生が話に入ってこないで!」
「煩い!家庭を持っていない子供が口を出してくるな!」
俺は子供と言われた事に少し頭に来たが何とか気持ちを自制した。
言い合いを止めに入っただけの俺にここまで言うなんて、二人、この状況のせいで相当精神が疲弊しているな。
俺も精神が疲弊しているけど、深刻な様子の二人を見て客観視出来ているからか、まだ冷静を保って居られている。
にしても、この二人をどうやって落ち着かせるか…今、落ち着かせようとして俺が何か言ったとしても何も聞かないだろうし。
時間が経てば怒りも収まってくれるだろうか。
そんな時、匠海が清葉の方にトコトコと歩いて来た。
「ママ、怖いよ。怒んないで」
匠海が清葉の手を掴んで言った。
それを聞いた清葉は我に返り、匠海を不安にさせないように「ごめんね、大丈夫怒ってないよ」と優しく言って抱きしめる。
それを見た斗真も我に返ったのか申し訳なさそうな顔をして黙った。
俺は二人が少し冷静になったとこですかさず休憩の提案をした。
「皆、朝早くからこんな状況になったり、色々考えて頭使ったりして疲れていると思うので一度気持ちを落ち着かせる為に休みませんか?」
二人は「そうしよう」と提案を呑んだ。
清葉は匠海がゲームしているのを楽しそうに見て、斗真は席に横になって寝た。
俺は席に横になりながら方法を考える。
時間のループ、ネットとかで仮想現実みたいな「実はこの世界は」系の関連で見た事がある。
だが、それのループは一日単位だとか自分自身がループするという話である空間以外がループしている現象とは違った。
ループというところは同じだが本質というか原因が体験談と今の状況は
違うと根拠はないが違うと思うのは何故だろう。
今の状況は「実はこの世界は」系に手掛かりがありそうと直感的に思うのは何故だろう。
ループという現象自体、そういう系の話では出てこないのだが…
何かを俺は見落としているのか?
だとしたら何なんだろうか。
今まで見て読んできた記憶を必死に呼び起こしているがループと結びつくようなものは全くない。
自分の中で何か引っかかっているのは分かるのだがその引っかかりの正体が今は分からない。
このまま引っ掛かりが分からなかったらどうしよう。
ネガティブ思考になっては駄目だ。
こういう時は一度寝て頭の中を整理させる方がいいな。
俺は起きたら戻っている事を切に願って目を閉じて眠りについた。
―
目が覚めてまず、戻っているかと見回して確認したが何も変わっておらず、落胆した。
「おはよう創。残念だけど戻っていないぞ」
斗真が俺の心を読んだような事を言ったので少し驚いた。
「僕が戻っているのを願っていたのが何で分かったんですか」
「俺も同じだったからだよ。そして、戻っていないのが分かって落ち込んだのも一緒だ」
「そうでしたか、清葉さんは寝ているんですか?」
「そうだ。流石に疲れたみたいだ。匠海はずっとゲームしている、相変わらず子供って元気だな。あと、創、お前の鞄倒れて中身が出ていたから一応出た物まとめて席に置いといたよ」
「それはありがとうございます」
俺は鞄に片付けようとまとめられていた物の一番上に置かれていた読んだ本を手にする。
何かヒントがないものかと思って本をパラパラと捲るがループに関係する内容は書いていない。
やっぱりと思い深いため息をついた。
「あー!バクった!もー、良いところだったのに…」
匠海が大きい声で言う。
元気が含まれている声を聞いて俺も少し元気を貰った。
このような状況での幼い子供の純粋な言動は大人にとって救いとなる。
俺は匠海の方へ行き、話しかけた。
「ゲームバグっちゃったか」
「うん、ここから先進めないんだ」
匠海が画面を指差していたので俺はそこを見た。
匠海が動かしているキャラが部屋の中にいるのだが、ある扉を開けて入ったら開ける前に戻るというバグが起こっていた。
「これ…」
さっき、車両移動しようとした俺たちと同じ現象だ。
俺たちはループという現象に考えを囚われていたがもしかして、重要なのはそこじゃなかったのか。
俺は電車内で読み終えた本にこの世界でゲームのようなバグが起こる可能性が書かれていた事を思い出した。
「どれ、見せてみ」
横から斗真が入ってきてバグっている画面を見る。
「これは一回電源落とすしかないなー、匠海セーブしているか?」
「してない、最悪ー」
「そうか、なら面倒くさいけどまたやらないといけないな」
「もー」
俺は匠海と話している斗真に食い気味に話しかけた。
「斗真さんこれって」
「ん?ああ、バグの事か?このバグはキャラが動ける以外の空間のロード中に不具合が起こって起こるバグだよ。ゲームの世界の全てを不具合が起こる前の地点に戻って再ロードしようとしているけどキャラが起こる前の状態じゃないからロード出来なくなっているんだよ。これ直すには一再起動が一番良い」
「そうじゃなくて!」
「え?」
「このバグの状態。僕たちが車両移動しようとした時と同じです」
斗真はハッとした顔をする。
「という事は俺たちは今…バグに巻き、込まれている?ん?分からないな」
「バグに巻き込まれているというよりかは現在世界がバグっているという状態ですね」
「世界がバグるってどういう事だ?」
「仮想現実説って知っていますか?」
「聞いた事あるな。この世はVR世界ってやつだっけ?」
「大方合っています。そして、その他にもシミュレーション説やゲーム説というものがあるんですが、ゲーム説を本当だと仮定して俺たちが遭遇している現象を世界のバグだと考えると辻褄が合うんですよ!」
「整理するとこの世界はゲームと一緒という事か?」
「そうです!」
「そんな事あり得るのか!?俺たちはこうやって生きているし、そんな非現実的な事…」
「遭遇している現象自体、非現実的な事です。だから、非現実的に考えないといけない」
「確かに。それを踏まえると、戻れる方法はバグを直せばいいって事か」
「恐らくそうでしょう」
俺と斗真は解決に突然一気に近付いたのでテンションが途轍もなく上がった。
俺は寝ている清葉をテンションが上がったまま起こした。
清葉はハイになっている俺たちを見て最初は困惑していたが俺が斗真と話した事を整理して話すと嬉し泣きをした。
「残りの問題はどうバグを直すかですね」
「そうなんですよ。ゲームみたいに電源ボタンがある訳じゃないので今は僕にはどうすればいいか分かりません」
「それに関してなのだが、思い付いたぞ」
まさかの斗真の発言に驚き歓喜したと同時に彼が眩しく見えた。
「この現象、ゲームと同じならループは世界を再ロードしている状態。なら不具合が起きる前の状態に俺たちがなれば解決する。さっき俺が創にバグについて説明していただろ?それだよ」
「あれですか。となると僕たちは全員寝ている状態に戻ればいいって事ですか?」
「そうだ、あと座る位置も恰好も同じにしないと再ロードされないから気を付けろ」
「分かりました。にしてもよっしゃー!戻れる!」
「良かった、本当に良かった」
俺は今までの疲れが吹き飛んだような感覚になり、喜びを体全体で表現して、清葉は匠海を抱きしめながら泣いて、斗真はガッツポーズをしていた。
俺たちは最初寝ていた席に座ってそれぞれ恰好を合わせる。
俺は本を読んでいたので本を取り出して寝た時に開いていたページを開いて寝る準備をした。
「そうだ、最後に斗真さん。何であんなにバグについて知っていたんですか?」
「俺、会社員をやる前はゲームのプログラミングする仕事をしていたんだ。その時の知識だよ」
「そうだったんですね。なら僕たちは居合わせたのが斗真さんで運が良かったという事ですね」
「いや、一番活躍したのは俺たちにヒントをくれた匠海だ。清葉さん戻ったら褒めてやって下さい」
「はい、分かりました。皆さん本当ありがとうございました」
「いえいえ、まだこれで戻れるかは分かりませんから」
「そうですね、ではおやすみなさい」
俺はそう言って、戻れる事を願い眠りについた。
―
俺が次に起きたのは降りる駅に電車が到着した時だった。
車両を見渡すとサラリーマンっぽい人や二人組の親子が寝ていた。
早朝だし眠くなるよな。
「あー、結局この本全然読めなかった。この後も電車乗るし、その時に読むか」
俺は鞄と本を持ち、電車から降りた。
この世界は仮想現実説というのがあるのを御存知だろうか。
他にもシミュレーション説やゲームの中の世界説と言った近しい説も幾つか存在する。
これらの説を簡単に説明するとこの世界はVR世界で自分たちの意識は高度な文明により作り出されたという説だ。
正直、非現実的で馬鹿馬鹿しく有り得ない話だと思う。
だけど、世界の数々の有力者がこの説を推している事実もあるので一概にもこの説が有り得ないと言えないのだ。
俺自身、このような話は半信半疑で見たり聞いたりしているが「もし、本当にこの説が正しかったら」というIFの妄想がこの話は捗って夢があるので非常に好きだ。
このようなジャンルの内容の番組がやっていれば必ず録画して視聴し、本があれば買ってその日の内に読んでいる程好きなのである。
そんな俺だが、今もその内容の本を読みながら始発電車に乗っている。
何処へ行くのかというと実家に帰るのだ。
実家へは学業や大学の友達付き合いなどもあり中々帰省出来ず、今日の帰省は役三ヶ月経つか経たないかぶりだ。
久しぶりに家族と会えるとなると少し楽しみだ。
本は帰省の道中の時間潰しとして読んでいる。
今、読んでいる本は「この世界はゲームの中だった!?」というタイトルの三百ページくらいある本で昨日の夜に今日の時間潰し為に購入した物。
初めの数ページしかまだ読んでいないがもう面白い。
そう感じる度に俺はつくづくこのような内容が好きなのだなと改めて自覚して少し落ち込む。
これを好きな事自体は悪い事では無いのだが、大学生にもなってこんな内容を好む人は自分の周りには全く居らず、熱く語れる事が無いので自分が皆と同じような事を好む人間だったらなと思ったりして落ち込むのだ。
にしても眠たい。
昨日、帰省の準備とかもあって就寝したのが夜中の一時頃だった。
今日、始発電車に乗る為に朝起きたのが四時なので睡眠時間がたったの三時間。
そりゃ、眠たくもなる。
まだ降りる駅まで一時間近くかかるので寝ても良いのだが本を読みたい欲が強過ぎて寝るのを拒んでいる。
俺は何とか寝ないように頬を強く抓ったり、乗車している車両に人がいないので席から立ち上がって少し体を動かしたりしていたのだが、限界が来て俺は眠ってしまった。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
次に起きたのは降りる駅の一つ前の駅から発車してすぐのトンネルに入っている時だった。
俺が乗車している車両にも三人乗ってきていて、その人ら全員眠っていた。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
俺は何気なくスマホを一度開けて時間を確認する。
5:47分と表示されていた。
俺はスマホを閉じて、本の続きを読み始めた。
このトンネルを抜けると降りる駅に到着する。
抜けるまでは十分程だから十一ページくらいは読めるなと頭の中で計算しながら読み進めた。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
何か違和感のある走行音が電車の揺れと一緒に体の内に侵入してきたがそんなの気にならない、気が付かない程、俺は本に集中していた。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
俺の集中力が途切れた時にはもう本を読み終えていた。
本はこの世界がゲームの中だという根拠等の説明やこの世界はゲームの中なのでもしかしたらバグのような現象が起こる可能性があるという事も書かれていて非常に面白く満足した。
俺は御満悦で本を閉じて鞄の中に片付けて、「本当にゲームの中だったら」という妄想をして読み終えた後もしっかりと楽しんだ。
ガタンゴトッ…
電車はまだトンネルを抜けておらず、何をして時間を潰そうかと考える。
もう一回寝ようかと思ったがトンネルを抜けたらすぐ降りる駅に到着するのでそれは止めて、スマホで次に読む本を探す事にした。
俺はズボンのポケットからスマホを取り出して開き、検索ツールを開いた。
―
スマートフォンがインターネットに接続されていな
いため、ページを開くことができ
ません。
―
「は?何で?」
ガタンゴトッ…
俺はスマホの上部に表示されている通信回線状況を示すアイコンを見てみると圏外となっていた。
トンネルに入っているからか電波が届かないのかと思ったりしたがそれはないとすぐに否定した。
実家に帰る時、いつもこの路線を利用するが今までこのトンネルで電波が無くなったのを見た事がないからだ。
ガタンゴトッ…
それにトンネルと言っても電波は弱くなるかもしれないが届かなくなる事はないだろう。
スマホの不具合かもしれないと思い、再起動させてみたが圏外という表示が変わる事はなかった。
直らないならしょうがない。
ガタンゴトッ…
時間潰す手段が無くなりはしたがあと少しで駅に着くだろう。
トラブルに対応している時間で少しは潰せたからな…
待てよ、俺は目を覚まして本を読み始めてから今までにどれだけの時間を潰した?
ガタンゴトッ…
途中から読み始めたとしても三百ページもある本を読み終えるには少なくとも一時間はかかるはずだ。
なら、もうトンネルを抜けていてもおかしくはないというか抜けていないとおかしいのにまだこの電車はトンネルの中にいる。
ガタンゴトッ…
もしかして、本に集中するあまり乗り過ごしてしまったのか?
いや、それはないだろう。
読む事に集中してはいたがアナウンスには気を付けていた。
ガタンゴトッ…
俺の記憶を辿ってみても、本を読み始めてからアナウンスは一回も流れてこなかった。
それに他の乗客も俺が起きた時と人数も座っている位置も寝ている事も何も変わっていないのだ。
という事は乗り過ごしたという可能性は極めて低い。
ガタンゴトッ…
なら、この状況どういう事なのだ?
俺は何の意図もなく衝動的にスマホを開けて時間を見てみる。
5:47
俺が最後にスマホを見た時から時間が全く経っていない。
ガタンゴトッ…
これも不具合かと思い、再起動を何回かしてみたが変わらず5:47と表示されていた。
あり得ない。
俺は確実に本を読み終えたし、体感時間も一時間は経っていなくても読み始めてから一分は優に超えている。
ガタンゴトッ…
何だ、今何が俺に起こっているというのだ。
あと何故だ、いつもは気にならない走行音が今日は際立って雑音に聞こえる。
何だ、この気持ち悪い音は。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
変なところで音が途切れやがって。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
え?音が途切れている?
リズムが一定じゃないなる事はあるが音が途切れるなんて事はあるのか?
走っている限り無いだろ、明らかにおかしいだろ。
俺は窓の外を見て電車がちゃんと進んでいるか確認する。
窓から見えるのはトンネルの壁で分かりにくいが何か異変があれば分かるようにじっくりと全ての意識をそこに集中させていた。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトッ…
異変は、あった。
確認するのが大変だったが走行音が途切れてまた鳴り出すタイミングで壁に付いているライトの位置が一瞬で変わっていた。
恐らく、信じられないが、あり得ないが、今、ループしている。
同じ場所を永遠に電車はぐるぐる走っている。
時間も全く経っていなかったところから5:47をループしているのだろう。
こんな事が本当に起こるのか?俺は起きたと思っているが実際はまだ寝ていてここは夢の世界なのではないのか?
俺は自分の頬を手加減なしに抓ったがただ激痛が頬に走っただけだった。
「夢じゃないのか…」
何だ、今何がどうなっているのだ、俺は何の現象に巻き込まれているのだ。
不安だ、どうすればいい、これは本当に夢ではないのか?
夢であってくれ、俺は一生この車両に取り残されてしまうのか?
嫌だ、元の世界に戻りたい、速く進んでくれ。
ネガティブな思考が収まる事を知らない。
そんな時、不意に寝ている乗客が目に入った。
そうだ、この状況下にいるのは俺だけじゃないんだ。
そう思うとネガティブ思考が収まってきて落ち着きを取り戻した。
俺は乗客の一人のスーツを来たサラリーマンと思われる人を起こす事にした。
「すいません、起きて下さい、起きて下さい」
もしかしたら起きないのではないかと不安になったりしたが、体を数回揺さぶると起きた。
「どうしたんですか?」
口調は優しいが無理に起こしてしまったから不機嫌というのが顔を見て分かる。
「今、ヤバい状況です。信じられないかもしれないですが、時間がループしています」
寝起きというのもあったのだろう、俺の言葉を聞いたサラリーマンっぽい人は唖然とした後、怒鳴ってきた。
「起こしてまで言いたかった事がそれか!?そんな事ある訳ないだろう!俺を馬鹿にしているのか!?」
怒るのも当然だ。
気持ちよく寝ているところを無理やり起こされて、言われたのが馬鹿みたいな事。
そんな事されると俺だって怒るだろう。
だけどここで話すのを止めると俺が不安に陥って何も考えられなくなるし、この状況も変わらないかもしれないので俺は気持ちを強く持ち話しを続けた。
「してません!聞いて下さい!僕はこの電車がトンネルに入っている時に目が覚めてそこからこの本を読み始めて読み終えました」
俺は鞄から読んだ本を取り出して見せつけた。
「あぁ、それがどうしたんだよ。ただ読み終えただけだろ?」
「そうですけど違います、僕はこの三百ページある本を起きてから読み始めて、このトンネルの中で読み終えたんです。おかしいと思いませんか?」
「何がおかしいって言うんだ」
「あ、その前にあなたはこの路線をいつも使用しますか?」
「いつも使用するよ、それがどうした」
「なら、このトンネルに入って抜けるまでの時間は何分くらいか分かりますよね」
「分かるよ、十分程度だろ?」
「でしょ?それを踏まえて僕の言った内容を思い出してみて下さい。僕が読み始めたのは駅から発車してからで読み終えたのがこのトンネルだったんです。どう考えても時間的におかしいでしょ?」
それを聞くとサラリーマンっぽい人の顔が急に青ざめる。
「いや、でも、途中から本を読み始めたんじゃないのか!?だから読み終えるのが早かったんだろ!?」
「確かに途中から読み始めましたが、それでも最初の数十ページ目からでした。読み終えるにしても早くても一時間はかかるんですよ」
「き、君の読む速度が速かったんじゃないのか!?」
「それもあるかもしれないですが」
俺はズボンのポケットからスマホを取り出し、開いて時刻を彼に見せる。
「スマホに表示されている通り今は五時四十七分なんです。僕はトンネルを入っている時に起きて、すぐに時間を確認したんですがその時表示されていたのが五時四十七分で一分も経っていない。一分も経たずに本を一冊読み終えられると思いますか!?どう考えたって無理でしょ!?」
俺の言葉で彼は俯いて黙り、数秒してから頭を強く掻いた。
この状況を理解したのだろう彼がいきなり顔を上げて俺に迫ってきた。
「俺には家族が居るんだ。一生ここから出られない何て御免だぞ。どうやったらここから抜け出せる!?教えてくれ!」
彼が取り乱したので大声を出して落ち着かせる。
「落ち着いて!僕も抜け出す方法を考えているんです!貴方を起こした理由も抜け出す方法を導き出す為だ!一人で考えるより複数で考えた方が答えに辿り着ける可能性は高くなりますから」
俺の言葉を聞いた彼は顔付きが変わり、頼れる雰囲気になる。
「そうか、分かった…やろう。やってやろう。なら、他の乗客も起こした方が良いんじゃないか?」
「そうですね、起こしましょう」
残り乗客を起こそうと視線を移すともう既に起きており俺たちの事をじっと見ていた。
流石に声が大き過ぎたか。
残り乗客は息子と母親と思われる二人組の二人だ。
「なぁ、君。先ずは状況の説明をして、協力し易いようにお互い自己紹介をしよう」
彼からアドバイスを受けてそれを実行する事にして、三人に時間がループしているという状況の説明をした。
彼と同じように初めは信じていなかったが俺の身に起こった事を話すと信じた。
「僕が最初に自己紹介します。佐々木創、二十一歳、大学生です。この電車に乗った理由は実家に帰る為です」
次の自己紹介、名乗りを上げたのは彼だった。
「次は俺が。長谷川斗真、三十五歳、会社員です。乗車理由は会社に行く為です」
彼の後は母親らしい人が名乗りを上げる。
「私は東城清葉と言います。二十九歳で主婦です。隣に居る子は私の息子の東城匠海で七歳、小学生です。乗車理由はディズニーランドに行く為です」
全員の自己紹介が終わり、話し合いを始めた。
匠海は小学生なので話し合いには参加せず、清葉の隣でゲームをする。
「僕が確認した事象から時間がループしているのはほぼ確実です。それにループ地点がトンネルの中という事から入る前までは普通に時間が流れていたと考えていいと思います」
「成程。となると、このループが始まったのはトンネルの中でか。あと一つ前の停車駅の発車時刻が確か五時四十五分だったはずだからトンネルの入口付近で始まったって感じか」
「そうでしょうね。ループが始まった原因が分かれば抜け出す方法に近付けそうなんですが…全く思い付かないです」
「あの、別車両に私たち以外にも人がいると思うんです。その人たちにも協力して貰いましょう。あと車掌さんに話を聞いてみましょう。運転でずっと起きていたはずだからループが起きる直前の事を知っていると思います。それがもしかしたらヒントになるかもしれません」
「確かに」
「そうしましょうか」
俺が車掌さんに話を聞きに行き、斗真が他の車両の人に協力を仰ぎに行き、清葉は匠海と一緒に居る事になった。
流石に子供を一人にさす訳にはいかないからな。
俺を先頭にして前方の車両へ移動しようと扉を開けた時に異変が起こった。
「え?」
俺は確かに扉を開けたはずなのに開ける前の位置に戻っていた。
困惑しながらゆっくり振り返ると斗真は驚愕していた。
「僕、どう、なっていました?」
恐る恐る聞く。
「あ、いや、自分でもおかしいと思っているんだが、冗談抜きで瞬間移動してるように見えた」
「マジですか…気のせいかもしれませんしもう一回やります」
またやっても結果は一緒だった。
「後方は行けるかもしれません、やってみましょう」
後方車両に繋がる扉を今度は斗真に開けてもらったのだが、開けた瞬間に開ける前の位置に戻っていて彼が言った通り瞬間移動しているように見えた。
「これ、他の車両に移動出来ないって事ですかね…」
俺たちの只ならぬ雰囲気を察したのか清葉が駆け付けてくる。
俺は起こった事を説明して、もしかしたら彼女はいけるかもしれないと思いやらせてみたが結果は俺たちと同じだった。
「ヤバいな、俺たちだけで方法を導き出さないといけないのか」
「私たち本当に元に戻れるんですか?無理だったら…」
「そんな事考えても何も生まれません。出来る範囲で考えましょう」
不意にガラス越しに他の車両の中を見る。
中には人がいて、その人らは動いていた、が変だった。
「斗真さん、清葉さん見て下さい。他の車両にいる人、同じ動きを繰り返しています」
「え、何あれ」
「本当だ」
今までの状況を踏まえて考えると電車の外がループしている訳では無くこの車両以外がループしているという事だろう。
俺たちが他の車両に移動出来なかったのは扉を開けた瞬間にループして開ける前に戻ったという事か。
「これは、この車両の中以外がループしているという事か」
斗真が言った。
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「私は虐められた事はあります」
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「そうですね」
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俺たちは生まれてきてから今までの事を記憶にある限り、赤裸々に全て話した。
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その現実に斗真と清葉の気持ちは完全に沈んでいた。
「俺は家族に会えずに電車の中で人生終えるのかもしれないな…」
「まだ、斗真さんはいいじゃないですか。一人で死ぬんですから。私なんて息子もいるからその息子に死ぬ姿を見せてしまうかもしれないんですよ!?それに息子も死んじゃう」
「いい訳がないだろ!家族がいないところで家族だけを残して死ぬんだぞ!?どれ程、迷惑をかけると思っているんだ!あんたは死んでも残るのは旦那だけだ!何も迷惑をかけないじゃないか!」
「よくそんな事言えますね!経済的な迷惑はかけなくても精神的に迷惑をかけるでしょ!?」
「よくそんな事言えますね、だって!?先に言ってきたのはどっちだよ!」
ヤバい、希望が消えた現実を見たストレスのせいで二人が言い合いを始めてしまった。
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こういう時こそ冷静にならなければいけないのに真逆の状態だ。
「二人共落ち着いて下さい!」
「何も分からない学生が話に入ってこないで!」
「煩い!家庭を持っていない子供が口を出してくるな!」
俺は子供と言われた事に少し頭に来たが何とか気持ちを自制した。
言い合いを止めに入っただけの俺にここまで言うなんて、二人、この状況のせいで相当精神が疲弊しているな。
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にしても、この二人をどうやって落ち着かせるか…今、落ち着かせようとして俺が何か言ったとしても何も聞かないだろうし。
時間が経てば怒りも収まってくれるだろうか。
そんな時、匠海が清葉の方にトコトコと歩いて来た。
「ママ、怖いよ。怒んないで」
匠海が清葉の手を掴んで言った。
それを聞いた清葉は我に返り、匠海を不安にさせないように「ごめんね、大丈夫怒ってないよ」と優しく言って抱きしめる。
それを見た斗真も我に返ったのか申し訳なさそうな顔をして黙った。
俺は二人が少し冷静になったとこですかさず休憩の提案をした。
「皆、朝早くからこんな状況になったり、色々考えて頭使ったりして疲れていると思うので一度気持ちを落ち着かせる為に休みませんか?」
二人は「そうしよう」と提案を呑んだ。
清葉は匠海がゲームしているのを楽しそうに見て、斗真は席に横になって寝た。
俺は席に横になりながら方法を考える。
時間のループ、ネットとかで仮想現実みたいな「実はこの世界は」系の関連で見た事がある。
だが、それのループは一日単位だとか自分自身がループするという話である空間以外がループしている現象とは違った。
ループというところは同じだが本質というか原因が体験談と今の状況は
違うと根拠はないが違うと思うのは何故だろう。
今の状況は「実はこの世界は」系に手掛かりがありそうと直感的に思うのは何故だろう。
ループという現象自体、そういう系の話では出てこないのだが…
何かを俺は見落としているのか?
だとしたら何なんだろうか。
今まで見て読んできた記憶を必死に呼び起こしているがループと結びつくようなものは全くない。
自分の中で何か引っかかっているのは分かるのだがその引っかかりの正体が今は分からない。
このまま引っ掛かりが分からなかったらどうしよう。
ネガティブ思考になっては駄目だ。
こういう時は一度寝て頭の中を整理させる方がいいな。
俺は起きたら戻っている事を切に願って目を閉じて眠りについた。
―
目が覚めてまず、戻っているかと見回して確認したが何も変わっておらず、落胆した。
「おはよう創。残念だけど戻っていないぞ」
斗真が俺の心を読んだような事を言ったので少し驚いた。
「僕が戻っているのを願っていたのが何で分かったんですか」
「俺も同じだったからだよ。そして、戻っていないのが分かって落ち込んだのも一緒だ」
「そうでしたか、清葉さんは寝ているんですか?」
「そうだ。流石に疲れたみたいだ。匠海はずっとゲームしている、相変わらず子供って元気だな。あと、創、お前の鞄倒れて中身が出ていたから一応出た物まとめて席に置いといたよ」
「それはありがとうございます」
俺は鞄に片付けようとまとめられていた物の一番上に置かれていた読んだ本を手にする。
何かヒントがないものかと思って本をパラパラと捲るがループに関係する内容は書いていない。
やっぱりと思い深いため息をついた。
「あー!バクった!もー、良いところだったのに…」
匠海が大きい声で言う。
元気が含まれている声を聞いて俺も少し元気を貰った。
このような状況での幼い子供の純粋な言動は大人にとって救いとなる。
俺は匠海の方へ行き、話しかけた。
「ゲームバグっちゃったか」
「うん、ここから先進めないんだ」
匠海が画面を指差していたので俺はそこを見た。
匠海が動かしているキャラが部屋の中にいるのだが、ある扉を開けて入ったら開ける前に戻るというバグが起こっていた。
「これ…」
さっき、車両移動しようとした俺たちと同じ現象だ。
俺たちはループという現象に考えを囚われていたがもしかして、重要なのはそこじゃなかったのか。
俺は電車内で読み終えた本にこの世界でゲームのようなバグが起こる可能性が書かれていた事を思い出した。
「どれ、見せてみ」
横から斗真が入ってきてバグっている画面を見る。
「これは一回電源落とすしかないなー、匠海セーブしているか?」
「してない、最悪ー」
「そうか、なら面倒くさいけどまたやらないといけないな」
「もー」
俺は匠海と話している斗真に食い気味に話しかけた。
「斗真さんこれって」
「ん?ああ、バグの事か?このバグはキャラが動ける以外の空間のロード中に不具合が起こって起こるバグだよ。ゲームの世界の全てを不具合が起こる前の地点に戻って再ロードしようとしているけどキャラが起こる前の状態じゃないからロード出来なくなっているんだよ。これ直すには一再起動が一番良い」
「そうじゃなくて!」
「え?」
「このバグの状態。僕たちが車両移動しようとした時と同じです」
斗真はハッとした顔をする。
「という事は俺たちは今…バグに巻き、込まれている?ん?分からないな」
「バグに巻き込まれているというよりかは現在世界がバグっているという状態ですね」
「世界がバグるってどういう事だ?」
「仮想現実説って知っていますか?」
「聞いた事あるな。この世はVR世界ってやつだっけ?」
「大方合っています。そして、その他にもシミュレーション説やゲーム説というものがあるんですが、ゲーム説を本当だと仮定して俺たちが遭遇している現象を世界のバグだと考えると辻褄が合うんですよ!」
「整理するとこの世界はゲームと一緒という事か?」
「そうです!」
「そんな事あり得るのか!?俺たちはこうやって生きているし、そんな非現実的な事…」
「遭遇している現象自体、非現実的な事です。だから、非現実的に考えないといけない」
「確かに。それを踏まえると、戻れる方法はバグを直せばいいって事か」
「恐らくそうでしょう」
俺と斗真は解決に突然一気に近付いたのでテンションが途轍もなく上がった。
俺は寝ている清葉をテンションが上がったまま起こした。
清葉はハイになっている俺たちを見て最初は困惑していたが俺が斗真と話した事を整理して話すと嬉し泣きをした。
「残りの問題はどうバグを直すかですね」
「そうなんですよ。ゲームみたいに電源ボタンがある訳じゃないので今は僕にはどうすればいいか分かりません」
「それに関してなのだが、思い付いたぞ」
まさかの斗真の発言に驚き歓喜したと同時に彼が眩しく見えた。
「この現象、ゲームと同じならループは世界を再ロードしている状態。なら不具合が起きる前の状態に俺たちがなれば解決する。さっき俺が創にバグについて説明していただろ?それだよ」
「あれですか。となると僕たちは全員寝ている状態に戻ればいいって事ですか?」
「そうだ、あと座る位置も恰好も同じにしないと再ロードされないから気を付けろ」
「分かりました。にしてもよっしゃー!戻れる!」
「良かった、本当に良かった」
俺は今までの疲れが吹き飛んだような感覚になり、喜びを体全体で表現して、清葉は匠海を抱きしめながら泣いて、斗真はガッツポーズをしていた。
俺たちは最初寝ていた席に座ってそれぞれ恰好を合わせる。
俺は本を読んでいたので本を取り出して寝た時に開いていたページを開いて寝る準備をした。
「そうだ、最後に斗真さん。何であんなにバグについて知っていたんですか?」
「俺、会社員をやる前はゲームのプログラミングする仕事をしていたんだ。その時の知識だよ」
「そうだったんですね。なら僕たちは居合わせたのが斗真さんで運が良かったという事ですね」
「いや、一番活躍したのは俺たちにヒントをくれた匠海だ。清葉さん戻ったら褒めてやって下さい」
「はい、分かりました。皆さん本当ありがとうございました」
「いえいえ、まだこれで戻れるかは分かりませんから」
「そうですね、ではおやすみなさい」
俺はそう言って、戻れる事を願い眠りについた。
―
俺が次に起きたのは降りる駅に電車が到着した時だった。
車両を見渡すとサラリーマンっぽい人や二人組の親子が寝ていた。
早朝だし眠くなるよな。
「あー、結局この本全然読めなかった。この後も電車乗るし、その時に読むか」
俺は鞄と本を持ち、電車から降りた。
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