こんなスパダリが義弟のワケない

筒井

文字の大きさ
26 / 33

26.義弟の気持ち、義兄の気持ち

しおりを挟む
 さらに秀一は体重を俺の身体にかけてきて、こうなっては貞操の危機を感じざるをえない。

(秀一は優しいから、きっとそういう事は我慢してたんだろうけど……だからって寝込みを襲うことはないじゃないか!)

 告白の返事を先延ばしにしていた自分を棚上げにして俺は勝手に腹を立てたが、秀一はいっそう重く圧し掛かり、身体の脇に放っていた俺の手首を掴んだ。その力強さに、しおしおと怒りが萎んでいく。代わりに湧き上がってきたのは、間違いなく恐怖だった。

(……どうしよう、男に襲われるのがこんなに怖いなんて、知らなかった)

 抵抗しなくては、と思うのに、眠気と恐怖が相まって、俺は身体を動かせなかった。もし動かせたとしても、きっと俺は声すら出せない。
 隣の部屋では親父と、きっと帰ってきただろう秀子さんも寝ている。声を上げて二人をこの現場に来させてしまったら、せっかく上手くいっている新生活が破談になりかねない。

(それもこれも、俺がはっきり断らなかったから……)

 過去を後悔しても、もう遅い。もう腹を括るしかない……。

――と、思った矢先。

「……誠二さんが、早くオレのこと……好きになってくれますように……」

 ぽつりと秀一は呟いて額に軽いキスをする。そしてそのまま、俺の上から退いていった。
 そして秀一の気配は、反対側のベッドへと移動していく。

(な……んだよ……)

 安堵するやら動揺するやらで、俺の心臓は忙しなく脈動していた。
 こんなおあつらえ向きのシチュエーションですら、俺の気持ちを優先しようとしてくれる秀一。寝入っていた俺をベッドまで運んで、せいぜいがおまじないめいたキスだけで――。

(くそ……。こんな風に想われたら、好きになるなってほうが無理だろ……っ)

 今はっきりと自覚した。きっと俺は、秀一に惚れてしまった。

 母親が早くに亡くなってから、俺はずっと自分の気持ちを後回しにしてきた。始めの頃は、俺が泣いて親父に迷惑をかけないように。そしてもう少し大きくなってからは、自分がゲイであるせいで親父を泣かせないように。そのために勉強を頑張って、家事も頑張って、一人の足で立つことばかり考えて生きてきた。
 けれどそんな生活の中で秀一は、俺を好きだと言ってくれて、時に寄りかからせてくれた。
 きっと、俺はずっとずっと、そんな存在が欲しかったんだ。

(だけど……)

 支えてくれる存在が身近にいて、俺と同じ好意を持ってくれている。それは確かに嬉しかったが、今まで築いてきた人生計画を、一時の恋情で壊すことも俺には出来ない。

(バカ……。受験前の大事な時期に、なんでこんなことが起きるんだよ……)

 ようやく冷めた目でゆっくりとまぶたを開くと、一筋、涙が零れた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

弟と妹より劣る僕が自信家を演じてたら、部下にバレた件

ゆきりんご
BL
【重い感情を隠している年下敬語攻め×自己肯定感低い年上受け】 イリアスは職場で「優秀で顔もそこそこ良くて頼りになる上司」を演じているが、本当は自信がない。付き合っていた相手に振られることが続いてさらに自信をなくした。自棄になろうとしていたところを、気になっていた部下に止められて、成り行きで体の関係を持つことになり……?

【書籍化決定/完結】カメラ越しのシリウス イケメン俳優と俺が運命なんてありえない!

野原 耳子
BL
★執着溺愛系イケメン俳優α×平凡なカメラマンΩ 平凡なオメガである保(たもつ)は、ある日テレビで見たイケメン俳優が自分の『運命』だと気付くが、 どうせ結ばれない恋だと思って、速攻で諦めることにする。 数年後、テレビカメラマンとなった保は、生放送番組で運命である藍人(あいと)と初めて出会う。 きっと自分の存在に気付くことはないだろうと思っていたのに、 生放送中、藍人はカメラ越しに保を見据えて、こう言い放つ。 「やっと見つけた。もう絶対に逃がさない」 それから藍人は、混乱する保を囲い込もうと色々と動き始めて―― ★リブレ様にて紙書籍・電子書籍化が決定しました! 応援してくださった皆様のおかげです! 本当にありがとうございます! 発売日などの詳細は、決まり次第、作者のXや近況ボードなどでご報告させていただきますのでお待ちいただければ幸いです。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。

志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。 美形×平凡。 乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。 崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。 転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。 そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。 え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

処理中です...