こんなスパダリが義弟のワケない

筒井

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25.夢か現か

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――ゆらゆら、ゆらゆら。
 視界が揺れる。

(ああ、これは夢だ。懐かしい……)

 目の前には幼稚園のグラウンドが広がっていた。その年頃に俺をゆらゆらと抱っこで迎えに来てくれたのは、今は亡き母親だ。

『まま、ぼくひらがな、ぜんぶよめるよ! くらすでぼくだけ!』
『すごいねえ、せーくん。せーくんはお勉強が得意なのね』
『うん! ぼくもっともっとべんきょして、しょーらい、はかせになるの! おさかなのはかせ。うんと、くわしくなるの』

(ほんとに懐かしいな……。小さい頃はそんなこと言ってたっけ……)

 幼少の頃、近所にあった水族館に家族でよく行った。そのせいか、俺は魚にやたら詳しい幼児だった。

『そうしたら、ぱぱとままに、うなぎたくさんあげるの!』
『ふふっ、楽しみだなあ』
『うん! たのしみにしてて!』

 ゆらゆら、視界がブレる。まぶたを開くと、そこには見慣れた筆記用具が転がっていた。

(あー……、勉強したまま寝ちまったのか……)

 ローテーブルに伏せたまま寝てしまったためか、首が痛い。動くのが億劫で、俺はそのまま目を閉じた。

「……誠二さん? 寝ちゃったんですか?」

 起きてる、と言おうにも、身体はまだ夢の中に居て上手く喋れない。もごもごと口を動かすと、寝言だと思われたのか秀一の笑い声が聞こえた。

「毎日勉強してて疲れちゃいますよね。……オレが、少しでも役に立てればいいんだけど……。よいしょ」

 不意に身体を掴まれたかと思ったら、俺は重力から解放されていた。

(おいおい……。俺も男だぞ、抱きかかえるってどんだけコイツ力あるんだよ……)

 しかも足首がぶらぶら揺れる感覚からして、お姫様抱っこされているらしい。秀一のスパダリ力が恐ろしい。

(まあでも……ゆらゆらして気持ちいいな……)

 もうこのまま眠ってしまおう。そう思ったときには案の定、俺の背中はベッドの柔らかさを感じていた。

「はい、到着」

(ありがとな秀一、お前も早く寝ろよー……)

 内心でお礼を言った俺は睡魔の誘惑に素直に従おうとして、なんとなく違和感を感じた。一瞬の後、それが秀一の存在であることに気づいた。俺の上から、退く気配がないのだ。

(……おい、まさか……)
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