こんなスパダリが義弟のワケない

筒井

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24.アルバイト始めます

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 秀一が帰宅する頃には、親父も帰ってきていて三人で夕飯を囲むこととなった。

「いただきます」

 今夜のメニューは中華あんかけ焼きそばに、カツオの竜田揚げ、春雨のサラダだ。

「……で、なんで青山になんか行ってたんだよ」
「それが……オレ、バイト始めようかと思って」
「バイト?! モデルのか?!」
「あ……もう変な噂、流れてるんですね」

 黒塗り高級車に乗ったところを目撃されているのは自分でもわかっていたのか、秀一は苦笑いを浮かべる。

「確かに芸能事務所に話は聞きにいきましたけど、モデルとかじゃないですよ。スタイリストさんのお手伝いです」
「おおっ、なんかカッコいいな!」

 ちょっと親父は黙っておいてくれ、と言いたいのを我慢しながら、俺はバイトを始めようと思った事の次第を聞き出そうとする。

「でも、今からバイト始めたんじゃ来年の受験に響くだろ?」
「それは大丈夫です。来年の春まで、っていう約束でバイトしようと思ってるんで」
「……秀子さんは納得してるのかよ」
「あー……、それは明日、聞いてみようと思います。保護者の判がないと勤められないんで」
「なんでいきなりバイトなんてしようと思ったんだよ。……別に俺はいいけど、食事当番は代わってやらないぞ」
「それも心配いらないです。昨今、未成年者の労働時間に業界もピリピリしてるらしくて。ちゃんと夜は帰してくれるって言ってましたし、理由はまあ……オレも人並に、欲しいものがあって」

(欲しいもの?)

 秀一にそう言われても、俺はピンとこなかった。
 というのも、一緒に暮らし始めてからわかったことだが、秀一は物にさほど頓着していなかったからだ。服や靴なんかもファストファッションで十分……というか、スパダリイケメンが着るとなんでも一流の物のように見えてしまうし、特に気に入りのブランドがあるわけでもなかった。アクセサリーなんかも時計以外はほとんど着けない。

(その秀一が欲しいなんていうんだから、まあ……よっぽどの理由があるのかな)

 秀子さんは筋の通らないことが嫌いな人だから、生半可な理由でない限りOKは出さないだろう。であれば、俺は見守るしかない。食事当番はちゃんとやると言っているし。

「まあ、勉強と両立するならいいんじゃね」
「……よかった。てっきり誠二さんは反対するような気がしてたんで」
「モデルとか目立つことしなけりゃいいと思うよ。お前もわかってると思うけど、校内外問わず、お前はちょっとした有名人なんだから」
「そうなのか? まあ秀一くん、イケメンだもんなあ。オレは別にモデルやっても良いと思うけどなー」
「親父は楽観的すぎ」

 軽口を叩きながら夕食を終え、俺は勉強をしに自室へ、秀一はそのままリビングに残る――と思っていたのだが。

「誠二さん」
「お、なんだ? 忘れ物か?」
「いえ……」

 二人の部屋でローテーブルに教科書を広げた俺は胡坐をかいていたが、そこにのしっと秀一が背中にもたれかかってきた。

「秀一、おーもーいー」
「……誠二さん、オレ応援しか出来ないですけど、受験……頑張ってくださいね」
「……? そりゃ、やるだけやるぞ?」
「なら、安心ですね」

 にっこりと微笑んだ秀一はそのまま身体を離して、リビングに向かっていった。

(……なんだ?)

 なんとなく違和感を覚えたが、それ以上の追求はせずに俺は微積の世界へ沈んでいった。
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