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side結衣
引っ越し
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中学校を卒業した翌日は県立高校の合格発表日で、近所にある私が受験予定だった高校も例外ではなかった。
私はこの日は外部との接点を持ちたくなくて、朝から部屋のカーテンすら開けずに引きこもっていた。
昨日あれから母に連れられて病院へ行くと、風邪の診断を受けた。
今朝もまだ微熱があり、両親もそんな私の事を気遣ってか何も言わずにいてくれる。
私にニ歳年下の妹がおり、妹は重度のアレルギーがあり毎月病院に通っている。
ちょうど季節の変わり目には喘息の発作が出るので、吸入が欠かせない。
その為、我が家の家計は医療費が余計にかかる。
だから出来るだけ両親の負担にならない様に、県立高校に通いたかったのだ。
私の住む行政区は財政難なのか、医療費に関しての助成制度がかなり遅れており、中学生になった妹にかかる医療費は大人と同じ負担額になる。
そして処方される薬が割高なのだ。
ジェネリックの薬に変えてもらうも、妹の体質に合わなくて、ジェネリックではない高い医薬品を使っている。
私立高校のある隣町は逆に医療費の助成制度が充実しているとかで、高校を卒業する迄は医療費がかからない。
だから両親も、私のあの一件から真剣に引越しを考えている。
私も部活はせずに放課後や休日はバイトをして、少しでも迷惑をかけない様に考えていた。
今はちょうど異動の時期で、良い物件が見つからないとの事で、しばらくの間はみんな我慢する事になった。
四月を迎えて私は隣町の高校へ進学し、通学の為にそれまでよりも四十分早く家を出る事になった。
路線バスも運行しているけれど、通学時間に間に合わず、引っ越し先が決まるまでは自転車での通学となる。
妹も隣町の校区外の中学校に進学し、通学は母が家を引っ越すまで送迎をしていた。
四月下旬に引っ越しする事を目標に、家の中の荷造りを始めて要らない物を処分した。
この頃から両親は、将来は田舎の古民家に住む事を考えていたのだろう。
今住んでいる家を賃貸物件にして、最小限の荷物を纏めて当初の目標通りに連休中、隣町のアパートに引っ越した。
引っ越しの準備をしている時に友人である由美に偶然見つかってしまい、携帯の連絡先を無理矢理交換させられて現在に至る。
この当時はスマホなんて持たせて貰えなくて、折りたたみ式の携帯電話を使っていた。
ちなみに私が携帯を持ったのは中学校を卒業してからだ。
新しい携帯には、両親と新しい高校と、由美の番号しか登録がない。
引っ越した先のアパートは二DKの築年数の古い物件だったけれど、学校が徒歩で十分の距離にあり、私はとても有り難かった。
妹も中学校が同じ位の時間で通える距離だったので、お互いに立地場所については文句なしだ。
バイトに関しては、学校側も成績が特に酷くない生徒については申請したら許可がおりるとの事だったので、土日祝日のお休みの午前中、近くのコンビニでバイトに励んだ。
学生の休日だけのバイト代なんて知れた金額だけど、当時の私は両親にバイト代の半分を毎月渡していた。
学費には到底及ばないけれど、少しでも家計の足しにして欲しい思いだった。
月によっては出勤日数も変わるから、金額は変動したけれど、残りのお金で自分の洋服や学用品を購入してやりくりをした。
親としては、子供に心配させたくない思いだったのかも知れないけれど、家計を圧迫させている事には変わらない。
両親は、引っ越しをして妹の医療費がかからなくなったから要らないと言って最初は受け取らなかったけれど、私の熱意が伝わったのか最終的には受け取ってくれた。
女子校と言う事で、他校の男子生徒との交流も殆どなく地味な私は、坂本の件で男性恐怖症になっており、大学も高校のエスカレーター式で短大に進学した。
五年間、先生やバイト先以外で家族以外の男性と接する機会もなく、地味な外見でいたおかげもあり、学生の頃にも合コンや彼氏がいた経験はない。
別に人生お一人様で終わる事になっても構わないとさえこの頃は思っていた。
結局五年間、私立の学校に通う事になり、短大時代は夏休み等の長期休暇に別のバイトもして、それなりに学生時代を謳歌した。
妹は私が当初入学を希望していた元住んでいた町にある県立高校の商業科に合格し、母が通学の足となっていた。
やはり学費やら寄付金等を差し引いてもガソリン代の方が安上がりだったので、早起きが苦手な妹も頑張って早起きしていた。
そして五年後、私が短大を、妹が高校を卒業した年の四月に両親はこの地を離れて県外の山奥にある温泉地の近くにある古民家を購入し、それまで賃貸にしていた元々住んでいた町の家を売却した。
だから私の実家の事は、中学の同級生は由美以外、誰も知らない。
妹も、両親と一緒に新しい土地に移り住み、温泉で湯治をしながら通信教育で色々な資格を取得している。
私は両親と昔から親交のあった税理士さんのご厚意に甘えて税理事務所に縁故就職し、現在に至る。
私はこの日は外部との接点を持ちたくなくて、朝から部屋のカーテンすら開けずに引きこもっていた。
昨日あれから母に連れられて病院へ行くと、風邪の診断を受けた。
今朝もまだ微熱があり、両親もそんな私の事を気遣ってか何も言わずにいてくれる。
私にニ歳年下の妹がおり、妹は重度のアレルギーがあり毎月病院に通っている。
ちょうど季節の変わり目には喘息の発作が出るので、吸入が欠かせない。
その為、我が家の家計は医療費が余計にかかる。
だから出来るだけ両親の負担にならない様に、県立高校に通いたかったのだ。
私の住む行政区は財政難なのか、医療費に関しての助成制度がかなり遅れており、中学生になった妹にかかる医療費は大人と同じ負担額になる。
そして処方される薬が割高なのだ。
ジェネリックの薬に変えてもらうも、妹の体質に合わなくて、ジェネリックではない高い医薬品を使っている。
私立高校のある隣町は逆に医療費の助成制度が充実しているとかで、高校を卒業する迄は医療費がかからない。
だから両親も、私のあの一件から真剣に引越しを考えている。
私も部活はせずに放課後や休日はバイトをして、少しでも迷惑をかけない様に考えていた。
今はちょうど異動の時期で、良い物件が見つからないとの事で、しばらくの間はみんな我慢する事になった。
四月を迎えて私は隣町の高校へ進学し、通学の為にそれまでよりも四十分早く家を出る事になった。
路線バスも運行しているけれど、通学時間に間に合わず、引っ越し先が決まるまでは自転車での通学となる。
妹も隣町の校区外の中学校に進学し、通学は母が家を引っ越すまで送迎をしていた。
四月下旬に引っ越しする事を目標に、家の中の荷造りを始めて要らない物を処分した。
この頃から両親は、将来は田舎の古民家に住む事を考えていたのだろう。
今住んでいる家を賃貸物件にして、最小限の荷物を纏めて当初の目標通りに連休中、隣町のアパートに引っ越した。
引っ越しの準備をしている時に友人である由美に偶然見つかってしまい、携帯の連絡先を無理矢理交換させられて現在に至る。
この当時はスマホなんて持たせて貰えなくて、折りたたみ式の携帯電話を使っていた。
ちなみに私が携帯を持ったのは中学校を卒業してからだ。
新しい携帯には、両親と新しい高校と、由美の番号しか登録がない。
引っ越した先のアパートは二DKの築年数の古い物件だったけれど、学校が徒歩で十分の距離にあり、私はとても有り難かった。
妹も中学校が同じ位の時間で通える距離だったので、お互いに立地場所については文句なしだ。
バイトに関しては、学校側も成績が特に酷くない生徒については申請したら許可がおりるとの事だったので、土日祝日のお休みの午前中、近くのコンビニでバイトに励んだ。
学生の休日だけのバイト代なんて知れた金額だけど、当時の私は両親にバイト代の半分を毎月渡していた。
学費には到底及ばないけれど、少しでも家計の足しにして欲しい思いだった。
月によっては出勤日数も変わるから、金額は変動したけれど、残りのお金で自分の洋服や学用品を購入してやりくりをした。
親としては、子供に心配させたくない思いだったのかも知れないけれど、家計を圧迫させている事には変わらない。
両親は、引っ越しをして妹の医療費がかからなくなったから要らないと言って最初は受け取らなかったけれど、私の熱意が伝わったのか最終的には受け取ってくれた。
女子校と言う事で、他校の男子生徒との交流も殆どなく地味な私は、坂本の件で男性恐怖症になっており、大学も高校のエスカレーター式で短大に進学した。
五年間、先生やバイト先以外で家族以外の男性と接する機会もなく、地味な外見でいたおかげもあり、学生の頃にも合コンや彼氏がいた経験はない。
別に人生お一人様で終わる事になっても構わないとさえこの頃は思っていた。
結局五年間、私立の学校に通う事になり、短大時代は夏休み等の長期休暇に別のバイトもして、それなりに学生時代を謳歌した。
妹は私が当初入学を希望していた元住んでいた町にある県立高校の商業科に合格し、母が通学の足となっていた。
やはり学費やら寄付金等を差し引いてもガソリン代の方が安上がりだったので、早起きが苦手な妹も頑張って早起きしていた。
そして五年後、私が短大を、妹が高校を卒業した年の四月に両親はこの地を離れて県外の山奥にある温泉地の近くにある古民家を購入し、それまで賃貸にしていた元々住んでいた町の家を売却した。
だから私の実家の事は、中学の同級生は由美以外、誰も知らない。
妹も、両親と一緒に新しい土地に移り住み、温泉で湯治をしながら通信教育で色々な資格を取得している。
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