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再会 1
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「おい、もしかしてお前、スイか……?」
高校時代の同級生の結婚式で、スイこと私、伊藤翠は、背後から声を掛ける高橋幸成の声に振り返った。
十年ぶりの再会だ。
高校の頃より身長が少し伸びて、当時はガリガリくんだった体型は、トレーニングをして鍛えたのか逞しくなっていた。
昔は細身のせいで制服のブレザーがブカブカだったのに、今着用しているスーツは身体のサイズに合っており、とてもよく似合っている。
「うん。久し振りだね、高橋くん」
「うわ、本当にスイだ。お前どうしたんだ? そんなに痩せて……」
高橋くんが驚くのも無理はない。今、目の前に立つ私は、十年前と比べて体型が激変していたのだ。
あの頃はちょっとぽっちゃり気味でも健康的に見えていた体型が、見る影もなくやせ細ってしまい、まるで別人のようだ。
頬の肉もこけ落ちてしまったけれど、化粧が苦手なせいで顔に成長がないからか、みんなすぐに私だとわかってくれる。けれどその変貌ぶりに、過去の私を知る誰もが驚きを隠せないといった感じで目を丸めている。
「あー……最近ちょっと怪我して入院してたんだ」
私は心配をかけたくなくて、精一杯のカラ元気で振る舞うも、高橋くんにはお見通しだったのだろう。
「……お前、ちゃんと食ってるのか? もしかして、無茶なダイエットとかしたんじゃないのか?」
高橋くんの心配気な表情に、私は急いでそれを否定した。
「ううん、それはない。私の性格知ってるでしょう?」
学生時代の私たちは、付き合っていると噂が立つくらい仲が良かった。学校ではいつも一緒に過ごしていただけに、お互いの性格を良く知っている。
当時の私は、色気よりも食い気、花より団子タイプの見た目女子力なんて全然興味のない残念女子だった。
そして高橋くんも、スイーツにしか興味のないオタク男子だった。
「あの頃はそうだったにしても、卒業してから環境が変わったら分からないだろう? ダイエット系は男も女も変にマウント取るやつとかもいるからな。それこそ、見た目のことをごちゃごちゃ言うような奴には絶対近寄るなよ。そいつはスイの中身なんて見てないからな」
当たらずとも遠からずな高橋くんの言葉に、翠は一瞬言葉に詰まった。
「うん、ありがとう。……そろそろ披露宴会場に移動しよう? 私、もうお腹ペコペコだよ。今日のご馳走、楽しみにしてるんだから」
私は、なんとか高橋くんの言葉に返事をすると、踵を返した。高橋くんも私の隣に並ぶと、一緒にチャペルを後にする。
こうやって二人で話をするのも、実に十年振りのことだ。高校を卒業してからは、お互い進路が違ったこともあり、疎遠になっていた。
一緒に並んで歩きながら、高橋くんがつい先ほど口にした言葉に、私は落ち込んでいた。
実は先日、私はの職場の先輩が、非常階段で先輩の同期とタバコ休憩をしながら話をしているのを偶然聞いてしまったのだ。
『伊藤ちゃんは仕事もできるし、性格も天然で面白いし、多分痩せたらかわいいと思うけど、今のあの体型じゃ恋愛対象としては見れないな』
一緒にいた先輩の友人も、この言葉を聞いて一緒になって笑っている。
これを他の人に言われたところで気にするような私ではないけれど、この発言をしたのが自分が新人の頃の教育担当だった先輩本人だったのだ。
仕事もできるしいつも優しくて、見た目も華やかでモテモテなのを鼻にかけなくて、密かに憧れていた。仕事面でも、いつかこの人みたいになりたいと尊敬していただけに、ショックは大きかった。
ああ、結局この人もみんなと同じで、女性を見た目だけ判断するんだ。きっと世の中の男なんて、みんな考えは同じだろう。かわいくてスリムな女子ばかりをチヤホヤして、ぽっちゃりには目もくれないんだ。
そう思うと、憧れの気持ちも一気に冷めてしまい、先輩に気に入られようと一生懸命仕事をしていたのもなんだかバカらしくなってきた。
高校時代の同級生の結婚式で、スイこと私、伊藤翠は、背後から声を掛ける高橋幸成の声に振り返った。
十年ぶりの再会だ。
高校の頃より身長が少し伸びて、当時はガリガリくんだった体型は、トレーニングをして鍛えたのか逞しくなっていた。
昔は細身のせいで制服のブレザーがブカブカだったのに、今着用しているスーツは身体のサイズに合っており、とてもよく似合っている。
「うん。久し振りだね、高橋くん」
「うわ、本当にスイだ。お前どうしたんだ? そんなに痩せて……」
高橋くんが驚くのも無理はない。今、目の前に立つ私は、十年前と比べて体型が激変していたのだ。
あの頃はちょっとぽっちゃり気味でも健康的に見えていた体型が、見る影もなくやせ細ってしまい、まるで別人のようだ。
頬の肉もこけ落ちてしまったけれど、化粧が苦手なせいで顔に成長がないからか、みんなすぐに私だとわかってくれる。けれどその変貌ぶりに、過去の私を知る誰もが驚きを隠せないといった感じで目を丸めている。
「あー……最近ちょっと怪我して入院してたんだ」
私は心配をかけたくなくて、精一杯のカラ元気で振る舞うも、高橋くんにはお見通しだったのだろう。
「……お前、ちゃんと食ってるのか? もしかして、無茶なダイエットとかしたんじゃないのか?」
高橋くんの心配気な表情に、私は急いでそれを否定した。
「ううん、それはない。私の性格知ってるでしょう?」
学生時代の私たちは、付き合っていると噂が立つくらい仲が良かった。学校ではいつも一緒に過ごしていただけに、お互いの性格を良く知っている。
当時の私は、色気よりも食い気、花より団子タイプの見た目女子力なんて全然興味のない残念女子だった。
そして高橋くんも、スイーツにしか興味のないオタク男子だった。
「あの頃はそうだったにしても、卒業してから環境が変わったら分からないだろう? ダイエット系は男も女も変にマウント取るやつとかもいるからな。それこそ、見た目のことをごちゃごちゃ言うような奴には絶対近寄るなよ。そいつはスイの中身なんて見てないからな」
当たらずとも遠からずな高橋くんの言葉に、翠は一瞬言葉に詰まった。
「うん、ありがとう。……そろそろ披露宴会場に移動しよう? 私、もうお腹ペコペコだよ。今日のご馳走、楽しみにしてるんだから」
私は、なんとか高橋くんの言葉に返事をすると、踵を返した。高橋くんも私の隣に並ぶと、一緒にチャペルを後にする。
こうやって二人で話をするのも、実に十年振りのことだ。高校を卒業してからは、お互い進路が違ったこともあり、疎遠になっていた。
一緒に並んで歩きながら、高橋くんがつい先ほど口にした言葉に、私は落ち込んでいた。
実は先日、私はの職場の先輩が、非常階段で先輩の同期とタバコ休憩をしながら話をしているのを偶然聞いてしまったのだ。
『伊藤ちゃんは仕事もできるし、性格も天然で面白いし、多分痩せたらかわいいと思うけど、今のあの体型じゃ恋愛対象としては見れないな』
一緒にいた先輩の友人も、この言葉を聞いて一緒になって笑っている。
これを他の人に言われたところで気にするような私ではないけれど、この発言をしたのが自分が新人の頃の教育担当だった先輩本人だったのだ。
仕事もできるしいつも優しくて、見た目も華やかでモテモテなのを鼻にかけなくて、密かに憧れていた。仕事面でも、いつかこの人みたいになりたいと尊敬していただけに、ショックは大きかった。
ああ、結局この人もみんなと同じで、女性を見た目だけ判断するんだ。きっと世の中の男なんて、みんな考えは同じだろう。かわいくてスリムな女子ばかりをチヤホヤして、ぽっちゃりには目もくれないんだ。
そう思うと、憧れの気持ちも一気に冷めてしまい、先輩に気に入られようと一生懸命仕事をしていたのもなんだかバカらしくなってきた。
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