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VERDEに込めた想い 1
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目が覚めると、幸成の喉仏が視界に映った。どうやら翠は行為が終わった後、疲れ果てて眠ってしまったようで、幸成が腕枕をしてくれている。寝室のドアはいつの間にか閉められていて、室内は常夜灯が点灯していた。先ほど幸成に激しく突かれた翠の身体は、ちょっと動くだけで下腹部に鈍痛が走る。下半身も日頃使わない筋肉を動かしたせいで、軽く筋肉痛だ。
翠は今の時間を確認したくて身体を動かしたその時、幸成の声が聞こえた。
「目が覚めた? 身体、大丈夫か?」
幸成が身体を動かして翠の顔を覗き込む。その表情は今まで見たことがないくらいに穏やかで、優しく翠を見つめている。翠がぎこちなく頷くと、幸成は翠の額にキスをした。
「無理させてごめんな。喉乾いてないか? それと、身体が大丈夫ならケーキ、食べるか? さっきお預け状態のままだったからな」
そうだ、幸成のケーキを毎日食べさせてくれる約束だったのにまだ今日は食べていないことに気づいた翠は、ゆっくりと身体を起こした。
「コーヒー淹れておくから、着替え済ませたらおいで」
幸成はそう言ってベッドから降りると、床に脱ぎ散らかした自分の服を身に着けて部屋を後にした。翠は幸成が部屋を出たのを確認すると、床に置いてある自分の服を手に取り、一枚ずつ身に着けた。
初めての後は腰が立たないとか、歩き方が変だとか聞くけれど、翠も下半身に違和感が残っているせいで例に違わず歩き方がぎこちない。見る人がみれば、初めてHをしましたと見抜かれそうだ。
翠は気を引き締めて、ゆっくりと寝室の扉を開け、ダイニングへと向かった。
ちょうどお湯も沸いてコーヒーを淹れたタイミングだったのか、部屋にはコーヒーのいい匂いが広がっている。
「いい匂い……」
「そりゃ、店のと同じ豆使ってるからな。で、ケーキはどのくらい食べる? 自分で好きな分カットするか?」
テーブルの上に、先ほどデコレーションしたケーキが置かれている。いつの間にか飾り切りされた果物と、銀色の粒……アラザンがふりかけられていた。
「この、バラの花の部分が食べたいな。あと、このハートの形にカットしてるいちごも欲しい」
翠は先ほど食事をとった席に座ると、ケーキを指差して食べたい箇所のリクエストをした。幸成はその言葉を聞いて、綺麗にケーキをカットするとバラの花の部分のケーキを器に乗せ、ハートのいちごも横に添えると翠の前に差し出した。
「さ、どうぞ召し上がれ」
コーヒーは、昨日お店で出されたソーサーがセットになっているコーヒーカップと違って、マグカップだ。ケーキ皿も、恐らく実家から持たされたと思われるレトロな柄のものに、翠はなんだかホッとした。
新築のモダンな造りの家にそぐわないチグハグな食器など、妙なところにこだわらない幸成らしさが垣間見ることができて、翠は笑みを浮かべると、ずっと気になっていたことを口にした。
「ねえ、お店の名前の由来って、なに? VERDEって、英語じゃないよね?」
改めていただきますをして、ケーキにフォークを刺しながら、翠は幸成に質問した。すると、幸成は心なしか顔色がほんのり赤らんだ。
「あ? 店の名前の由来? ……んだよ、これ、言わなきゃダメなのか……」
先ほどまでと一変して、幸成の語気は弱まっている。よほど口にしたくないのだろうか。でもそこで引き下がる翠ではない。キラキラとした目で見つめていると、幸成は観念したのか、大きな溜め息を吐いて、その重い口を開いた。
翠は今の時間を確認したくて身体を動かしたその時、幸成の声が聞こえた。
「目が覚めた? 身体、大丈夫か?」
幸成が身体を動かして翠の顔を覗き込む。その表情は今まで見たことがないくらいに穏やかで、優しく翠を見つめている。翠がぎこちなく頷くと、幸成は翠の額にキスをした。
「無理させてごめんな。喉乾いてないか? それと、身体が大丈夫ならケーキ、食べるか? さっきお預け状態のままだったからな」
そうだ、幸成のケーキを毎日食べさせてくれる約束だったのにまだ今日は食べていないことに気づいた翠は、ゆっくりと身体を起こした。
「コーヒー淹れておくから、着替え済ませたらおいで」
幸成はそう言ってベッドから降りると、床に脱ぎ散らかした自分の服を身に着けて部屋を後にした。翠は幸成が部屋を出たのを確認すると、床に置いてある自分の服を手に取り、一枚ずつ身に着けた。
初めての後は腰が立たないとか、歩き方が変だとか聞くけれど、翠も下半身に違和感が残っているせいで例に違わず歩き方がぎこちない。見る人がみれば、初めてHをしましたと見抜かれそうだ。
翠は気を引き締めて、ゆっくりと寝室の扉を開け、ダイニングへと向かった。
ちょうどお湯も沸いてコーヒーを淹れたタイミングだったのか、部屋にはコーヒーのいい匂いが広がっている。
「いい匂い……」
「そりゃ、店のと同じ豆使ってるからな。で、ケーキはどのくらい食べる? 自分で好きな分カットするか?」
テーブルの上に、先ほどデコレーションしたケーキが置かれている。いつの間にか飾り切りされた果物と、銀色の粒……アラザンがふりかけられていた。
「この、バラの花の部分が食べたいな。あと、このハートの形にカットしてるいちごも欲しい」
翠は先ほど食事をとった席に座ると、ケーキを指差して食べたい箇所のリクエストをした。幸成はその言葉を聞いて、綺麗にケーキをカットするとバラの花の部分のケーキを器に乗せ、ハートのいちごも横に添えると翠の前に差し出した。
「さ、どうぞ召し上がれ」
コーヒーは、昨日お店で出されたソーサーがセットになっているコーヒーカップと違って、マグカップだ。ケーキ皿も、恐らく実家から持たされたと思われるレトロな柄のものに、翠はなんだかホッとした。
新築のモダンな造りの家にそぐわないチグハグな食器など、妙なところにこだわらない幸成らしさが垣間見ることができて、翠は笑みを浮かべると、ずっと気になっていたことを口にした。
「ねえ、お店の名前の由来って、なに? VERDEって、英語じゃないよね?」
改めていただきますをして、ケーキにフォークを刺しながら、翠は幸成に質問した。すると、幸成は心なしか顔色がほんのり赤らんだ。
「あ? 店の名前の由来? ……んだよ、これ、言わなきゃダメなのか……」
先ほどまでと一変して、幸成の語気は弱まっている。よほど口にしたくないのだろうか。でもそこで引き下がる翠ではない。キラキラとした目で見つめていると、幸成は観念したのか、大きな溜め息を吐いて、その重い口を開いた。
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