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第7章
これは一体どういうことですか? 4
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「ちょっとごめんね」
私は弘樹に断りを入れてスマホの液晶画面を見ると、そこには徹也くんの名前が表示されている。
「え、え……ちょっ、待って。弘樹っ、どうしよう」
私はスマホを手に取ると、液晶画面を弘樹に見せた。弘樹は私のスマホを取ると、勝手に通話を始めた。
「もしもし」
弘樹はご丁寧に、スピーカーをオンにして、私にも聞こえるように会話を始めた。その一方で、話しをしながら私には口を開くなと、シーっというジェスチャーで黙らせた。
私は弘樹に従って、黙ってやり取りを聞くことにした。
『もしもし……って、え、これ……高田晶紀さんの携帯……ですよね……?』
明らかに戸惑っているのがわかる声だ。弘樹はそんなことお構いなしに話を続ける。
「ええ、晶紀の携帯です。初めまして、この前晶紀と一緒にいた白石と言います」
『ああ、晶紀の友人の……』
「そうです。先日は僕までご馳走になりましてありがとうございました」
『いえ、こちらこそ晶紀がお世話になりました。……もしかして今も晶紀と一緒にいるんですか?』
とりあえずは穏やかに会話が続いている。私は内心ハラハラしながら二人のやり取りを聞いていた。
「ええ、一緒にいますよ。先日のお店にいるんですけど、もしよろしければ、今からこちらに来られませんか?」
弘樹の発言に思わず声を上げそうになったけど、寸でのところで堪えた。徹也くんはどう答えるんだろう。本当にやってくるだろうか。
『わかりました。身支度整えたらすぐに行きます。すみませんが、晶紀が逃げないように引き止めておいてください」
そう言って通話は終わった。弘樹はニヤニヤしながらスマホを私に返した。
「あれ、多分急いでここに来ると思うよ。楽しみだなあ。多分、一緒にいたあの人も連れてくるよ」
自信たっぷりに言い切る弘樹に内心ムカつきながら、本当に二人一緒にやってきたらどうしよう。私は気が気ではない。
もしかして、婚約破棄を言い渡されるのかな……
しばらくして、アイスコーヒーと紅茶が運ばれてきた。
「昼飯食ってないんだろう? 大丈夫か?」
こんな状態のせいか、空腹を感じない。
そんな私の心情をわかっているくせに、平気で毒を吐く弘樹は優しくない。
「そんな、緊張するほどのことじゃないだろ」
「所詮、弘樹にとっては他人事でしょうけど、私は当事者なんだからね」
「はいはい……あ、来たんじゃない?」
弘樹が指差す店の入口に視線を向けると、そこに徹也くんがいた。
徹也くんと一緒だった女性と共に……
徹也くんがさっきの部屋着と違うのはわかるけど、連れの女性も服装が違う。
もしかして、徹也くんの部屋に着替え、持ち込んでたの?
私は弘樹に断りを入れてスマホの液晶画面を見ると、そこには徹也くんの名前が表示されている。
「え、え……ちょっ、待って。弘樹っ、どうしよう」
私はスマホを手に取ると、液晶画面を弘樹に見せた。弘樹は私のスマホを取ると、勝手に通話を始めた。
「もしもし」
弘樹はご丁寧に、スピーカーをオンにして、私にも聞こえるように会話を始めた。その一方で、話しをしながら私には口を開くなと、シーっというジェスチャーで黙らせた。
私は弘樹に従って、黙ってやり取りを聞くことにした。
『もしもし……って、え、これ……高田晶紀さんの携帯……ですよね……?』
明らかに戸惑っているのがわかる声だ。弘樹はそんなことお構いなしに話を続ける。
「ええ、晶紀の携帯です。初めまして、この前晶紀と一緒にいた白石と言います」
『ああ、晶紀の友人の……』
「そうです。先日は僕までご馳走になりましてありがとうございました」
『いえ、こちらこそ晶紀がお世話になりました。……もしかして今も晶紀と一緒にいるんですか?』
とりあえずは穏やかに会話が続いている。私は内心ハラハラしながら二人のやり取りを聞いていた。
「ええ、一緒にいますよ。先日のお店にいるんですけど、もしよろしければ、今からこちらに来られませんか?」
弘樹の発言に思わず声を上げそうになったけど、寸でのところで堪えた。徹也くんはどう答えるんだろう。本当にやってくるだろうか。
『わかりました。身支度整えたらすぐに行きます。すみませんが、晶紀が逃げないように引き止めておいてください」
そう言って通話は終わった。弘樹はニヤニヤしながらスマホを私に返した。
「あれ、多分急いでここに来ると思うよ。楽しみだなあ。多分、一緒にいたあの人も連れてくるよ」
自信たっぷりに言い切る弘樹に内心ムカつきながら、本当に二人一緒にやってきたらどうしよう。私は気が気ではない。
もしかして、婚約破棄を言い渡されるのかな……
しばらくして、アイスコーヒーと紅茶が運ばれてきた。
「昼飯食ってないんだろう? 大丈夫か?」
こんな状態のせいか、空腹を感じない。
そんな私の心情をわかっているくせに、平気で毒を吐く弘樹は優しくない。
「そんな、緊張するほどのことじゃないだろ」
「所詮、弘樹にとっては他人事でしょうけど、私は当事者なんだからね」
「はいはい……あ、来たんじゃない?」
弘樹が指差す店の入口に視線を向けると、そこに徹也くんがいた。
徹也くんと一緒だった女性と共に……
徹也くんがさっきの部屋着と違うのはわかるけど、連れの女性も服装が違う。
もしかして、徹也くんの部屋に着替え、持ち込んでたの?
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