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第8章
見た目に騙されてはいけません 1
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何であの人が一緒にいるんだろう。
やっぱり、この結婚は形だけで、あの人が本命なの?
二人の姿を見て固まってしまった私をよそに、弘樹は徹也くんに手を挙げて合図を送ると、徹也くんもそれに気づき、こちらへとやってくる。
「遅くなってごめん」
私たちのテーブルを見て、器がないことに気づいた徹也くんは、表情を曇らせた。
「もしかして、お昼、何も食べてないのか? 何か軽く摘みながら話をしようか。晶紀、ちょっと奥に詰めてくれる?」
徹也くんの言葉に、私は荷物を寄せて奥に移動すると、私の隣に徹也くんが、そして弘樹の隣に連れの女性が座った。
私と弘樹が隣に座るのも変だし、婚約者だから私と徹也くんが並んで座るのはわかるけど、見ず知らずの女性と弘樹が並んで座るのもおかしな話だ。
改めて斜め向かいに座る彼女を見ると、スラリと背が高く、ほっそりとしている。先ほどまで寝乱れていた髪の毛はサラサラになっている。
肌もきちんと手入れが行き届いており、女性の私から見ても綺麗な人だと認めざるを得ない。
二人が席に着くと武志さんがグラスに水を入れてやってきたので、徹也くんはアイスコーヒーを二つとパンケーキを頼んだ。
武志さんがオーダーを取り、退席すると、おもむろに弘樹が口を開いた。
「改めましてですけど、こうして面と向かってお話しするのは初めてですね。僕、晶紀の友人で白石弘樹と言います。先日、そちらのお連れさんには晶紀のことを紹介されてましたが、晶紀は紹介がなかったですよね。加えて昨日は徳井さんの部屋で一夜を明かしたとか。お二人はどのようなご関係ですか?」
弘樹はにこやかに、でもズバリと聞きたいことを口にする。私はギョッとしながらも、徹也くんの返事が気になって、徹也くんを見つめた。
「ああ、君が白石くんか。晶紀の婚約者候補だった……」
は……? 私の婚約者候補……? 何それ私一言も聞いてないんですけど!?
徹也くんが発した衝撃的な内容に、私は驚いて言葉が出ない。弘樹の顔を見ると、何かを企んでいるのかニヤニヤとした表情を浮かべている。
「今はあなたが晶紀の婚約者なんですから、そんなことどうでもいいですよ。……それより、そちらの女性はどのようなご関係で? お泊まりするくらいだからそれなりに親密な間柄なんじゃ?」
いつもにも増して、私たちの友情に口を挟むなと言わんばかりに挑発的だ。昔から、色んな人たちから私たちが付き合っていると誤解されるのも、弘樹がこのような態度だからということも否めない。
やっぱり、この結婚は形だけで、あの人が本命なの?
二人の姿を見て固まってしまった私をよそに、弘樹は徹也くんに手を挙げて合図を送ると、徹也くんもそれに気づき、こちらへとやってくる。
「遅くなってごめん」
私たちのテーブルを見て、器がないことに気づいた徹也くんは、表情を曇らせた。
「もしかして、お昼、何も食べてないのか? 何か軽く摘みながら話をしようか。晶紀、ちょっと奥に詰めてくれる?」
徹也くんの言葉に、私は荷物を寄せて奥に移動すると、私の隣に徹也くんが、そして弘樹の隣に連れの女性が座った。
私と弘樹が隣に座るのも変だし、婚約者だから私と徹也くんが並んで座るのはわかるけど、見ず知らずの女性と弘樹が並んで座るのもおかしな話だ。
改めて斜め向かいに座る彼女を見ると、スラリと背が高く、ほっそりとしている。先ほどまで寝乱れていた髪の毛はサラサラになっている。
肌もきちんと手入れが行き届いており、女性の私から見ても綺麗な人だと認めざるを得ない。
二人が席に着くと武志さんがグラスに水を入れてやってきたので、徹也くんはアイスコーヒーを二つとパンケーキを頼んだ。
武志さんがオーダーを取り、退席すると、おもむろに弘樹が口を開いた。
「改めましてですけど、こうして面と向かってお話しするのは初めてですね。僕、晶紀の友人で白石弘樹と言います。先日、そちらのお連れさんには晶紀のことを紹介されてましたが、晶紀は紹介がなかったですよね。加えて昨日は徳井さんの部屋で一夜を明かしたとか。お二人はどのようなご関係ですか?」
弘樹はにこやかに、でもズバリと聞きたいことを口にする。私はギョッとしながらも、徹也くんの返事が気になって、徹也くんを見つめた。
「ああ、君が白石くんか。晶紀の婚約者候補だった……」
は……? 私の婚約者候補……? 何それ私一言も聞いてないんですけど!?
徹也くんが発した衝撃的な内容に、私は驚いて言葉が出ない。弘樹の顔を見ると、何かを企んでいるのかニヤニヤとした表情を浮かべている。
「今はあなたが晶紀の婚約者なんですから、そんなことどうでもいいですよ。……それより、そちらの女性はどのようなご関係で? お泊まりするくらいだからそれなりに親密な間柄なんじゃ?」
いつもにも増して、私たちの友情に口を挟むなと言わんばかりに挑発的だ。昔から、色んな人たちから私たちが付き合っていると誤解されるのも、弘樹がこのような態度だからということも否めない。
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