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第二章
看病と、距離の縮まり 1
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数日後、藤堂さんが子どもの体調不良を理由に欠勤した。
社内で運用しているチャットを開くと、「本日、総務部の藤堂係長はお休みです。至急の用件はほかの者で対応します」と書かれた総務部からのメッセージが飛び込んできた。
私は藤堂さんのお子さんの容体が気になって、仕事中も心がそわそわしてしまう。
定時を迎えると、スマホを握りしめたまましばらく悩み、思い切って先日連絡先を交換した通話アプリにメッセージを送った。
『松下です。突然のご連絡すみません。お子さんの体調が悪いと聞きました。お見舞いに行ってもいいですか?』
送った瞬間、心臓がどくんと大きく跳ねる。無理やり連絡先を交換した上に、こんなふうに自宅へ押しかけるようなメッセージを送り、迷惑だったらどうしよう。そんな思いが強かった。
しかし数分後、短く『助かります』と返ってきた文字に、胸の奥が温かくなった。
何かお見舞いで持って行くものや必要なものはないかと問うメッセージに、特に必要なものはないとの返事だったけれど、私は途中にあるドラッグストアで、経口補水液とゼリーを購入した。
藤堂さんの家の場所を地図で送ってもらい、それを頼りに私は藤堂家へ向かう。
玄関のインターホンを押すと、少し疲れた顔の彼が出迎えてくれた。
リビングのソファでは、小さな男の子が毛布にくるまってぐったりしている。
「真一、会社の松下さんだよ。この前絵本を拾ってくれた優しいお姉さんがお見舞いに来てくれたよ」
藤堂さんが私のことを紹介しても、真一くんは力なく首を動かすだけだった。
真一くんは熱があるのか、顔が赤い。
私はキッチンを借りて、簡単に温められるスープを作り、薬を飲ませる手伝いをした。
藤堂さんが用意していたレトルトのおかゆを、真一くんは一口ずつ口に運びながら、ゆっくりと嚥下する。
子どもって本当に弱々しくなるんだな、と胸が締めつけられる。
「本当に助かりました。……ありがとう」
片付けを終えると、藤堂さんがそう言って、私に深く頭を下げた。
その目の奥にある安堵と感謝の色を見て、私は言葉が出なかった。
* * *
それから数日後の休日、私たちは三人で動物園に行った。
金曜日に藤堂さんから通話アプリで『よかったら明後日の日曜日、動物園へ行きませんか?』とメッセージを受信した時、私はわが目を疑った。
あれから元気を取り戻した真一くんが、「この前のお姉ちゃんと遊びたい」とねだったらしい。
晴れ渡る空の下、真一くんはキリンに夢中になり、私の手をぎゅっと握っては「ほら、あれみて!」と笑顔を向ける。
藤堂さんがそんな真一くんを見守る横顔は、とても優しかった。
ふと、その光景の中に自分が溶け込んでいることに気づき、胸の奥が熱くなる。
社内で運用しているチャットを開くと、「本日、総務部の藤堂係長はお休みです。至急の用件はほかの者で対応します」と書かれた総務部からのメッセージが飛び込んできた。
私は藤堂さんのお子さんの容体が気になって、仕事中も心がそわそわしてしまう。
定時を迎えると、スマホを握りしめたまましばらく悩み、思い切って先日連絡先を交換した通話アプリにメッセージを送った。
『松下です。突然のご連絡すみません。お子さんの体調が悪いと聞きました。お見舞いに行ってもいいですか?』
送った瞬間、心臓がどくんと大きく跳ねる。無理やり連絡先を交換した上に、こんなふうに自宅へ押しかけるようなメッセージを送り、迷惑だったらどうしよう。そんな思いが強かった。
しかし数分後、短く『助かります』と返ってきた文字に、胸の奥が温かくなった。
何かお見舞いで持って行くものや必要なものはないかと問うメッセージに、特に必要なものはないとの返事だったけれど、私は途中にあるドラッグストアで、経口補水液とゼリーを購入した。
藤堂さんの家の場所を地図で送ってもらい、それを頼りに私は藤堂家へ向かう。
玄関のインターホンを押すと、少し疲れた顔の彼が出迎えてくれた。
リビングのソファでは、小さな男の子が毛布にくるまってぐったりしている。
「真一、会社の松下さんだよ。この前絵本を拾ってくれた優しいお姉さんがお見舞いに来てくれたよ」
藤堂さんが私のことを紹介しても、真一くんは力なく首を動かすだけだった。
真一くんは熱があるのか、顔が赤い。
私はキッチンを借りて、簡単に温められるスープを作り、薬を飲ませる手伝いをした。
藤堂さんが用意していたレトルトのおかゆを、真一くんは一口ずつ口に運びながら、ゆっくりと嚥下する。
子どもって本当に弱々しくなるんだな、と胸が締めつけられる。
「本当に助かりました。……ありがとう」
片付けを終えると、藤堂さんがそう言って、私に深く頭を下げた。
その目の奥にある安堵と感謝の色を見て、私は言葉が出なかった。
* * *
それから数日後の休日、私たちは三人で動物園に行った。
金曜日に藤堂さんから通話アプリで『よかったら明後日の日曜日、動物園へ行きませんか?』とメッセージを受信した時、私はわが目を疑った。
あれから元気を取り戻した真一くんが、「この前のお姉ちゃんと遊びたい」とねだったらしい。
晴れ渡る空の下、真一くんはキリンに夢中になり、私の手をぎゅっと握っては「ほら、あれみて!」と笑顔を向ける。
藤堂さんがそんな真一くんを見守る横顔は、とても優しかった。
ふと、その光景の中に自分が溶け込んでいることに気づき、胸の奥が熱くなる。
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