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5話
しおりを挟む「髪色ね、いっぱいあったから悩んじゃって…美容師さんにナギちゃんの写真見せて同じ色にしてくださいって言ったの。だから、……お揃い……なんだけど。ごめんねナギちゃん。勝手にお揃いにして…」
「え?そうだったの?そんなの全然いいよ」
私は湧き出た高揚感に包まれながら笑った。髪色は似ていると最初から思っていたがまさか同じにしてくるとは。昔から私を頼る癖がついている綾乃は本当に愛らしく感じた。綾乃は困ると私を一番に頼るという変わらない事実が私に優越感を与える。
「よかった。ありがとうナギちゃん」
安心そうに笑った綾乃に私は抑えられない笑みを浮かべる。
「綾乃とお揃いなんか高校に入ってからなかったから逆に嬉しいよ。あ!そうだ。綾乃も髪を染めた事だし早速似合いそうなアレンジ教えてあげようか?」
綾乃が私を嬉しくさせてくるからもっと可愛くしてあげたい。綾乃はすぐに頷いた。
「うん!教えてナギちゃん!」
「んー、じゃあ、明日綾乃はバイト?」
私は好都合だと思いながら尋ねた。綾乃も私もバイトをしているが明日はどうだろう。
「明日は休みだよ」
「じゃあ、今日うちに泊まりに来なよ?私は明日午後からバイトなんだけどそれまで髪やったりしようよ?」
綾乃とお泊まりは高校に入ってからほとんどしていない。久しぶりのお泊まりの誘いに綾乃は二つ返事で答えた。
「うん!じゃあ、私帰って荷物取ってくる」
「うん。待ってるね綾乃」
「うん。お泊まり久しぶりだねナギちゃん」
「そうだね。めっちゃ楽しみ」
「私も」
嬉しがる綾乃には本当に顔が笑ってしまうがもっと私に近付けて私色にするのがこれで早められた。このお泊まりでもう少し綾乃を変えてやろう。
私は楽しみに思いながら家の近くで一旦綾乃と別れた。
綾乃はそれからすぐにやって来た。荷物を持って普段着に着替えてきた綾乃を家に上げると私達はご飯を食べて風呂に入る。それから早速嬉しそうにする綾乃の髪を編み込みながらアレンジをしてあげた。
「こうやって前髪の方の横の髪を大きめに編み込んでくんだけど…前髪も一緒に編み込んでも可愛くなるよ。それであとはピンで止めて、まとめた髪をアイロンで巻くとこんな感じ。可愛くない?」
私は綾乃の髪をいじりながらアイロンで髪を巻いて鏡で見せた。今日は低い位置でポニーテールにして片側だけアクセントになるように編み込んであげた。それにまとめた後ろの髪を巻いてあげたからふわふわしていてちょっと上品な女の子って感じにできたと思う。
綾乃は鏡を見て目を輝かせて喜んだ。
「うん……。可愛い…!」
やっぱりなと思いながら私は笑った。綾乃がどんな感じが好きかなんて分かっている。お洒落なんか自分からするタイプじゃなかったけど、小さい時は絵本のプリンセスに憧れていたし綾乃は言わないけど綺麗より可愛い方が好きだ。
「でしょ。これ本当可愛いよね」
「うん。これ一人でもできるかな?」
「できるできる。今直してあげるからやってみな?」
「うん!」
私は髪をほどいて元通りにすると見やすい位置に鏡を置いてあげた。すると綾乃は張り切って髪をアレンジしだしたが髪をまとめて少し編み込んでから手が止まってしまった。
「ナギちゃん、ここの編み込みってどうやってやるんだっけ?」
「ん?えっとね…」
分かんなくなってしまった綾乃に私は自分の髪の毛束を適当に分けて手に持つと見せながら教えた。
「こんな感じかな……」
いつも自分の髪でやってるし人にもやる時がある私はささっと編み込んだら綾乃は慌てて止めてきた。
「ま、待って!早いからゆっくりやって?」
「え?えっとね、こうして、こうして……こうかな?」
綾乃の言った通り要望を叶えて上げると綾乃はまた自分の髪を編み込み出した。
「うん。ありがとうナギちゃん。違ったら困るから見ててね?」
「うん。頑張ってね綾乃」
私は頑張る綾乃を笑いながら見つつ時折助けてあげた。こんな事で熱心になって真面目にやるなんて昔の綾乃じゃ考えられなかった。綾乃はいつも遠慮するし誘っても断っていたのに恋をするとこうも変わるのか。……本当ムカつくな。私は内心のイライラを隠しながら私の教えた通りに髪をアレンジした綾乃を誉めてあげると聞いてみた。
「綾乃はさ、啓太と付き合いたいんだよね?」
綾乃はそんな質問だけで面白いくらい動揺していた。
「え?それは、その、…私は、仲良くできればいいよ……」
「えぇ?啓太は彼女いないんだよ?それでも仲良くしてるだけでいいの?」
こんなに努力して変わっているのに本音がそれだなんてありえない。啓太に関する情報を教えてやると綾乃は恥ずかしそうな顔をした。
「……それは、それは、……付き合えたら……いいなとは思うけど……」
「やっぱり付き合いたいんじゃん。それじゃ告白しないとじゃない?」
努力しているのに望まないやつはいない。私は健気な綾乃に笑いながら言うと綾乃はちょっと悲しそうな顔をした。
「……告白なんか……できないよ……」
「なんで?」
私は分かりきっているのに綾乃に訊いた。
「だって、…私じゃ無理だよ。……私、ナギちゃんみたいに可愛くないし、楽しくないし、……緊張して言えないよ」
綾乃は変わってきているのに昔からの性格が邪魔をしている。まぁ、綾乃じゃそう思うよなと醒めた心で思いながら私は優しい幼馴染みを演じた。
「大丈夫だよ綾乃。綾乃こんなに髪も可愛くできるし、話すのも楽しいから大丈夫。私が助けてあげるから告白しようよ?」
告白する気にしないと綾乃を汚せない。私は綾乃の頭を優しく撫でながら囁いた。
「絶対うまくいくよ。綾乃は可愛いから平気」
「……でも、告白なんかした事ないし……啓太君かっこいいから、他に好きな人いるかもしれないし…」
言い訳をする綾乃は表情が暗い。でも、この顔をするなら私の言う事は聞く。私は適当に嘘を交えながら話した。
「啓太は今好きな人いないって言ってたから今がチャンスだよ。啓太が他の人と付き合ったら嫌じゃないの?」
「それは……やだけど……」
「じゃあ告白しようよ?すぐじゃなくていいからもっと啓太に意識してもらってから言えば付き合えるよ。私がいるんだから平気」
さぁ、動け。優しく頭を撫でながら心で呟いた。これで動けば私が一番になれる。私は嘲笑いながら綾乃の返事を待った。
「……ナギちゃんが助けてくれるなら……告白したい……」
私はその返答に事がうまく運んでにやけそうになりながら笑った。あいつが好きなくせに私がいないと何もできない綾乃がいじらしく感じる。もうここで先に唾をつけておこう。綾乃は私のものだ。私は優しく罠にかけた。
「うん。じゃあ頑張らないとだけど、……綾乃はキスもエッチもまだだよね?」
「え?……うん。まだ、した事ない……」
恥ずかしそうに告げる綾乃に私は少し大袈裟に言った。
「そっか。ちょっとそれだけまずいかもよ?こんな事言いたくないけど経験ないとめんどくさいって思われるかもしれないし」
私を信じきっている綾乃は困った顔をする。それが異様に可愛らしく見えた。私の適当な嘘に惑わされて単純なやつだ。
「な、なんで?」
「だって、高三で初めてじゃちょっと遅い気がするから相手からしたら重くて面倒なんじゃない?」
「……そ、そうなんだ…。…どうしたらいいのかな、ナギちゃん……」
どんどん暗くなる表情は見ていてたまらない。付き合わせる気はないし、絶対に誰にもやらないのに想像して落ち込む綾乃が滑稽で笑い出しそうになる。しかし私は綾乃の頼れる幼馴染みのポジションを使って笑いながら甘く囁いた。
「じゃあ、……練習してみる?」
「練習?」
「うん。キスくらいなら女同士でもするから私が付き合ってあげるよ。私なら平気でしょ?」
私にすがるような目を向ける綾乃は動揺をしていた。
「で、でも、女の子同士だよ?」
「そうだよ。でも、女ならカウント入らないし、皆キスくらいしてるから平気だよ」
綾乃の動揺なんか容易く消せる。だって何も知らないんだもん。私は安心させるように教えてあげた。
「私は真奈とかとした事あるし今時普通だよ。全然おかしくないし、もし付き合った時にちゃんとできなくて幻滅されたら嫌でしょ?綾乃」
「うん。そうだけど……でも、恥ずかしいし……うまくできないよ…」
本当に恥ずかしそうに視線を逸らしてしまった綾乃に私は初めて胸が締め付けられた。なんて可愛いんだろう。可愛くて可愛くて早く染めてやりたい。私はもう嫌がらないと踏んで綾乃に顔を近づけた。
「大丈夫だよ綾乃。私が教えてあげるから。最初は恥ずかしいかもしれないけどしてれば慣れるし」
「本当に?ナギちゃん」
「本当だよ」
「うん……」
私は話ながらもう綾乃が待ちきれなかった。早く、早くキスがしたい。私が初めてになりたい。笑いながら綾乃を待っていたら至近距離にいる綾乃は意を決したように強く目を閉じた。そして私を誘うかのように言った。
「ナギちゃん……キス…して?」
キスだけで緊張したような面持ちをして私を待つ綾乃に顔が勝手ににやけてしまった。疑いもせずに私の言う事を聞いて受け入れてしまう綾乃が可愛くて仕方ない。私はいいよと言って軽くキスをしてあげた。
「どう?平気でしょ綾乃」
したかったキスの感触よりも信じられないくらい独占欲が満たされて笑ってしまう。綾乃の初めてになった私に綾乃は今まで私に見せなかった顔をした。
「うん。……でも、でも、ドキドキするよ……」
「ふふふ。もうちょっと慣れるように頑張んないとね。もう少ししてあげる」
顔を赤くしてちょっと泣きそうにも見えるくらい恥ずかしがっている綾乃は私を高まらせた。綾乃もこんな顔するんだと思うと嬉しくて楽しくて顔が勝手に笑ってしまう。この優越感に気分がいい。こんな顔をさせられるなら綾乃は私の手の中だ。
私は恥ずかしがる綾乃に軽く何回かキスをしていたら綾乃は私を呼んできた。
「んっ、……ナギちゃん」
「ん?綾乃どうしたの?」
キスをやめると可愛らしい綾乃は小さな声で呟いた。
「ナギちゃんだから安心するけど…やっぱり緊張する」
「そんなに緊張する?」
この状況で私を高まらせないでくれと思うのに綾乃は恥ずかしそうに私を見つめた。
「うん。……ナギちゃん近いし、キスした事ないから……ドキドキして…」
「キスするんだから近くなるよ。これも慣れないと付き合ったらもっと恥ずかしいよ?」
「うん……。ナギちゃん、もう少し……して?」
「うん。もうちょっと練習しよっか」
騙されているのに私に求める綾乃に私は小さく笑ってまたキスをした。
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