エゴイスト

神風団十郎重国

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15話

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「綾乃痛くなかった?」

「はぁっ、はぁっ、はぁ、……んっ、うん。……平気」

私に強く抱きついて荒く息をする綾乃に優しく尋ねた。
綾乃の体に触れて綾乃に気持ちいいか訊きながら行った行為は綾乃が数回イったところで終わりにした。
綾乃の初めては随分と気持ちいいもので終わった気がする。綾乃は最初からずっと恥ずかしがっていたが同時に気持ち良さそうに顔を歪めていた。
できないと言っていた行為を拒絶する事も、不安に思う事もなく最後まで受け入れたのだ。

私はそんな綾乃に触れて、初めてしている時に嬉しい気持ちになった。いつもとは違う幸福的な気分ににっこり笑いながら私は綾乃の隣に体を横たわらせた。

「もう平気だね綾乃。感じてる顔可愛かったよ」

私は綾乃に一番に触れて優しく快楽を植え付けた。興奮に負ける事もなく私は本当に優しく綾乃としたのだ。労るように優しく頭を撫でると綾乃は息を整えながら私に視線を向ける。

「……すごく恥ずかしかったよ……」

「でもできたし、可愛かったよ。これもしていけば慣れるよ。怖くなかったでしょ?」

「うん……」

「ふふ。じゃあ大丈夫だよ」

「……ナギちゃん」

「ん?」

乱れた服装のまま綾乃は私に体を向ける。制服のボタンは全て外れていて中に着ていたキャミソールもスカートも少しくしゃくしゃになっている。だが、そこから見える肌が白くて綺麗で、私の欲を増幅させようとしてくる。

「……男の人とする時は……やっぱり痛い?」

「え?それは、……相手によるんじゃない?」

綾乃の不安は完全には無くなっていない。私は綾乃のしっとりとした手に触れた。二人でした方が何倍も気持ち良かったのに、私はくだらない付き合いをしていたのを思い出した。

「自分本意なら痛いし嫌だけど思いやりがあるなら別だよ。それに、そんなおっきいやつとかいないから大丈夫だよ。ただ、エロ本とか見すぎて勘違いしてるやつはいるからそれがちょっと引くかもね。変な事言ったり、したりくるから」

「……ナギちゃんは、その時どうしてた?」

「ん?私は引いて萎えてやめてた。そんな事されたらする気にならないもん。なんかエロい事言わせたいのかな?みたいな事してきたりするのって気持ち悪いとしか思わないもん。だから、綾乃は嫌だったら嫌だって言っていいんだよ」

私は綾乃の綺麗な手を撫でてから頬に触れる。まだ赤みがかった顔は可愛らしいが私の綾乃に容易く触れられないように綾乃に言って訊かせておこう。

「無理矢理しようとしたり何も言わないくせに流れでしようとしてきたりする事もあるから嫌なら嫌って言いなね?勿論ちゃんと訊いてくれる人もいるけど綾乃は合わせる必要はないんだよ。綾乃の気持ちが大事なんだから綾乃はその時の気持ちをちゃんと言いなよ」

「……うん。うまく、……言えるかな……?」

「んー?言えなかったら逃げてもいいんだよ。訊かないやつとか経験ないやつほど変に勘違いしてるから。しかもそういうやつに限って強引だったりするからむしろ逃げた方がいいかも」

「……うん」

適当に何人か付き合ってみて分かったのがこれだ。本当自分で言っててくだらないって思うけど、何であんな勘違いして顔色読めないしやる事しか考えてないんだろう。自分がされたら嫌だろ普通。
まぁ、私の綾乃にはそんな経験はさせない。綾乃は私としかこの先もやらないし、綾乃は私が一生可愛がってやるんだ。アホしかいないのに触らせる訳ねーだろ。

「綾乃」

私は自信の無さそうな顔をする綾乃を呼び掛けてキスをした。選ぶ権利は綾乃にある。私以外は選ばせないけど綾乃には自分で理解して私を選ばせてやる。

「綾乃は可愛いし、キスもエッチも良かったから自信持って?もう絶対平気だよ付き合っても」

「……でも、私、……ナギちゃんじゃないと……怖い……」

すぐそばにいた綾乃は少し視線を下げると私に自分からすり寄ってきた。そして言葉通り弱々しく私の服を掴む。

「ナギちゃんが……私を応援して……色々してくれて嬉しいけど……相手がナギちゃんじゃないって思うと……なんか、怖い……」

「なんで?綾乃の事が本当に好きなら優しくしてくれるから大丈夫だよ」

はぁ、綾乃の言葉は私に笑いを誘う。この調子だ。このままいけば私の思惑通りになるはずだ。きっと綾乃はその時に私が好きだったって気づくはずだ。早くその時が来てほしいと心を喜ばせながらも私は綾乃を優しく抱き締める。


「……うん。でも、なんか、ね、……怖くなっちゃった……」

「もしかしたら初めてしたからそう感じてるのかもよ?でも、大丈夫だよ。大丈夫」

「……うん……」

私の励ましに綾乃は私の胸に顔を埋めるように顔を擦り寄せた。今度のこれは不安じゃない。これは洗脳に近いものだ。私が一番に優しく触れて愛してあげたんだから、私と同等のものを求めるようになる。優しくて、いつも気遣ってくれる欲の欠片すら見えないものを。だから必然的に私以下は切り捨てるようになるだろう。

だってそれ以外は怖いし嫌なものだもの。



綾乃としてから私は綾乃とキスだけをする関係を続けていた。綾乃はあれから私を少し意識したのかたまに恥ずかしがっていたがキスはもうよくできるようになった。また、体育祭の練習では変わらない様子だがもう頃合いだろう。綾乃は体育祭が終わったらデートに行く約束を啓太としたらしい。という事は、そろそろ行動に移すのだろう。私はそれを見計らって啓太が綾乃とデートに行く前に仕上げをしようと思う。

もう私だって待ちたくない。綾乃は私の綾乃だもん。気に食わないものをずっと見ているなんて我慢の限界だ。



それなのに、バカな綾乃は私を不用意に焚き付けた。
事の発端は体育祭当日だった。朝から快晴で日差しが強い中競技をしていくものの綾乃は私達とは違ってほぼリレーの種目に出ていた。これに関しては仕方ないと思っていたが最後の目玉であるクラス対抗のリレーが私を一気に不快にさせた。
リレー結果から私達のクラスは勝って皆それには喜んで盛り上がった。でも、綾乃が、綾乃が嬉しそうに啓太とリレー終わりに話していたと思ったらハイタッチをしていてそれが以前の怒りよりも酷い怒りを感じた。

私は自分を隠して制御できているのに、綾乃としてから独占欲は底知れないものになったようだ。私の綾乃に馴れ馴れしく触るなよ。やれそうだからやりたいだけだろ。黒い気持ちは私の仮面を壊すように私を支配しようとしてくる。

怖いって言ってたくせに、私じゃないとって言ってたくせに……笑ってんじゃねーよ。


私は体育祭終わりに皆で向かった打ち上げのカラオケでもずっと不快だった。綾乃は私の隣にいるけれど綾乃の隣には啓太がいて楽しそうに話をしている。
あぁ、本当殴ってやりたいくらいだよ。人のものに手を出そうとしやがってふざけんなよ。



でも、それよりも私の怒りは綾乃に向いていた。
綾乃の事は大好きだよ?だって、綾乃は昔から私のものだし、私に頼らないと生きていけないような可愛い女の子だもん。全てにおいて控え目な綾乃はおどおどしている事が多かったけど、笑うとえくぼができて可愛らしくて、私はその顔が大好きだった。
綾乃は私の前ではよく笑って嬉しそうにしてくれていたし、何でも話してくれて私に従ってついてきた。

それなのに、それなのに……知り合って間もない男を好きだって言って私に向けるよりも嬉しそうに笑う。


はぁ、なんで?なんでだよ。

綾乃は好きなのに、私が一番綾乃の全てを知っていて大好きなのに……その嬉しそうな顔が大っ嫌い。


本当に嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い。
私以外にそんな顔する綾乃は嫌い。
顔を綻ばせて嬉しそうにするのは私にだけ。
私だけを特別にしないなんて……おかしいだろ。
綾乃は好きって勘違いしておかしくなってしまったのか?

もう、見ていられなかった。

私としたくせに、私に全て委ねて全てを見せてくれたのに……。私だってさぁ、私だって……もう無理だよ。


「ナギちゃん、私ちょっとトイレ行ってくるね」

拳を強く握りしめた私に綾乃は小さく言うと席を立った。私はそれを見て隣にいた富田に適当に席を立つための口実を作った。

「富田タンバリンとかあった方が盛り上がると思うから私持ってくるね」

「え!ナイス!ありがとうナギ!あっ、さっきロシアンルーレットたこ焼き頼んだから来たら皆で食べよ!」

「うん」

私は笑って席を立つと急いで綾乃を追いかけて声をかける。もうこの怒りを自分でどうにかするなんて無理だからムカつく綾乃にぶつけてやる。

「綾乃!私もトイレ行きたいから一緒に行こ」

「え?うん。いいよ」

私の怒りになんて綾乃はまるで気づいていない。好きだけど本当にバカでムカつく女だよ。私は笑いながら一緒にトイレに入ると、空いていたトイレの個室に入ろうとする綾乃と一緒の個室に入った。

「え?……ナギちゃん?えっと、……どうしたの?」

綾乃は困惑しているが私は後ろ手で鍵を閉めて綾乃に笑いながら近寄る。

「早くしなよ。トイレしたいんでしょ?見ててあげるから」

「え、でも……」

綾乃はまだ理解できていない様子だったが私は綾乃にもう一度言った。嫌がったって今日は無理だよ。私はにっこり笑いかける。

「ほら、早くしなよ綾乃」

「ナギちゃん……いきなり、どうしたの?……からかってるの?」

「え?からかう訳ないじゃん。前に恋人っぽくしよって言ったじゃん」

「で、でも、……トイレだし、……そんな……」

困惑して動揺する綾乃にイライラが増して、私はトイレの壁を思いきり叩いた。これ以上イライラさせんじゃねぇよ。私はイラつきを抑えながら綾乃に言った。

「さっさとやれって言ってんじゃん。私の言う事訊けないの?」

「……う、ううん。分かったから……」

綾乃はいつもと違う私の態度に驚いて怯えていた。

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