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17話
しおりを挟む「……なんでもないよ」
「本当に?」
「うん。本当だよ…」
ちょっと困ったような顔をする綾乃は何でもなくはなさそうだった。私は綾乃の髪を全部解いてから綾乃を後ろから抱き締めた。こういうのもしばらくできないのかと思うと離したくなくなる。私は綾乃の顔を覗き込みながら言わない綾乃に尋ねた。
「綾乃なんなの?何でもなくないでしょ」
「……ナギちゃん怒らない?」
私を見る目は言葉と共に不安に染まっていく。あの事なのか、何を言いたいのか分からないが私は優しく答えてあげた。
「怒んないよ。なに?」
「あのね、……こないだ、……なんで、怒ってたのかなって……思って……。私、……ナギちゃんに嫌われたくないから……悪いところがあったら教えてほしいの」
「……ふーん。そっか」
綾乃は訊きたかったけど訊けなかったのか。まぁ、これはこれでちょうどいいのかもしれない。もう今日で終わりにする予定だったし私もそろそろやろうと思っていた。私はにっこり笑いかけた。
「そんなに知りたいの?」
綾乃は必死そうに頷いた。
「うん。知りたい。私、いつもナギちゃんに頼ってばっかりだし、ナギちゃんに嫌な思いさせたりしたくない……」
「そっか……」
本心で言っている綾乃には長らく嫉妬心を燃やされて大変だった。嫌な思いなんかあの日から散々したよ。私はあの日から綾乃に嫌な思いをされ続けてる。私は笑いながら教えてあげた。
「私ね、綾乃のせいでずっと嫌な思いしてたよ」
「え…?」
不安と困惑が混じった顔は見ていてワクワクしてしまう。あぁ、なんなんだろうこの高揚感。綾乃は体を私に向けてきた。
「な、何が嫌だった?……やっぱり、私……ウザかった?」
「そうじゃないよ。綾乃は可愛くて大好きだよ。……だから、すっごいムカついてたの」
「……どういう意味?」
ここまで言っても綾乃には分からない。私の気持ちなんか自分で察するのは不可能だろう。私が隠して大切にして汚してきたのだから。
私は不安げな顔をする綾乃の頬を撫でた。可愛い可愛い綾乃にはまた演技をして教えてあげよう。私はいつもの笑顔を張り付けて申し訳なさそうに口を開いた。
私の綾乃に分からせてやるために。
「私、綾乃が好きなの。恋愛的な意味でね。最初は本当に応援してたけど、気付いたら好きだったんだなって思って、……それで嫉妬してたの。それに、キスもその先も綾乃のためにって言いながら私のためにしてた。……ごめんね?」
「……それ、……本当なの?ナギちゃん…」
信じられないような表情をする綾乃に私は苦笑いして頷いた。隠しながら、嘘をつきながら綾乃には教えてやる。今このタイミングで言うのに意味があるのだから。
「本当だよ。私は綾乃が大好きだよ。……でも、諦めてるから返事とかしなくていいから。私にこんな事いきなり言われても困るでしょ?私は女だし、綾乃は啓太が好きだし。……今までごめんね綾乃。キスとか……体触ったりとか……本当にごめん。……私、親友として最悪だよね」
「そ、そんな事……ないよ。ナギちゃんは今まで私のためにいろいろしてくれたもん。……キスとかは私がしてほしいって言ったし……ナギちゃんの気持ちは驚いたけど、最悪じゃないよ…」
私を擁護するような綾乃はあくまでも親友としての私は嫌っていないようだった。全部私のためで、私が誘導したのにバカな綾乃だ。だけど、これは受け入れてやらない。受け入れてしまっては意味がない。私はずっと綾乃に私を選ばせる気しかないのだ。私はすぐに否定した。
「最悪だよ。親友とか言っといて綾乃に何したか分かってる?私、綾乃といると我慢できないの。こないだも嫉妬してあんな事しちゃったし、……最低だよ人として。でも、もう綾乃にそんな事しないよ。学校ではしょうがないけど綾乃には極力近づかない。私に好意向けられてもキモイだろうし軽蔑したと思うからさ」
「でも、ナギちゃん私は……」
「ねぇ、綾乃。嫌だったら嫌って言って?」
「え?ナギちゃん……んっん…」
私は綾乃の言葉を遮って綾乃に強引にキスをした。これが最後となると名残惜しくて堪らない。私は綾乃が逃げられないようにキスをしながら床に押し倒した。
綾乃は唇を離すと私を不安げに見つめる。この状況でも拒否をせず私を受け入れた綾乃は私を完全に嫌いにはなれないのだろう。だからそれを利用する。
この最後の楽しみを私に味わわせてくれ。
「ごめんね綾乃。もう今日で終わりにするから今日だけ綾乃に触れさせて?もう明日から綾乃には関わらないし、こんな事しないから……」
綾乃の目を見て私は罪悪感を感じている風を装った。これは私のものなんだからどうにかする権利は私にあるけど綾乃の記憶に残すためには重要な演技だ。
綾乃は顔色を変えずに少しだけ目を逸らした。
「……」
なにも言わない綾乃はいろいろな気持ちが入り交じっているのだろう。でも、私を拒絶している色は見えない。態度からも、表情からも綾乃は私が好きだと言い出してからそれを表さない。……まぁ、そうだよね。私に依存してるんだもん。憧れの私に最初から依存してるんだから嫌いになんかそう簡単になりはしない。
「綾乃ごめんね。大好きだよ」
私は何も言わない綾乃にキスをした。綾乃はそれでやっと私を見てくれたけど何も言わなかった。拒否する事もなければキスを受け入れて私をただ見つめた。私はその瞳を真っ正面から見つめた。瞳に恐怖はない。私に対しての嫌悪感もない。綾乃はいつものように困っているのだろう。私がこんな事を言ってくるから。それに綾乃はいつも私を否定しないからできないのかもしれない。
そこにいつも漬け込んでいるのは私なのだが。
私は否定も何もしない綾乃を最初にしたように優しく抱いた。丁寧に、本当に優しく触れて綾乃の体を味わった。私はその時に何度も綾乃に愛を囁いた。
一方、綾乃は私に騙されていたというのに快楽の色を見せて感じていた。啓太が好きなくせに、私の気持ちも知っているくせに私を受け入れて果てていた。それは堪らなく私を興奮させて心を満たしてきた。
これでこれからの接し方が変わってしまうけれど綾乃に刻んでやった私の証は大きい。
その日はしてから綾乃に改めて謝って綾乃とは別れた。
それでも綾乃は最後までなにも言わなかった。
言えなかったのかもしれないけれどもうこれで直接的にやるべき事は終わった。
あとは距離を取って綾乃の反応を楽しもうか。
まだ私のものに完璧にはできないけど、綾乃を見て楽しむのも悪くない。きっと離れれば綾乃は私について来ようとするはずだ。自発的に昔からそればかりしていたんだから。
次の日の休みはバイトをして翌日は学校に行くためにいつもの時間に家を出ると家の前には綾乃がいた。朝は一緒にずっと行っているから待っていたんだろう。綾乃は私を見て戸惑いながら話しかけてきた。
「ナギちゃんおはよう…」
「おはよう綾乃」
戸惑う綾乃は見るからに困っていた。朝はいないかと思っていたがいるなら拒絶するまでだ。これから私は綾乃を突き放さないとならない。仕上げは終わったからあとは距離を取って待つだけだから。
「もう待ってなくていいよ?私の気持ち知ってるでしょ?普通に綾乃からしたらキモイだろうし、接したくもないと思うから朝一緒に行くのやめよう」
「え?……でも……」
私は綾乃の言葉を無視して歩きだした。これも綾乃を私のものにするために欠かせない行動だ。綾乃はすぐに隣に並んできた。
「待ってナギちゃん…!あの、私、ナギちゃんの事そんな風に思ってないし、今までみたいに一緒に行きたい…」
「なんで?別に無理しなくていいんだよ?」
私は足を止めて笑いかけた。綾乃は戸惑って不安そうな顔をしていたが私の目的の前では関係ない。
「私は無理なんか…」
「ねぇ、綾乃。私もう関わらないって言ったじゃん。綾乃困るだろうし、私にああいう事されて嫌だっただろうからもう関わらないようにするってだけだよ?綾乃は私に言いずらいだろうし、私がこうしたいだけだから。別に学校では今まで通り接するけどもう二人でいたりするのはやめるってだけだから問題ないでしょ?」
「それは、そうかもしれないけど…」
「じゃあ、いいじゃんそれで。もうそうしてこう?もう朝は待ってなくていいから」
綾乃になにか言われる前に決めて会話を終わらすと私は綾乃をおいて一人で歩きだした。もう綾乃は隣には来なかったけど悲しそうな顔をしていた。
それが私には笑えてしょうがなくて朝から機嫌が良かった。
綾乃は私に離されるのを不安に思っている。
いい調子だ。私が狙った通りだ。早く私のものにして可愛がってやりたいけどまだ時間はかかる。
学校に着いてからはいつものように過ごした。真奈や富田と笑って話して、そこに綾乃も混ぜてあげて四人で話したりお昼を食べたりした。
綾乃は私を窺うように見ていたし、私が話しかけると動揺していたけど皆には私達の変化はバレていない。
誰にもバレないように立ち回るなんて造作もないからこのまま上手くやる予定だが帰りになって綾乃は自ら話しかけてきた。
「な、ナギちゃん?あの、今日はバイト?」
もう帰ろうと準備をしていたら綾乃は急いで様子を窺うように私の元にやってきた。
「ん?今日はないけど」
「じゃ、じゃあ……一緒に帰ろう?」
不安げな誘いを私は笑って断った。
「あぁ、今日は無理。今日は寄りたいとこあるからごめんね。また今度一緒に帰ろう?」
「そっか、……うん。分かった…」
明らかに悲しそうな顔をする綾乃は可愛らしくて堪らない。触れたいのに触れられないのは切なく感じるが、この表情は見ているだけでも気分がいい。
「じゃあね、綾乃」
「…うん。じゃあねナギちゃん……」
私は綾乃と別れて帰路についた。
綾乃に言ったのは嘘だけどこうやって距離をもっと取っていかないと計画が水の泡だ。早く綾乃に触れたいが離さないと計画が上手くいかない。
それから家に帰って次の日の朝も綾乃はまた待っていた。
「ナギちゃんおはよう…」
綾乃はそう言って昨日と同じように戸惑いながら話しかけてきた。
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