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19話
しおりを挟む「…私は無理なんかしてないよ?ナギちゃんを見てたのは気になるからで、ナギちゃんと仲良くいたいから……」
「……ふーん。そっか。でも、もう無理だよ。私もう綾乃と一緒にいたくないもん。前に言ったでしょ?」
「……でも、ナギちゃんは私の事好きでいてくれてるんじゃないの?」
涙を拭う綾乃の返答じゃ楽しめなくて、私は申し訳なさそうに更に突き放した。
「そうだからやだって言ってんじゃん。私が悪いけどさ、綾乃といると罪悪感感じるの。それに、別に私といるのに拘らなくたって皆では一緒にいるんだからいいでしょ?皆でいるのと何か違う?」
「……そんなの、全然違うよ…」
「そうかな?どこら辺が違う?分かるように説明してよ?」
さぁ、どうするの綾乃。私は赤い目をする綾乃に足を止めて訊いた。綾乃の反応が心待ちだ。だけどすぐには答えは来なかった。
「……」
黙ってしまった綾乃は言葉に困っているようだった。まぁ、こんなに問い詰めたりした事ないし答えられなくても無理はない。残念な反応だった。
楽しみにしていた分期待が裏切られて落胆してしまう。今は受け入れられなくて故意的に触れられないからその分玩具として楽しませてほしいのに。綾乃を突き放す行為事態以前はやらなかったから少しやりすぎたか……。
いつもの笑顔は崩さずに、私は内心ため息を着いて綾乃の頭を撫でた。
「綾乃ごめんね。なんか、問い詰めるような感じだったよね?ごめん。私前より綾乃を意識しちゃっててさ……」
「ううん……」
「私さ、あれからずっと後悔してたんだ。綾乃が好きだからって、綾乃に気持ちも言わないで最低だなって……。本当に後悔した。今日も泣かしちゃったし……やっぱりもう二人でいるのやめよう」
「それはやだよ……。私、もう泣かないからナギちゃんといたい……」
私を悲しげに見る綾乃ははっきり否定してきた。
さっきは理由を言えなかったくせにここでは否定するのは何なんだろう。綾乃は私の手をおずおずと握ってきた。
「……あのね、私、本当にナギちゃんのおかげで経験になったし、ちゃんと謝ってくれて反省もしてるなら許すよ?あれは私もしたいと思ってたし、ナギちゃんが全部悪い訳じゃないよ……。そもそもあれは全部……嫌じゃなかったし……」
「……綾乃がそう言ってくれてもあれはよくないよ。やった事が最低だもん…。好きだったとしてもダメだよ」
「でもね、私も……ナギちゃんと同じ立場だったらああいう事したかもしれないから……。だから、ナギちゃんを嫌だなって思ったりとかしてないよ?ナギちゃんはいつも優しかったし、無理矢理何かしてきたりしなかったもん……。私の事、考えてくれていろいろ教えてくれたし、ナギちゃんは昔からずっと私と仲良くしてくれたし……。ただ、今は本当に私を好きでいてくれてるんだって、驚いて、動揺してる……。私を好きって……最初は信じられなかったから…」
弱い心は同調したのか。話を聞きながらそう解釈した。ずっと優しい私を演じていたからそれが効いたのだろう。私を悪いとすら思わないなんて、綾乃はどこまでも私にハマってしまっている。
私は苦笑いをして握られた手を握り返した。
「……本当に嫌じゃないの?」
「うん。嫌じゃないよ。嫌じゃないから……前みたいに仲良くしてたい。正直ね、ナギちゃんの気持ちには……何て言ったらいいか分からないの。私は啓太君が好きだし、ナギちゃんは大切な幼馴染みで、私にとっては本当に大事だから……答えられないけど、離れたりとかしたくないよ……」
綾乃はいつになく真剣に言ってきた。私との関係を維持したい綾乃は答えない選択を選んだようだ。依存する相手がいなくなるのは綾乃の考えにはないみたいだから。
……それなら、ここは違う手に出ようか。
「そっか……」
今言わないのは構わなかった。必ず言わせる予定だから気にもしていないし。だが、綾乃がこうも私を受け入れていると欲が出てしまう。可愛い綾乃を強引に今すぐ私のものにしてやりたいが今はこの欲だけ通そう。今少し我慢しとかないと楽しめなくなってしまうし。
「ありがとう。綾乃がそこまで言ってくれるなら今まで通り仲良くしたいけど前に比べたら距離は空くと思う。私はどうしても綾乃を意識しちゃうし、罪悪感もあるから前とは距離とかが少し変わるかもだけど、それでもいい?」
「うん。いいよ。ナギちゃんがこれからも仲良くしてくれるなら私はそれでいいよ。私の方が……都合が良い事言ってるもん」
「都合が良いのは私だよ」
綾乃と握っていた手を離して空気に合わせて顔色を変える。綾乃はすぐにまた手を握ってきた。
「そんな事ないよ?ナギちゃんにそんな風に私は感じないもん……」
「うん。ありがとう綾乃」
離されてしまうのを察知したから綾乃はこんなにもはっきりした物言いをするのか、見ていて快感だった。
私を手放せない綾乃に優越感を感じる。
本当に最高だなぁ……。声を出して笑いたい気分だよ。
可愛い綾乃を見ていたら綾乃は安心したような顔をしたのに涙を流した。
「綾乃?」
「あっ……!これは違うよ?ナギちゃんと元通りになれて安心しただけだから。……私、もしかしたらもうナギちゃんと今までみたいにいれないかもって不安だったから……」
慌てて涙を拭う綾乃は困ったように笑った。依存に気づいていない綾乃が無様に思えて内心笑ってしまう。
だけどそんな事は思わせないように口を開いた。
「ごめんね綾乃。私のせいで……」
「ううん。ナギちゃんのせいじゃないよ。あの、ね……、私、嬉しくは思ってるんだよ?何て言えばいいか分からないけど……ナギちゃんにそこまで好かれてたんだって……嬉しく感じたよ。ナギちゃんは、私の憧れだから……」
「……あんな事したのにそんな事言われると困るよ」
「で、でも、……本当、だから……」
視線を下げてしまう綾乃の気持ちに機嫌が良くなった。
そうだ、こうやっていつも私の機嫌を取るようにも今後躾ていこう。依存心をつついてやれば綾乃は自発的にこういう事もするはずだ。今もそれに近い行いをよくしているし、こういう綾乃を見ていると満たされた気分になる。
「ありがとう綾乃。それより話してたから学校もう遅刻じゃない?時間かなりヤバイよ」
「え?本当だ……。どうしよう……」
一緒に時計を確認したがこのまま行っても間に合わないのは確実だった。だが、今日は気分が良いし行かなくても良いだろう。もうすぐテストだから授業もそこまで進まない。私は綾乃の手を引いた。
「綾乃今日はサボらない?ちょっと二人でどっか遊びに行こうよ?」
「え、でも、授業が……」
「大丈夫だよ。テスト範囲は分かってるし、そんな進まないよ。だから今日はなんか食べたり買いに行ったりしない?綾乃と今まで通りいれるならそういう事したいんだけどダメ?」
もう前みたいに私から綾乃には触れないが綾乃の表情を見ていたい。見ているだけで支配できている感覚を味わわせてよ。綾乃は可愛らしく笑った。
「ううん。いいよ。本当はサボるのダメだけど、私もナギちゃんと遊びたい」
「うん。よかった。じゃあ、まずはお茶でもしに行きますか?綾乃と前に行ったカフェの新作のフラペチーノ出たから飲み行こ?」
「うん!こうやってお出掛けするの初めてだねナギちゃん。なんか、サボるのも初めてだからワクワクする」
「ふふふ。そうだね。ほら、早く行こう?」
綾乃は嬉しそうに笑って頷いた。
それから私達は電車に乗って学校とは真逆の方向に向かった。綾乃は昨日とは打って変わって嬉しそうにいつものように話しかけてくる。私を窺う時のような顔をしない綾乃は前みたいになれていると思っているようだった。私が壊したのにその私に嬉しそうにする綾乃に私は笑っていた。
なんにも分かっていないんだね綾乃。
依存のせいで正常な感覚を失くしているのになぜ気付かないんだろう。最初からずっと一緒にいたからだろうか?私への幻想がここまできても壊れないなんて……。綾乃は私の本当の気持ちを知ったらどうなるんだろう。
綾乃を支配したくて、可愛らしく顔を歪ませたいだなんて言ったら綾乃は信じるのだろうか。
笑う綾乃を見ながらふと考えていたら綾乃は私に尋ねてきた。
「ナギちゃん、カフェの次はどこ行く?」
それはお目当てのカフェについてから新作のフラペチーノを飲んでいた時だった。
「んー……どこがいい?綾乃は行きたいとこある?」
「うーん……、私はナギちゃんが行きたいとこでいいよ?」
「私も綾乃が行きたいとこでいいけど?」
嬉しそうな綾乃に笑いかけながら言う。綾乃はいつも私に決めてもらおうとする。だけど今日は綾乃の意見が聞きたい。自分の意見があまりない綾乃は珍しく控え目に提案してきた。
「じゃあ、……また、一緒に服見に行きたい……」
「服?まぁ、いいけど。啓太とデート?」
「え?……それは、違うけど……」
「ふーん。あれからどうなったの?付き合った?」
最近の綾乃の行動を私はあれから知らない。
もうデートはしたと思うけどどうなったのだろう。
綾乃は気まずそうに小さく首を振った。
「付き合ってないよ……」
「なんだ、まだか。もう絶対いけると思うから頑張ってね綾乃」
「……うん……」
笑顔でいつもみたいに言ったのに綾乃は表情を曇らせる。私を気にしているような顔に維持悪く笑いそうになるが、優しく笑った。
「私の事は気にしなくていいよ綾乃。まぁ、完全に気にしないのは無理かもしんないけど相談とか悩みがあれば今まで通り聞くし、私はちゃんと割り切ってるから」
「……うん。……ねぇ、ナギちゃん」
「うん?なに?」
綾乃の表情は硬い。それが何なのか珍しく察しがつかなかった。何かしらあったのだろうか?あったらあったで面白いし、事は進めやすいが内容が気になる。私は綾乃の暗い表情に内心楽しみに思いながら待った。
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