俺は小悪党でいい!

黄ばみばなな

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ゆる〜い修行生活

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 修行に加わってから1年があっという間に経過した。
 俺の修行生活はとても充実している。
 氣の量を増やす訓練では、氣を身に纏わせて限界まで消費するという訓練なのだが、限界を超えると失禁糞尿を漏らして気絶するという情けないものであるため、気絶寸前で終えるようにしている。先輩弟子たちの大半は漏らしている。世話人たちが処理するときの顔がキツイのを物語っている。
 氣を纏う訓練では、指先や走る際に使う筋肉など身体の特定の部位に纏うことができるようになり、今は体外の物、例えば武器に氣を纏わせる訓練をし始めた。
 あまり目立って期待されないために、弟子の中でも真ん中の実力だと思われるように試合を行っている。

 人間関係も意外と良好だ。
 俺から話しかけることは少なかったけど、彼ら彼女らは友好的でとても助かった。コミュ症だから助かった、マジで。
 同性の弟子たちからは、気軽に声を掛けられ、肩を組んでくるほどに。
 合同トレーニングをしたり、色恋話をしたり、身近な物事で賭けをしたり。
 頻繁にヒーロー活動に誘われるのはイヤだったけど。
 異性の弟子たちからも信頼は得られている。
 その中でも黒髪ロングで耳にトゲトゲしたピアスをしている寡黙な少女ミライと性格がツンツンしてる金髪ポニテの少女リッカと交流が深い(と俺は思っている)。
 休憩中によく話したり、皆で食べる料理を一緒に作ったり。
 頻繁にヒーロー活動に誘われるのはイヤだったけど。

 先輩弟子以外の人たち、バルカンさんや世話人たち、後輩弟子たちとの関係も悪くはない。
 ダンネは世話人で、同じ世話人の少年のケニーと恋仲らしい。ダンネは過去に誘拐されたほど可愛く、見た目は超清楚。彼女を恋い慕う同性の弟子たち野郎どもは多く、ケニーに嫉妬の感情を向けている。

 あと最近、俺にも専属の世話人がついた。誘われて嫌々参加した野盗狩りで助けたホルンという少年だ。最初少女と思うほど可愛らしい見た目をしていたため、少年と知り、何かの扉が開きそうになった。ホルンは俺をとても慕っており、自身の部屋には俺をデフォルメしたぬいぐるみ(ホルン自作)が数体飾られている。いや、愛が重いって。

 さらに、俺の卓越性アレテーである物を異空間に収納できる能力に名前がついた。
 皆は自分のアレテーに名前をつけているらしく、名付けていない俺の能力を皆で考えることになった。
 俺はどこぞの超有名漫画の道具にちなんで「異次元ポケット」を提案したが、「ダサい」「強さを感じられない」「ナメてる?」など即却下された。
 かなりの時間をかけ、俺のアレテーは「災厄を以て希望を成す扉パンドラ」になった。
 厨二すぎるって。俺この名前口に出したくないって。
 皆もしかしてアレのことでまだ怒ってる??当てつけ?
 俺が野ウサギとかリスとかシマエナガみたいな鳥を食糧として捕獲したら、皆はペットとして可愛がってたんだよな。当時そんなこと知らなくて解体して皆に料理として出したんだよな、「これうさぎのシチューです」って。あのときの皆の顔はすごかったな~。


 そんな感じで俺は楽しくゆる~い修業生活を送っています。





 俺はバスク、バルカン師父のもとで修業をしている弟子のひとりだ。

 1年ほど前、師父が新たに弟子を連れてきた。その弟子の名は、ジャド。
 当初は彼の身体は痩せこけて弱々しい感じだったが、彼の眼からは底が測れない、得体の知れない恐怖を感じた。それが第一印象だった。

 関わってみると、どこか落ち着きがあって冷静で門下生俺たちと同じく目標を見据えた覚悟を持ったヤツだとわかった。

 修行では天才とは言えないが、覚えが良く、努力を欠かさない秀才だった。
 本来ならば特定の部位に氣を纏うのに数年もかかるものだが、ジャドは1年で習得した。

 試合では、勝敗が五分五分だったが、俺といった上位の実力のある者たちからは手加減していることはすぐに分かった。多分、いや、ほぼ確実にジャドも上位層こちら側だろう。

 救助活動でジャドの強さ凄みを知った。
 彼は、環境調整ゲームメイクがとても上手い。視野がとても広いのだ。
 この前の厄災獣狩りでは、彼が煙幕を用いて撹乱を行い、各個撃破しやすい状況を作り出した。それだけではない。参加した者たちの戦闘方法に合わせて優位に戦えるように動いていた。
 ジャド本人の実力も相当だ。状況に合わせて武器を変え、常に優位な立ち回りをしている。

 いつしか俺はジャドに同じ師の弟子という立場から戦友ともという認識に変わっていた。
 ジャドがともに戦ってくれるのであれば、平和な時代は築ける。
 ミカン、君が望んだ誰も悲しまない、傷つかない世界を達成できる日は遠くはない。見ていてくれ、俺とラカンの活躍を…。





 リッカアタシは、ジャドアイツに好意を寄せている。…もちろん、異性としてのね。
 髪型はフェードのオールバック、目の下には隈があり、身体もガリガリで覇気があまりなくて頼りなさそう、というのがアイツへの第一印象だった。
 関わっていくうちに頼りなさそうという印象から、よく分からないという印象に変わっていった。
 だってアイツは他の奴らみたいにダンネとか女性の世話人にデレデレしないし、夢とか目標もアタシたちには詳しく語ってくれないし。

 バルカン師父の弟子になったら、バルカン師父も男弟子も性差による対応はあまりしない。女弟子アタシたちは女性らしさや女性として生きていくことを捨ててまで、やらなければいけないことがあるから。それはアタシたちも納得しているつもりだった。なのに………。
 ジャドはなんでアタシを女の子扱いするのよ!?
 アタシが動けなくなったときにお姫様抱っこしてくるし、重いもの持ってたら半分くらい持ってくれるし、救助活動でアタシのことよく誘ってくるし!(でもアタシの方から誘うことの方が多いけど)
 あー!もう!意識しちゃうじゃない!!
 意識しすぎてアイツには少し強く当たっちゃう!
 女性として生きていく道を諦めたはずなのに!アイツのせいで!化粧も最近するようになっちゃったじゃない!!
 くそくそくそ!優しくて、強くて、家事も自分でやれるし、スペック高いじゃない!!
 それなのにアイツは全然表情も態度も変わんないのよね!
 もっと可愛くなってアイツの赤面を見てやるんだから!








 こんな生活がいつまでも続くと俺も皆も思っていた。

 この頃はまだ誰も思っていなかった。

 時代が動き出すことに。

 それも、平和な時代にではない。

 より狂気的で、残酷で、悲惨な暴力の時代が加速し始めるなんて。

 きっかけは、俺が弟子入りしてから十数年が経った頃だった。

 バルカンさんが突然いなくなったのだ。

 
 
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