【長編版】婚約破棄と言いますが、あなたとの婚約は解消済みです

りーさん

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14. 領地視察 2

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 ライル王国では、雪を見ることはありませんでした。
 わたくしは都で育っていたのですが、都は年中を通して暖かく、雨はそれなりにありましたが、それが雪となることはまずなかったのです。

「エリスは、雪を見たことがないのか?」
「はい!とても美しいですわ……」

 わたくしがほうと感嘆していると、ルークがわたくしをじっと見てきます。
 そして、一言。

「喜ぶのはいいけど、寒くないのか?」

 そう言われたとたんに、わたくしの体はぶるっと震えました。
 雪に興奮していて、寒さを忘れていたようね。

 わたくしはボソボソと呪文を唱えて、体を保温する魔術を使いました。
 体はぽかぽかとして、寒さは感じなくなっています。

「保温魔術が使えるなら、最初から使っておけよ」

 ふっと鼻で笑うルークに、わたくしはむっとして返します。

「寒い場所だなんて知りませんでしたもの。ルークが親切に教えてくださればよかったのですわ」
「僕のせいだって言うのか?」

 そう言って睨み付けてくるルークを、わたくしも睨み返します。

「わたくしのせいではありませんわ」

 そのまましばらく睨みあっておりましたが、養父さまが「それくらいにしろ」と仲介に入り、その場は静まりました。

「ひとまず、屋敷に入ろう。先触れは出しているから、部屋の用意は終えているはずだ」
「先触れを出している割には、迎えがいませんが……?」

 通常、領主一族を出迎えるとなると、相応の人手を要するはずなのですが、決して狭くはない庭には、一人も見当たりません。

「少し早く来すぎたか……?」

 そう呟きながら頭を抱える養父さまに、わたくしは小さくため息をつきます。

 養父さまの予想は当たっていたようで、玄関口に現れたわたくしたちを、使用人たちが慌てて出迎えました。

「公爵さま!こんな早くお見えになるとは……!」
「正午までに来ると先触れを出したはずだが」

 そんな曖昧な表現ではわかりませんわよ、養父さま……!
 正午まで、まだ三時間ほどあるのですから。

「申し訳ございません。部屋の用意はできておりますので、どうかお許しください」

 出迎えた使用人たちも同じようなことを思っているのか、複雑そうな顔を浮かべております。ですが、主に意見する勇気はないようで、ただ謝罪の言葉を口にするだけでした。

◇◇◇

 使用人の案内で、わたくしは用意された部屋へと向かいます。
 その部屋は、公爵邸の部屋よりも手狭ではありますが、内装のきらびやかさは、公爵邸と大差はありませんでした。

 わたくしは、こちらのほうが好きかも。

「いい部屋ね。用意してくれてありがとう」
「ご満足いただけて何よりでございます」

 使用人は、恭しく頭を下げます。わたくしの事情は聞いているでしょうから、どのような態度を取られるかと気になっていましたが、杞憂に終わったようですわね。

 一安心すると、どっと疲れが襲ってきました。少し休みたいけど……時間はあるかしら?

「ねぇ、今日の日程を知っていたら教えてくれない?」
「本日は、昼食の時刻まで予定はないと聞いております」
「なら、わたくしは少し休むから、しばらく一人にしてくれるかしら。昼食の時間になったら呼びに来てちょうだい」
「かしこまりました」

 使用人は、すぐにわたくしの言葉に従い部屋を出ていきました。
 わたくしは軽く一息つき、ベッドに寝転がると、そのまま数分もしないうちに眠りこけていました。
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