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公爵令嬢?それがどうした!
第1話 転生
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「ただいまー」
ボロアパートの部屋の一室に響く私の声。奥の方から、小さくお帰りの声が聞こえてくる。
リビングに行って、荷物を置く。自分の部屋なんてものはない。こんなボロアパートに部屋がいくつもある訳がない。あるのは、リビングと小さめのキッチン。お風呂場とトイレくらいだった。
本当は、もう少し良い所に住みたい。せめて、物置くらいでも良いから、部屋が欲しい。でも、そんな事は言えなかった。うちは母子家庭だからだ。
父親は、私が幼い頃に亡くなったらしい。狭いリビングに不釣り合いな仏壇があるので、嘘ではないだろう。
その仏壇にも手を合わせて今日は何があったのか話している。これが私の日常だ。
こんな感じだから、学校でも私に対する扱いは良いものではない。そこまで酷くはないけど、いじめもあったし、友達なんてゼロに等しい。
親も、そんな子供を止めたりしない。世の中は不公平だ。片親は育ちがしれないとか言うけど、それは差別じゃないのか。なんで男が女を下に見るのはダメなのに、両親が揃っている家庭が片親の家庭を見下すのは許されるんだ。
好きで女や男に生まれた訳じゃないって言うけど、それを言うなら、私だって望んでこんな貧乏な所に生まれた訳じゃない。選べるんだったら、お金持ちの家を選んでたわ。
でも、母が苦労しながらも自分を育ててくれたのは事実なので、貧乏な事に心の中ではウダウダ言いつつも、直接言った事はない。
「お母さん、何すれば良い?」
「洗濯物を畳んでおいてくれるかしら?」
「分かった」
母が大変なのは子供ながらも分かっている。本当は、助けを求めたいのかもしれない。でも、父に盲目レベルで惚れ込んだという母は、再婚しようなんて意思は微塵も感じられない。
だからといって、私をいい加減に育てる事もしない。私が私立の中学校に受験したいと言った時も、反対せずに、受験料を出してくれたし、高校に行きたいと言った時も、たとえどんなに高くても、入学費や授業料も出してくれた。
だから私も、出来るだけ家事は手伝っている。少しでも節約をするために、洗濯機は使っていない。料理も、調味料を一から作っている。母いわく、その方が安く済むらしい。調理器具も、本当に必要な物だけ買っている。
お金があればなぁ……将来は絶対に玉の輿に乗ってやるんだから!
そんな節約節約の日々を過ごしていたら、一本の電話が入る。
相手は同じクラスで、数少ない友達のかおりだった。用件は、家に遊びに来ないかとの事。
断る理由なんてある訳ないじゃない!
「お母さん、今から遊びに行っても良い?」
「どこに行くの?」
「かおりの家!」
母の返答も聞かずに、玄関を飛び出していく。
私がこんなにワクワクしているのは、かおりの家にはゲームがたくさんあるからだ。最近は、学校で少し話題になっている乙女ゲームにハマっている。
その乙女ゲームは前作があって、そのゲームはもう全てのルートを攻略し、新作の方も全部終わらせている。なので、2周目に入ろうかと思っている所だ。もうあんまり覚えていないし、初見の気持ちでプレイ出来る!!
───そう思っていた矢先、私は交通事故にあった。居眠り運転だったらしく、道をそれて私の方に突っ込んできた。
何か騒いでいる声がする。死んだらどうしよう。私はお金持ちになるまで死ぬ訳にはいかない……の……に……
「!」
ハッとなって、目を覚ます。
あれからどのくらい時間が経ったんだろう。まだ意識が朦朧としている。
でも、目は見えているので、辺りを見渡してみる。
……ここはどこだ?
病院にしては豪華すぎる気がするし、どうみても自宅ではないし……
誰かの家?いや、私にこんなに金持ちの知り合いはいないはずだ。それに、事故にあった人を家にいれる人はなかなかいないのではないだろうか。
それに、妙に視線が低い気がする。背が縮んだとか?……いや、そんな訳ないか。
まだ混乱している中、突然ドアを開ける音が響く。その音の方に視線をやると、一人の女の人が立っている。
……マジで誰だ?着ているのはメイド服というものかも。
「お嬢様!お目覚めになられましたか!」
……はい?栄養が無さすぎて、いよいよ私の耳が腐ったか?聞き間違えでなければ、お嬢様と呼ばれた気がするけど……
いやいやいや!それこそあり得ないでしょ!そうか。夢だ。これは夢に違いない!
ほっぺをつねればいつも通りの日常が……痛い。
つねってみたけど、痛いという感覚以外何もない。じゃあ、これは現実?それとも幻覚?
この人に聞いてみれば分かるかも!名前は確か、ミレラだった……うん?何で私はこの人の名前を知ってるんだ?初めましてのはずなんだけど……
「ねぇ、ミレラ。私は誰かしら?」
「お嬢様は、ティアンゴルグ公爵家のエリカ様ですよ?」
……はい?ティアンゴルグ公爵家?公爵ってあれだよね?ヨーロッパにある貴族とかいうやつだよね?何で私ヨーロッパにいるの!?いやそもそも、ここ本当に地球!?
「ミレラ。地球って知ってる?」
「いえ、知りません。……頭を打ったせいで、混乱されているのかもしれませんね。もう少しお休みください」
ではお言葉に甘えて。もう少し落ち着いてから考えよう。
私は、そのまま眠りについた。
ボロアパートの部屋の一室に響く私の声。奥の方から、小さくお帰りの声が聞こえてくる。
リビングに行って、荷物を置く。自分の部屋なんてものはない。こんなボロアパートに部屋がいくつもある訳がない。あるのは、リビングと小さめのキッチン。お風呂場とトイレくらいだった。
本当は、もう少し良い所に住みたい。せめて、物置くらいでも良いから、部屋が欲しい。でも、そんな事は言えなかった。うちは母子家庭だからだ。
父親は、私が幼い頃に亡くなったらしい。狭いリビングに不釣り合いな仏壇があるので、嘘ではないだろう。
その仏壇にも手を合わせて今日は何があったのか話している。これが私の日常だ。
こんな感じだから、学校でも私に対する扱いは良いものではない。そこまで酷くはないけど、いじめもあったし、友達なんてゼロに等しい。
親も、そんな子供を止めたりしない。世の中は不公平だ。片親は育ちがしれないとか言うけど、それは差別じゃないのか。なんで男が女を下に見るのはダメなのに、両親が揃っている家庭が片親の家庭を見下すのは許されるんだ。
好きで女や男に生まれた訳じゃないって言うけど、それを言うなら、私だって望んでこんな貧乏な所に生まれた訳じゃない。選べるんだったら、お金持ちの家を選んでたわ。
でも、母が苦労しながらも自分を育ててくれたのは事実なので、貧乏な事に心の中ではウダウダ言いつつも、直接言った事はない。
「お母さん、何すれば良い?」
「洗濯物を畳んでおいてくれるかしら?」
「分かった」
母が大変なのは子供ながらも分かっている。本当は、助けを求めたいのかもしれない。でも、父に盲目レベルで惚れ込んだという母は、再婚しようなんて意思は微塵も感じられない。
だからといって、私をいい加減に育てる事もしない。私が私立の中学校に受験したいと言った時も、反対せずに、受験料を出してくれたし、高校に行きたいと言った時も、たとえどんなに高くても、入学費や授業料も出してくれた。
だから私も、出来るだけ家事は手伝っている。少しでも節約をするために、洗濯機は使っていない。料理も、調味料を一から作っている。母いわく、その方が安く済むらしい。調理器具も、本当に必要な物だけ買っている。
お金があればなぁ……将来は絶対に玉の輿に乗ってやるんだから!
そんな節約節約の日々を過ごしていたら、一本の電話が入る。
相手は同じクラスで、数少ない友達のかおりだった。用件は、家に遊びに来ないかとの事。
断る理由なんてある訳ないじゃない!
「お母さん、今から遊びに行っても良い?」
「どこに行くの?」
「かおりの家!」
母の返答も聞かずに、玄関を飛び出していく。
私がこんなにワクワクしているのは、かおりの家にはゲームがたくさんあるからだ。最近は、学校で少し話題になっている乙女ゲームにハマっている。
その乙女ゲームは前作があって、そのゲームはもう全てのルートを攻略し、新作の方も全部終わらせている。なので、2周目に入ろうかと思っている所だ。もうあんまり覚えていないし、初見の気持ちでプレイ出来る!!
───そう思っていた矢先、私は交通事故にあった。居眠り運転だったらしく、道をそれて私の方に突っ込んできた。
何か騒いでいる声がする。死んだらどうしよう。私はお金持ちになるまで死ぬ訳にはいかない……の……に……
「!」
ハッとなって、目を覚ます。
あれからどのくらい時間が経ったんだろう。まだ意識が朦朧としている。
でも、目は見えているので、辺りを見渡してみる。
……ここはどこだ?
病院にしては豪華すぎる気がするし、どうみても自宅ではないし……
誰かの家?いや、私にこんなに金持ちの知り合いはいないはずだ。それに、事故にあった人を家にいれる人はなかなかいないのではないだろうか。
それに、妙に視線が低い気がする。背が縮んだとか?……いや、そんな訳ないか。
まだ混乱している中、突然ドアを開ける音が響く。その音の方に視線をやると、一人の女の人が立っている。
……マジで誰だ?着ているのはメイド服というものかも。
「お嬢様!お目覚めになられましたか!」
……はい?栄養が無さすぎて、いよいよ私の耳が腐ったか?聞き間違えでなければ、お嬢様と呼ばれた気がするけど……
いやいやいや!それこそあり得ないでしょ!そうか。夢だ。これは夢に違いない!
ほっぺをつねればいつも通りの日常が……痛い。
つねってみたけど、痛いという感覚以外何もない。じゃあ、これは現実?それとも幻覚?
この人に聞いてみれば分かるかも!名前は確か、ミレラだった……うん?何で私はこの人の名前を知ってるんだ?初めましてのはずなんだけど……
「ねぇ、ミレラ。私は誰かしら?」
「お嬢様は、ティアンゴルグ公爵家のエリカ様ですよ?」
……はい?ティアンゴルグ公爵家?公爵ってあれだよね?ヨーロッパにある貴族とかいうやつだよね?何で私ヨーロッパにいるの!?いやそもそも、ここ本当に地球!?
「ミレラ。地球って知ってる?」
「いえ、知りません。……頭を打ったせいで、混乱されているのかもしれませんね。もう少しお休みください」
ではお言葉に甘えて。もう少し落ち着いてから考えよう。
私は、そのまま眠りについた。
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