悪役令嬢?それがどうした!~好き勝手生きて何が悪い~

りーさん

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公爵令嬢?それがどうした!

第50話 引きこもり

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 カルディアは、あの宣言通り、本当に抜け出す隙を与えなかった。
 一時間に一度くらいの割合で見てくるし、レイ達をつけはするものの、大抵はケーナとシズハとペア。
 この二人は最初は敵だったくせに、今はもうパパさんレベルで、私に対しては過保護になる。
 そんなだから、絶対に外には出させない。レイの事も叱っていたしね。体を張ってでも止めろとか言っていたかな。
 レシピを教えると言ってしまったからと言っても、カルディアがレシピを代筆して、シェフ達の元に持っていた。
 くっそぉ……本当に出してくれねぇ~……!転移魔法とかが使えれば楽なんだけどなぁ……絶対に教えてはくれないだろう。
 こうなったら、目が届かない所に移動するしかないかな……

「義姉上。気分はいかがですか?」
「誰かさんのお陰で最悪だけど?」

 私はドアの方も見ずに、悪態をつく。もう本性なんて隠している暇はない。

「気分が良いみたいで嬉しいです」

 耳が腐ってんのか!“最悪”ってはっきりと言っただろうが!
 本当にゲームのカルディアとそっくりだ。ゲームのカルディアも、王子にまともに相手されないエリカをこんな風にからかう……というか、おちょくってた。
 そのたびにエリカは癇癪を起こし、お父さんがカルディアを叱る図ができあがる。
 ゲームのヴィルク……ティアンゴルグ公爵は、今以上にエリカを溺愛していた。ゲームではママさんが死んでいるから当然だろう。唯一の血縁はエリカしかいなくなった。ママさんの分もエリカに行ったのだ。
 カルディアは、それでちょっとイライラしていたんだろうね。家に味方がいないから。それで、癇癪を起こすエリカを見て楽しんでいたと……ドSやん。

「今日は義姉上にお伝えする事がありまして」
「なぁに?」
「義姉上はここにいると勝手な行いばかりするので、療養を名目に領地にある別邸に行く事になったそうです」
「へぇ~」

 一言余計じゃよ義弟よ。特に、ここにいるというあたりが。それにしても、領地の別邸か……行ったらシシーちゃんと会えなくなるなぁ……って、うん?

「……別邸!?」

 ぎゃああああ!!!いってぇええええええ!!!!
 勢いよく起き上がったので、体全体に激痛が走った。今はゆっくり起き上がれば少しズキズキするくらいだけど、勢いよく起き上がったらこうなります。
 痛みで再びベッドに倒れました。

「義姉上!大丈夫ですか!?」
「大丈夫に見えるの?」

 それなら、あんたは目も腐ってる事になるぞ。

「勢いよく起き上がるからですよ」

 はぁとため息をつきながら呆れるようにそう言った。

 お前がビックリさせるような事を言うからだろうが!私にまったく非がないとは言わんが、なんで私に10割非があるみたいに言うんだよお前!

「とりあえず、いつ行くの?」
「明日です」

 へぇ~、明日ね……明日!!?えっ!?早くない?なんで私が事前に知らされてないんだよ!おかしいだろうが!
 あの四人からも特にそんな話は聞いてないし……断られると思ったのかな?別に、衣食住がちゃんとしてれば……うん?ちょっと待て。
 転生直後を思い出してみよう。衣はロリータみたいな感じ。食は前世の方がマシだというレベルの激マズ飯。そして、転生してから領地には一度も行っていない。なので、環境に変化はナシ。
 ……あっ、死んだ。
 頭を高速回転させた答えで私が思ったのは、それだけでした。

* * *

「レイさーん!なんとかしてくれません?」

 レイが呼ばれて振り返ると、そこにはアルトがいた。

「どうした?アルト」
「お嬢様が部屋にこもって出てこないんですよね……」
「……は?冗談だろ」
「本当ですって!」

 レイはアルトの言う事が信じられなかった。ベッドで寝ていた時、動きたいだの、本当に暇だだの言っていたのを聞いていたからだ。
 それなのに、なんで前とは真逆の行いをしているのかが分からなかった。

「事実だとして、なんでそれで俺の所に来る?」

 引きこもっているだけなら、最悪無理やり中に入ってしまえば良いだけだ。それなのに、アルトは自分を呼びに来ている。

「レイさんなら中に入れるかなぁって。魔力透過症ですし?」
「……魔力透過症と中に入れる事と何の関係があるんだ」
「……だってお嬢様、結界張って入れないようにしてるんですもん」

(そういう事か……)

 自分を呼びに来た理由が分かった。結界は、本人の意思以外で解除できない。突破するには、本人以上の術者か、魔力透過症のみ。
 エリカは自覚していないが、エリカの魔力量は常人の数十倍は軽くある。いわゆる転生チートというものだ。転生していることなど、誰も知らないが。
 そんな訳なので、今この場にエリカ以上の魔力を持つ者はいない。残るのは、魔力透過症の人物のみだが、それもこの場にはレイしかいない。

「とりあえず行ってみるが……出てくるとは限らんぞ」

 仕事を中断して、レイはアルトの後についていった。

 レイがエリカの部屋の前に来る。そこには、公爵、カルディア、ケーナ、シズハの姿があった。

「旦那様。連れてきましたよ~!」

 大きな声でアルトが公爵に呼びかける。公爵は、チラッとこちらを向いて、「来たか」と一言呟いただけだった。

「エリカが部屋にこもって出てこない。理由を聞いてこい」
「かしこまりました」

 レイは、ドアノブに手をかける。本来なら、そこで拒否反応が起こるが、魔力透過症のレイには、そんな事は関係なかった。
 

「お嬢様、入りますよ」

 ドアを開けて中に入ったとたんにバンと大きな音が鳴ってドアが閉まる。

「……レイね」

(うわっ……)

 思わず声に出そうなくらいには、中はひどかった。
 明かりはついてない。日に当たったら死ぬのかと聞きたくなるくらい、カーテンはびっちりと閉まっている。
 そしてそんな暗い部屋で、布団にくるまっているエリカがいた。その周りは、どよめいたオーラがたちこもっていた。

「お嬢様……いかがされましたか?」

 部屋の向こうには公爵やカルディアもいるので、レイは敬語を使っている。

「ほっといて」

(ほっといたらほっといたで俺が外にいる奴らに殺されるんだよ……!)

 理由を聞いてこいと言われたので、理由を聞けませんでしたなどと言おうものなら、エリカがよく言っている、説教(物理)が待っている。だからと言って、無理に聞こうとして泣かせようものなら、もっとひどい仕打ちが待っているだろう。
 どうするべきかと考えたが、辛抱強く聞くしかないという結論にいたった。

「旦那様から理由を聞いてくるように言われてますので」
「一緒にいたのに分からないの?」

 分からないから聞いてんだよと言いそうになるのを抑えて、「分かりません」と答える。

「だって、別邸に行ったら地獄が帰ってくるじゃない……」

(地獄……?)

 レイは、エリカの言っている言葉を理解できなかった。

 いくら別邸と言っても、貴族の屋敷。そこまでひどい場所ではないように感じた。

「地獄って何がですか?」
「あそこに戻ったらマズ飯とロリータ服がカムバックなんだよー!」

(ろりーた?かむばっく?)

 最悪だ最悪だと呟き続けているエリカをよそに、レイはエリカの言葉の意味を考えていた。
 エリカは、時々訳の分からない言葉を使いだす。
 そもそも、ドSという言葉もエリカが言い出して、元刺客とエリカの五人の間で使われるようになった。
 アルトの本性を知った時、エリカが言ったのは、「犬の皮を被ったドSの狼じゃん」だった。
 それから、アルト=ドSという、アルトはドSの代名詞のようになったのだ。

「意味は分かりませんけど、理由は分かりました。別邸に行きたくないって事ですね」
「そう!私は撤回されるまでずっとここに引きこもってやるから!誰にも会わないもん!」
「分かりました。旦那様にそうお伝えします」

 レイが事の顛末をすべて報告すると、誰にも会わないという部分で公爵がショックを受けていた。

「どうしたら良いのだ……?」

(行かせなければ良いんじゃねぇの?)

 そうは思ったが、レイは口には出さなかった。
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