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プロローグ
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木々から光が差す静かな森の中。歌を歌っている一人の少女がいた。この子には親がいない。小さい頃に亡くなってしまったからだ。
でも、彼女は寂しくなかった。なぜなら、彼女には友達と呼べる存在がいたから。それは、彼女の周りを飛ぶ小さな光の粒子。精霊だ。精霊と彼女は小さな頃からの友達。幼なじみのようなもの。
「あなた達は自由ね。どこまでも飛んでいける。私も連れてって欲しいくらい」
彼女のその言葉に精霊達は答える。周りが見れば、微笑む少女に光が舞っている神秘的な光景に映るだろうが、彼女にはしっかりその声が聞こえていた。
「ありがとう。でも、外の世界は、私一人では生きていけない」
この森が嫌いな訳ではない。むしろ好きな方。ここは、彼女の両親が出会った場所。両親が亡くなるまで、家族で過ごした場所。
「それに、人間のいる所になんて向かったら、彼女に何て言われるか」
先程までの笑みとは違い、悲しげな表情を浮かべる。彼女とは、姉妹のようなもの。でも、実際はそうとは言えない。
聖女と邪龍。聖と邪の根源とも言えるような存在の間に、子など出来るはずがなかった。産まれたとしても、二つの力がお互いを打ち消してしまうので、何の力もない容姿だけが特別な子しか出来ないはずだった。
でも、産まれたのは聖女と邪龍の両方の強力な力を持った子だった。このまま放置していれば、お二つの力がお互いを打ち消そうとして暴走し、死んでしまうのは明らかだった。
二人は、リバーシブルの服を作り、それぞれに力を込めた。白い生地の方には聖女の力を。黒い生地の方には邪龍の力を込めた。
そのおかげで、白い生地が表になっているときは、邪龍の力が封じられ、黒い生地が表になっているときは、聖女の力が封じられ、暴走して死ぬ事はなかった。
でも、ある問題が発生した。二つの力を分けてしまったせいで、魂が分かれ、二つの人格を持つようになってしまった。
だが、聖女と邪龍はそれも個性だと気にする事はなかった。逆に、互いに名を与えた。聖女の力を持っている方には、聖女である母親が名を与え、邪龍の力を持っている方には、父親が名を与えた。
母親が与えた名はカオル。父親が与えた名は、リーズヴァルト。
今、表に出ているのはカオルの方だった。カオルは、森から出ていきたいという程ではないが、外の世界は見てみたかった。でも、リーズヴァルトは違う。リーズヴァルトは人間を恨んでいる。
それは、人間に親が殺されたからだ。
邪龍である父親は、どの種族にとっても脅威となる。万が一暴れられでもしたら国一つは滅ぶだろう。それを恐れた者達が、邪龍を討伐しようと動き出した。
実際は、邪龍が暴れた事など一度たりともなかった。むしろ、理不尽に攻められていた国を守ったりしていた。聖女である母親は、そんな邪龍に心を奪われ伴侶となった。
そんな聖女も、裏切り者として殺された。聖女は、どんな時でも聖女で、刃を向けてきた者達を撃退しようとはせず、話をしようとした。だが、あるとも言い切れない恐れを抱いている者達が、そんな言葉を聞き入れてくれる訳がなかった。
聖女を殺され、邪龍も討伐された。リーズヴァルトとカオルは、まだ二人に分かれていなかったので、その様子をお互いはっきり覚えている。
カオルは、両親を殺された事が許せると言えば嘘になるが、人間の中には母親のようにいい人もいると信じている。リーズヴァルトは、なにもかも信じていない。自分とカオル以外の誰も信じなくなった。
「でも、もしこの森から出る事になったら、その時はついてきてくれる?」
カオルが精霊達にそう聞くと、精霊達は当然だと言わんばかりに光ってカオルの周りを飛び回る。
「ありがとう。今日はもう遅いから、また明日話しましょう」
そう言ってカオルは静かに眠りについた。
でも、彼女は寂しくなかった。なぜなら、彼女には友達と呼べる存在がいたから。それは、彼女の周りを飛ぶ小さな光の粒子。精霊だ。精霊と彼女は小さな頃からの友達。幼なじみのようなもの。
「あなた達は自由ね。どこまでも飛んでいける。私も連れてって欲しいくらい」
彼女のその言葉に精霊達は答える。周りが見れば、微笑む少女に光が舞っている神秘的な光景に映るだろうが、彼女にはしっかりその声が聞こえていた。
「ありがとう。でも、外の世界は、私一人では生きていけない」
この森が嫌いな訳ではない。むしろ好きな方。ここは、彼女の両親が出会った場所。両親が亡くなるまで、家族で過ごした場所。
「それに、人間のいる所になんて向かったら、彼女に何て言われるか」
先程までの笑みとは違い、悲しげな表情を浮かべる。彼女とは、姉妹のようなもの。でも、実際はそうとは言えない。
聖女と邪龍。聖と邪の根源とも言えるような存在の間に、子など出来るはずがなかった。産まれたとしても、二つの力がお互いを打ち消してしまうので、何の力もない容姿だけが特別な子しか出来ないはずだった。
でも、産まれたのは聖女と邪龍の両方の強力な力を持った子だった。このまま放置していれば、お二つの力がお互いを打ち消そうとして暴走し、死んでしまうのは明らかだった。
二人は、リバーシブルの服を作り、それぞれに力を込めた。白い生地の方には聖女の力を。黒い生地の方には邪龍の力を込めた。
そのおかげで、白い生地が表になっているときは、邪龍の力が封じられ、黒い生地が表になっているときは、聖女の力が封じられ、暴走して死ぬ事はなかった。
でも、ある問題が発生した。二つの力を分けてしまったせいで、魂が分かれ、二つの人格を持つようになってしまった。
だが、聖女と邪龍はそれも個性だと気にする事はなかった。逆に、互いに名を与えた。聖女の力を持っている方には、聖女である母親が名を与え、邪龍の力を持っている方には、父親が名を与えた。
母親が与えた名はカオル。父親が与えた名は、リーズヴァルト。
今、表に出ているのはカオルの方だった。カオルは、森から出ていきたいという程ではないが、外の世界は見てみたかった。でも、リーズヴァルトは違う。リーズヴァルトは人間を恨んでいる。
それは、人間に親が殺されたからだ。
邪龍である父親は、どの種族にとっても脅威となる。万が一暴れられでもしたら国一つは滅ぶだろう。それを恐れた者達が、邪龍を討伐しようと動き出した。
実際は、邪龍が暴れた事など一度たりともなかった。むしろ、理不尽に攻められていた国を守ったりしていた。聖女である母親は、そんな邪龍に心を奪われ伴侶となった。
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カオルは、両親を殺された事が許せると言えば嘘になるが、人間の中には母親のようにいい人もいると信じている。リーズヴァルトは、なにもかも信じていない。自分とカオル以外の誰も信じなくなった。
「でも、もしこの森から出る事になったら、その時はついてきてくれる?」
カオルが精霊達にそう聞くと、精霊達は当然だと言わんばかりに光ってカオルの周りを飛び回る。
「ありがとう。今日はもう遅いから、また明日話しましょう」
そう言ってカオルは静かに眠りについた。
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