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第一章 森の少女達
第9話 不思議な少女
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「全く、カオルちゃんは女の子なんですから、もっと丁寧に扱ってあげてください」
カオルが部屋に入った頃、別室でファルメール夫妻とその護衛達が話していた。
「すまない。ルー以外ではあのくらいの年の子の相手をした事がなかったから」
「でも、ルー様と違って大人びていますよね~」
「おそらく、親がいないからだろうな。精霊がいるとはいえ、生活は一人でするしか無かったんだろう」
オーヴェの言葉にレナードがそう返す。
レナードの言う事は間違っていない。カオルとリーズは3歳の頃に両親を亡くしたので、その頃から二人だけで生活していた。精霊が手助けしてくれたとはいえ、二人同時に存在する事は不可能なので、実質一人暮らしだった。
「そうね。カオルちゃん程とは言わなくても、ルーもカオルちゃんを見習ってしっかりして欲しいわ」
マルミアは、今は一人の母としてルーフェミアを心配する。子供っぽいのは、自分だけではなく、ルーフェミア自身も困る事になるからだ。悪い人に騙されたりはしないか。何か事件に巻き込まれる事はないか。
そんな予感が何度もよぎる。実際、マルミアは知らないが、ルーフェミアは先程スリ被害に遭う所だった。カオルがいなければ間違いなく盗られていただろう。
「そう言えば、旦那はカオルの事をどうするつもりなんです?」
「ひとまず、ルーと同じ学園には入れるつもりだ」
グレンの質問に、クラウドは迷う事なく言いきる。ルーフェミアと同じ学園と言う事は、周りには貴族がいるという事になる。
クラウドがカオルをルーフェミアと学園に入れようと考えているのは理由がある。一つは、カオルが精霊術士としての才能を持っているから。普通の学園では、カオルの才能を伸ばせず、充分に発揮する事も出来ない。
もう一つは、カオルが聖女と邪龍の娘だから。その事は、精霊達以外には、クラウドしか知らない事だが、万が一の場合に、ルーフェミアと同じ学園の方が良いと感じた。それは、カオルの聖女としての力だ。本人は自覚していないが、カオルの母が持っていた聖女の力はカオルが全て受け継いでいる。
そして、リーズの存在もある。彼女は、カオルの意思か、カオルが危険な目に遭う時にしか出てこないが、逆に言えば、カオルが危険な目に遭うと思ったら、問答無用で表に出てきてしまう。そうなれば、カオル達の秘密がバレてしまう。でも、貴族の通う学園なら、警備も整っているし、実践は授業だけ。それも、ある程度の実力がつくまでは、教師も同伴する。
「確かに、警備態勢が整っている場所なら、誘拐の心配も無いでしょうね」
「でも、大丈夫かしら?貴族の中には質の悪い人もいるのに」
「さぁ?でも、何となく大丈夫そうな感じはしますけどね~」
「何か、不思議な女の子ですよね。雰囲気も何もかも」
グレンの言葉に、その場にいる全員が同意する。
確かに、カオルは一般人からはかけ離れている。森の中でずっと暮らしていたので、一般常識は無いと言っても過言ではないし、大人びているので、ルーフェミアのようなあどけなさや、幼さは全く感じさせない。見た目と中身が合っていない。周りの子供とは全く違う。なので、違和感を感じ、不思議な雰囲気がある。
「でも、それもカオルちゃんの個性というものだと思うわ」
マルミアがそう言った瞬間、ドアをノックする音が聞こえる。
「お父様、お母様。わたくしですわ。入ってもよろしいでしょうか?」
「あぁ、構わないよ」
クラウドの言葉を聞いて、ルーフェミアはドアを開ける。
「カオルさんの事で、少し相談したい事があるのですが……」
「何かしら?」
「カオルさんはずっと森暮らしでしょう?ですので、一番に湯浴みして貰いたいと思ったのですけど、カオルさんが嫌がってしまいまして」
ルーフェミアの言葉に、その場の全員が疑問に思う。普通の女の子は、お風呂に入るのが好きなはずだ。好きじゃなかったとしても、入る事すら嫌がるなんてあるのだろうか。
「何で嫌がるのか分かるかい?」
「分かりませんわ。ただ……」
「ただ……?」
「ただ、フードを脱ぐのを極端に嫌がっておりますわ。湯浴みするためには、服を脱がないといけない事をお伝えしたら、『このフードだけは脱ぎたくありません。体は浄化して清潔にしているから大丈夫です』とずっとおっしゃるのです。脱いだ方がきっと可愛らしいのに……」
ルーフェミアの言葉で、カオルがお風呂を嫌がる理由が、クラウドだけには分かった。カオルは、フードを脱ぐ事が出来ない。直接そう聞いた訳ではないが、おそらくそうなのだと言う事はクラウドには分かる。
そうでなければ、フードを脱ぐのを嫌がるのも、わざわざ二人に分かれる理由も分からない。二人で一つの体を共有した方が、入れ替わりの手間も省けるし、もしかしたら、あ互いがお互いの引き継いでいる力も瞬時に使える可能性もある。
聖女の持つ“聖”の力と、邪龍の持つ“邪”の力は、相反するものだ。それが何の対策も無しに、一つの体に宿っていると、何かしら問題があるに違いない。
クラウドは、それくらいなら予測できた。
「ルー。本人が嫌がっているなら、無理強いするのは良くないよ」
「そうよ。確かに、お風呂に入って欲しいとは私も思うけど、無理矢理は良くないわ。カオルちゃんが嫌がっているなら、フードを脱がなくても、お風呂に入れなくても良いと思うわ」
「分かりましたわ」
あまり納得はしていないようだったが、一応、カオルのフードを脱がせるのと、お風呂に入れるのは諦めたらしい。ルーフェミアは、「失礼しましたわ」と言って、部屋を出ていった。
「お風呂に入るのを嫌がる子がいるなんて知らなかったなぁ」
「それにしても、妙な事をおっしゃってませんでしたか?浄化がどうとか……」
それを聞いてクラウドは、心で焦りが生まれた。
「浄化魔法は聖女が使う魔法ではありませんでしたか?」
そう、浄化魔法は聖女の魔法。それが使えると言う事は、聖女の関係者と言う事。でも、例外が無い訳ではない。
「きっと、精霊術だろう。彼女の周りには、水属性の精霊が多かったしね」
クラウドの言葉に全員が納得する。精霊術なら、聖女以外でも浄化魔法が使える。
何とか誤魔化せた事にクラウドは安心すると共に、不安も生まれてくる。都合の悪いようにはしないと約束したので、庇える限りは庇うが、カオルにも常識くらいは身につけて欲しいと感じた。
カオルが部屋に入った頃、別室でファルメール夫妻とその護衛達が話していた。
「すまない。ルー以外ではあのくらいの年の子の相手をした事がなかったから」
「でも、ルー様と違って大人びていますよね~」
「おそらく、親がいないからだろうな。精霊がいるとはいえ、生活は一人でするしか無かったんだろう」
オーヴェの言葉にレナードがそう返す。
レナードの言う事は間違っていない。カオルとリーズは3歳の頃に両親を亡くしたので、その頃から二人だけで生活していた。精霊が手助けしてくれたとはいえ、二人同時に存在する事は不可能なので、実質一人暮らしだった。
「そうね。カオルちゃん程とは言わなくても、ルーもカオルちゃんを見習ってしっかりして欲しいわ」
マルミアは、今は一人の母としてルーフェミアを心配する。子供っぽいのは、自分だけではなく、ルーフェミア自身も困る事になるからだ。悪い人に騙されたりはしないか。何か事件に巻き込まれる事はないか。
そんな予感が何度もよぎる。実際、マルミアは知らないが、ルーフェミアは先程スリ被害に遭う所だった。カオルがいなければ間違いなく盗られていただろう。
「そう言えば、旦那はカオルの事をどうするつもりなんです?」
「ひとまず、ルーと同じ学園には入れるつもりだ」
グレンの質問に、クラウドは迷う事なく言いきる。ルーフェミアと同じ学園と言う事は、周りには貴族がいるという事になる。
クラウドがカオルをルーフェミアと学園に入れようと考えているのは理由がある。一つは、カオルが精霊術士としての才能を持っているから。普通の学園では、カオルの才能を伸ばせず、充分に発揮する事も出来ない。
もう一つは、カオルが聖女と邪龍の娘だから。その事は、精霊達以外には、クラウドしか知らない事だが、万が一の場合に、ルーフェミアと同じ学園の方が良いと感じた。それは、カオルの聖女としての力だ。本人は自覚していないが、カオルの母が持っていた聖女の力はカオルが全て受け継いでいる。
そして、リーズの存在もある。彼女は、カオルの意思か、カオルが危険な目に遭う時にしか出てこないが、逆に言えば、カオルが危険な目に遭うと思ったら、問答無用で表に出てきてしまう。そうなれば、カオル達の秘密がバレてしまう。でも、貴族の通う学園なら、警備も整っているし、実践は授業だけ。それも、ある程度の実力がつくまでは、教師も同伴する。
「確かに、警備態勢が整っている場所なら、誘拐の心配も無いでしょうね」
「でも、大丈夫かしら?貴族の中には質の悪い人もいるのに」
「さぁ?でも、何となく大丈夫そうな感じはしますけどね~」
「何か、不思議な女の子ですよね。雰囲気も何もかも」
グレンの言葉に、その場にいる全員が同意する。
確かに、カオルは一般人からはかけ離れている。森の中でずっと暮らしていたので、一般常識は無いと言っても過言ではないし、大人びているので、ルーフェミアのようなあどけなさや、幼さは全く感じさせない。見た目と中身が合っていない。周りの子供とは全く違う。なので、違和感を感じ、不思議な雰囲気がある。
「でも、それもカオルちゃんの個性というものだと思うわ」
マルミアがそう言った瞬間、ドアをノックする音が聞こえる。
「お父様、お母様。わたくしですわ。入ってもよろしいでしょうか?」
「あぁ、構わないよ」
クラウドの言葉を聞いて、ルーフェミアはドアを開ける。
「カオルさんの事で、少し相談したい事があるのですが……」
「何かしら?」
「カオルさんはずっと森暮らしでしょう?ですので、一番に湯浴みして貰いたいと思ったのですけど、カオルさんが嫌がってしまいまして」
ルーフェミアの言葉に、その場の全員が疑問に思う。普通の女の子は、お風呂に入るのが好きなはずだ。好きじゃなかったとしても、入る事すら嫌がるなんてあるのだろうか。
「何で嫌がるのか分かるかい?」
「分かりませんわ。ただ……」
「ただ……?」
「ただ、フードを脱ぐのを極端に嫌がっておりますわ。湯浴みするためには、服を脱がないといけない事をお伝えしたら、『このフードだけは脱ぎたくありません。体は浄化して清潔にしているから大丈夫です』とずっとおっしゃるのです。脱いだ方がきっと可愛らしいのに……」
ルーフェミアの言葉で、カオルがお風呂を嫌がる理由が、クラウドだけには分かった。カオルは、フードを脱ぐ事が出来ない。直接そう聞いた訳ではないが、おそらくそうなのだと言う事はクラウドには分かる。
そうでなければ、フードを脱ぐのを嫌がるのも、わざわざ二人に分かれる理由も分からない。二人で一つの体を共有した方が、入れ替わりの手間も省けるし、もしかしたら、あ互いがお互いの引き継いでいる力も瞬時に使える可能性もある。
聖女の持つ“聖”の力と、邪龍の持つ“邪”の力は、相反するものだ。それが何の対策も無しに、一つの体に宿っていると、何かしら問題があるに違いない。
クラウドは、それくらいなら予測できた。
「ルー。本人が嫌がっているなら、無理強いするのは良くないよ」
「そうよ。確かに、お風呂に入って欲しいとは私も思うけど、無理矢理は良くないわ。カオルちゃんが嫌がっているなら、フードを脱がなくても、お風呂に入れなくても良いと思うわ」
「分かりましたわ」
あまり納得はしていないようだったが、一応、カオルのフードを脱がせるのと、お風呂に入れるのは諦めたらしい。ルーフェミアは、「失礼しましたわ」と言って、部屋を出ていった。
「お風呂に入るのを嫌がる子がいるなんて知らなかったなぁ」
「それにしても、妙な事をおっしゃってませんでしたか?浄化がどうとか……」
それを聞いてクラウドは、心で焦りが生まれた。
「浄化魔法は聖女が使う魔法ではありませんでしたか?」
そう、浄化魔法は聖女の魔法。それが使えると言う事は、聖女の関係者と言う事。でも、例外が無い訳ではない。
「きっと、精霊術だろう。彼女の周りには、水属性の精霊が多かったしね」
クラウドの言葉に全員が納得する。精霊術なら、聖女以外でも浄化魔法が使える。
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