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第二章 神殿の少女達
第34話 祈り
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そのまま数日、ナルミス様が言っていた通りに、部屋で大人しく過ごしていた。
ナルミスが入ってきた時、私はある場所に行きたいと言った。
「今なら許可をいただければ大丈夫だと思いますよ。聞いてみますので、待っていてください」
「はい」
『神殿内でも許可がいるんだね』
『仕方ないだろ。逃げられるかもしれないって思ってるんだろうし。逃げられないようにすれば良いだけだろうにな』
『リーズはどっちの味方なの?』
『カオルに決まってんだろ。だが、神殿の奴らがバカだと思ってるだけだ』
それはそれでどうなんだろう……?
とりあえず、話を剃らしてみよう。
『そう言えばさ、精霊達がどこにいるのか知ってる?』
『転移石で連れてこられたなら、いなくてもおかしくはないな。少なくとも、私は見てないぞ』
そっか……寂しがってないかな……それとも、心配してくれる気持ちの方が強いかな?……もしかしたら、ものすごく怒ってて、神殿を壊しちゃうなんて事になったら────
「カオル様」
「はっ、はい!!」
考え事をしている時に話しかけられて、思わず大きな声で返事してしまう。
「許可が出ましたので、手を出してください」
言われた通りに手を出すと、腕輪のようなものを嵌められた。
「これは何ですか?」
「本来は、精霊術を使う犯罪者に使う枷です。出歩くのならば、それをつけるのが条件だと言われてしまいまして……」
「これをつけたら、精霊術が使えなくなるんですか?」
「そういう事ですね。部屋に戻ったらきちんと外しますから、辛抱してください。どこに行きたいのですか?」
「レティア神に祈れる場所を……」
そう言うと、「こちらです」と言って案内してくれる。しばらく歩いていると、開けた場所に出た。
その途中にある事に気づいてたずねてみる。
「何で部屋ではこの枷をしないんですか?」
「あの部屋自体が、精霊術を使う犯罪者が入れられる部屋ですから。あの部屋では、精霊術を使うどころか、精霊は入れないそうです」
だからいなかったのかな?辺りを見渡しても、遠目にいるのは分かるけど、近づいてこない。こちらを見てはいるけど……この枷を嫌がっているのかもしれない。
精霊よりも、必要以上に人がいる。クラウド様のお屋敷でも、ここまで人がいる事はなかった。
「なぜ、こんなに人がいるのでしょうか?」
「不快に思われるかもしれませんが、カオル様の監視です。しばらくは続くと思いますが、逃げないと思われれば、少なくなると思います」
「そうですか……分かりました」
ルーフェミア様もこんな感じなのかな?普通に過ごしていれば良いけど……
しばらく歩いて、開けた場所に出た。
「こちらです。祈りの際の言葉を聞くのはご法度ですので、私は離れた場所にいますね」
そう言って、ドアの近くの壁にもたれ掛かっている。私は、奥の方に進む。
正座になって、目の前にある神像に祈りを捧げる。神像に祈るのは、何年ぶりだったかな……
『カオル。良く来ましたね』
頭の中に心地よい声が聞こえる。レティア神だ。
『どうやら、いろいろあったようで……やはり私の加護を授けた方が……』
昔からずっと言われている。レティア神の加護。母様も貰っていた加護で、貰うと、聖属性の魔法の能力が上がり、そもそもの身体能力や、防御力も上がるみたい。母様から聞いた事だから詳しくは分からないけど。
『大丈夫です。何度も申し上げている通り、私には分不相応でございます』
『そうですか……それで、今日はどんなご用で?』
『母様の本当の家名を教えてくれませんか?』
父様にも内緒にしていた。そして、ずっと疑問だった、母様への“裏切り”という言葉。
今なら分かるけど、あの人達は神官ではない。神殿に仕えていた人なら、母様に裏切りという気持ちも分かるけど、母様が聖女だと知っているだけの人がそんな事を言うのかな?いや、まず無いと思う。
『……確かに、そろそろ話しても良い頃合いかも知れませんね』
『知ってるんですか?』
ダメ元だったのに。なんか、拍子抜けしてしまう。
『マリア聖女の生前の家名は、フォルスト。マリア・フォルスト。ラクエルシェンド王国の唯一の王女だった者です』
……えっ?ラクエルシェンド王国?王女?母様が?
『ラクエルシェンド王国は、神聖国ともされていて、神官が多く生まれている国でもあります。そこで、マリアは生まれました』
そんなすごい身分だったなんて……
『詳しく説明すると、あまりにも長くなってしまうので省きますが、聖属性を持っており、心優しい人物で、認定試験にも合格したマリアに、私は加護を授けました』
認定試験……そんなものがあるなんて。母様は、何で認定試験なんか受けたんだろう?聖女になりたかったからだろうけど、どうしてそう思ったのか分からない。
『最初は、ラクエルシェンド王国は、王族から聖女が生まれたと公表するつもりでした』
『自分の国をアピールするため……ですか?』
『そうです。ですが、私はそれを許しませんでした。マリアが、私を争いの種にしないで欲しいと言っておりましたし、私もそのような事は望んでいませんでしたから』
母様らしいな。母様は、本当に誰にも優しくて、強い。
『そして、ある日の事、神殿が聖女を狙う者による襲撃を受け、何名かの尊い命が奪われました。その時、マリアは最後まで拒否していましたが、最後は折れる形で、護衛の聖騎士達をおいて、一人で逃げました』
『そこが、父様がいた……』
『はい。迷いの森と言われている場所です』
ナルミスが入ってきた時、私はある場所に行きたいと言った。
「今なら許可をいただければ大丈夫だと思いますよ。聞いてみますので、待っていてください」
「はい」
『神殿内でも許可がいるんだね』
『仕方ないだろ。逃げられるかもしれないって思ってるんだろうし。逃げられないようにすれば良いだけだろうにな』
『リーズはどっちの味方なの?』
『カオルに決まってんだろ。だが、神殿の奴らがバカだと思ってるだけだ』
それはそれでどうなんだろう……?
とりあえず、話を剃らしてみよう。
『そう言えばさ、精霊達がどこにいるのか知ってる?』
『転移石で連れてこられたなら、いなくてもおかしくはないな。少なくとも、私は見てないぞ』
そっか……寂しがってないかな……それとも、心配してくれる気持ちの方が強いかな?……もしかしたら、ものすごく怒ってて、神殿を壊しちゃうなんて事になったら────
「カオル様」
「はっ、はい!!」
考え事をしている時に話しかけられて、思わず大きな声で返事してしまう。
「許可が出ましたので、手を出してください」
言われた通りに手を出すと、腕輪のようなものを嵌められた。
「これは何ですか?」
「本来は、精霊術を使う犯罪者に使う枷です。出歩くのならば、それをつけるのが条件だと言われてしまいまして……」
「これをつけたら、精霊術が使えなくなるんですか?」
「そういう事ですね。部屋に戻ったらきちんと外しますから、辛抱してください。どこに行きたいのですか?」
「レティア神に祈れる場所を……」
そう言うと、「こちらです」と言って案内してくれる。しばらく歩いていると、開けた場所に出た。
その途中にある事に気づいてたずねてみる。
「何で部屋ではこの枷をしないんですか?」
「あの部屋自体が、精霊術を使う犯罪者が入れられる部屋ですから。あの部屋では、精霊術を使うどころか、精霊は入れないそうです」
だからいなかったのかな?辺りを見渡しても、遠目にいるのは分かるけど、近づいてこない。こちらを見てはいるけど……この枷を嫌がっているのかもしれない。
精霊よりも、必要以上に人がいる。クラウド様のお屋敷でも、ここまで人がいる事はなかった。
「なぜ、こんなに人がいるのでしょうか?」
「不快に思われるかもしれませんが、カオル様の監視です。しばらくは続くと思いますが、逃げないと思われれば、少なくなると思います」
「そうですか……分かりました」
ルーフェミア様もこんな感じなのかな?普通に過ごしていれば良いけど……
しばらく歩いて、開けた場所に出た。
「こちらです。祈りの際の言葉を聞くのはご法度ですので、私は離れた場所にいますね」
そう言って、ドアの近くの壁にもたれ掛かっている。私は、奥の方に進む。
正座になって、目の前にある神像に祈りを捧げる。神像に祈るのは、何年ぶりだったかな……
『カオル。良く来ましたね』
頭の中に心地よい声が聞こえる。レティア神だ。
『どうやら、いろいろあったようで……やはり私の加護を授けた方が……』
昔からずっと言われている。レティア神の加護。母様も貰っていた加護で、貰うと、聖属性の魔法の能力が上がり、そもそもの身体能力や、防御力も上がるみたい。母様から聞いた事だから詳しくは分からないけど。
『大丈夫です。何度も申し上げている通り、私には分不相応でございます』
『そうですか……それで、今日はどんなご用で?』
『母様の本当の家名を教えてくれませんか?』
父様にも内緒にしていた。そして、ずっと疑問だった、母様への“裏切り”という言葉。
今なら分かるけど、あの人達は神官ではない。神殿に仕えていた人なら、母様に裏切りという気持ちも分かるけど、母様が聖女だと知っているだけの人がそんな事を言うのかな?いや、まず無いと思う。
『……確かに、そろそろ話しても良い頃合いかも知れませんね』
『知ってるんですか?』
ダメ元だったのに。なんか、拍子抜けしてしまう。
『マリア聖女の生前の家名は、フォルスト。マリア・フォルスト。ラクエルシェンド王国の唯一の王女だった者です』
……えっ?ラクエルシェンド王国?王女?母様が?
『ラクエルシェンド王国は、神聖国ともされていて、神官が多く生まれている国でもあります。そこで、マリアは生まれました』
そんなすごい身分だったなんて……
『詳しく説明すると、あまりにも長くなってしまうので省きますが、聖属性を持っており、心優しい人物で、認定試験にも合格したマリアに、私は加護を授けました』
認定試験……そんなものがあるなんて。母様は、何で認定試験なんか受けたんだろう?聖女になりたかったからだろうけど、どうしてそう思ったのか分からない。
『最初は、ラクエルシェンド王国は、王族から聖女が生まれたと公表するつもりでした』
『自分の国をアピールするため……ですか?』
『そうです。ですが、私はそれを許しませんでした。マリアが、私を争いの種にしないで欲しいと言っておりましたし、私もそのような事は望んでいませんでしたから』
母様らしいな。母様は、本当に誰にも優しくて、強い。
『そして、ある日の事、神殿が聖女を狙う者による襲撃を受け、何名かの尊い命が奪われました。その時、マリアは最後まで拒否していましたが、最後は折れる形で、護衛の聖騎士達をおいて、一人で逃げました』
『そこが、父様がいた……』
『はい。迷いの森と言われている場所です』
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