聖女と邪龍の娘

りーさん

文字の大きさ
35 / 107
第二章 神殿の少女達

第34話 祈り

しおりを挟む
 そのまま数日、ナルミス様が言っていた通りに、部屋で大人しく過ごしていた。

 ナルミスが入ってきた時、私はある場所に行きたいと言った。

「今なら許可をいただければ大丈夫だと思いますよ。聞いてみますので、待っていてください」
「はい」

『神殿内でも許可がいるんだね』
『仕方ないだろ。逃げられるかもしれないって思ってるんだろうし。逃げられないようにすれば良いだけだろうにな』
『リーズはどっちの味方なの?』
『カオルに決まってんだろ。だが、神殿の奴らがバカだと思ってるだけだ』

 それはそれでどうなんだろう……?

 とりあえず、話を剃らしてみよう。

『そう言えばさ、精霊達がどこにいるのか知ってる?』
『転移石で連れてこられたなら、いなくてもおかしくはないな。少なくとも、私は見てないぞ』

 そっか……寂しがってないかな……それとも、心配してくれる気持ちの方が強いかな?……もしかしたら、ものすごく怒ってて、神殿を壊しちゃうなんて事になったら────

「カオル様」
「はっ、はい!!」

 考え事をしている時に話しかけられて、思わず大きな声で返事してしまう。

「許可が出ましたので、手を出してください」

 言われた通りに手を出すと、腕輪のようなものを嵌められた。

「これは何ですか?」
「本来は、精霊術を使う犯罪者に使う枷です。出歩くのならば、それをつけるのが条件だと言われてしまいまして……」
「これをつけたら、精霊術が使えなくなるんですか?」
「そういう事ですね。部屋に戻ったらきちんと外しますから、辛抱してください。どこに行きたいのですか?」
「レティア神に祈れる場所を……」

 そう言うと、「こちらです」と言って案内してくれる。しばらく歩いていると、開けた場所に出た。

 その途中にある事に気づいてたずねてみる。

「何で部屋ではこの枷をしないんですか?」
「あの部屋自体が、精霊術を使う犯罪者が入れられる部屋ですから。あの部屋では、精霊術を使うどころか、精霊は入れないそうです」

 だからいなかったのかな?辺りを見渡しても、遠目にいるのは分かるけど、近づいてこない。こちらを見てはいるけど……この枷を嫌がっているのかもしれない。

 精霊よりも、必要以上に人がいる。クラウド様のお屋敷でも、ここまで人がいる事はなかった。

「なぜ、こんなに人がいるのでしょうか?」
「不快に思われるかもしれませんが、カオル様の監視です。しばらくは続くと思いますが、逃げないと思われれば、少なくなると思います」
「そうですか……分かりました」

 ルーフェミア様もこんな感じなのかな?普通に過ごしていれば良いけど……

 しばらく歩いて、開けた場所に出た。

「こちらです。祈りの際の言葉を聞くのはご法度ですので、私は離れた場所にいますね」

 そう言って、ドアの近くの壁にもたれ掛かっている。私は、奥の方に進む。

 正座になって、目の前にある神像に祈りを捧げる。神像に祈るのは、何年ぶりだったかな……

『カオル。良く来ましたね』

 頭の中に心地よい声が聞こえる。レティア神だ。

『どうやら、いろいろあったようで……やはり私の加護を授けた方が……』

 昔からずっと言われている。レティア神の加護。母様も貰っていた加護で、貰うと、聖属性の魔法の能力が上がり、そもそもの身体能力や、防御力も上がるみたい。母様から聞いた事だから詳しくは分からないけど。

『大丈夫です。何度も申し上げている通り、私には分不相応でございます』
『そうですか……それで、今日はどんなご用で?』
『母様の本当の家名を教えてくれませんか?』

 父様にも内緒にしていた。そして、ずっと疑問だった、母様への“裏切り”という言葉。

 今なら分かるけど、あの人達は神官ではない。神殿に仕えていた人なら、母様に裏切りという気持ちも分かるけど、母様が聖女だと知っているだけの人がそんな事を言うのかな?いや、まず無いと思う。

『……確かに、そろそろ話しても良い頃合いかも知れませんね』
『知ってるんですか?』

 ダメ元だったのに。なんか、拍子抜けしてしまう。

『マリア聖女の生前の家名は、フォルスト。マリア・フォルスト。ラクエルシェンド王国の唯一の王女だった者です』

……えっ?ラクエルシェンド王国?王女?母様が?

『ラクエルシェンド王国は、神聖国ともされていて、神官が多く生まれている国でもあります。そこで、マリアは生まれました』

 そんなすごい身分だったなんて……

『詳しく説明すると、あまりにも長くなってしまうので省きますが、聖属性を持っており、心優しい人物で、認定試験にも合格したマリアに、私は加護を授けました』

 認定試験……そんなものがあるなんて。母様は、何で認定試験なんか受けたんだろう?聖女になりたかったからだろうけど、どうしてそう思ったのか分からない。

『最初は、ラクエルシェンド王国は、王族から聖女が生まれたと公表するつもりでした』
『自分の国をアピールするため……ですか?』
『そうです。ですが、私はそれを許しませんでした。マリアが、私を争いの種にしないで欲しいと言っておりましたし、私もそのような事は望んでいませんでしたから』

 母様らしいな。母様は、本当に誰にも優しくて、強い。

『そして、ある日の事、神殿が聖女を狙う者による襲撃を受け、何名かの尊い命が奪われました。その時、マリアは最後まで拒否していましたが、最後は折れる形で、護衛の聖騎士達をおいて、一人で逃げました』
『そこが、父様がいた……』
『はい。迷いの森と言われている場所です』
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。

さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。 聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。 だが、辺境の村で暮らす中で気づく。 私の力は奇跡を起こすものではなく、 壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。 一方、聖女として祭り上げられた彼女は、 人々の期待に応え続けるうち、 世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...