聖女と邪龍の娘

りーさん

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第二章 神殿の少女達

第33話 それぞれの思惑

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(今日も来ないのかしら?)

 教室で、二人が来るのを待っている。二人は、もう3日も体調不良で休んでいる。セレスティーナは、二人より前の席に座っているが、二人が来ないかと何度も後ろを振り返っている。

 結局、二人が来ないまま、担任が来てしまった。

「おはようございます」
「あ、あの、先生!」
「何ですか?セレスティーナさん」
「カオルさんとルーフェミア様が今日も来ないのですが……」
「確かに来ませんね……二人ともそんなに病弱ではないはずなのですが……」

(どうしたのでしょうか……)

 この前会った時はなんともなさそうだったのに、いきなり体調を崩したのだろうか?それとも──

 セレスティーナの脳内に嫌な予感がよぎる。その時、教室のドアを開ける音が聞こえた。

「今よろしいかしら」
「学園長!どうしましたか?」
「セレスティーナさんに用があります。どこですか?」
「わ、わたくしはここにおりますわ」
「学園長室に向かいます。ついてきてください」

 学園長の尋常ではない様子に、セレスティーナは黙ってついていく。

「セレスティーナさん、ここからは内密の話です。口外は禁止します」
「……はい。分かりましたわ」

 セレスティーナは学園長の向かい側に座る。学園長はお茶を一口飲んで話し始めた。

「カオルさんとルーフェミア様が3日前の朝から行方が分かっていません」
「っ!」

 嫌な予感が当たってしまった。その事に少し怯えている。

「あなたを呼んだのは、最後にお二人と接したのがあなただからです。あなたを疑っている訳ではありませんが、念のため、なぜ二人と会ったのか、何をしていたのかお話願えますか?」
「ルーフェミア様が精霊と契約したと聞き、なぜなのか考え、カオルさんが関わっていると思い、わたくしもお願いした次第です。ただ、わたくしの周りにいる精霊をカオルさんに見て貰っただけですわ」

 全て素直に話す。学園長が自分を疑っている気がして、信じて貰うために、しっかりと話す。

「では、あと一つ。今回の犯人に心当たりは?」

 そう聞かれて、すぐにある人物が思い浮かぶ。確信を得るために、学園長に質問する。

「……その前に、私も一つ聞いても良いですか?」
「構いませんよ、どうぞ」
「ナルミス様は、どうしているのですか?」
「……授業に出席していますよ。もしかしてと思いますが……」
「はい、わたくしが心当たりがあるのはその人物ですわ」

(今このタイミングで狙うなら、神殿しかありませんわ)

 セレスティーナも神殿がカオルを狙っているのには勘づいていた。最近、ナルミスがカオルに接触している事も知っていた。

「そうですか……分かりました。もう結構です」

 何やら考え込みながら、セレスティーナにそう指示する。セレスティーナは素直に、「失礼しました」と言って部屋を出た。

「……あぁ、そうだ。あなたは動いてはなりませんよ。足手まといになるだけですから」
「……はい、分かりました」

 出ていく時にそう声をかけられた。セレスティーナは一瞬顔を歪めたが、すぐに真顔になり出ていった。

(まさか、夜に動くなんて)

 夕方までは、自分と共にいた。学園の廊下は、人目が多いから、狙われたとは思えない。なので部屋に戻ってから狙われたと考えるべき。そうでないと、拐うなんて不可能だから。

(わたくしが送っていれば……)

 それに、もっときちんと注意していれば。そうすれば、カオル達は拐われないですんだかもしれない。

(わたくしも、何か出来ないでしょうか……)

 学園長に何もするなと言われていたが、大人しくする事など出来そうにもなかった。

ーーーーーーーーーーーーーー

「さて、ファルメール公爵にも知らせないといけないわね」

 学園長は手紙を書いて、ベルを鳴らす。学園で雇っている使用人に手紙を預ける。

「それに、クルメンディア公爵家のお嬢様が大人しくしているとも思えない」

 クルメンディア公爵家のお嬢様とは、セレスティーナの事。セレスティーナは正義感が強い性格。だからこそ、きっちりと忠告をしたが、それだけで諦めるようには思えなかった。
 しばらく考えたあと、学園長はクスッと笑う。

「仕方ありませんね。セレスティーナさんがいる前提で進めるとしましょうか」

ーーーーーーーーーーーーーー

(どれくらい時間が経ったかしら)

 神殿のある一室で、ルーフェミアがベッドに腰かけていた。そこは、部屋の見た目をしているが、牢屋のようだった。

(精霊がいない……精霊術士を入れる牢ですわね。なら、カオルさんも近くにいるのかしら?)

 カオルは、自分よりも強い精霊術を使う。自分でさえ精霊術士を入れる牢に入れられているなら、カオルも同じだと考えるのが自然だ。

(カオルさん……怒ってはいないかしら?わたくしが不用意に外に出なければ、こんな事には……)

 いつかのように、自分を責めている。カオルは、ルーフェミアを怒るどころか、むしろ心配しているくらいだが、ルーフェミアはその事を知らない。

(……わたくしが勝手に出るのはいけませんわね。カオルさんの警備は厳しくなってしまうでしょうし、下手をすれば、監禁状態になってしまうかもしれませんわ)

 今すぐ逃げ出したい気持ちでいっぱいだが、カオルにとばっちりを喰わせる訳にはいかない。

「特に何かするという感じもいたしませんし、大人しくしていましょうか」

ーーーーーーーーーーーーーー

「ナルミス、良くやった」
「ありがとうございます」

 冷たい顔で頭を下げている相手は、太っていて醜く、贅沢にアクセサリーで飾りつけている司教。

 すでに学園の授業は終わり、神殿に来ていた。

「では、私はカオル様の世話がありますので」
「少し待て」

 いつもなら行ってこいと言うのに、なぜか今日は止められた。不思議に思いながらも、足を止める。

「何でしょうか?」
「カオル嬢はどうだ?おかしな所はないか?」

(おかしな所?何でそんな事を聞くんだ)

 そう思いながらも、心当たりはないので、「いいえ、特には」と答える。

「なら良い。何かあればすぐに伝えるように」
「はい、ダルジス司教」

 今度こそはと、カオルがいる所に向かう。

(司教は何を考えているんだ?)

 先ほどの質問や、カオルを誘拐するように言った事も、全て疑問に思っていた。普通、自分達の物にしたいなら、まずは友好的に接するのが普通じゃないのか。だが、ナルミスが命じられたのは、人目につかないように、カオルを連れてくる事。要するに、誘拐しろという事。

(何か良からぬ事には間違いないだろうが、カオル様の何を探ろうとしている?)

 監視ではなく、まるで、何かを確かめさせるために、自分を向かわせているような気がしてならなかった。

(……僕も探ってみるか。カオル様は、ただの精霊術士の少女という訳ではなさそうだし)

 そんな思いで、ナルミスは今日も、カオルがいる部屋に足を踏み入れた。
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