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第二章 神殿の少女達
第36話 異変
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「……っ!それは……」
「……すみません、聞いてみただけです」
さすがにいきなり過ぎたのかもしれない。何で契約の事を知っているのかと聞かれたら答えられないし、なかった事にしよう。
「……なのですか?」
「今何と……?」
「なぜご存じなのか聞いているんです。その事は神殿の一部の人間しか知らない。どこで知ったのですか?」
……正直に言っても良いんだろうか。なんとなくだけど、レティア神と会話出来るのは、すごい事ではないだろうか。もし、他の人々が当たり前のようにレティア神の声を聞けるなら、聖女とか、そういう存在はないものだと思う。多分、母様の血を引いているから、レティア神の声を聞ける。
「……ここではお話出来ません」
ここは人が多すぎる。それに、ここは神殿。レティア神の声が聞けるなんて事を知られたら、本当に聖女と祭り上げられるかもしれない。
「……分かりました。では、部屋に戻りましょう。そこなら構いませんね」
「……」
その言葉には答えられずに、部屋に向かう歩みを速めた。
『お前はバカか?』
『うぅ……!』
戻っている途中にリーズが話しかけてくる。神殿に来てからは、あまり話す頻度は多くない。もしかしたら、話すだけでも辛いのかもしれない。でも、今回は話しかけてきた。
『そいつにも話す気か?私は賛成しないが』
『それは……私もそうだけど……でも……』
放っておけない。自分から望んでやっているなら構わないけど、無理やりなら。それに、ナルミス様には白いもやがあった。根が良い人なのは間違いないと思う。
『お前はそう言い出したら聞かないからな。言いたければ言えば良い。私は止めたからな』
それだけ言うと奥に引っ込んでしまった。
リーズは、神官に対して当たりが強いように感じる。もしかして、母様がどんな扱いを受けていたのか知っていたのかもしれない。何で私に話さなかったのかは分からないけど、母様から、多少は聞いていたから、必要ないと思ったのかもしれない。
ちょっと寂しい気もするけど……
それはそれとして、部屋に着いてしまった。
「今外しますね」と言って、私の手につけられていた枷を外してくれた。
「扉を閉じれば外に音は漏れません。お話していただけますか?」
「……信じていただけるか分かりませんし、それに、誰にも話さない保証はどこにも──」
なんとか話さないように出来ないかと思いついた言い訳を並べてみる。
「……一理ありますね。分かりました。話さなくても結構です。では、先ほどの事に答えますが、本当に破棄されているなら、あなたを解放するくらいはしますよ」
「……そうなのですか?」
そんなにあっさりといくものなの?
そう思った時、私が気を失う直前に見たナルミス様の顔が思い浮かんだ。あの時の悲しそうな顔。あれは、どういう思いから浮かんだものだったのか。それが今、分かった気がする。
「そして、そんな事を聞いたという事は、契約は破棄されているようですね。確かに、いつもよりも縛られているという感覚はないですね」
「そうですか。良かったです」
「……カオル様がやったのですか?」
「いいえ、私ではありません」
やったのはレティア神だから。私は頼んだだけ。きっかけが私なのには間違いはないけど、私が破棄させた訳ではない。
「……そうですか。では、レティア神でしょうか?」
「は、はい」
「……あなたは、レティア神と対話が出来るのですか?」
「な、なぜ……そんな事を……?」
私が何か関わっている事は気づかれるかもしれないけど、レティア神と会話出来るのは、分からないと思うのに。
「鎌かけだったのですが……図星ですか?」
「……」
「お気になさる事はありません。レティア神に気に入られている者や、神官長以上の階級の者達は声を聞く事が出来るそうですから。あなたは気に入られているのかもしれませんね」
その言葉は否定出来ない。何度も加護を与えようとしてくるし、他の人達と比べたら気に入られているのは間違いないと思う。……もしかしたら、母様の娘という事で気にかけてくれているだけかもしれないけど……
「……そう言えば、あの時司教が言ってた──」
ナルミス様がそこまで言った時、大きな揺れがあった。
「わぁっ!」
椅子に座っていたけど、その揺れのせいで、床に転がり落ちてしまった。
「イタタタ……」
「大丈夫ですか、カオル様」
「はい……ナルミス様は?」
「私は大丈夫ですが……様子を見てきた方が良いでしょうね。カオル様は部屋にいてください」
「はい、分かりました」
「では失礼します」と言って、部屋を出ていった。ナルミス様が出ていったのを確認して、怪我をした腕に回復魔法をかけて治療する。
『リーズ、何があったのかな?』
『分からないが、何かあったのは確かだ。あいつの言う事に従うのは癪だが、大人しくしていた方が良い。神殿の奴らが何かしたんだったら、目をつけられるのはまずいからな』
『うん』
リーズもそう言うなら、大人しくしていよう。
ルーフェミア様は何ともないかな?この揺れは何だったんだろう?神殿は大丈夫かな?
色々な不安が押し寄せてくる。しばらくベッドの上に座って待っていると、誰かがこの部屋に入ってきた。
ナルミス様?それとも、司教様かな?
でも、その予想は外れて、意外な人物が来た。
「カオルさん、無事ですか?」
「セレスティーナ……様?」
「……すみません、聞いてみただけです」
さすがにいきなり過ぎたのかもしれない。何で契約の事を知っているのかと聞かれたら答えられないし、なかった事にしよう。
「……なのですか?」
「今何と……?」
「なぜご存じなのか聞いているんです。その事は神殿の一部の人間しか知らない。どこで知ったのですか?」
……正直に言っても良いんだろうか。なんとなくだけど、レティア神と会話出来るのは、すごい事ではないだろうか。もし、他の人々が当たり前のようにレティア神の声を聞けるなら、聖女とか、そういう存在はないものだと思う。多分、母様の血を引いているから、レティア神の声を聞ける。
「……ここではお話出来ません」
ここは人が多すぎる。それに、ここは神殿。レティア神の声が聞けるなんて事を知られたら、本当に聖女と祭り上げられるかもしれない。
「……分かりました。では、部屋に戻りましょう。そこなら構いませんね」
「……」
その言葉には答えられずに、部屋に向かう歩みを速めた。
『お前はバカか?』
『うぅ……!』
戻っている途中にリーズが話しかけてくる。神殿に来てからは、あまり話す頻度は多くない。もしかしたら、話すだけでも辛いのかもしれない。でも、今回は話しかけてきた。
『そいつにも話す気か?私は賛成しないが』
『それは……私もそうだけど……でも……』
放っておけない。自分から望んでやっているなら構わないけど、無理やりなら。それに、ナルミス様には白いもやがあった。根が良い人なのは間違いないと思う。
『お前はそう言い出したら聞かないからな。言いたければ言えば良い。私は止めたからな』
それだけ言うと奥に引っ込んでしまった。
リーズは、神官に対して当たりが強いように感じる。もしかして、母様がどんな扱いを受けていたのか知っていたのかもしれない。何で私に話さなかったのかは分からないけど、母様から、多少は聞いていたから、必要ないと思ったのかもしれない。
ちょっと寂しい気もするけど……
それはそれとして、部屋に着いてしまった。
「今外しますね」と言って、私の手につけられていた枷を外してくれた。
「扉を閉じれば外に音は漏れません。お話していただけますか?」
「……信じていただけるか分かりませんし、それに、誰にも話さない保証はどこにも──」
なんとか話さないように出来ないかと思いついた言い訳を並べてみる。
「……一理ありますね。分かりました。話さなくても結構です。では、先ほどの事に答えますが、本当に破棄されているなら、あなたを解放するくらいはしますよ」
「……そうなのですか?」
そんなにあっさりといくものなの?
そう思った時、私が気を失う直前に見たナルミス様の顔が思い浮かんだ。あの時の悲しそうな顔。あれは、どういう思いから浮かんだものだったのか。それが今、分かった気がする。
「そして、そんな事を聞いたという事は、契約は破棄されているようですね。確かに、いつもよりも縛られているという感覚はないですね」
「そうですか。良かったです」
「……カオル様がやったのですか?」
「いいえ、私ではありません」
やったのはレティア神だから。私は頼んだだけ。きっかけが私なのには間違いはないけど、私が破棄させた訳ではない。
「……そうですか。では、レティア神でしょうか?」
「は、はい」
「……あなたは、レティア神と対話が出来るのですか?」
「な、なぜ……そんな事を……?」
私が何か関わっている事は気づかれるかもしれないけど、レティア神と会話出来るのは、分からないと思うのに。
「鎌かけだったのですが……図星ですか?」
「……」
「お気になさる事はありません。レティア神に気に入られている者や、神官長以上の階級の者達は声を聞く事が出来るそうですから。あなたは気に入られているのかもしれませんね」
その言葉は否定出来ない。何度も加護を与えようとしてくるし、他の人達と比べたら気に入られているのは間違いないと思う。……もしかしたら、母様の娘という事で気にかけてくれているだけかもしれないけど……
「……そう言えば、あの時司教が言ってた──」
ナルミス様がそこまで言った時、大きな揺れがあった。
「わぁっ!」
椅子に座っていたけど、その揺れのせいで、床に転がり落ちてしまった。
「イタタタ……」
「大丈夫ですか、カオル様」
「はい……ナルミス様は?」
「私は大丈夫ですが……様子を見てきた方が良いでしょうね。カオル様は部屋にいてください」
「はい、分かりました」
「では失礼します」と言って、部屋を出ていった。ナルミス様が出ていったのを確認して、怪我をした腕に回復魔法をかけて治療する。
『リーズ、何があったのかな?』
『分からないが、何かあったのは確かだ。あいつの言う事に従うのは癪だが、大人しくしていた方が良い。神殿の奴らが何かしたんだったら、目をつけられるのはまずいからな』
『うん』
リーズもそう言うなら、大人しくしていよう。
ルーフェミア様は何ともないかな?この揺れは何だったんだろう?神殿は大丈夫かな?
色々な不安が押し寄せてくる。しばらくベッドの上に座って待っていると、誰かがこの部屋に入ってきた。
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