聖女と邪龍の娘

りーさん

文字の大きさ
38 / 107
第二章 神殿の少女達

第37話 助けに来た者達

しおりを挟む
 少し時間は戻り、カオルが祈りを捧げてレティア神と会話している時。

 学園長からの手紙を受け取ったクラウドは顔を歪めて机を思いっきり叩いた。

「クラウド様、何が書いてあったんです?」
「……カオルとルーが神殿に囚われているらしい」
「あの学園は警備は厳重なはずですよ!?たとえ学園側に協力者がいたとしても、連れ去るのはほぼ不可能なはずです。何でそんな事に……」
「……あの学園には、神官も通っている。それと、連れ去った方法は転移石だと思う。それなら、見つからずに連れ去る事は可能だ」

 クラウドの予想は大当たりだ。神官であるナルミスが転移石で連れ出した。

 クラウドは、書類をそのままにし、席を立つ。

「今すぐ神殿に向かう」
「……せめて、護衛は連れてくださいよ」
「分かっている。レナードとグレンを呼んでこい」
「了解しました」

ーーーーーーーーーーーーーー

 神殿についたクラウドは、入り口で止められていた。

「いくらファルメール公爵でも、そのような様子で入れる訳にはいきません」

 明らかに武力行使も厭わないような状態で神殿に来たので、神官も中に入れない。

(どうするか……)

 どう押し入ろうか悩んでいると、一回り小さな少女が来た。当たり前のように、神殿に入ろうとする。

「ちょっと待ちなさい。君は?」
「私は、ティーナと言います。お祈りしちゃダメですか?」

 少し拙い敬語で、目的を話す。顔はきれいだが、容姿はありふれている茶髪に緑の瞳だったので、変に疑われずに中に入っていった。

「さて、あなた方はお帰りください。ご息女方はおられませんよ」
「私は自分の目で見ないと信じる事は出来ない」

 そう言う目は、何かを決意したように冷たい目だった。

ーーーーーーーーーーーーーー

(どこにおられるのでしょうか)

 ティーナと名乗っていた少女は、祈るための場所には向かわず、神殿のあちこちを探し回っている。

 ティーナの正体はセレスティーナ。セレスティーナはありきたりな見た目に変える事で、疑われないように神殿に入り、カオルとルーフェミアを助けようと考えた。

 カオルとルーフェミアを助けるために、探している。ルーフェミアは部屋にいるが、カオルは今はレティア神と会話している所だ。

 そんな事は露知らず、あちこちを行ったり来たりしているうちに、迷い始めた。

(うぅ……どうしましょう)

 敵の本拠地と言っても過言ではない場所で本格的に迷子になってしまった。

(頑張って、知っている道に出るまで歩いてみましょうか)

ーーーーーーーーーーーーーー

「オーヴェ」
「了解しました」

 そう言って、小さな声でブツブツと呟き始める。

「何をするつもりですか?」
「強行突破ですよ!」

 呟くのを終えて、神殿に攻撃した。先ほどの呟いていたのは、魔法の詠唱。アウベルクは、護衛の中では一番の魔法の使い手。詠唱も一般人と比べたらはるかに短く、威力も高い。

 アウベルクの放った魔法は、神殿の一部を破壊した。それを見て、先ほどまで強気だった神官は、腰を抜かして震えている。

「じゃあ、入らせて貰いますよ。ルー様とカオルちゃんを助けないといけないので」

 神殿内に入る彼らを、今度は止める事はなかった。

ーーーーーーーーーーーーーー
「イタタタ……」

 座り込んでいたが、お尻を押さえながら立ち上がる。

(先ほどの揺れは何だったのでしょうか?)

 アウベルクが放った魔法によって、大きな揺れが発生し、その時にセレスティーナは尻餅をついていた。

(もしや……神殿が何かしたのでは……ならば、急がないと!)

 早くカオルとルーフェミアを見つけようと思い、先ほどよりも気合いを入れる。

 走りながら、辺りをキョロキョロ見回していたので、前から来た存在に気づかず、ぶつかってしまった。

 またもや尻餅をついてしまい、ゆっくりと起き上がる。

「……セレスティーナ様ですか?」
「あなたは……ナルミス様」

 自分とぶつかった相手はナルミスだった。ナルミスは、軽く汗もかいており、急いでいたのがよく分かる。

「どこかに向かう予定だったのですか?」
「……あなたには関係ありませんわ。それよりも、よくわたくしだと気づきましたわね」

 他の人達は気づかなかったのに、なぜかナルミスだけ気づいている。

「髪色と瞳の色が違うだけで、雰囲気や顔は同じですからね。なんとなくです」
「そうですか。では、失礼いたしますわ」

 カオルとルーフェミアを連れ去ったかもしれない存在と、長く会話をしたくはなく、さっさとその場から離れようとしたが、次のナルミスの言葉で動きが止まった。

「カオル様なら、あなたから見て右に。ルーフェミア様なら左側に囚われております」
「どういう事ですの!?」
「そのままの意味です。先ほどの揺れの騒ぎで、他の神官や聖騎士は少ないですから、助けるなら今ですよ」
「……分かりましたわ」

 お礼を言って、カオルが捕まっている場所を詳しく聞き出して、そこに向かった。

(急がないと……)

 セレスティーナは、カオルが囚われている方に向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。 ※タイトルはそのうち変更するかもしれません※ ※お気に入り登録お願いします!※

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

山田みかん
ファンタジー
「貴方には剣と魔法の異世界へ行ってもらいますぅ~」 ────何言ってんのコイツ? あれ? 私に言ってるんじゃないの? ていうか、ここはどこ? ちょっと待てッ!私はこんなところにいる場合じゃないんだよっ! 推しに会いに行かねばならんのだよ!!

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

処理中です...