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第二章 神殿の少女達
第51話 感づいている者達
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「カオルさんは大丈夫なのですか?」
「あぁ、目覚めているのを確認したよ」
「そうですか……」
クラウドは、部屋の前の廊下で自分の娘と会話していた。一度だけでなく、二度も危険な目に合わせてしまった事を悔いており、自分の父親ですら部屋の中には入れなかった。
「会いに行かないのかい?」
「合わせる顔がありませんわ」
「多分、彼女は気にしないと思うけど……」
「……わたくしの気持ちの問題ですわ。お父様はお気になさらなくて結構ですわ」
そう言われてしまい、クラウドはため息をつく。もう何を言っても平行線になりそうだったので、会話を切り上げて、その場から立ち去った。
「クラウド様、どうだったんですか?ルー様は」
「……その前に、なぜここにいるんだ」
自分の部屋に戻ったはずなのに、間違えたかのような感覚に陥った。アウベルクが、まるで自分の部屋のようにその場にいたからだ。
「話し相手になってあげようかと思いまして。グレンさんとレナードさんは、いろいろと忙しいですしね」
「……お前はどうなんだ」
「クラウド様に言われた事は全部終わらせましたよ。根回しも完了しています」
「それなら良い」
クラウドは、アウベルクが座っている向かい側に座る。アウベルクは、魔法でポットとカップを操り、お茶を入れる。
「それで、ルー様は?」
「……相変わらずだ。部屋から出てくるどころか、ドアを開ける事すらしない」
「立ち直るには時間がかかりそうですねぇ~」
笑いながらそう言ってはいるが、目は笑っておらず、アウベルクもルーフェミアの事を心配している。カオルは気にしていないので、問題はないのだが、ルーフェミア自身の心の整理がついていないので、どうしようもないという状況だ。
「カオルと直接会えれば良いんだが……疲れが溜まっているようだからな、無理はさせられない」
「クラウド様も無理は良くないですよ?寝てないのはみんなが知ってるんですから」
「分かっている。だが、急がなくてはいけないんだ」
「……クラウド様、そろそろ話す気にはならないんですか?少なくとも、僕の他にもレナードとマルミア様は感づいていると思いますよ?」
何をとは思わなかった。クラウドは、少し考える素振りをしたが、すぐに口を開く。
「無理だ。カオルとの約束だ。知りたいなら彼女の許可を得てこい」
「許可を得たら話してくれるんですね?」
「……得られるならな」
クラウドは、ある人物を思い浮かべる。カオルなら、頼めば話すのはおそらく許可するだろうが、リーズなら話は別だ。彼女は、以前よりはマシになったものの、まだ人間の事を信用していない。そして、リーズの許可を得ないと、カオルも許可出来ない。
相手と話す事も出来ずに信用して貰うのは難しい。リーズが起きている時は良いが、起きていなかったら、話しすらも聞いていない状態なので、許可を得るのは不可能だ。つまるところ、姿すらも見る事が出来ない相手が起きて感覚を共有している時に、信用を得なければ、許可を得る事は出来ない。
「じゃあ、明日にまた行って説得してくるとします。それで、それとは別に……いや、たいして離れてないかな……?とにかく、聞きたい事があるんですけど」
「何だ?」
「国王様はどうすると?」
アウベルクは、先日、クラウドが王宮に呼ばれていた事を知っていた。クラウドと国王は、幼なじみのような関係なので、二人きりの時は、友のような関係になる。なので、何か聞いているのではないかと思った。
「……おそらくだが、また呼ぶだろう。誘拐の事情聴取という名目でな」
「……本当は?」
「司教があそこまでして欲しがった訳を探るつもりだろう」
「……同じ……じゃないですね」
誘拐の事情聴取と、欲しがった理由を探る。同じような意味合いに聞こえるが、良く考えれば違う。事情聴取は、あくまでも誰に何をされたのかを聞くだけで、事件が起こった理由まで探る事はあまりない。だが、司教が、誘拐を起こしてまで欲しがったのを、ただ精霊術士としての素質があるからで片づけられないという者もいる。
国王もその一人で、カオルの事を探ろうとしているのだ。
「あいつは、腹黒いからな。国王という立場上、仕方ないのかもしれないが、あまり好かん」
「まぁ、本当に彼女が嫌がったら無理には聞かないように配慮するんじゃないですか?」
「おそらくな。だが、政治的利用が出来るものは、とことん使うのが国王としてのあいつだ。基本的には民思いなんだがな……」
クラウドは、国王としての苦悩は理解していた。国王の立場としては、カオルの事を知れば利用しなくてはいけなくなる。他国から舐められないためにも。だが、国王は民思いだ。なので、目立つような事を真似をさせて、嫌われたくないとも思うだろう。
「国王も大変ですねぇ~」
「それくらいしないと、自国の貴族からも不審な目で見られる事になるしな。気持ちは分かるが……」
「カオルちゃんの事は探るんじゃないって事ですか?」
「あぁ」
カオルは、目立つ事を嫌う。人としての常識に欠けている部分もあるので、あまり隠しきれていない所もあるが。以前、カオルに聞いた時は、国王には話して欲しくないと言っていたので、クラウドも話すつもりはない。だが、そうなると国王が自分の影を使って探る可能性がある。
「でも、とりあえずはカオルちゃんに話しておいた方が良いんじゃないですか?」
「そうだな。明日、話してみよう」
まるで、この部屋の主のように振る舞っているので、クラウドも席を立ちそうになった。
「いや、お前が出ていくんだよな?ここは私の部屋だぞ」
「えぇー、この部屋、すっごい居心地が良いのに……」
「文句を垂れてないで、早く出ていけ。それとも、理由がないと出ていかないのか?」
「いいえ!今すぐ出ていきます!」
すぐに立ち上がって、ドアを開けて大急ぎで出ていった。
(どれだけやりたくないんだ、あいつは……)
もう閉まっているドアを見ながら、クラウドはため息をついた。
「あぁ、目覚めているのを確認したよ」
「そうですか……」
クラウドは、部屋の前の廊下で自分の娘と会話していた。一度だけでなく、二度も危険な目に合わせてしまった事を悔いており、自分の父親ですら部屋の中には入れなかった。
「会いに行かないのかい?」
「合わせる顔がありませんわ」
「多分、彼女は気にしないと思うけど……」
「……わたくしの気持ちの問題ですわ。お父様はお気になさらなくて結構ですわ」
そう言われてしまい、クラウドはため息をつく。もう何を言っても平行線になりそうだったので、会話を切り上げて、その場から立ち去った。
「クラウド様、どうだったんですか?ルー様は」
「……その前に、なぜここにいるんだ」
自分の部屋に戻ったはずなのに、間違えたかのような感覚に陥った。アウベルクが、まるで自分の部屋のようにその場にいたからだ。
「話し相手になってあげようかと思いまして。グレンさんとレナードさんは、いろいろと忙しいですしね」
「……お前はどうなんだ」
「クラウド様に言われた事は全部終わらせましたよ。根回しも完了しています」
「それなら良い」
クラウドは、アウベルクが座っている向かい側に座る。アウベルクは、魔法でポットとカップを操り、お茶を入れる。
「それで、ルー様は?」
「……相変わらずだ。部屋から出てくるどころか、ドアを開ける事すらしない」
「立ち直るには時間がかかりそうですねぇ~」
笑いながらそう言ってはいるが、目は笑っておらず、アウベルクもルーフェミアの事を心配している。カオルは気にしていないので、問題はないのだが、ルーフェミア自身の心の整理がついていないので、どうしようもないという状況だ。
「カオルと直接会えれば良いんだが……疲れが溜まっているようだからな、無理はさせられない」
「クラウド様も無理は良くないですよ?寝てないのはみんなが知ってるんですから」
「分かっている。だが、急がなくてはいけないんだ」
「……クラウド様、そろそろ話す気にはならないんですか?少なくとも、僕の他にもレナードとマルミア様は感づいていると思いますよ?」
何をとは思わなかった。クラウドは、少し考える素振りをしたが、すぐに口を開く。
「無理だ。カオルとの約束だ。知りたいなら彼女の許可を得てこい」
「許可を得たら話してくれるんですね?」
「……得られるならな」
クラウドは、ある人物を思い浮かべる。カオルなら、頼めば話すのはおそらく許可するだろうが、リーズなら話は別だ。彼女は、以前よりはマシになったものの、まだ人間の事を信用していない。そして、リーズの許可を得ないと、カオルも許可出来ない。
相手と話す事も出来ずに信用して貰うのは難しい。リーズが起きている時は良いが、起きていなかったら、話しすらも聞いていない状態なので、許可を得るのは不可能だ。つまるところ、姿すらも見る事が出来ない相手が起きて感覚を共有している時に、信用を得なければ、許可を得る事は出来ない。
「じゃあ、明日にまた行って説得してくるとします。それで、それとは別に……いや、たいして離れてないかな……?とにかく、聞きたい事があるんですけど」
「何だ?」
「国王様はどうすると?」
アウベルクは、先日、クラウドが王宮に呼ばれていた事を知っていた。クラウドと国王は、幼なじみのような関係なので、二人きりの時は、友のような関係になる。なので、何か聞いているのではないかと思った。
「……おそらくだが、また呼ぶだろう。誘拐の事情聴取という名目でな」
「……本当は?」
「司教があそこまでして欲しがった訳を探るつもりだろう」
「……同じ……じゃないですね」
誘拐の事情聴取と、欲しがった理由を探る。同じような意味合いに聞こえるが、良く考えれば違う。事情聴取は、あくまでも誰に何をされたのかを聞くだけで、事件が起こった理由まで探る事はあまりない。だが、司教が、誘拐を起こしてまで欲しがったのを、ただ精霊術士としての素質があるからで片づけられないという者もいる。
国王もその一人で、カオルの事を探ろうとしているのだ。
「あいつは、腹黒いからな。国王という立場上、仕方ないのかもしれないが、あまり好かん」
「まぁ、本当に彼女が嫌がったら無理には聞かないように配慮するんじゃないですか?」
「おそらくな。だが、政治的利用が出来るものは、とことん使うのが国王としてのあいつだ。基本的には民思いなんだがな……」
クラウドは、国王としての苦悩は理解していた。国王の立場としては、カオルの事を知れば利用しなくてはいけなくなる。他国から舐められないためにも。だが、国王は民思いだ。なので、目立つような事を真似をさせて、嫌われたくないとも思うだろう。
「国王も大変ですねぇ~」
「それくらいしないと、自国の貴族からも不審な目で見られる事になるしな。気持ちは分かるが……」
「カオルちゃんの事は探るんじゃないって事ですか?」
「あぁ」
カオルは、目立つ事を嫌う。人としての常識に欠けている部分もあるので、あまり隠しきれていない所もあるが。以前、カオルに聞いた時は、国王には話して欲しくないと言っていたので、クラウドも話すつもりはない。だが、そうなると国王が自分の影を使って探る可能性がある。
「でも、とりあえずはカオルちゃんに話しておいた方が良いんじゃないですか?」
「そうだな。明日、話してみよう」
まるで、この部屋の主のように振る舞っているので、クラウドも席を立ちそうになった。
「いや、お前が出ていくんだよな?ここは私の部屋だぞ」
「えぇー、この部屋、すっごい居心地が良いのに……」
「文句を垂れてないで、早く出ていけ。それとも、理由がないと出ていかないのか?」
「いいえ!今すぐ出ていきます!」
すぐに立ち上がって、ドアを開けて大急ぎで出ていった。
(どれだけやりたくないんだ、あいつは……)
もう閉まっているドアを見ながら、クラウドはため息をついた。
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