聖女と邪龍の娘

りーさん

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第二章 神殿の少女達

第53話 聖女と王女

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「カオル、調子はどうだい?」
「だいぶ楽になってきました」

 私が邪気に当てられて倒れてから3日。クラウド様は、毎日かかさずお見舞いに来てくれている。と言っても、ここはクラウド様のお屋敷なので、来ようと思えばすぐに来れるのだけど。
 でも、まだルーフェミア様の姿を見ていない。レナード様や、グレンさん、オーヴェ様、マルミア様の姿は見たのに。
 セレスティーナ様も来てくれた。その時にルーフェミア様の事を聞いてみたけど、「わたくしは知りません」と返されただけだった。

「クラウド様。ルーフェミア様は……」
「……すまない」

 それは、まだ会ってはくれないという事だろう。クラウド様に何度も聞いているけど、ルーフェミア様は部屋から出てこないらしい。
 セレスティーナ様に聞いたかぎりでは、怪我をしたという訳ではないらしい。
 何で、会ってくれないんだろう。

「カオル。本調子でないのに申し訳ないが、近々国王と謁見する事になった」
「神殿の事……ですか?」
「そうだ。それで、カオルの事を探ろうとしてくる可能性がある。だから、私が代弁しようと思うのだが、神殿で何があった?」

 そう聞かれたので、私は全部話した。ティルの事も、ナルミス様の事も、司教様の事も。出来るだけ、分かりやすく。

「そうか。ティレツィア嬢が地下に囚われていたのはどうやって知ったんだ?」
「レティア神から……お聞きしました」

 そう言うと、クラウド様は驚いたような表情をした。
 でも、すぐに普通の表情に戻る。

「その事は話さない方がいいな。ティレツィア嬢の事は、ナルミス神官から聞いた事にしよう」

 あの時、私が考えた咄嗟の言い訳と同じ考えだ。でも、その方が良いよね。

 ずっと言い出せずにいたけど、母様の事……聞いてみようかな。クラウド様は公爵様だから、何か知っているかもしれない。レティア神は、詳しく教えてはくれなさそうだから。

「あの……クラウド様」
「なんだ?」
「レティア神から聞いたのですが……母様の旧姓は、マリア・フォルスト……というそうです」
「フォルスト……神聖国の王家の名じゃないか!」

 そういえば、母様の国は、神聖国とも呼ばれているってレティア神が言っていたな。
 神官が生まれやすいんだったっけ。

「それで……何か知りませんか?レティア神は、これ以上の事は教えてくれなくて……」
「……病弱で、存在だけが知られて、表に出てこなかった王女がいた。多分、それがマリア聖女だろう。その王女の名もマリアだったからな」
「レティア神は、当時の国王様が、王女様が聖女になった事を公表するつもりだったそうですが、母様とレティア神が拒否した……と聞いています」

 母様達が拒否したから、王女様を病弱という事にしたんだろう。聖女になったら、神殿からは離れられない。でも、王女がいない事を気づかれてもいけない。そんな思いで、王女様を閉じ込めたんじゃないだろうか。

「カオル。そうなると、少し問題がある」
「問題……ですか?」
「ラクエルシェンド王国は、今はアウノール陛下だ。マリア王女の弟君に当たる」

 母様の弟という事は、私にとって叔父になる。でも、それだけならそこまで問題があるようには思えない。

「そして、アウノール陛下には、御子がおられない。そして、マリア王女と、アウノール陛下の他に兄弟もいない。だから、カオルは今は王位継承権一位に当たる。つまり、次期国王になる可能性が一番高いんだ」

 私が……国王様に?王様は、血筋が直系というのに近いほど王様になりやすいって母様に聞いた事がある。でも、それが私なの?

「一応、先王には妹が二人いるが、血筋の近さではカオルの方が上だ。叔母の孫よりも、姪の方が近いだろう?」

 私が……次期国王。聖女でさえも拒否しているのに、そんなのもっと無理だ。

「そして、カオルは母君であるマリア聖女と瓜二つなのだろう?だから、アウノール陛下にその顔を見られればすぐに気づかれるだろう。実の姉の顔くらい見た事はあるだろうからな」
「私……どうなるのでしょう?」

 他国の次期国王なんて、もうこのような関係ではいられなくなるのは私でも分かる。
 そんなのは嫌だ。でも、不安になってしまう。

「聖女が王女だという証拠はおそらくない。貴族の情報網で探ったとしても、聖女とラクエルシェンド王国の王女は結びつけられないだろう。だから、ラクエルシェンド王国の者に会わなければ、おそらくは大丈夫だ」

 そう言われて安心した。私が顔を見られないようにすれば、おそらくは大丈夫という事。気をつけよう。
 もしかしたら、母様が王女であるという事を知っている人もいるかもしれないから、聖女の力も使わない方が良いかもしれない。

「そうは言ったが……国王には話しておく」
「それって……」
「大丈夫だ。確かにあれは腹黒いが、民思いではあるし、カオルは今は準貴族だ。カオルが嫌だと思うなら、国王も悪いようにはしない。カオルの事を知りたがるのも、国に害がないか知りたいだけだからな」

 クラウド様がこう言ってくれるなら、大丈夫かもしれない。

「だが、他の貴族はそうとは言えない。だから最悪、聖女の娘だとは知られても良い。だが、王女の娘だとは気づかれないように気をつけるように」
「はっ……はい」
「では、陛下に報告しよう。カオルはゆっくり休んでいると良い」
「分かりました」

 私が返事すると、クラウド様は部屋から出ていった。
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