55 / 107
第二章 神殿の少女達
第53話 聖女と王女
しおりを挟む
「カオル、調子はどうだい?」
「だいぶ楽になってきました」
私が邪気に当てられて倒れてから3日。クラウド様は、毎日かかさずお見舞いに来てくれている。と言っても、ここはクラウド様のお屋敷なので、来ようと思えばすぐに来れるのだけど。
でも、まだルーフェミア様の姿を見ていない。レナード様や、グレンさん、オーヴェ様、マルミア様の姿は見たのに。
セレスティーナ様も来てくれた。その時にルーフェミア様の事を聞いてみたけど、「わたくしは知りません」と返されただけだった。
「クラウド様。ルーフェミア様は……」
「……すまない」
それは、まだ会ってはくれないという事だろう。クラウド様に何度も聞いているけど、ルーフェミア様は部屋から出てこないらしい。
セレスティーナ様に聞いたかぎりでは、怪我をしたという訳ではないらしい。
何で、会ってくれないんだろう。
「カオル。本調子でないのに申し訳ないが、近々国王と謁見する事になった」
「神殿の事……ですか?」
「そうだ。それで、カオルの事を探ろうとしてくる可能性がある。だから、私が代弁しようと思うのだが、神殿で何があった?」
そう聞かれたので、私は全部話した。ティルの事も、ナルミス様の事も、司教様の事も。出来るだけ、分かりやすく。
「そうか。ティレツィア嬢が地下に囚われていたのはどうやって知ったんだ?」
「レティア神から……お聞きしました」
そう言うと、クラウド様は驚いたような表情をした。
でも、すぐに普通の表情に戻る。
「その事は話さない方がいいな。ティレツィア嬢の事は、ナルミス神官から聞いた事にしよう」
あの時、私が考えた咄嗟の言い訳と同じ考えだ。でも、その方が良いよね。
ずっと言い出せずにいたけど、母様の事……聞いてみようかな。クラウド様は公爵様だから、何か知っているかもしれない。レティア神は、詳しく教えてはくれなさそうだから。
「あの……クラウド様」
「なんだ?」
「レティア神から聞いたのですが……母様の旧姓は、マリア・フォルスト……というそうです」
「フォルスト……神聖国の王家の名じゃないか!」
そういえば、母様の国は、神聖国とも呼ばれているってレティア神が言っていたな。
神官が生まれやすいんだったっけ。
「それで……何か知りませんか?レティア神は、これ以上の事は教えてくれなくて……」
「……病弱で、存在だけが知られて、表に出てこなかった王女がいた。多分、それがマリア聖女だろう。その王女の名もマリアだったからな」
「レティア神は、当時の国王様が、王女様が聖女になった事を公表するつもりだったそうですが、母様とレティア神が拒否した……と聞いています」
母様達が拒否したから、王女様を病弱という事にしたんだろう。聖女になったら、神殿からは離れられない。でも、王女がいない事を気づかれてもいけない。そんな思いで、王女様を閉じ込めたんじゃないだろうか。
「カオル。そうなると、少し問題がある」
「問題……ですか?」
「ラクエルシェンド王国は、今はアウノール陛下だ。マリア王女の弟君に当たる」
母様の弟という事は、私にとって叔父になる。でも、それだけならそこまで問題があるようには思えない。
「そして、アウノール陛下には、御子がおられない。そして、マリア王女と、アウノール陛下の他に兄弟もいない。だから、カオルは今は王位継承権一位に当たる。つまり、次期国王になる可能性が一番高いんだ」
私が……国王様に?王様は、血筋が直系というのに近いほど王様になりやすいって母様に聞いた事がある。でも、それが私なの?
「一応、先王には妹が二人いるが、血筋の近さではカオルの方が上だ。叔母の孫よりも、姪の方が近いだろう?」
私が……次期国王。聖女でさえも拒否しているのに、そんなのもっと無理だ。
「そして、カオルは母君であるマリア聖女と瓜二つなのだろう?だから、アウノール陛下にその顔を見られればすぐに気づかれるだろう。実の姉の顔くらい見た事はあるだろうからな」
「私……どうなるのでしょう?」
他国の次期国王なんて、もうこのような関係ではいられなくなるのは私でも分かる。
そんなのは嫌だ。でも、不安になってしまう。
「聖女が王女だという証拠はおそらくない。貴族の情報網で探ったとしても、聖女とラクエルシェンド王国の王女は結びつけられないだろう。だから、ラクエルシェンド王国の者に会わなければ、おそらくは大丈夫だ」
そう言われて安心した。私が顔を見られないようにすれば、おそらくは大丈夫という事。気をつけよう。
もしかしたら、母様が王女であるという事を知っている人もいるかもしれないから、聖女の力も使わない方が良いかもしれない。
「そうは言ったが……国王には話しておく」
「それって……」
「大丈夫だ。確かにあれは腹黒いが、民思いではあるし、カオルは今は準貴族だ。カオルが嫌だと思うなら、国王も悪いようにはしない。カオルの事を知りたがるのも、国に害がないか知りたいだけだからな」
クラウド様がこう言ってくれるなら、大丈夫かもしれない。
「だが、他の貴族はそうとは言えない。だから最悪、聖女の娘だとは知られても良い。だが、王女の娘だとは気づかれないように気をつけるように」
「はっ……はい」
「では、陛下に報告しよう。カオルはゆっくり休んでいると良い」
「分かりました」
私が返事すると、クラウド様は部屋から出ていった。
「だいぶ楽になってきました」
私が邪気に当てられて倒れてから3日。クラウド様は、毎日かかさずお見舞いに来てくれている。と言っても、ここはクラウド様のお屋敷なので、来ようと思えばすぐに来れるのだけど。
でも、まだルーフェミア様の姿を見ていない。レナード様や、グレンさん、オーヴェ様、マルミア様の姿は見たのに。
セレスティーナ様も来てくれた。その時にルーフェミア様の事を聞いてみたけど、「わたくしは知りません」と返されただけだった。
「クラウド様。ルーフェミア様は……」
「……すまない」
それは、まだ会ってはくれないという事だろう。クラウド様に何度も聞いているけど、ルーフェミア様は部屋から出てこないらしい。
セレスティーナ様に聞いたかぎりでは、怪我をしたという訳ではないらしい。
何で、会ってくれないんだろう。
「カオル。本調子でないのに申し訳ないが、近々国王と謁見する事になった」
「神殿の事……ですか?」
「そうだ。それで、カオルの事を探ろうとしてくる可能性がある。だから、私が代弁しようと思うのだが、神殿で何があった?」
そう聞かれたので、私は全部話した。ティルの事も、ナルミス様の事も、司教様の事も。出来るだけ、分かりやすく。
「そうか。ティレツィア嬢が地下に囚われていたのはどうやって知ったんだ?」
「レティア神から……お聞きしました」
そう言うと、クラウド様は驚いたような表情をした。
でも、すぐに普通の表情に戻る。
「その事は話さない方がいいな。ティレツィア嬢の事は、ナルミス神官から聞いた事にしよう」
あの時、私が考えた咄嗟の言い訳と同じ考えだ。でも、その方が良いよね。
ずっと言い出せずにいたけど、母様の事……聞いてみようかな。クラウド様は公爵様だから、何か知っているかもしれない。レティア神は、詳しく教えてはくれなさそうだから。
「あの……クラウド様」
「なんだ?」
「レティア神から聞いたのですが……母様の旧姓は、マリア・フォルスト……というそうです」
「フォルスト……神聖国の王家の名じゃないか!」
そういえば、母様の国は、神聖国とも呼ばれているってレティア神が言っていたな。
神官が生まれやすいんだったっけ。
「それで……何か知りませんか?レティア神は、これ以上の事は教えてくれなくて……」
「……病弱で、存在だけが知られて、表に出てこなかった王女がいた。多分、それがマリア聖女だろう。その王女の名もマリアだったからな」
「レティア神は、当時の国王様が、王女様が聖女になった事を公表するつもりだったそうですが、母様とレティア神が拒否した……と聞いています」
母様達が拒否したから、王女様を病弱という事にしたんだろう。聖女になったら、神殿からは離れられない。でも、王女がいない事を気づかれてもいけない。そんな思いで、王女様を閉じ込めたんじゃないだろうか。
「カオル。そうなると、少し問題がある」
「問題……ですか?」
「ラクエルシェンド王国は、今はアウノール陛下だ。マリア王女の弟君に当たる」
母様の弟という事は、私にとって叔父になる。でも、それだけならそこまで問題があるようには思えない。
「そして、アウノール陛下には、御子がおられない。そして、マリア王女と、アウノール陛下の他に兄弟もいない。だから、カオルは今は王位継承権一位に当たる。つまり、次期国王になる可能性が一番高いんだ」
私が……国王様に?王様は、血筋が直系というのに近いほど王様になりやすいって母様に聞いた事がある。でも、それが私なの?
「一応、先王には妹が二人いるが、血筋の近さではカオルの方が上だ。叔母の孫よりも、姪の方が近いだろう?」
私が……次期国王。聖女でさえも拒否しているのに、そんなのもっと無理だ。
「そして、カオルは母君であるマリア聖女と瓜二つなのだろう?だから、アウノール陛下にその顔を見られればすぐに気づかれるだろう。実の姉の顔くらい見た事はあるだろうからな」
「私……どうなるのでしょう?」
他国の次期国王なんて、もうこのような関係ではいられなくなるのは私でも分かる。
そんなのは嫌だ。でも、不安になってしまう。
「聖女が王女だという証拠はおそらくない。貴族の情報網で探ったとしても、聖女とラクエルシェンド王国の王女は結びつけられないだろう。だから、ラクエルシェンド王国の者に会わなければ、おそらくは大丈夫だ」
そう言われて安心した。私が顔を見られないようにすれば、おそらくは大丈夫という事。気をつけよう。
もしかしたら、母様が王女であるという事を知っている人もいるかもしれないから、聖女の力も使わない方が良いかもしれない。
「そうは言ったが……国王には話しておく」
「それって……」
「大丈夫だ。確かにあれは腹黒いが、民思いではあるし、カオルは今は準貴族だ。カオルが嫌だと思うなら、国王も悪いようにはしない。カオルの事を知りたがるのも、国に害がないか知りたいだけだからな」
クラウド様がこう言ってくれるなら、大丈夫かもしれない。
「だが、他の貴族はそうとは言えない。だから最悪、聖女の娘だとは知られても良い。だが、王女の娘だとは気づかれないように気をつけるように」
「はっ……はい」
「では、陛下に報告しよう。カオルはゆっくり休んでいると良い」
「分かりました」
私が返事すると、クラウド様は部屋から出ていった。
0
あなたにおすすめの小説
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~
ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。
そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。
「荷物持ちでもいい、仲間になれ」
その言葉を信じて、俺は必死についていった。
だけど、自分には何もできないと思っていた。
それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。
だけどある日、彼らは言った。
『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』
それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。
俺も分かっていた。
だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。
「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」
そう思っていた。そのはずだった。
――だけど。
ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、
“様々な縁”が重なり、騒がしくなった。
「最強を目指すべくして生まれた存在」
「君と一緒に行かせてくれ。」
「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」
穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、
世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい――
◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。
さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。
聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。
だが、辺境の村で暮らす中で気づく。
私の力は奇跡を起こすものではなく、
壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。
一方、聖女として祭り上げられた彼女は、
人々の期待に応え続けるうち、
世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる