聖女と邪龍の娘

りーさん

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第二章 神殿の少女達

第56話 再びの王城

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「今から王城に行くぞ」

 ……えっ?あの時、クラウド様はゆっくり休んでと言っていた。それなのに、昨日の今日で王城に行くの?

「クラウド様。もうお呼びなのですか?」
「神殿の件ではなく、王女の娘の件で内密に呼ばれている」
「……分かりました」

 多分、拒否は出来ないだろうと思い、了承した。

「そうだ。国王から聞かれるかもしれないから、もし聞かれたらこう答えるんだ」

ーーーーーーーーーーー

 そして、馬車に乗って、王城に来た。こっそりと呼び出されているので、裏口から入る事になり、そこから国王様がいる執務室に向かった。

「よく来たな」

 そこにいる国王様は、最初に会った時とは雰囲気が全然違った。最初はすごい威厳があったけど、今はそれなりに親しみを持てそうな感じだった。

「仕事が押していてな。そこに座ってくれて良い」

 そう言われたので、客用に置いてあったと思われるソファに座る。

「クラウド。少し席を外してくれ」

 早々にクラウド様に退出を命じてきた。

「お言葉ですが陛下。私もお呼びになられたではありませんか」
「大丈夫だ。部屋から出てくれるだけで構わん。話が終わったら再び呼ぼう」
「……かしこまりました」

 嫌々といった感じだったけど、クラウド様は出ていった。
 今ここには、私と国王様の二人きり。大丈夫かな。バレたりしないかな。

『いざとなれば私が止めてやる』

 急にリーズが話しかけてきた。

『もう大丈夫なの?』
『いや、話せるくらいだな。まだ表には出られない』

 それでも、話せるだけでも嬉しい。早速、この水晶が効果が出てきたのかもしれない。

「さて、カオル嬢」
「……はい」
「クラウドからある程度話は聞いた。それを踏まえて、そなたに聞きたい事がある」
「……何ですか?」

 クラウド様が腹黒い腹黒いと言っていたので、無意識に警戒してしまう。
 腹黒いのも本当かもしれないけど、もしかしたら、私の嫌がる事はしないというのも本当かもしれない。
 そういう風に思っているから、嫌う事は出来ない。

「そなたの母親が王女だとどうやって知ったのだ?」
「……ナルミス様から聞きました。ナルミス様も、ラクエルシェンドから来た人の噂話で知ったそうですけど。私は、母親と顔が瓜二つですから」

 この答えは、クラウド様から言われた事。ナルミス様と口裏は合わせてあるから、こう答えるようにと言われた。
 何があっても、レティア神と会話出来る事は話してはいけないと。
 神官は、ラクエルシェンドの者が一番多いらしいし、母様もラクエルシェンド王国の王女だから、おそらく大丈夫だろうと。

「では、次に。ダグラス司教がそなたを誘拐した本当の理由・・・・・に心当たりは?」

 これも大丈夫だ。隠し事を話さなければ良いだけだから。

「……司教様は、邪神を目覚めさせるつもりだったようですが、その方法が書かれた精霊語が読めなかったそうです。それで、精霊と話せる私なら分かるのではないかという事で、連れ去ったと……本人から聞きました」

 嘘は言っていない。司教様は、私を聖女と邪龍の娘だという理由でも連れ去ろうとしたけど、こっちもそうだ。
 もしこう聞かれたら、クラウド様はこっちを話せと言った。精霊語が分かる人は少ないが、いない訳ではないし、精霊と話せるから、分かっててもおかしくないと思われるだろうと言っていた。

「して、読めたのか?」
「あくまでも、少しだけです。完璧に読める訳ではありません」

 だからこそ、みんなには人間の言葉を話してもらっている。カタコトだけど、私の精霊語よりも、断然うまい。
 私も、精霊語を話せるようになった方が良いのかな。勉強したら……

「分かった。もういい」

 それだけ言うと、ドアの方に顔を向ける。

「クラウド、入って良い」

 その声が、決して狭くはない部屋に響いた。声の大きさは、あまり変わらないと思うのに、声が響いている。
 少しして、クラウド様が入ってきた。

やっと・・・終わったようですね」

 なんか、やっとがすごく重みを感じて聞こえた気がした。
 心なしか、少しイライラしているようにも見える。

「では、カオル嬢はどうなるので?」
「公表はせん。我らは王女と会った事はないからな。顔を知らなかったで通せるだろう。それで文句を言ってくるようなら、なぜ捜索しなかったのかとつつけば良い」
「私は、これまで通りで良いんですか?」
「構わん。王としては、他国にそなたが出ていくのは致命傷だ。無論、そなたが嫌がるのであれば、戦力には使わんがな」

 戦力……つまりは、戦争に出なくても良いという事だろう。それなら良かった。みんなに、人を傷つけるような事をしてほしくはないから。

「私は……皆さんと楽しく過ごせれば、それで良いです」
「あいわかった。では、もう帰っても構わん。送らせよう」
「は、はい!」

 なんとか、聖女の娘だとはバレなかったみたい。そう思ったら、一気に緊張が解けた。

『皆さんと楽しく』

 そう言ったからには、向き合わないと。待ってるだけじゃダメだ。
 ……私から、ルーフェミア様に会わないと。
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