聖女と邪龍の娘

りーさん

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第三章 学園の少女達

第63話 魔憑きの少年

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「はぁ……」

 俺は、ため息をついていた。次は、精霊学。そして、聞いた話では、三年の後輩が契約の手伝いをしてくれるという。
 三年の後輩の噂は聞いている。同じ公爵家のクルメンディアとファルメールの令嬢達と友人関係にあり、精霊に好かれ、精霊と話し、強力な精霊術が使える。あと、一目惚れするくらいの美少女だとも言っていたような気がする。そんな特別な少女だと。
 噂でしか聞いた事がない俺にとっては、そんな誰でも知っているような事しか知らない。俺は魔憑きだから、仲良くしようとしてくる奴はあまりいない。
 今は、魔力を抑える魔道具を数個つけているから安定しているが、今でも感情的になってしまうと、魔力は暴れてしまう。それなら、いっそ一人でいれば良いと思った。
 人と関われば、いつか感情的になる事はある。だから、どうしても話さなければならない時以外は話さなかった。向こうも話そうとはしてこないし。

 本当は授業になんて出たくない。俺は魔憑きではあるけど、加護持ちでもあるから、精霊がよく見える。火、闇、風の加護の三つを持っている。だからかは知らないが、その三つの属性を持つ精霊達がよく寄ってくる。
 ただでさえ強いのに、これ以上強くなりたくはなかったから、見えないふりをしていた。加護は目で見て分からないから、気づかれる事はなかった。
 そんな訳で、精霊で溢れているような場所には行きたくはなかった。
 いつも出たくない授業はサボっている。だが、魔憑きでも跡取りとして育ててくれている両親にあまり迷惑をかける訳にはいかないので、とりあえず出席はしておこうと思った。

ーーーーーーーーーーーーーー

 精霊のいる森に来た時、教師の隣に白いフードを被った少女がいた。人見知りなのかは知らないが、教師の後ろに隠れていた。それと、フードを被っているので、顔はあまり見えない。

「この子は、カオル・テレスティリアさんです」

 そう言われて、彼女は教師の隣に立った。

「よろしくお願いします」

 そう言って頭を下げて、顔をあげた時に、ハッキリと顔が見えた。それは、本当に一目惚れする者が何人も出てきそうな顔立ちだった。儚くて、壊れてしまいそうな、そんな守りたくなるような少女だった。
 あれなら、精霊が好いていてもおかしくないかもな。周りは顔を赤くしているのもいたが、俺はそれが第一印象だった。

ーーーーーーーーーーーーーー

 俺は、後輩である彼女から離れた所で座っていた。

 彼女は、丁寧に敬語を使って、みんなの契約の手伝いをしている。契約が成功すると、「やりましたね!」とか、「精霊達も喜んでますよ」と自分の事のように喜んで、微笑みかけていた。
 美少女からそんな風に微笑まれたから、それで顔を赤くしているのも多かった。同じ女なのに、顔を赤くしているのもいたくらいだ。
 そうしたら、何か絡まれているのを見た。あれは、クラスでも乱暴な奴だ。魔憑きである俺をよく馬鹿にしている。だが、俺はそれを魔力が強い俺に対する嫉妬だと知っているので、相手にしていなかった。

「おい!なんで俺には何も言わねぇんだ!」

 今にも彼女に掴みかかりそうになっている。それに怯えるような表情を見せながらも、彼女は言い返した。

「あなたの事を好いている精霊がいませんので」

 俺にも精霊が見えているから分かるが、そいつの周りには精霊が寄っていなかった。むしろ、俺に寄ってきた精霊は、俺を馬鹿にしてくるそいつを睨んでいたようにも思えた。
 何か口を動かしていたが、姿が見えても声は聞こえない俺には何を言っているのかはさっぱりだった。

 そんな事を考えていると、何か音が聞こえて、意識は現実に戻された。まさかとは思ったが、そいつが彼女を殴っていた。いくらなんでも、暴力は振るわないだろうと思っていたのだが、そんな心はあいつにはないらしい。
 周りもそこまではやると思っていなかったのか、おろおろするばかりだ。
 さすがに止めに入った方が良いかと思って、立ち上がる。
 何か殺気のようなものを感じてそちらの方を見ていると、精霊が親の敵でも見るような目であいつを見ていた。今にも精霊術をあいつに放ちそうだった。

「やめとけ。彼女にも当たる」

 彼女が精霊と話せるなら、俺の言葉も理解出来るかと思って、そう言って止めた。

『カオルサマ、ナグッタ。コロシテ、ナニガワルイ』
『ソウダ。トメルナ、ルドニーク』

 そんな声が脳内に響いた。俺は、すぐに精霊だと気づいた。彼女もこんな風に会話しているのかと思った。

『コレハ、テレパシー。カンオウリョク、タカイニンゲンシカ、キコエナイ』

 カンオウリョク……感応力か!魔力の感応力は聞いた事はある。それが高いと、相手の魔力を感知出来るため、相手が近づいているのも分かるそうだ。
 確かに、俺は誰かが来ればそちらの方を見ていなくても気づいた。それは、感応力が理由だったのか。

「……うん?待て、カオルサマってなんだ?」

 いくらなんでも、様をつけて呼ぶのは普通ではないのではないだろうか。少なくとも、俺の事は呼び捨てだった。

『カオルサマハ、レティアカラ、シュクフクサレテイル。サマ、ツケルノハ、アタリマエ』

 レティア神から祝福を貰っているのか……もしかして、それで会話出来るのか?彼女が精霊術を使えるのは、加護のおかげだろう。だが、加護だけでは声は聞こえないはずだ。それなのに、聞こえるなら、別の理由がある。そう考えるのが普通だ。

『モウ、イイダロウ。トメルナ、ルドニーク』
「分かった。俺が止めてくるから、お前らは何もするな」

 そう言ったら、やっと殺気を出すのを止めてくれた。その代わりに、早く行けとでも言うように見てくる。
 本当は面倒くさいからやりたくないのだが、さすがに自分より年下の少女が殴られたのを黙って見ていられるほどではない。

「何してるんだ」
「……なんだ、ルドニークじゃねぇか。今日はサボらねぇのか」

 こいつの言葉にはムカつくが、いつもサボっているのは事実なので、それについて言い返しはしなかった。

「別に単位はとっているから問題ない。お前は平気かは知らないが」

 俺が知っている限りでは、こいつは成績が危うい。きちんと進級出来るだけの成績がとれているとは思えなかった。

「あぁ、そうかよ!」

 そう言って、どこかに行ってしまった。これは、いつもの光景だ。あいつは、何かと俺に突っかかってくるが、俺に一言二言言われるとすぐに退散する。だから、あいつは煩わしいと思っていた。

「平気か?」
「私は大丈夫です」

 そうは言っているが、頬が少し腫れている。精霊がぶちギレたのがなんとなく分かるな。

「あの……あなたは?」

 俺の事を知らないのかと思ったが、編入したばかりなら俺の噂を知らないのかもしれないと思って、軽く自己紹介した。

「ルドニーク・ヴァレリーフ。四年の魔憑きの噂は知らないか?」

 そう聞いたら、その話は聞いた事があったのか、「あなたが……」と、納得したような表情をした。
 そして、俺の方に近寄ってくる。

「少し、お話出来ませんか?」

 俺にしか聞こえないような小声でそう言った。どうせ暇だったし、断る理由はないので、俺は了承した。
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