聖女と邪龍の娘

りーさん

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第三章 学園の少女達

第64話 ブレスレット

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 授業の終わりに、この少女と話す事になった。自分で言ってきたのに、もじもじするだけで何も話さない。仕方ないので、こっちから話を振る事にした。

「……何か用があるんじゃないのか?」
「はい……えっと、友人からあなたが魔憑きだと聞いたので、その……」

 あまりはっきりと言わない彼女に、もしかして、人見知りなのか?と思った。あの時は結構はっきりと言い返していたように思えたが、彼女が自分から話しかける事はあまりなかった。向こうから話しかけてくるのを待っているような感じだった。
 話しかけられたら答えるが、自分から話す事はないのかもしれない。

「俺が魔憑きだから、なんだ?」
「これを……まだ、試作品の段階ですけど……」

 そして、茶色いブレスレットのようなものを渡してきた。まさか、物を渡されるとは思っていなくて、理解するのに少し時間がかかった。

「えっと……試作品ってどういう事だ?」
「浄化魔法をこめたんですけど……まだ効果があるのか分からないので……」

 またもじもじしながら答えた。浄化魔法は、聖属性を持っているか、水の精霊と契約しないと使えないはずだから、彼女も契約しているのかもしれないな。
 魔憑きの魔力は、浄化すれば抑えられるのは有名だ。だから、俺もこの浄化の魔道具で抑えている。だが、浄化の魔道具は希少なので、滅多に手に入らない。くれるというのだから、貰わない理由はない。

「…………それなら、確かめておく」

 ありがとうも言えないのか俺はと思ったが、彼女はニコニコと笑いかけてきた。

「ありがとうございます」

ーーーーーーーーーーーーーー

 寮の部屋に戻って、貰ったブレスレットを見てみる。気のせいかもしれないが、俺が今身につけている物よりも、効果が高いような気がした。

「ルドニーク様、どうされましたか?」
「……気配を消して近寄るなと言っただろう、アゼル」

 気づかぬうちに後ろに立っていたのは、従者のアゼル。貴族は使用人を連れてくるのを許可されている。授業中は待機部屋にいるが、寮内では出歩くのを許可されている。
 ……まぁ、こいつは普通の使用人ではないが……

「すみません、つい癖になっているものでして」
「その癖を治せと何回言えば分かるんだろうな、お前は」
「それよりも、先ほどから何を見ておいでで?」
「カオルという少女から貰ったものだ」

 俺がそう言うと、アゼルは感動したように泣きそうな表情になっていた。

「……言っておくが、お前が思っているような関係ではないからな」
「はぁ……友人でもないのですか?」

 主に向かって、はっきりとため息をつけるのは、こいつくらいだろうな。

「初対面だぞ?しかも、魔憑きの俺と友人関係になりたい奴など、そういるものではないだろう」

 下手すれば、自分の身が危ないかもしれないのに、そのリスクを承知で友人になりたい者など、いないに等しいだろう。誰だって、自分の身が一番可愛いものだ。

「一人くらい、友人を作ってくださいよー。一人サボっているルドニーク様を見るたびに悲しくなるのです」
「大きなお世話だ」

 口ではそう言いながらも、こいつのフランクな感じは嫌いではない。こいつは認めないだろうが、顔見知り以上とは思っているのだ。

「……これ、妙ですね」

 いつの間にか、俺の持っていたブレスレットを取り上げると、じっと見つめてそう言った。

「何が妙なんだ?偽物でも掴まされたか?」
「いえ、浄化の魔道具である事は間違いないのですが、ルドニーク様が着けておられるものよりも、数段は効果が高いです」

 それを聞いて、気のせいではなかったのかと思った。アゼルは鑑定持ちだ。アゼルが見たなら間違いないだろう。

「それは、カオル自身がこめたものだそうだ」
「これをですか!?それなら、彼女は聖属性持ちなのでは……」

 さすがにそれを言われたら驚いた。聖属性は、希少属性だ。国に一人でもいたら良い方だというくらいしかいない。それ以外なら、癒しの加護を持つ神官に頼るしか、回復させる手段はない。だが、それも聖属性持ちには劣る。

 公爵令嬢と同部屋になる訳だ。普通は、身分が近い者を同部屋にする傾向があるが、当主とはいえ、準貴族と、公爵令嬢が同部屋なのは異例だった。
 おそらく、学園長は知っていたのだろう。それで、護衛も兼ねて公職令嬢と同じにしたのだ。

 ……もしかして、精霊がカオルサマと呼ぶのは、それもあるんじゃないか?と思った。

 効果の高い浄化魔法が使えて、精霊と話すなんて、物語に出てくる聖女のようだ。……それはないか。
 聖女は、裏切り者として邪龍と討伐されているし、それから後継者となるようなものは現れていない。聖女以外にも、聖属性を使う存在は多くはないがいた。きっと彼女もそれだろう。

「じゃあ、それも着けておいた方が良いんだな」
「“良い”ではなく、着ける“べき”ですよ!」
「はいはい」

 俺は、お守りにはなるかと思いながら、ブレスレットを腕に嵌めた。
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