聖女と邪龍の娘

りーさん

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第三章 学園の少女達

第87話 夢からの脱出

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「リーズ、どうやったら元の場所に戻れるのかな」

 先ほどから辺りをぐるぐると回っている。
 今は、私が目覚めた場所を探っているところだった。ここには、出口がないんじゃないかと思い始める。

「それは分からないが、とりあえず、私が目覚めた場所にも行ってみるか」

 リーズが、手を引いて私を案内してくれる。
 そこに向かうと、人間達が何かしている。そして、木の影に隠れるように、小さな私がいた。
 これは、父様が死んだときだっけ。

「……カオル。行くぞ」

 リーズは、私の手を引いて、また引き返し始めた。

「あの、調べなくても……」
「後で私が調べる。それに、あれば気づいている」

 それだけ言って、どんどん離れていく。多分、私が父様が死んだときに大泣きしていたから、それを思い出させないためだろう。リーズは不器用なところがあるけど、とても優しいから。

 あれから、いろいろ歩いてみたけど、出口は見つからなかった。ここは、現実の世界ではないはずなのに、歩き回ったから疲れてしまって、私はその場に座り込む。
 リーズも、隣に座ってくれた。

「そういえば、お互いの顔を見るのって、初めてだよね」
「自分と同じ顔だろうが」

 呆れたような口調はしながらも、目は笑っている。リーズも、きっと同じ気持ちだ。私たちは、姉妹のように育ってきたのに、お互いの姿を見たことがない。それが、あの邪神の攻撃を受けたからとはいえ、リーズの姿を見られて嬉しい。

「そういえば、あの時に言っていた、邪神の存在意義ってなんなんだろうね……」

 ずっと気になっていた。ナティーシャ様が言っていた。アルダ様が、分かっていないと言われていたもの。

「父上からの記憶伝達で、多少は知っている」
「えっ?そうなの?」
「邪龍は、邪神が生み出したものだからな」

 そういえば、そうだった。それなら、邪神の事も、それなりには知っているはずだ。

「詳しくは知らないが、邪神がいないと、世界のパワーバランスが崩れるんだそうだ。それで、東西南北に存在する」

 そう言われて、余計に分からなくなってしまった。でも、体力は戻ってきたので、私はもう一回立ち上がる。

「よし!もう一度探そう!」
「そうだな」

 そして私達が歩きだそうとすると、声が聞こえてくる。

「コッチ」

 聞き覚えのある声。私は不思議に思ったけど、そっちについていってみる。

「あっ、おい!どこに行くんだよ!」
「声が聞こえないの?」

 明らかに、精霊たちの声なのに。

「なんとなく聞こえたような感じはするが……」

 リーズは、はっきりとは聞き取れていなかったみたい。それなら、私が案内するしかない!

「こっちだよ!」

 今度は私がリーズの手を引いて、走り出した。精霊達の声を頼りに。精霊達は、あっちへこっちへ案内するけど、それについていくと、光が見える。
そして、私は思いきってその光に飛び込んだ。そのとき、光の中に飛び込んだはずなのに、目の前が暗くなった。

「……ル。カオル!」

 私を呼ぶ声がする。そして、ゆっくりと目を開けると、目の前にリーズの顔があった。

「リーズ!?えっ?なんで?」

 どう見ても、私が表に出ている。それどころか、リーズはフードを被っていない。
 私は、辺りを見渡すと、もっと信じられないものが目の前に映った。

「ねぇ、リーズ……あれ」
「あれ?」

 私の言葉を聞いて、私の指差している場所をリーズが見た。すると、リーズも信じられないという目で見ている。

「あれって……」
「……母様」
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