聖女と邪龍の娘

りーさん

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第四章 隣国の少女達

第103話 厄災の始まり 2

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 時間は戻り、ガーノルドがラクエルシェンドへとやってきていた頃。

「……やはり、ここは息が詰まる」

 神聖国とも称されるラクエルシェンドは、邪龍であるガーノルドにとっては、お世辞にも心地良い空間ではない。
 マリアと関わりがなければ、間違いなく訪れる事はなかった場所だ。

「ここでは黒髪は目立つから、隠すか偽装した方が良い」

 後ろから声がするが、ガーノルドが振り返る事はない。どうせ追ってくるだろうという予測はしていたからだ。

「アルダ。お前はここにいて平気なのか」
「俺の心配してくれるのか?あいにくと、神聖国の聖なる気よりも、ロードライト様が近くにいる事の方が息が詰まるよ、俺は」

 欠片も尊敬していないくせに、きちんと敬称をつける所は、邪神らしさを感じさせる。
 邪神にとって、たとえ忠誠心がなくとも、真の厄災は主のようなもの。呼び捨てはもっての他というものだ。

「偽装はそう難しい事ではないが……あいつらは城に行っているようだから、どちらにしても会う事は出来ない。真の厄災の方から手をつける」
「そうは言っても、俺は本調子ではないから探れないぞ?」

 本来ならば、邪神と真の厄災はお互いの居場所がなんとなく分かるのだが、聖なる気は、そんな邪な力を抑えられる。そのために、方角は分かったとしても、正確な位置は分からない。
 アルダが言うと、ガーノルドは笑みを浮かべる。

「問題ない。すでに目星はついている」

 そう言うと、ガーノルドはアルダの腕を掴み転移した。

ーーーーーーーーーーーーーー

 ラクエルシェンドの辺境。人影すらも見えないような場所に、ボロボロの建物が建っている。

「ここは……カナエの所か」

 西の邪神であるアルダには、人目でここが南の邪神のカナエがいる神殿だと気づいた。

「ああ。奴が協力を取りつけるとしたら、南北の邪神からだろう。東は面倒でしかない」
「だが、ロードライト様の気配はないぞ。……邪気は残っているみたいだが」
「誰のだ?」
「多分……レギウスだな」

 同じ邪神とはいえ、纏っている邪気には違いが出る。
 ガーノルドにはその細かな違いは分からないが、アルダは選別する事が可能だった。

「なら、もう動き出すと見るべきか」
「ああ。あいつはロードライト様への忠誠心が高い故に、ロードライト様の命令以外で自分の管轄の外に出る事なんてないからな」

 邪神は、活動する地域が決まっている。
 世界の中心から東西南北のそれぞれの方位のみを活動範囲としている。
 そして、自分の活動域のおよそ中心の辺りに神殿がある事が多い。
 そのため、自ら向かう意思がない限り、迷い込むという事はないと言える。

「それで、ロードライト様を殺したりでもするのか?」
「いや、足止めと後始末くらいで良いだろう。今回の厄災は、あいつらが止めるべきだ」
「……まぁ、今の・・お前では、ロードライト様は殺せないか」

 じっとガーノルドの方を見ながら、アルダはボソッと呟く。
 決して、ガーノルドが弱い訳ではない。
 確実に殺せるという訳ではないが、短期戦ならば、有利なのはガーノルドの方だ。
 それでもアルダが無理だと決めつけているのには、理由がある。

「そろそろだからな。話す時間も惜しい。首都へと向かうぞ」
「最後まで偉そうな事で」

 憎まれ口を叩くアルダに、ガーノルドは少し視線を向けたが、すぐに首都へと転移する。
 アルダも後を追うように転移した。
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