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1巻
1-2
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黄は、土……というか、地面系全般を司る。土を自在に操ったり、岩を生み出したりするだけでなく、その能力の延長で植物を操ることができる者もいるらしい。赤や青とは違って、耐性は得られないけど、植物が育ちやすくなったり、土の良し悪しがわかったりすることもあるようだ。農家の人たちは、たいていは黄魔法の適性があるそうだ。
緑は風の魔法で、風を起こして攻撃することができる。さらに、風の力で物を自在に動かすことも可能なので、念力のようにも使えるらしい。自分にその力を使って、空を飛ぶことすら可能だ。
自在に空を飛び回れる魔法なんて想像するだけでわくわくする。
緑魔法の適性があればいいな、と僕は思っている。
緑魔法の適性があると、音を聞き分けたり、風に乗る音を聞いたりして、ある程度周囲の状況を把握できる力も得られるようだ。結構便利かも。
白は、回復魔法や浄化が使える。ただ、奇跡みたいな力を起こせるからか、適性がある人が少なく、白魔法の所有者は引っ張りだこになるらしい。白の適性があるだけで、その後の生活に困らないとまで言われているとか。しかも所有者自身も病気になりにくかったり、ケガの治りが早くなったりするそうで、結構羨ましい。
黒は、闇魔法。辺りを暗くしたり、影から影に移動するなんてトリッキーな力が使える。噂では、他の色魔法の真似事もできるそうだけど、本当かは知らない。そして、黒魔法には怖いところもある。なんと呪いが使えるのだ。
だから、貴重さは白魔法と同じくらいなのに、差別されることも多いらしい。
僕が家族から気味悪がられることはないと思いたいけど、怯えられたら嫌だから、僕としては黒の適性は欲しくない。
白と黒の適性も珍しいけど、それよりもっと希少なのが金と銀だ。国に一人いるだけですごいらしい。
金は、支援を得意とする色魔法である。
体に魔力を纏って身体能力を上げたり、体を硬化させて防御力を高めたりすることができる。
他の色魔法の適性を一緒に持っていれば、その魔法の力を武器に付与するなんて使い方も可能だ。
銀は、空間魔法。瞬間移動したり、異空間に物を収納したり、一定の空間を隔離してその中の物を守る、いわゆる結界を張ったりする。
この二つが他の色魔法よりすごいのは、自分以外の味方などにも効果を付与できること。
どちらも軍隊が欲しがるくらいの力だ。ただ、適性者が少なく、金魔法や銀魔法を使う軍隊はよほどの大国でないと存在しないらしい。
魔法陣魔法は、名前の通り、魔法陣を描き、そこに魔力を通して使用する魔法だ。
魔道具を作る時や大規模魔法を発動する時は重宝するけど、日常で使うことはほとんどない。
ただ、色魔法にはないメリットもあって、十分な魔力さえ持っていれば、色の適性に関係なく様々な効果を一時的に使うことが可能だ。
今から僕に魔法を見せようとしてくれているレオンが持っているのは、青と緑の適性だ。つまり水魔法と風魔法が使える。
家の中で風魔法を使用するのは危険なので、主に使ってくれるのは水魔法だ。
レオンが僕を膝の上に乗せて、ぶつぶつと呪文らしきものを唱える。
その直後、小さい水の塊がレオンの指先に出現した。
「ほわぁー!」
何度見てもすごい。ファンタジーのマンガやアニメの中でしか知らない光景が、目の前で繰り広げられ、僕は感嘆の声を上げた。
レオンは、そのままくるくると指を動かして、水を操る。その指の指示に従うように、水がゆらりと宙を舞い、どんどん膨張していく。
ちょ、ちょっと? 危なくない? 大丈夫?
「にー! おーき! ちーしゃ!」
大きいから小さくしてと言ったつもりが、よくわからない単語の羅列になってしまった。
レオンには意味は通じたようだけど、ふふっと笑って「大丈夫だよ」と言うだけだった。
僕がハラハラしながら水の行方を見ていると、水は膨らまなくなり、ぐにゃぐにゃと歪んでいく。
そしてどんどん形を変えて、長細くなっていった。次第に動きが細かくなって、まるで彫刻でも作るかのように、少し縮んだり、模様が浮かび上がったりしていく。
見た目がどんどん人間に近づいていくのに気づいた辺りで、水が見覚えのあるものへ形を変えていた。
レオンの操作が終わるのと僕が指を差したのは、ほぼ同じタイミングだった。
「かーしゃ!」
「そうだよ。そっくりでしょ?」
自慢げに言うレオンに、僕はこくこくと頷く。
髪や指の長さ、微笑んだ時にできるえくぼまでそっくりだ。魔法って、こんなこともできるのか。
僕も、早く使ってみたい。
家族の目があるから、練習するタイミングがなかなかできないんだけど。
僕が喜んだことで、レオンも嬉しくなったのか、続けて提案してくる。
「父さんも作れるけど、見たい?」
「いやない!」
まぁ、それはいいかな。
僕が笑顔でそうバッサリ言い切ると、レオンは顔をひきつらせた。
◇ ◇ ◇
時間がすぎるのは早いもので、三歳になった。
走り回ることができるようになった僕の行動範囲はますます広がり、家が手狭になってきている。
この家は、決して裕福ではなく、僕が走り回れるような広いスペースがない。
でも、僕は動きたい盛りの子どもだ。
これも体が三歳児という影響なのか、動かないとむずむずして仕方ない。
「にーに! おしょとー!」
「わかった。外行こうか」
そのため体を動かしたいとなれば、外に出るしかない。
僕がレオンにねだると、すんなり了承してくれた。
歩けるようになったことで、僕は誰かと一緒なら外出してもいいという許可をもらっている。
でも、僕の世話に手がかからなくなったことで、母さんが働きに出るようになり、両親とはあまり長い時間一緒にいられないんだよね。
母さんに代わって家にいてくれるようになったレオンのおかげで外出できている。
僕がレオンと一緒に階段を降りると、一階で仕事をしていた両親が僕たちに気づいた。
キッチンにつながるドアから顔を出して声をかけてくる。
「外に行くの~? 気をつけなさいよー」
「あんまり遠くに行くんじゃないぞー!」
僕たちは母さんたちの言葉に、くるりと振り返って応える。
「あーい!」
「わかってるよ、母さん! 父さん!」
お仕事の邪魔にならないうちに、裏口からそそくさと外に出た。そして、裏口と面している脇道を抜けて、大通りに向かう。
「ほわぁー!」
僕は感嘆の声を上げた。いつ見ても新鮮に感じる大通りの風景だ。
いつもなら大通りには出ず、この辺りをうろうろするくらいなのだが、今日はこの先へ進める!
僕はキョロキョロと辺りを見回して、レオンに手当たり次第に質問した。
「にーに! あれ! あれなに⁉」
「あれは果物を干しているだけだよ」
「あしょこは⁉」
「露店街だね。みんなあそこで食べ物や布を購入するんだよ」
「わぁー!」
大通りに出るのが初めてな僕は、興奮が収まらない。ちょっと考えればわかるようなことも、レオンに聞かずにはいられなかった。
土を踏む感触、往来する人々、騒がしいくらいの人の声は、前世で飽きるほど経験してきたことだけど、なぜか未知の世界のように感じた。
「ルイ、くだものほしい!」
せっかくここまで来たのだから、ショッピングくらいしたい。
果物はこの辺りでは栽培されておらず、輸送費がかかる分、平民から見ると少し高値だ。
家でも、果物が出たことはあまりなく、レオンもたまにしか口にしたことがないそうだ。
またいつ外出できるかわからないし、贅沢だけどおねだりくらいは許してもらおう。
「じゃあ、少し買っていく? お金に余裕はないから一つか二つになるけど……」
「ほしい! たべたい!」
転生してから、一度も甘味を口にしていない。
果物を一口くらいかじってみたいという気持ちが抑えられなかった。
「じゃあ、行ってみようか」
「やったー!」
僕は子どもらしく両手を上げて無邪気に喜ぶ。
体に引っ張られて、感情が勝手に表に出ることは多いが、こういう大げさな動作はたいてい演技だ。うっかりすると、子どもっぽく見えない行動が出てしまいかねないので、年相応に見えるように意識する必要がある。
それというのも、家族には転生のことは秘密にしているからだ。不気味に思われたくないし、変な団体に目をつけられて今の環境を壊されるのも嫌だ。ラノベとかでは、転生者という理由で頼られたり狙われたりするらしいからね。
「にーに。これなぁに?」
露店街にたどり着いた僕は、真っ先に目についた、リンゴらしきものを指さす。
「ああ、それはエルパだよ。少し酸っぱいけど、甘くておいしいよ」
おお、名前は違うけどリンゴと同じ特徴だ。
リンゴ好きの僕としては食べてみたいし、購入する候補に入れておこう。
「あれは~?」
今度は、赤い小ぶりな果実を指さした。
「あれはベリーの実だね。エルパより酸っぱいから、エルパのほうが少し人気みたいだね。僕は食べたことないからわからないけど」
うん、見た目も説明もイチゴっぽいね。イチゴ。
前世で見た食材と同じような名前もあれば、まったく違う名前もあるんだ。でも、味とか見た目は同じみたい。魔物がいる世界でも、植物は似るものなのか。
他の果物も並んでいるけど、レオンのお財布事情を考えると、このどちらか一つに絞られそうだ。
リンゴとイチゴ。どっちもおいしいけど、僕の今の気分は……
「にーに! エルパたべたい!」
「わかった。一緒に買おうか」
レオンは、僕の手を引きながら、エルパを売っている店の前に立った。
「エルパを一つ」
「三十リエだよ」
レオンは、懐から銅色のお金らしきものを三枚取り出して渡す。
ほほう。銅貨一枚で十リエか。前世の頃と価値が同じと考えると、一リエは十円くらいかな?
自分でも買い物することがあるかもしれないし、覚えておこう。
レオンが、エルパを一つ取り、僕に渡してきたので、僕はそれを受け取ってがぶりと噛みつく。
味は、前世で食べたリンゴと変わらないどころか、こちらのほうが甘味が強くておいしかった。
これで三百円は安い!
「にーに、エルパおいしい!」
僕が無邪気に喜んでいると、エルパの店のおばさんがふふっと笑いながら説明してくれる。
「甘いだろ? これは、ローツェンっていうここよりも北の土地で採れたものなんだが、その土地に満ちている魔力がエルパの甘味を強くしているんだ」
魔力が食べ物に影響を与えているのかな。
植物には魔力を与えたほうがいいのかもね。僕が育てるかはわからないけど、機会があった時のために覚えておこう。
「ルイはまだ三歳だから、そんなこと言われてもわからないと思いますよ」
「ははっ。そうかもね」
「う~?」
本当は理解できているけど、僕はすっとぼけた声を出した。
◇ ◇ ◇
初めてのお出かけから一週間。
今日はレオンがおらず外出できないため、僕は部屋で母さんの針子の仕事を見学することにした。
今は、領主のお嬢さまのドレスを仕立てているらしい。
お嬢さまのドレスを任されるということは、母さんの腕前は相当なものなんだろう。
「かーさんは、どうやってこのもようつくってるの?」
その腕前の秘密が気になった僕は、母さんの仕事を覗き込みながら聞く。
「練習したのよ。元々、裁縫のスキルを持っていたのもあるけどね」
「すきう?」
あっ、るが上手く言えなかった。
子どもの口だと、時々こういうことがあるから困る。
でも、母さんには伝わっていたようで、ふふっと微笑みながら教えてくれた。
「スキルはね、その人が元々持っているものだったり、練習したりして使えるようになるの。ルイにも、何かあるかもしれないわね」
「どーやってわかるの?」
「少年式や少女式で調べるの。その後は、お金を払えばいつでも調べることができるわ」
ということは魔法の適性を確認する時に、一緒に知ることができるのかな。
それにしても式以外だと有料かぁ。それくらい、サービスしてくれてもいいような気がするけど。
スキルかぁ……ちょっと使っているところ見たいかも。
「すきるは、どーやってつかうの?」
「魔法と同じように魔力を使うのよ。見せてあげようか?」
「うん、みたい!」
僕が期待を込めた目で見ると、母さんはドレスを置き、小さい布切れを取り出した。
お嬢さまに献上するドレスを使って、お試しでスキルを見せるのはさすがにできないみたいだ。
母さんは一息つくと、針の穴に糸を通して針を布に刺した。
その直後、母さんの腕が止まることなく、みるみると模様を作り上げていく。
さっきは、かなり丁寧な手つきだったけど、今はロボットのような素早さだ。
五分も経たないうちに、美しい薔薇の刺繍ができあがってしまった。
「わぁ、しゅごい!」
「これは『刺繍』というスキルなの。これを使うと、頭の中に思い浮かべた複雑な模様を、素早く、正確に仕上げることができるのよ」
「ほわぁ~……!」
本当に機械みたいな正確さだ。量産品を作るには便利な力かもしれない。
でも、なんでお嬢さまのドレスには使わないんだろう?
僕がドレスのほうをじっと見たことで、母さんは僕が考えたことを察したみたいだった。
「ああ」と笑ってから説明してくれる。
「一度縫ったことがある模様しかできないのよ。あの方は、毎回違うデザインを求められるから」
「へぇ~」
一瞬困り顔になっていたけど、そうやって新しいデザインを考えられる母さんはすごいと思うけどね。
「う~ん……」
母さんの刺繍を見せてもらった数日後、部屋に戻った僕は頭を悩ませていた。
どうやったら、スキルが手に入るんだろう?
せっかく魔法のある異世界に転生したんだから、チートじゃなくてもスキルの一つや二つは使ってみたい。異世界に来たんだという実感を味わいたい。
母さんのような裁縫スキルは、練習すれば手に入れられそうだけど、三歳児にそんなことさせてくれないだろうし……
「まずは、まほうからかな」
欲張っても仕方ないと、僕は最近新しい日課になった魔法の練習を始めた。
レオンの魔法を何度も見ているうちに、我慢ができなくなって、一人で練習するようになっていたのだ。最近は、ある程度成長したことで、一人になれる時間がかなり増えたのも大きい。
部屋で昼寝したふりでもすれば、簡単に出ていってくれる。
とはいっても、魔法を習得するやり方なんて知らないので、前世のファンタジー小説などの知識をもとに、今はいろいろと試行錯誤している状態なんだけども。
今までやったのは、呪文っぽいのを呟いてみたり、手に魔力を集めてみたりしたくらい。
……うん? 成果? 使えなかったよ。
手に魔力を集めようと意識した時に、温かいような冷たいような、変なものを感じたので、それが魔力かなって思うくらいの進捗状況である。
でも、それでめげる僕ではない!
今日は魔力循環というものに挑戦するつもりだ。ラノベで体内の魔力を感じ取って、循環させるという方法は知っていた。
感じ取るところまでは、多分できているので、循環にチャレンジだ。
ぐるぐると巡らせばそれっぽくなるかなと思って、まずは手に魔力を集めることにした。
指が温かいような、冷たいような感覚になったところで、それを腕の付け根辺りまで戻す。
慣れていないからか、だいぶゆっくりだけど、何かが腕のほうに移動してるのが感じ取れた。
五分ほどで、腕の付け根まで移動できたのを確認して、今度は頭のほうに送り込もうとする。
「うっ!」
首の辺りまで来たところで、頭がくらっとして、前のほうに体の重心が傾いた。
倒れる――と思ったけど、手で支えたので、頭をぶつけなくて済んだ。
でも、魔力らしき何かは塵のように消えてしまった。
今のはなんなんだろう? 循環させたらいつもこうなるのか?
それとも、僕のやり方が間違ってる? う~ん……わからない。
「じゅんかんはちがうのかなぁ……?」
それなら、他にどんな方法があったっけ……?
それとも考えは合ってるけど、やり方がちがう? うむむ……
「よし! とりあえずやれるだけやってみよう!」
考えるだけ無駄だと判断した僕は、もう一度循環を試したり、前にやっていた呪文を唱える練習をしたり、再び試行錯誤した。
その結果――
「ルイ~! もう起きてる……ってどうしたの⁉」
「からだ……あつい……」
三十分くらいして、高熱を出した状態の僕がレオンに発見されることになった。
◇ ◇ ◇
寝込んでいる僕を囲んで、母さんと父さんが僕の顔を覗き込んでいる。
レオンはこの場にいなかった。何か用事でもあるのか、席を外しているようだ。
「ルイ……大丈夫?」
「風邪か? 前に出かけた時に、病気をもらってきたのかもな」
父さんが、僕のおでこに手を置いた。父さんの手、冷たくて気持ちいいなぁ……
「かなり熱が高そうだ。レオンはまだか……?」
父さんは、ドアのほうを見てそわそわしている。
母さんが父さんをなだめるように言う。
「ここから医者のいる治療院までは、それなりに距離があるもの。時間がかかるわよ」
どうやら、レオンは僕のために医者を呼びに行ってくれたらしい。
なんか、申し訳ないな。
「母さん、父さん、遅くなってごめん!」
両親の会話から数分くらいして、レオンが帰ってきた。
そして、僕のほうに駆け寄って手を握ってくれる。
「ルイ、大丈夫……?」
「へーき……だよ」
朦朧とする意識を奮い立たせながら、僕はレオンににこりと笑いかけた。
でも、レオンは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「話していたのはこの子ですか?」
そう言って、白い外套を纏ったおじいさんが入ってくる。
この人が医者なのかな。
「はい。レオンが言うには、三十分ほど前から急な高熱が出たようで……下がる気配がないんです」
「なるほど……」
母さんの説明を聞きながら、おじいさんはレオンから僕の手をさりげなく取り上げ、手首に指を当てる。
脈でも測ってるのかな? この世界の医療の常識がわからないから、何しているかもわからない。
「これは……」
おじいさんは、何かに気づいたようにはっとした。そして、険しい顔で父さんたちを見た。
「失礼ですが……彼に魔法などを教えていませんよね?」
「まさか! そんなことしていません!」
「そんな危険なことをさせるわけがないでしょう!」
母さんと父さんが慌てて否定する。
危険……何が? 確かに、魔法は人を傷つけるかもしれないから、子どもに教えるのは危険かもしれない。でも、九歳のレオンは六歳から三年間問題なく使っている。
六歳と三歳で、そんなに危険度が違うものなのかな……?
「レオン。あなたも教えたりなんてしてないわよね?」
レオンからは教わってない。だからこそ、独力でなんとかしようとしたわけだし。
「う、うん。見せたことはあるけど、教えてないよ!」
レオンがキッパリと言いきったのを見て、父さんたちが深く頷いた。
全員でおじいさんを睨み付ける。それは、疑われたことに対する不満ではなく、僕のことに対する心配や不安から来ているみたいだった。
おじいさんは、三人の視線に怯えたり憤ったりする様子もなく、ただ考え込んでいる。
「だとすると、かなり厄介ですね……」
納得したようにぶつぶつ言うけど、説明が欲しい。
一体、僕はどうなってるの?
「あの、ルイはどうなんですか? なんで魔法のことを尋ねたのでしょう」
母さんが至極当然の質問をしたが、おじいさんは答えない。
「ひとまず、治療が先です。少し痛いでしょうが、我慢してもらうしかない」
そう言って、おじいさんは僕の手首を指で強く押してくる。
それ自体はそんなに痛くなかったんだけど、その後に何か手首に変なものを感じたと思ったら、すぐに激痛が走った。
「いたい! あつい! はなして!」
それは、チクチクなんて生易しいものでなく、まるでナイフで刺されたような感覚だ。
少しどころじゃないんですけど! 今すぐ逃げ出したいくらいに痛いんですけど!
でも、おじいさんも僕の反応を想定していたのか、しっかりと体を押さえつけられたので逃げられない。さっきの高熱なんて比べ物にならないくらいに体が熱い。まるで燃やされてるみたいだ。
緑は風の魔法で、風を起こして攻撃することができる。さらに、風の力で物を自在に動かすことも可能なので、念力のようにも使えるらしい。自分にその力を使って、空を飛ぶことすら可能だ。
自在に空を飛び回れる魔法なんて想像するだけでわくわくする。
緑魔法の適性があればいいな、と僕は思っている。
緑魔法の適性があると、音を聞き分けたり、風に乗る音を聞いたりして、ある程度周囲の状況を把握できる力も得られるようだ。結構便利かも。
白は、回復魔法や浄化が使える。ただ、奇跡みたいな力を起こせるからか、適性がある人が少なく、白魔法の所有者は引っ張りだこになるらしい。白の適性があるだけで、その後の生活に困らないとまで言われているとか。しかも所有者自身も病気になりにくかったり、ケガの治りが早くなったりするそうで、結構羨ましい。
黒は、闇魔法。辺りを暗くしたり、影から影に移動するなんてトリッキーな力が使える。噂では、他の色魔法の真似事もできるそうだけど、本当かは知らない。そして、黒魔法には怖いところもある。なんと呪いが使えるのだ。
だから、貴重さは白魔法と同じくらいなのに、差別されることも多いらしい。
僕が家族から気味悪がられることはないと思いたいけど、怯えられたら嫌だから、僕としては黒の適性は欲しくない。
白と黒の適性も珍しいけど、それよりもっと希少なのが金と銀だ。国に一人いるだけですごいらしい。
金は、支援を得意とする色魔法である。
体に魔力を纏って身体能力を上げたり、体を硬化させて防御力を高めたりすることができる。
他の色魔法の適性を一緒に持っていれば、その魔法の力を武器に付与するなんて使い方も可能だ。
銀は、空間魔法。瞬間移動したり、異空間に物を収納したり、一定の空間を隔離してその中の物を守る、いわゆる結界を張ったりする。
この二つが他の色魔法よりすごいのは、自分以外の味方などにも効果を付与できること。
どちらも軍隊が欲しがるくらいの力だ。ただ、適性者が少なく、金魔法や銀魔法を使う軍隊はよほどの大国でないと存在しないらしい。
魔法陣魔法は、名前の通り、魔法陣を描き、そこに魔力を通して使用する魔法だ。
魔道具を作る時や大規模魔法を発動する時は重宝するけど、日常で使うことはほとんどない。
ただ、色魔法にはないメリットもあって、十分な魔力さえ持っていれば、色の適性に関係なく様々な効果を一時的に使うことが可能だ。
今から僕に魔法を見せようとしてくれているレオンが持っているのは、青と緑の適性だ。つまり水魔法と風魔法が使える。
家の中で風魔法を使用するのは危険なので、主に使ってくれるのは水魔法だ。
レオンが僕を膝の上に乗せて、ぶつぶつと呪文らしきものを唱える。
その直後、小さい水の塊がレオンの指先に出現した。
「ほわぁー!」
何度見てもすごい。ファンタジーのマンガやアニメの中でしか知らない光景が、目の前で繰り広げられ、僕は感嘆の声を上げた。
レオンは、そのままくるくると指を動かして、水を操る。その指の指示に従うように、水がゆらりと宙を舞い、どんどん膨張していく。
ちょ、ちょっと? 危なくない? 大丈夫?
「にー! おーき! ちーしゃ!」
大きいから小さくしてと言ったつもりが、よくわからない単語の羅列になってしまった。
レオンには意味は通じたようだけど、ふふっと笑って「大丈夫だよ」と言うだけだった。
僕がハラハラしながら水の行方を見ていると、水は膨らまなくなり、ぐにゃぐにゃと歪んでいく。
そしてどんどん形を変えて、長細くなっていった。次第に動きが細かくなって、まるで彫刻でも作るかのように、少し縮んだり、模様が浮かび上がったりしていく。
見た目がどんどん人間に近づいていくのに気づいた辺りで、水が見覚えのあるものへ形を変えていた。
レオンの操作が終わるのと僕が指を差したのは、ほぼ同じタイミングだった。
「かーしゃ!」
「そうだよ。そっくりでしょ?」
自慢げに言うレオンに、僕はこくこくと頷く。
髪や指の長さ、微笑んだ時にできるえくぼまでそっくりだ。魔法って、こんなこともできるのか。
僕も、早く使ってみたい。
家族の目があるから、練習するタイミングがなかなかできないんだけど。
僕が喜んだことで、レオンも嬉しくなったのか、続けて提案してくる。
「父さんも作れるけど、見たい?」
「いやない!」
まぁ、それはいいかな。
僕が笑顔でそうバッサリ言い切ると、レオンは顔をひきつらせた。
◇ ◇ ◇
時間がすぎるのは早いもので、三歳になった。
走り回ることができるようになった僕の行動範囲はますます広がり、家が手狭になってきている。
この家は、決して裕福ではなく、僕が走り回れるような広いスペースがない。
でも、僕は動きたい盛りの子どもだ。
これも体が三歳児という影響なのか、動かないとむずむずして仕方ない。
「にーに! おしょとー!」
「わかった。外行こうか」
そのため体を動かしたいとなれば、外に出るしかない。
僕がレオンにねだると、すんなり了承してくれた。
歩けるようになったことで、僕は誰かと一緒なら外出してもいいという許可をもらっている。
でも、僕の世話に手がかからなくなったことで、母さんが働きに出るようになり、両親とはあまり長い時間一緒にいられないんだよね。
母さんに代わって家にいてくれるようになったレオンのおかげで外出できている。
僕がレオンと一緒に階段を降りると、一階で仕事をしていた両親が僕たちに気づいた。
キッチンにつながるドアから顔を出して声をかけてくる。
「外に行くの~? 気をつけなさいよー」
「あんまり遠くに行くんじゃないぞー!」
僕たちは母さんたちの言葉に、くるりと振り返って応える。
「あーい!」
「わかってるよ、母さん! 父さん!」
お仕事の邪魔にならないうちに、裏口からそそくさと外に出た。そして、裏口と面している脇道を抜けて、大通りに向かう。
「ほわぁー!」
僕は感嘆の声を上げた。いつ見ても新鮮に感じる大通りの風景だ。
いつもなら大通りには出ず、この辺りをうろうろするくらいなのだが、今日はこの先へ進める!
僕はキョロキョロと辺りを見回して、レオンに手当たり次第に質問した。
「にーに! あれ! あれなに⁉」
「あれは果物を干しているだけだよ」
「あしょこは⁉」
「露店街だね。みんなあそこで食べ物や布を購入するんだよ」
「わぁー!」
大通りに出るのが初めてな僕は、興奮が収まらない。ちょっと考えればわかるようなことも、レオンに聞かずにはいられなかった。
土を踏む感触、往来する人々、騒がしいくらいの人の声は、前世で飽きるほど経験してきたことだけど、なぜか未知の世界のように感じた。
「ルイ、くだものほしい!」
せっかくここまで来たのだから、ショッピングくらいしたい。
果物はこの辺りでは栽培されておらず、輸送費がかかる分、平民から見ると少し高値だ。
家でも、果物が出たことはあまりなく、レオンもたまにしか口にしたことがないそうだ。
またいつ外出できるかわからないし、贅沢だけどおねだりくらいは許してもらおう。
「じゃあ、少し買っていく? お金に余裕はないから一つか二つになるけど……」
「ほしい! たべたい!」
転生してから、一度も甘味を口にしていない。
果物を一口くらいかじってみたいという気持ちが抑えられなかった。
「じゃあ、行ってみようか」
「やったー!」
僕は子どもらしく両手を上げて無邪気に喜ぶ。
体に引っ張られて、感情が勝手に表に出ることは多いが、こういう大げさな動作はたいてい演技だ。うっかりすると、子どもっぽく見えない行動が出てしまいかねないので、年相応に見えるように意識する必要がある。
それというのも、家族には転生のことは秘密にしているからだ。不気味に思われたくないし、変な団体に目をつけられて今の環境を壊されるのも嫌だ。ラノベとかでは、転生者という理由で頼られたり狙われたりするらしいからね。
「にーに。これなぁに?」
露店街にたどり着いた僕は、真っ先に目についた、リンゴらしきものを指さす。
「ああ、それはエルパだよ。少し酸っぱいけど、甘くておいしいよ」
おお、名前は違うけどリンゴと同じ特徴だ。
リンゴ好きの僕としては食べてみたいし、購入する候補に入れておこう。
「あれは~?」
今度は、赤い小ぶりな果実を指さした。
「あれはベリーの実だね。エルパより酸っぱいから、エルパのほうが少し人気みたいだね。僕は食べたことないからわからないけど」
うん、見た目も説明もイチゴっぽいね。イチゴ。
前世で見た食材と同じような名前もあれば、まったく違う名前もあるんだ。でも、味とか見た目は同じみたい。魔物がいる世界でも、植物は似るものなのか。
他の果物も並んでいるけど、レオンのお財布事情を考えると、このどちらか一つに絞られそうだ。
リンゴとイチゴ。どっちもおいしいけど、僕の今の気分は……
「にーに! エルパたべたい!」
「わかった。一緒に買おうか」
レオンは、僕の手を引きながら、エルパを売っている店の前に立った。
「エルパを一つ」
「三十リエだよ」
レオンは、懐から銅色のお金らしきものを三枚取り出して渡す。
ほほう。銅貨一枚で十リエか。前世の頃と価値が同じと考えると、一リエは十円くらいかな?
自分でも買い物することがあるかもしれないし、覚えておこう。
レオンが、エルパを一つ取り、僕に渡してきたので、僕はそれを受け取ってがぶりと噛みつく。
味は、前世で食べたリンゴと変わらないどころか、こちらのほうが甘味が強くておいしかった。
これで三百円は安い!
「にーに、エルパおいしい!」
僕が無邪気に喜んでいると、エルパの店のおばさんがふふっと笑いながら説明してくれる。
「甘いだろ? これは、ローツェンっていうここよりも北の土地で採れたものなんだが、その土地に満ちている魔力がエルパの甘味を強くしているんだ」
魔力が食べ物に影響を与えているのかな。
植物には魔力を与えたほうがいいのかもね。僕が育てるかはわからないけど、機会があった時のために覚えておこう。
「ルイはまだ三歳だから、そんなこと言われてもわからないと思いますよ」
「ははっ。そうかもね」
「う~?」
本当は理解できているけど、僕はすっとぼけた声を出した。
◇ ◇ ◇
初めてのお出かけから一週間。
今日はレオンがおらず外出できないため、僕は部屋で母さんの針子の仕事を見学することにした。
今は、領主のお嬢さまのドレスを仕立てているらしい。
お嬢さまのドレスを任されるということは、母さんの腕前は相当なものなんだろう。
「かーさんは、どうやってこのもようつくってるの?」
その腕前の秘密が気になった僕は、母さんの仕事を覗き込みながら聞く。
「練習したのよ。元々、裁縫のスキルを持っていたのもあるけどね」
「すきう?」
あっ、るが上手く言えなかった。
子どもの口だと、時々こういうことがあるから困る。
でも、母さんには伝わっていたようで、ふふっと微笑みながら教えてくれた。
「スキルはね、その人が元々持っているものだったり、練習したりして使えるようになるの。ルイにも、何かあるかもしれないわね」
「どーやってわかるの?」
「少年式や少女式で調べるの。その後は、お金を払えばいつでも調べることができるわ」
ということは魔法の適性を確認する時に、一緒に知ることができるのかな。
それにしても式以外だと有料かぁ。それくらい、サービスしてくれてもいいような気がするけど。
スキルかぁ……ちょっと使っているところ見たいかも。
「すきるは、どーやってつかうの?」
「魔法と同じように魔力を使うのよ。見せてあげようか?」
「うん、みたい!」
僕が期待を込めた目で見ると、母さんはドレスを置き、小さい布切れを取り出した。
お嬢さまに献上するドレスを使って、お試しでスキルを見せるのはさすがにできないみたいだ。
母さんは一息つくと、針の穴に糸を通して針を布に刺した。
その直後、母さんの腕が止まることなく、みるみると模様を作り上げていく。
さっきは、かなり丁寧な手つきだったけど、今はロボットのような素早さだ。
五分も経たないうちに、美しい薔薇の刺繍ができあがってしまった。
「わぁ、しゅごい!」
「これは『刺繍』というスキルなの。これを使うと、頭の中に思い浮かべた複雑な模様を、素早く、正確に仕上げることができるのよ」
「ほわぁ~……!」
本当に機械みたいな正確さだ。量産品を作るには便利な力かもしれない。
でも、なんでお嬢さまのドレスには使わないんだろう?
僕がドレスのほうをじっと見たことで、母さんは僕が考えたことを察したみたいだった。
「ああ」と笑ってから説明してくれる。
「一度縫ったことがある模様しかできないのよ。あの方は、毎回違うデザインを求められるから」
「へぇ~」
一瞬困り顔になっていたけど、そうやって新しいデザインを考えられる母さんはすごいと思うけどね。
「う~ん……」
母さんの刺繍を見せてもらった数日後、部屋に戻った僕は頭を悩ませていた。
どうやったら、スキルが手に入るんだろう?
せっかく魔法のある異世界に転生したんだから、チートじゃなくてもスキルの一つや二つは使ってみたい。異世界に来たんだという実感を味わいたい。
母さんのような裁縫スキルは、練習すれば手に入れられそうだけど、三歳児にそんなことさせてくれないだろうし……
「まずは、まほうからかな」
欲張っても仕方ないと、僕は最近新しい日課になった魔法の練習を始めた。
レオンの魔法を何度も見ているうちに、我慢ができなくなって、一人で練習するようになっていたのだ。最近は、ある程度成長したことで、一人になれる時間がかなり増えたのも大きい。
部屋で昼寝したふりでもすれば、簡単に出ていってくれる。
とはいっても、魔法を習得するやり方なんて知らないので、前世のファンタジー小説などの知識をもとに、今はいろいろと試行錯誤している状態なんだけども。
今までやったのは、呪文っぽいのを呟いてみたり、手に魔力を集めてみたりしたくらい。
……うん? 成果? 使えなかったよ。
手に魔力を集めようと意識した時に、温かいような冷たいような、変なものを感じたので、それが魔力かなって思うくらいの進捗状況である。
でも、それでめげる僕ではない!
今日は魔力循環というものに挑戦するつもりだ。ラノベで体内の魔力を感じ取って、循環させるという方法は知っていた。
感じ取るところまでは、多分できているので、循環にチャレンジだ。
ぐるぐると巡らせばそれっぽくなるかなと思って、まずは手に魔力を集めることにした。
指が温かいような、冷たいような感覚になったところで、それを腕の付け根辺りまで戻す。
慣れていないからか、だいぶゆっくりだけど、何かが腕のほうに移動してるのが感じ取れた。
五分ほどで、腕の付け根まで移動できたのを確認して、今度は頭のほうに送り込もうとする。
「うっ!」
首の辺りまで来たところで、頭がくらっとして、前のほうに体の重心が傾いた。
倒れる――と思ったけど、手で支えたので、頭をぶつけなくて済んだ。
でも、魔力らしき何かは塵のように消えてしまった。
今のはなんなんだろう? 循環させたらいつもこうなるのか?
それとも、僕のやり方が間違ってる? う~ん……わからない。
「じゅんかんはちがうのかなぁ……?」
それなら、他にどんな方法があったっけ……?
それとも考えは合ってるけど、やり方がちがう? うむむ……
「よし! とりあえずやれるだけやってみよう!」
考えるだけ無駄だと判断した僕は、もう一度循環を試したり、前にやっていた呪文を唱える練習をしたり、再び試行錯誤した。
その結果――
「ルイ~! もう起きてる……ってどうしたの⁉」
「からだ……あつい……」
三十分くらいして、高熱を出した状態の僕がレオンに発見されることになった。
◇ ◇ ◇
寝込んでいる僕を囲んで、母さんと父さんが僕の顔を覗き込んでいる。
レオンはこの場にいなかった。何か用事でもあるのか、席を外しているようだ。
「ルイ……大丈夫?」
「風邪か? 前に出かけた時に、病気をもらってきたのかもな」
父さんが、僕のおでこに手を置いた。父さんの手、冷たくて気持ちいいなぁ……
「かなり熱が高そうだ。レオンはまだか……?」
父さんは、ドアのほうを見てそわそわしている。
母さんが父さんをなだめるように言う。
「ここから医者のいる治療院までは、それなりに距離があるもの。時間がかかるわよ」
どうやら、レオンは僕のために医者を呼びに行ってくれたらしい。
なんか、申し訳ないな。
「母さん、父さん、遅くなってごめん!」
両親の会話から数分くらいして、レオンが帰ってきた。
そして、僕のほうに駆け寄って手を握ってくれる。
「ルイ、大丈夫……?」
「へーき……だよ」
朦朧とする意識を奮い立たせながら、僕はレオンににこりと笑いかけた。
でも、レオンは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「話していたのはこの子ですか?」
そう言って、白い外套を纏ったおじいさんが入ってくる。
この人が医者なのかな。
「はい。レオンが言うには、三十分ほど前から急な高熱が出たようで……下がる気配がないんです」
「なるほど……」
母さんの説明を聞きながら、おじいさんはレオンから僕の手をさりげなく取り上げ、手首に指を当てる。
脈でも測ってるのかな? この世界の医療の常識がわからないから、何しているかもわからない。
「これは……」
おじいさんは、何かに気づいたようにはっとした。そして、険しい顔で父さんたちを見た。
「失礼ですが……彼に魔法などを教えていませんよね?」
「まさか! そんなことしていません!」
「そんな危険なことをさせるわけがないでしょう!」
母さんと父さんが慌てて否定する。
危険……何が? 確かに、魔法は人を傷つけるかもしれないから、子どもに教えるのは危険かもしれない。でも、九歳のレオンは六歳から三年間問題なく使っている。
六歳と三歳で、そんなに危険度が違うものなのかな……?
「レオン。あなたも教えたりなんてしてないわよね?」
レオンからは教わってない。だからこそ、独力でなんとかしようとしたわけだし。
「う、うん。見せたことはあるけど、教えてないよ!」
レオンがキッパリと言いきったのを見て、父さんたちが深く頷いた。
全員でおじいさんを睨み付ける。それは、疑われたことに対する不満ではなく、僕のことに対する心配や不安から来ているみたいだった。
おじいさんは、三人の視線に怯えたり憤ったりする様子もなく、ただ考え込んでいる。
「だとすると、かなり厄介ですね……」
納得したようにぶつぶつ言うけど、説明が欲しい。
一体、僕はどうなってるの?
「あの、ルイはどうなんですか? なんで魔法のことを尋ねたのでしょう」
母さんが至極当然の質問をしたが、おじいさんは答えない。
「ひとまず、治療が先です。少し痛いでしょうが、我慢してもらうしかない」
そう言って、おじいさんは僕の手首を指で強く押してくる。
それ自体はそんなに痛くなかったんだけど、その後に何か手首に変なものを感じたと思ったら、すぐに激痛が走った。
「いたい! あつい! はなして!」
それは、チクチクなんて生易しいものでなく、まるでナイフで刺されたような感覚だ。
少しどころじゃないんですけど! 今すぐ逃げ出したいくらいに痛いんですけど!
でも、おじいさんも僕の反応を想定していたのか、しっかりと体を押さえつけられたので逃げられない。さっきの高熱なんて比べ物にならないくらいに体が熱い。まるで燃やされてるみたいだ。
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