24 / 25
第三章 あくまでも関わりたくない
23. 人探し
しおりを挟む
フェリクスやエルディンと交流し出すようになってから、一ヶ月が過ぎた。二人は今日も僕の部屋に集まっている。
「殿下、商会のほうはどうなのですか?」
エルディンが本を読みながら僕に尋ねてくる。エルディンとフェリクスには僕がシクセラ商会の商会長であることは説明済みである。
エルディンには呆れたような目を向けられた。シクセラ商会の名前の理由に気づいたんだろう。フェリクスは気づいていないだろうが。
「今のところ目立った動きはない。レシピの登録だけはしている」
「たとえばどのようなものを?」
「卵焼きとかミルクスープとか。平民でも再現できるようなものを中心に」
他にもいくつかあるけど、説明しているとキリがない。
レシピに関しては僕の専属料理人を通じて厨房の人たちのまかないとして食べられているらしいことは聞いている。
他にもいろいろと作らせてみようか。まだ公表していないレシピはたくさんある。まだ和食はあまり再現できていないから、調味料を見つけたらやってみたい。
「どうせならアイスクリームとか作ってくださいよ。この国、夏の時期がすごい暑いので」
ソファで寝そべりながら訴えてくるフェリクスに僕は苦笑いする。
「都は盆地だからな」
この国は日本と同じく四季が存在している。
おそらくは防衛の面からだろうけど、この国の都は盆地に位置しており、盆地は寒暖差が激しく、夏は暑く冬は寒いのが特徴だ。
それに盆地はフェーン現象が起きやすく、気温は余計に上がる。
「お前たちは避暑地に向かったりはしないのか?」
「屋敷に冷風を生み出す魔道具がありますので、それを使って屋敷に籠っています」
なにその快適空間。僕だって許されるなら引きこもりたい!
「俺は夏だろうが関係なく父に稽古に連れ出されるので、そのような場所に行く機会がありません」
前世の運動神経を受け継いでいるのか、フェリクスには武器を扱う才能があるらしく、フェリクスの父である副騎士団長は、暇さえあればフェリクスに稽古をつけているらしい。
僕の部屋に来るたびにフェリクスはぐちぐちと言っているけど、体を動かすのが好きな彼のことだ。なんだかんだ楽しんではいるだろう。
だけど、エルディンはともかく、フェリクスは熱中症で倒れたりしないだろうか。夏バテ防止策を考えたほうがいいかもしれない。
経口補水液なら再現できるかな。ジンとロイドに試してもらおう。
「あの、殿下。先ほどから気になっていたのですが」
「どうした?」
「やけに外が騒がしくないですか?」
エルディンの言う通り、今日は外が騒がしい。正確には、一部の使用人が慌ただしくしている。この城では、時折見られる光景だが、エルディンが僕の部屋に遊びに来るようになってからはなかったような気がする。
「そういや、お前は初めてだったな」
フェリクスがニヤニヤしながら言う。フェリクスはこの騒動は一度経験している。初めてのときはだいぶ戸惑っていたくせに、余裕ぶってるな。
「理由はすぐにわかる。そろそろ来るころだからな」
僕も同じようにニヤリとしながら答えると、エルディンは戸惑いを見せる。結城のそんな顔はまったく見たことがなかったからなんか新鮮な感じがする。
「アレクシスさま、メアリーでございます。ご来客中に申し訳ありませんが、お力添えいただけますでしょうか」
「ああ、構わない」
部屋の外に出るので気持ち程度に身なりを整えながら、部屋にいる二人に提案する。
「お前たちもついてくるか?エルディンは会ったことがないだろうから、挨拶するといい」
「あ、挨拶……ですか?」
「行けばわかるって」
フェリクスがエルディンをぐいぐいと押している。
「押すな、フェリクス!行かないとは言ってないだろう!」
「なら早くしろよ」
「二人とも置いていくぞ」
そんなやり取りをしながら、僕たちは部屋の外に出て、ドアの前に立っていたメアリーに尋ねる。
「何してたの?」
「先ほどまで本を読んでいらしたそうですが、近くにいた使用人に『そと』と告げてどこかに行ってしまわれたようで……」
「今日の予定は?」
「お食事会の予定がございます」
ふむふむ。本を読んでいて、外と伝えていて、食事会の予定があったと。ならあそこかな。
「母上の庭園に行くよ」
「かしこまりました」
僕が先導するように歩いていると、エルディンが僕に近づいてきて尋ねる。
「あの、どなたを探しておられるのですか?」
「人探しと気づいている時点でそれなりに察しはついているだろう?」
「私は全員の人となりを把握しているわけではないので」
それでも、捜索の依頼が僕に来る時点で想像はできているだろうに。
「会えばわかるさ」
正直に話すのはなんか癪だったので、まだ濁しておく。
とりあえず、あの子に会ったらも外出する際の注意点をもう一度言っておかないとな。
「殿下、商会のほうはどうなのですか?」
エルディンが本を読みながら僕に尋ねてくる。エルディンとフェリクスには僕がシクセラ商会の商会長であることは説明済みである。
エルディンには呆れたような目を向けられた。シクセラ商会の名前の理由に気づいたんだろう。フェリクスは気づいていないだろうが。
「今のところ目立った動きはない。レシピの登録だけはしている」
「たとえばどのようなものを?」
「卵焼きとかミルクスープとか。平民でも再現できるようなものを中心に」
他にもいくつかあるけど、説明しているとキリがない。
レシピに関しては僕の専属料理人を通じて厨房の人たちのまかないとして食べられているらしいことは聞いている。
他にもいろいろと作らせてみようか。まだ公表していないレシピはたくさんある。まだ和食はあまり再現できていないから、調味料を見つけたらやってみたい。
「どうせならアイスクリームとか作ってくださいよ。この国、夏の時期がすごい暑いので」
ソファで寝そべりながら訴えてくるフェリクスに僕は苦笑いする。
「都は盆地だからな」
この国は日本と同じく四季が存在している。
おそらくは防衛の面からだろうけど、この国の都は盆地に位置しており、盆地は寒暖差が激しく、夏は暑く冬は寒いのが特徴だ。
それに盆地はフェーン現象が起きやすく、気温は余計に上がる。
「お前たちは避暑地に向かったりはしないのか?」
「屋敷に冷風を生み出す魔道具がありますので、それを使って屋敷に籠っています」
なにその快適空間。僕だって許されるなら引きこもりたい!
「俺は夏だろうが関係なく父に稽古に連れ出されるので、そのような場所に行く機会がありません」
前世の運動神経を受け継いでいるのか、フェリクスには武器を扱う才能があるらしく、フェリクスの父である副騎士団長は、暇さえあればフェリクスに稽古をつけているらしい。
僕の部屋に来るたびにフェリクスはぐちぐちと言っているけど、体を動かすのが好きな彼のことだ。なんだかんだ楽しんではいるだろう。
だけど、エルディンはともかく、フェリクスは熱中症で倒れたりしないだろうか。夏バテ防止策を考えたほうがいいかもしれない。
経口補水液なら再現できるかな。ジンとロイドに試してもらおう。
「あの、殿下。先ほどから気になっていたのですが」
「どうした?」
「やけに外が騒がしくないですか?」
エルディンの言う通り、今日は外が騒がしい。正確には、一部の使用人が慌ただしくしている。この城では、時折見られる光景だが、エルディンが僕の部屋に遊びに来るようになってからはなかったような気がする。
「そういや、お前は初めてだったな」
フェリクスがニヤニヤしながら言う。フェリクスはこの騒動は一度経験している。初めてのときはだいぶ戸惑っていたくせに、余裕ぶってるな。
「理由はすぐにわかる。そろそろ来るころだからな」
僕も同じようにニヤリとしながら答えると、エルディンは戸惑いを見せる。結城のそんな顔はまったく見たことがなかったからなんか新鮮な感じがする。
「アレクシスさま、メアリーでございます。ご来客中に申し訳ありませんが、お力添えいただけますでしょうか」
「ああ、構わない」
部屋の外に出るので気持ち程度に身なりを整えながら、部屋にいる二人に提案する。
「お前たちもついてくるか?エルディンは会ったことがないだろうから、挨拶するといい」
「あ、挨拶……ですか?」
「行けばわかるって」
フェリクスがエルディンをぐいぐいと押している。
「押すな、フェリクス!行かないとは言ってないだろう!」
「なら早くしろよ」
「二人とも置いていくぞ」
そんなやり取りをしながら、僕たちは部屋の外に出て、ドアの前に立っていたメアリーに尋ねる。
「何してたの?」
「先ほどまで本を読んでいらしたそうですが、近くにいた使用人に『そと』と告げてどこかに行ってしまわれたようで……」
「今日の予定は?」
「お食事会の予定がございます」
ふむふむ。本を読んでいて、外と伝えていて、食事会の予定があったと。ならあそこかな。
「母上の庭園に行くよ」
「かしこまりました」
僕が先導するように歩いていると、エルディンが僕に近づいてきて尋ねる。
「あの、どなたを探しておられるのですか?」
「人探しと気づいている時点でそれなりに察しはついているだろう?」
「私は全員の人となりを把握しているわけではないので」
それでも、捜索の依頼が僕に来る時点で想像はできているだろうに。
「会えばわかるさ」
正直に話すのはなんか癪だったので、まだ濁しておく。
とりあえず、あの子に会ったらも外出する際の注意点をもう一度言っておかないとな。
57
あなたにおすすめの小説
兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?
志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。
そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄?
え、なにをやってんの兄よ!?
…‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。
今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。
※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さくら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる