転生王子はあくまでも楽したい~面倒事はごめん被ります~

りーさん

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第三章 あくまでも関わりたくない

23. 人探し

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 フェリクスやエルディンと交流し出すようになってから、一ヶ月が過ぎた。二人は今日も僕の部屋に集まっている。

「殿下、商会のほうはどうなのですか?」

 エルディンが本を読みながら僕に尋ねてくる。エルディンとフェリクスには僕がシクセラ商会の商会長であることは説明済みである。
 エルディンには呆れたような目を向けられた。シクセラ商会の名前の理由に気づいたんだろう。フェリクスは気づいていないだろうが。

「今のところ目立った動きはない。レシピの登録だけはしている」
「たとえばどのようなものを?」
「卵焼きとかミルクスープとか。平民でも再現できるようなものを中心に」

 他にもいくつかあるけど、説明しているとキリがない。
 レシピに関しては僕の専属料理人を通じて厨房の人たちのまかないとして食べられているらしいことは聞いている。

 他にもいろいろと作らせてみようか。まだ公表していないレシピはたくさんある。まだ和食はあまり再現できていないから、調味料を見つけたらやってみたい。

「どうせならアイスクリームとか作ってくださいよ。この国、夏の時期がすごい暑いので」

 ソファで寝そべりながら訴えてくるフェリクスに僕は苦笑いする。

「都は盆地だからな」

 この国は日本と同じく四季が存在している。
 おそらくは防衛の面からだろうけど、この国の都は盆地に位置しており、盆地は寒暖差が激しく、夏は暑く冬は寒いのが特徴だ。
 それに盆地はフェーン現象が起きやすく、気温は余計に上がる。

「お前たちは避暑地に向かったりはしないのか?」
「屋敷に冷風を生み出す魔道具がありますので、それを使って屋敷に籠っています」

 なにその快適空間。僕だって許されるなら引きこもりたい!

「俺は夏だろうが関係なく父に稽古に連れ出されるので、そのような場所に行く機会がありません」

 前世の運動神経を受け継いでいるのか、フェリクスには武器を扱う才能があるらしく、フェリクスの父である副騎士団長は、暇さえあればフェリクスに稽古をつけているらしい。
 僕の部屋に来るたびにフェリクスはぐちぐちと言っているけど、体を動かすのが好きな彼のことだ。なんだかんだ楽しんではいるだろう。
 だけど、エルディンはともかく、フェリクスは熱中症で倒れたりしないだろうか。夏バテ防止策を考えたほうがいいかもしれない。

 経口補水液なら再現できるかな。ジンとロイドに試してもらおう。

「あの、殿下。先ほどから気になっていたのですが」
「どうした?」
「やけに外が騒がしくないですか?」

 エルディンの言う通り、今日は外が騒がしい。正確には、一部の使用人が慌ただしくしている。この城では、時折見られる光景だが、エルディンが僕の部屋に遊びに来るようになってからはなかったような気がする。

「そういや、お前は初めてだったな」

 フェリクスがニヤニヤしながら言う。フェリクスはこの騒動は一度経験している。初めてのときはだいぶ戸惑っていたくせに、余裕ぶってるな。

「理由はすぐにわかる。そろそろ来るころだからな」

 僕も同じようにニヤリとしながら答えると、エルディンは戸惑いを見せる。結城のそんな顔はまったく見たことがなかったからなんか新鮮な感じがする。

「アレクシスさま、メアリーでございます。ご来客中に申し訳ありませんが、お力添えいただけますでしょうか」
「ああ、構わない」

 部屋の外に出るので気持ち程度に身なりを整えながら、部屋にいる二人に提案する。

「お前たちもついてくるか?エルディンは会ったことがないだろうから、挨拶するといい」
「あ、挨拶……ですか?」
「行けばわかるって」

 フェリクスがエルディンをぐいぐいと押している。

「押すな、フェリクス!行かないとは言ってないだろう!」
「なら早くしろよ」
「二人とも置いていくぞ」

 そんなやり取りをしながら、僕たちは部屋の外に出て、ドアの前に立っていたメアリーに尋ねる。

「何してたの?」
「先ほどまで本を読んでいらしたそうですが、近くにいた使用人に『そと』と告げてどこかに行ってしまわれたようで……」
「今日の予定は?」
「お食事会の予定がございます」

 ふむふむ。本を読んでいて、外と伝えていて、食事会の予定があったと。ならあそこかな。

「母上の庭園に行くよ」
「かしこまりました」

 僕が先導するように歩いていると、エルディンが僕に近づいてきて尋ねる。

「あの、どなたを探しておられるのですか?」
「人探しと気づいている時点でそれなりに察しはついているだろう?」
「私は全員の人となりを把握しているわけではないので」

 それでも、捜索の依頼が僕に来る時点で想像はできているだろうに。

「会えばわかるさ」

 正直に話すのはなんか癪だったので、まだ濁しておく。
 とりあえず、あの子に会ったらも外出する際の注意点をもう一度言っておかないとな。
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