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第一章 優しい家族に拾われて
2.
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道なりに森を進むものの、いまだに森は抜けられない。獣に出くわしていないのが幸いだけど、怪我をしていた状況で体力が持つかどうか……
ーーガサッ
草木を踏みしめる音が聞こえる。噂をすればなんとやらというやつだろうか。
それとも、誰かが森に来ただけなのか。
どちらにしてもこのままここに立っているのは危険だ。獣は当然として、人間だとしても味方とは限らない。同じように森に子どもを捨てに来た人かもしれないし、山賊などの可能性もあるだろう。かといって、付近隠れられるような場所はない。
ならば、木登りするしかないか。
僕はやったことがないので、“俺”の記憶を頼りに木登りをしてみると、思ったよりもするすると登ることができた。
もしかして、僕ってそれなりに運動能力が高い?
でも、お陰で木の上に移動できたのでよしとしよう。
ーーザッザッザッ
音が大きくなり、感覚が短くなっている。こちらに近づいてきているのは確かだ。
獣か人か。どっちだ?
木の上で息を潜めていると、ようやくその実体が見えた。
人だった。それに安心してしまったからか、普通に立っていたはずなのにバランスを崩してしまう。
「わっとと!」
どうにか持ち直したものの、声と枝を踏みしめた音のせいで下にいた人物には完全に気づかれてしまったようで、目が合う。
「君!そこで何してるんだ!」
「いや、僕は……」
「ルシウス?どうかしたの?」
僕が言葉に迷っていると、今度は女の人の声が聞こえる。
すると、下にいた男の人が別の方向に視線を向けた。どうやら、あの人はルシウスというらしい。
「いや、子どもが木の上にいてな」
「えっ?子ども?」
ザッザッザッと踏みしめる音がこちらに近づいてくる。
そして、真下に来ると上を見上げ、僕と目があった。
「あら、本当じゃない。ちょっとー!あなた、どうしたの~?」
何か言わないといけない。でも、あの人間たちが信用できる人とわからない以上、迂闊なことは言えない。
捨てられたというべきか、はぐれてしまったというべきか。相手がどんな人間かで答えが変わる。
「警戒してるわね……。あなた、そんなところに立ってたら危ないわよ~!」
「……お姉さんたち、だれ?」
勇気を振り絞ってたずねる。思った以上に声が小さくなってしまったので聞こえなかったかと思ったけど、そんな心配は必要なかった。
「私はアニエスよ。こっちがルシウス」
「……アニエスたちは、どうしてここにいるの?」
「薬草を探しに来たのよ。娘が病気だから。お店で買うと高いのよね」
娘がいるのか。それなら、この二人は夫婦なのかな。
「薬草ってなに?」
「赤蔓草っていう赤くて細長いやつなの。あなた、どこかで見てない?」
「僕、こっちから来たけど見てない」
「そっか~。この辺にはないのかな~?」
アニエスは大げさなくらいに辺りを見渡している。それでも、チラチラと僕を見てくるのは、僕に何か言ってほしいのだろうか。
「ねぇ、一緒に探してくれない?二人より三人のほうが見つかると思うの」
「でも、僕は赤蔓草を知らないから」
「大丈夫よ。私たちがわかるから、一緒にいてくれればいいもの」
三人で行動するなら二人で探しているときとほとんど変わらないと思うんだけど。
でも、こう言わないと僕が降りてきてくれないと思っているのだろう。
まだこの二人を信用したわけではない。でも、ここから降りるまで彼らは離れてくれそうにはない。
「……わかった」
僕は枝から飛び下りて、彼らの前に立った。
「よし、行こうか。えーっと……」
「……アインです」
「アインくん!」
アニエスはそう言って僕の手を握る。僕は、引きずられるようにして彼らについていった。
ーーガサッ
草木を踏みしめる音が聞こえる。噂をすればなんとやらというやつだろうか。
それとも、誰かが森に来ただけなのか。
どちらにしてもこのままここに立っているのは危険だ。獣は当然として、人間だとしても味方とは限らない。同じように森に子どもを捨てに来た人かもしれないし、山賊などの可能性もあるだろう。かといって、付近隠れられるような場所はない。
ならば、木登りするしかないか。
僕はやったことがないので、“俺”の記憶を頼りに木登りをしてみると、思ったよりもするすると登ることができた。
もしかして、僕ってそれなりに運動能力が高い?
でも、お陰で木の上に移動できたのでよしとしよう。
ーーザッザッザッ
音が大きくなり、感覚が短くなっている。こちらに近づいてきているのは確かだ。
獣か人か。どっちだ?
木の上で息を潜めていると、ようやくその実体が見えた。
人だった。それに安心してしまったからか、普通に立っていたはずなのにバランスを崩してしまう。
「わっとと!」
どうにか持ち直したものの、声と枝を踏みしめた音のせいで下にいた人物には完全に気づかれてしまったようで、目が合う。
「君!そこで何してるんだ!」
「いや、僕は……」
「ルシウス?どうかしたの?」
僕が言葉に迷っていると、今度は女の人の声が聞こえる。
すると、下にいた男の人が別の方向に視線を向けた。どうやら、あの人はルシウスというらしい。
「いや、子どもが木の上にいてな」
「えっ?子ども?」
ザッザッザッと踏みしめる音がこちらに近づいてくる。
そして、真下に来ると上を見上げ、僕と目があった。
「あら、本当じゃない。ちょっとー!あなた、どうしたの~?」
何か言わないといけない。でも、あの人間たちが信用できる人とわからない以上、迂闊なことは言えない。
捨てられたというべきか、はぐれてしまったというべきか。相手がどんな人間かで答えが変わる。
「警戒してるわね……。あなた、そんなところに立ってたら危ないわよ~!」
「……お姉さんたち、だれ?」
勇気を振り絞ってたずねる。思った以上に声が小さくなってしまったので聞こえなかったかと思ったけど、そんな心配は必要なかった。
「私はアニエスよ。こっちがルシウス」
「……アニエスたちは、どうしてここにいるの?」
「薬草を探しに来たのよ。娘が病気だから。お店で買うと高いのよね」
娘がいるのか。それなら、この二人は夫婦なのかな。
「薬草ってなに?」
「赤蔓草っていう赤くて細長いやつなの。あなた、どこかで見てない?」
「僕、こっちから来たけど見てない」
「そっか~。この辺にはないのかな~?」
アニエスは大げさなくらいに辺りを見渡している。それでも、チラチラと僕を見てくるのは、僕に何か言ってほしいのだろうか。
「ねぇ、一緒に探してくれない?二人より三人のほうが見つかると思うの」
「でも、僕は赤蔓草を知らないから」
「大丈夫よ。私たちがわかるから、一緒にいてくれればいいもの」
三人で行動するなら二人で探しているときとほとんど変わらないと思うんだけど。
でも、こう言わないと僕が降りてきてくれないと思っているのだろう。
まだこの二人を信用したわけではない。でも、ここから降りるまで彼らは離れてくれそうにはない。
「……わかった」
僕は枝から飛び下りて、彼らの前に立った。
「よし、行こうか。えーっと……」
「……アインです」
「アインくん!」
アニエスはそう言って僕の手を握る。僕は、引きずられるようにして彼らについていった。
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