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第一章 優しい家族に拾われて
3.
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アニエスの手から離れようとするも、アニエスの力が強くて全然離れられない。
「……ルシウス」
「ん?どうした、アイン」
「アニエスの手……」
離してほしいと言う前に、ルシウスはにっこりと笑う。
「諦めろ」
説得もしてくれないらしい。
この人、完全に尻に敷かれてるな。娘の前ではもう少ししっかりしている……のだろうか?娘の前でも変わらないかもしれない。
「ちょっとルシウス!アインくんと話してないであなたも探してよ!」
「そう言われても、同じ方向を探していたら意味がないだろ」
「こういうのは気持ちの問題なの!あなたは娘が心配じゃないの!?」
娘が心配なら子どもの僕を連れて歩くなんて足手まといにしかならない行為をするべきではないのでは……?
せめて、目的を終えてから連れていくべきだろうに。
「赤蔓草って珍しいの?」
「いいえ、比較的どこでも生えてるわ。ここまで見つからないのが珍しいくらい」
「なら買えばいいんじゃないの?」
この地域の物価はわからないが、メジャーな植物なら安価で買えてもおかしくないと思う。森なんて危険な場所に赴くくらいならそうしたほうが安全だし確実に手に入るのに。
「あまり市場には出回らないのよ。使い道が少ないから」
「味もあまりおいしくないから食用にも向かないしな」
なるほど。需要が少ないから採取されることもほとんどなくて取り放題と。
「それに、もう何回も取りに来てるから、こっちのほうが楽なのよね。お金もかからないし」
「じゃあ、薬もアニエスたちが作ってるの?」
「いや、薬屋に頼んでる。材料を持ち込む代わりに格安で譲ってもらってるんだ」
だからわざわざこの二人が森に取りに来てるってわけか。
薬屋にとっても、格安でありながら料金は取っているから他の客から反発は起きにくいし、この二人に赤蔓草を取ってきてもらえば、必要な時に仕入れ先を探す必要がなくなるということか。なかなか商売上手なお人だ。
「あっ、あったわ!」
アニエスが上のほうを見て目を輝かせている。僕も同じほうを見ると、木の枝に赤い紐のようなものが巻きついている。
どうやら、あれが赤蔓草らしい。アニエスの言った通り、本当に赤くて細長い。
「取ってくるから、ちょっと待っててね」
アニエスはようやく僕の手を離し、赤蔓草のほうに向かっていく。
これで二人から離れられるかななんて思ったのもつかの間、すぐにルシウスに手を掴まれた。
「……ルシウス」
「アニエスが怒るだろうからな」
これは尻に敷かれてるどころか、恐妻家の可能性が出てきた。子どものいる二人からすれば僕のことが心配なのかもしれないということはわかる。
でも、子ども特有の警戒心が彼らを信用しきることができない。
「……なぁ、アイン」
ルシウスはいつになく真剣な目で僕を見る。
「お前、なんでこの森に一人でいたんだ?」
「……わかってて聞いてるでしょ」
証拠はない。でも、彼の目が僕にそう思わせた。ルシウス……おそらくはアニエスも、僕が捨てられたことに気づいている。
そうじゃなかったら、僕を薬草探しに連れていこうとなんてしないはずだから。
「なんとなく想像はついてる。だが、違う可能性もないとは言えないから、お前の口から聞きたいんだ」
「……捨てられた」
「……そうか」
ルシウスはそれ以外に何も言わなかった。僕とは目も合わせない。
ただ、僕の手を強く握りしめるだけだった。
「……ルシウス」
「ん?どうした、アイン」
「アニエスの手……」
離してほしいと言う前に、ルシウスはにっこりと笑う。
「諦めろ」
説得もしてくれないらしい。
この人、完全に尻に敷かれてるな。娘の前ではもう少ししっかりしている……のだろうか?娘の前でも変わらないかもしれない。
「ちょっとルシウス!アインくんと話してないであなたも探してよ!」
「そう言われても、同じ方向を探していたら意味がないだろ」
「こういうのは気持ちの問題なの!あなたは娘が心配じゃないの!?」
娘が心配なら子どもの僕を連れて歩くなんて足手まといにしかならない行為をするべきではないのでは……?
せめて、目的を終えてから連れていくべきだろうに。
「赤蔓草って珍しいの?」
「いいえ、比較的どこでも生えてるわ。ここまで見つからないのが珍しいくらい」
「なら買えばいいんじゃないの?」
この地域の物価はわからないが、メジャーな植物なら安価で買えてもおかしくないと思う。森なんて危険な場所に赴くくらいならそうしたほうが安全だし確実に手に入るのに。
「あまり市場には出回らないのよ。使い道が少ないから」
「味もあまりおいしくないから食用にも向かないしな」
なるほど。需要が少ないから採取されることもほとんどなくて取り放題と。
「それに、もう何回も取りに来てるから、こっちのほうが楽なのよね。お金もかからないし」
「じゃあ、薬もアニエスたちが作ってるの?」
「いや、薬屋に頼んでる。材料を持ち込む代わりに格安で譲ってもらってるんだ」
だからわざわざこの二人が森に取りに来てるってわけか。
薬屋にとっても、格安でありながら料金は取っているから他の客から反発は起きにくいし、この二人に赤蔓草を取ってきてもらえば、必要な時に仕入れ先を探す必要がなくなるということか。なかなか商売上手なお人だ。
「あっ、あったわ!」
アニエスが上のほうを見て目を輝かせている。僕も同じほうを見ると、木の枝に赤い紐のようなものが巻きついている。
どうやら、あれが赤蔓草らしい。アニエスの言った通り、本当に赤くて細長い。
「取ってくるから、ちょっと待っててね」
アニエスはようやく僕の手を離し、赤蔓草のほうに向かっていく。
これで二人から離れられるかななんて思ったのもつかの間、すぐにルシウスに手を掴まれた。
「……ルシウス」
「アニエスが怒るだろうからな」
これは尻に敷かれてるどころか、恐妻家の可能性が出てきた。子どものいる二人からすれば僕のことが心配なのかもしれないということはわかる。
でも、子ども特有の警戒心が彼らを信用しきることができない。
「……なぁ、アイン」
ルシウスはいつになく真剣な目で僕を見る。
「お前、なんでこの森に一人でいたんだ?」
「……わかってて聞いてるでしょ」
証拠はない。でも、彼の目が僕にそう思わせた。ルシウス……おそらくはアニエスも、僕が捨てられたことに気づいている。
そうじゃなかったら、僕を薬草探しに連れていこうとなんてしないはずだから。
「なんとなく想像はついてる。だが、違う可能性もないとは言えないから、お前の口から聞きたいんだ」
「……捨てられた」
「……そうか」
ルシウスはそれ以外に何も言わなかった。僕とは目も合わせない。
ただ、僕の手を強く握りしめるだけだった。
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