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第一章 優しい家族に拾われて
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無事に採取はできたらしく帰宅することになった。僕の手はルシウスに繋がれたままだ。離す気はまったくなさそう。
「ねぇ、僕をどこに連れていくの?」
「私たちの家よ。孤児院に預けてもいいけど、もう手一杯みたいだから断られる可能性のほうが高いもの。それに、娘の話し相手もほしかったし」
この人たちの家……となると、病気の娘さんがいるのか。
そんな場所に僕が行ってもいいのかな。娘さんも驚くだろうし、普通に孤児院に預けたほうがいいと思うんだけど。
「薬屋には行かないの?」
「あなたを家に連れていった後でね。あの人、ちょっと変わってるというか、人と会うのが好きじゃないから……」
見知らぬ子どもを連れていくわけには行かないということね。
薬屋のことは少し気になっていたんだけど、それなら仕方ない。
「だから、あなたはルシウスと娘と一緒にお留守番してて」
「うん、わかった」
今はこの人たちと一緒にいるか。
◇◇◇
しばらく歩くうちに、木造の建物に着いた。どうやら、ここが二人の家らしい。
「それじゃあ、私は行ってくるからアインくんのことよろしくね」
「了解」
「アインくんも後でねー」
「ばいばーい」
僕が手を振るとアニエスも手を振ってくれる。そのまま駆け出していった。
森を歩き回っていたのにまだ走れる元気があるのはすごいなぁ。
「それじゃあ、アイン。家の中を案内するからついてきてくれ」
「……うん」
手を繋がれてるからついていくも何もないのにという言葉は心の中にしまって、僕は頷いた。
家の中は広くもなく狭くもない。ダイニングキッチンと廊下は繋がっており、区切る壁やドアはない。
さらに奥に行くと、三つのドアがあり、一番奥は空き部屋、左側のドアはアニエスとルシウスの共用部屋で、右側は娘さんのお部屋らしい。
「せっかくだから、娘に会ってみるか?」
「うん……」
別にどうってことないはずなのに、なぜか緊張してしまう。これは俺としての意識より、アインとしての思いが強そうだ。
「シア、入るぞ」
娘さんの名前はシアというのか。今まで娘としか呼んでなかったからなぁ。
ルシウスが開けたドアを覗き込むと、ベッドに上半身だけ起こしている女の子がいた。見た目は六歳くらいだろうか。
「あっ……お父さん」
ルシウスを呼ぶその声は弱々しい。病気というのは本当みたいだ。
これは生まれつきなのだろうか。それとも、後天的なものか。
「遅くなってすまない。なかなか薬草が見つからなくてな」
「シアは大丈夫」
にこりと微笑む姿が強がっているように見えたのは、きっと気のせいではない。親が家を開ける理由も、きっと彼女は理解している。その上で……心配かけまいと、大丈夫と言っている。
強い子だ。それでも、きっとどこか脆い。
そんな複雑な思いで彼女の様子を見ていると、彼女と目があった。
「お父さん……あの子は?」
「ああ、彼はアインと言ってな。森に一人でいたから連れてきたんだ」
ルシウスが入ってこいと手招きをするので、おそるおそる部屋の中に入り、ルシウスの隣まで移動する。
「シアはユリシアって言うの」
あっ、シアは愛称だったのか。
「僕はアイン」
我ながらぶっきらぼうな挨拶をしてしまう。いや、名前も顔も知らなかった初対面の女の子になにを言えばいいのかさっぱりわからないんだよ。
アインとしての僕は同じ年代の子どもと関わったことはほとんどないし、“俺”としてもあまり友達は多いほうではなかった。
「アイン。シアとお話ししていてくれるか。俺はご飯の用意をするから」
へぇ~、この人料理できるのか……って、ちょっと待て!このままだとこの子と二人きりになるってこと!?
自己紹介もろくにできない状態で残されてもろくに会話できないって!
「ル、ルシウス……」
「大丈夫だ。アインならシアと仲良くなれる」
いや、そういうことじゃない!仲良くなる以前に会話が続かないから間にいてくれって言いたいんだ!
「シア。アインくんのことを頼めるか」
「うん。いってらっしゃい、お父さん」
ああ、これ引き留められないやつだ……
そう気づいたときには、ルシウスはすでに部屋から出ていっていた。
「ねぇ、僕をどこに連れていくの?」
「私たちの家よ。孤児院に預けてもいいけど、もう手一杯みたいだから断られる可能性のほうが高いもの。それに、娘の話し相手もほしかったし」
この人たちの家……となると、病気の娘さんがいるのか。
そんな場所に僕が行ってもいいのかな。娘さんも驚くだろうし、普通に孤児院に預けたほうがいいと思うんだけど。
「薬屋には行かないの?」
「あなたを家に連れていった後でね。あの人、ちょっと変わってるというか、人と会うのが好きじゃないから……」
見知らぬ子どもを連れていくわけには行かないということね。
薬屋のことは少し気になっていたんだけど、それなら仕方ない。
「だから、あなたはルシウスと娘と一緒にお留守番してて」
「うん、わかった」
今はこの人たちと一緒にいるか。
◇◇◇
しばらく歩くうちに、木造の建物に着いた。どうやら、ここが二人の家らしい。
「それじゃあ、私は行ってくるからアインくんのことよろしくね」
「了解」
「アインくんも後でねー」
「ばいばーい」
僕が手を振るとアニエスも手を振ってくれる。そのまま駆け出していった。
森を歩き回っていたのにまだ走れる元気があるのはすごいなぁ。
「それじゃあ、アイン。家の中を案内するからついてきてくれ」
「……うん」
手を繋がれてるからついていくも何もないのにという言葉は心の中にしまって、僕は頷いた。
家の中は広くもなく狭くもない。ダイニングキッチンと廊下は繋がっており、区切る壁やドアはない。
さらに奥に行くと、三つのドアがあり、一番奥は空き部屋、左側のドアはアニエスとルシウスの共用部屋で、右側は娘さんのお部屋らしい。
「せっかくだから、娘に会ってみるか?」
「うん……」
別にどうってことないはずなのに、なぜか緊張してしまう。これは俺としての意識より、アインとしての思いが強そうだ。
「シア、入るぞ」
娘さんの名前はシアというのか。今まで娘としか呼んでなかったからなぁ。
ルシウスが開けたドアを覗き込むと、ベッドに上半身だけ起こしている女の子がいた。見た目は六歳くらいだろうか。
「あっ……お父さん」
ルシウスを呼ぶその声は弱々しい。病気というのは本当みたいだ。
これは生まれつきなのだろうか。それとも、後天的なものか。
「遅くなってすまない。なかなか薬草が見つからなくてな」
「シアは大丈夫」
にこりと微笑む姿が強がっているように見えたのは、きっと気のせいではない。親が家を開ける理由も、きっと彼女は理解している。その上で……心配かけまいと、大丈夫と言っている。
強い子だ。それでも、きっとどこか脆い。
そんな複雑な思いで彼女の様子を見ていると、彼女と目があった。
「お父さん……あの子は?」
「ああ、彼はアインと言ってな。森に一人でいたから連れてきたんだ」
ルシウスが入ってこいと手招きをするので、おそるおそる部屋の中に入り、ルシウスの隣まで移動する。
「シアはユリシアって言うの」
あっ、シアは愛称だったのか。
「僕はアイン」
我ながらぶっきらぼうな挨拶をしてしまう。いや、名前も顔も知らなかった初対面の女の子になにを言えばいいのかさっぱりわからないんだよ。
アインとしての僕は同じ年代の子どもと関わったことはほとんどないし、“俺”としてもあまり友達は多いほうではなかった。
「アイン。シアとお話ししていてくれるか。俺はご飯の用意をするから」
へぇ~、この人料理できるのか……って、ちょっと待て!このままだとこの子と二人きりになるってこと!?
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「ル、ルシウス……」
「大丈夫だ。アインならシアと仲良くなれる」
いや、そういうことじゃない!仲良くなる以前に会話が続かないから間にいてくれって言いたいんだ!
「シア。アインくんのことを頼めるか」
「うん。いってらっしゃい、お父さん」
ああ、これ引き留められないやつだ……
そう気づいたときには、ルシウスはすでに部屋から出ていっていた。
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