転生したら捨て子でしたが、優しい家族に拾われました。~恩返ししつつ快適な異世界生活を目指します~

りーさん

文字の大きさ
5 / 11
第一章 優しい家族に拾われて

5.

しおりを挟む
 ユリシアちゃんと二人で残されて気まずい空気が流れる……かと思いきや。

「アインは好きなこととかある?」
「……よくわからない。ユリシアは?」
「シアはお話しするのが好きなの。お父さんとお母さんがね、いつもシアにいろんなお話ししてくれるのよ」
「そうなんだ」

 ユリシアちゃんが絶えず話しかけてくれるお陰で、どうにか会話が途絶えずに済んでいる。前世でも友人が多かったわけではないとはいえ、ここまでコミュニケーション能力がなかったわけではなかったはずなんだけど。
 これは、アインとしての僕が人慣れしていないからなのだろうか。

「アインは?アインのお父さんとお母さんは?」

 ドクンと心臓が大きく跳ねた音が聞こえた気がした。
 聞かれるとは思っていた。この子はまだ子どもで、ルシウスも森にいた僕を連れてきただけだと言っている。

「僕のお母さんも……いろいろお話ししてくれたよ。お父さんはいろいろプレゼントしてくれた」

 お昼は世話係と一緒にいることが多かったけど、夜は三人で一緒にご飯を食べたり本を読み聞かせてくれたりした。
 仕事先でのお土産だと言って、いろいろとプレゼントしてくれて、子守唄も歌ってくれて、僕はいつも笑っていてーー

 それは、ある日突然終わってしまった。

「……アイン?どうしたの?」
「……なんでもない」

 僕はユリシアちゃんに背を向ける。本当に、なんでもない。俺はアインの両親に思い入れなんてないじゃないか。だから、大丈夫。アインの心に少し引っ張られる感じがするだけで。

「なんでもないよ」

 ユリシアちゃんはきょとんとしている。親に愛されるのが当然と思っているこの子に、現実を教える必要なんてない。世の中には知らないほうがいいことだってあるのだから。
 今の僕は、ちゃんと笑えているだろうか。ユリシアちゃんに悟られないようにしないと。

「シア、アインくん」

 ギイ、とドアが開いて、アニエスがこちらを覗き込んでいる。
 いつの間にか薬屋から帰ってきていたらしい。

「お母さん!」

 シアは嬉しそうに笑う。ちょうど変な空気になってきていたところだからちょうどよかった。

「シア、お母さんはアインくんとちょっとお話しがあるから、お話しは後でもいい?」
「うん、いいよ」

 アニエスは、聞き分けのいい返事をするユリシアちゃんの頭を撫でて、僕の手を掴む。

「それじゃあ、アインくん。ちょっとお話ししましょ」
「うん……」

 話ならここでもいいんじゃと思ったけど、ユリシアちゃんに聞かれるとまずいことなのかもしれない。
 僕はアニエスに従って部屋を出た。

 部屋を出たら、まっすぐに廊下の奥に案内される。ルシウスに空き部屋だと教えられた場所だ。
 空き部屋には、ベッドが置かれていて、椅子や机もある。妙に生活感があって、まるで誰かが住んでいたみたいだった。

「ここ、誰の部屋?」
「ルークの部屋だったの。私たちの息子で、シアのお兄さんの」
「いないの?」
「死んじゃったのよ、病気で。シアがまだ一歳の頃だったわ」

 それなら、ユリシアちゃんは覚えていない可能性が高そうだ。ユリシアちゃんと話しているとき、兄という言葉は一度も出てこなかったし。

「どうして、それを僕に話すの?」

 僕は部外者のはずだ。気まぐれで拾っただけの子どもに、死んだ息子のことを話してどうするというのだろう。
 そもそも、アニエスは僕がこの話をユリシアちゃんにしてしまう可能性を考えてないんだろうか。

「提案したいことがあったから。それに、あなたならシアに話したりしないでしょう?」
「……提案ってなに?」
「あなた、私たちの息子にならない?」

 アニエスの言葉に、特に驚きはなかった。心のどこかで、そんな予感を感じ取っていたからかもしれない。

「どうして?アニエスたちにいいことないよ?」

 子どもが一人増えるということは、食いぶちが増えるのだから、決して恵まれているわけではなさそうなこの家では大変なことだ。
 さらに、ユリシアちゃんは病気で薬代もかかっているだろう。森で会っただけの子どもを育てる余裕があるとは思えない。

「あなたがいればシアの話し相手ができるもの。私たちはお仕事で外に出かけることも多いから、シアには寂しい思いをさせてしまっているもの」
「ユリシアのため?」
「一番はアインくんのためよ。でも、アインくんはそう言っても納得しないでしょ。だからシアのためだと思って、シアのお兄ちゃんになってほしいの」

 まだ出会ってそんなに時間はたっていないのに、どうしてそんなに僕のことをわかっているんだろう?
 確かに、僕は僕のためというよりも、誰かのためにって言われるほうがいくらか理解できるし納得できる。それをアニエスに見抜かれてしまっている。

「シアには何て言うの?」
「あなたの親が迎えに来るまで預かるって言っておくわ。事情を話したくはないんでしょう?」
「……うん」

 どこまで知ってるんだこの人は。さっき帰ってきたばかりじゃないの?

「ルシウスは?」
「あの人もいいって言ってくれてるわ」
「……わかった。ユリシアの兄になる」

 まだアニエスとルシウスの息子になるというのは難しい。
 多分、心のどこかで両親を思う気持ちがあるからだろう。愛された記憶が残っている以上、未練がある。
 せめて、どうして僕に対する扱いが変わったのかわかるまでは、この人たちの息子にはなれない。

「わかったわ。それじゃあ、シアの兄としてよろしくね」
「うん、よろしく」

 こうして、僕はユリシアちゃんの兄としてこの家に住むことになったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?

藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。 目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。 前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。 前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない! そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

転生したら没落寸前だったので、お弁当屋さんになろうと思います。

皐月めい
恋愛
「婚約を破棄してほしい」 そう言われた瞬間、前世の記憶を思い出した私。 前世社畜だった私は伯爵令嬢に生まれ変わったラッキーガール……と思いきや。 父が亡くなり、母は倒れて、我が伯爵家にはとんでもない借金が残され、一年後には爵位も取り消し、七年婚約していた婚約者から婚約まで破棄された。最悪だよ。 使用人は解雇し、平民になる準備を始めようとしたのだけれど。 え、塊肉を切るところから料理が始まるとか正気ですか……? その上デリバリーとテイクアウトがない世界で生きていける自信がないんだけど……この国のズボラはどうしてるの……? あ、お弁当屋さんを作ればいいんだ! 能天気な転生令嬢が、自分の騎士とお弁当屋さんを立ち上げて幸せになるまでの話です。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

処理中です...