私より幼馴染が好きだから婚約解消...?構いませんが、相手の合意は取れてるんですか?

ねこかがみ

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二話 家族

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「お父様。その……エドワード侯爵との婚約ですが、勝手ながら解消致しました……申し訳ありま……」
「そうか! 良くやったぞ! エーシャ! 元々彼については私は快く思っとらんかったからな! うむ! すぐに次の相手を見繕ってやるから待っとれよ! 大丈夫だ、エーシャは可愛いし賢いし愛想もいいし……何処を出しても恥ずかしくない、自慢の娘だからな!」

 わたくしは、怒られることを覚悟して、目の前の、わたくしをエーシャと呼ぶ、茶髪で恰幅の良い男性____わたくしのお父様にエドワードとの婚約を解消したことを伝えました。

 しかし、お父様はわたくしのことを怒ったり、叱ったりするどころか、褒めて下さったのです。

 エドワードはそこまで周りに嫌われていたのでしょうか。何だか少し哀れに思えてきてしまうのは、わたくしが元婚約者だからでしょうか?

 それでも、直ぐに次の相手を見繕って下さるというのは……なんと言いますか、お父様は所謂『親バカ』なんでしょうね。


「ふふっ、お父様、それを言うなら何処に出しても恥ずかしくない、です」
「おぉ! そうだったか! やっぱり、エーシャは聡いなぁ!」
「お父様、褒めすぎです。もう、子供じゃないんですから」

 わたくしがお父様に訂正すると、ガハハと豪快に笑いながらわたくしを褒めて下さるお父様。

 ____こんな時間すら、愛おしい

 つい、そう思ってしまいます。わたくしは、今までなんというか、エドワードの婚約者としての立ち振る舞いを意識したりや、エドワードと一緒に居る時間が長かったせいで、家族の時間というものを、あまり大切にしてこなかったのかもしれません。

 ただ、今なら家族の尊さも良く分かります。そして、わたくしの視野が今までどれほど狭かったかということも。

「いいや、エーシャ! 親にとって、子というのは、いつまでも子供なんだ! 親は子を守り、育て、共に生きる、愛という名の義務がある...! まぁ、エーシャにもいずれわかるようになるだろう」

 お父様はそう言って、わたくしの頭を撫でてくださりました。とてもふわふわとした気持ちになるのは何故でしょうか? やっぱり、お父様には敵いませんね。

 いつか、わたくしにも子供が出来て、お父様やお母様のような素敵な親になれる日が来るのでしょうか。

「ふふっ、そのためには、いい婚約者を見繕って貰わなければなりませんね」

 そんなことを考えながら、わたくしは冗談めかしてそう言いました。お父様も笑っています。

 そうして、わたくしは気持ちを前向きなものに切り替えたのでした。
 
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