22 / 27
ヒースの秘密と愛するということ
10
しおりを挟む
アンナとヒースは王と王妃の前でひざまずいていた。
「今、なんと?」
玉座から立ち上がって、王は震える声で言った。
「お父様、私とヒースの結婚をお許しくださいと申しました」
王妃は卒倒し、王は手を顔の前で合わせて、アンナの言葉が気のせいであることを祈った。
ヒースははらはらしながらアンナと王・王妃を交互に見ていた。
「お父様、私は本気よ。これからずっと一緒に過ごすのはヒースとがいいの」
「アンナや、ヒースは犬なのだよ? 犬と結婚する姫がどこにいるというのだ」
「ここにいるわ。それにヒースはただの犬ではないわ。お父様だってそれは分かっているでしょう?」
王は倒れそうになるのを堪えて、
「では世継ぎはどうするのだ?!」
と声を張り上げた。
アンナは王の言葉に、しばし沈黙した。ヒースも黙っている。
「養子をとればいいわ」
「ああ……! なんてことだ! 神よ!」
王は聞きたくないとでも言うように耳を抑え、がっくりと玉座に腰をおろした。
黙ってふたりを見ていたヒースは、
「アンナ様、もう一度うかがいます。アンナ様は本当に私と結婚したいと思うのですか? こんな私を愛してくださると?」
とアンナに耳打ちした。
アンナは、
「もちろんよ!!」
と強く頷いた。
「では、今、私に口付けできますか?」
「お父様の前で? ……かまわないわ。できるわ」
アンナはヒースを抱えると、その口にキスをした。
その瞬間だった。
ぼわんと煙が上がったかと思うと……。
「な!? ヒース?! ヒースはどこ? 貴方は何なの?」
アンナの前には見慣れない男がひざまずいていた。黒銀の長い髪と海のような青い目をした男だった。
王が立ち上がった。
「なんと! もしやそなたは隣国の第二王子、ヒースクリフ殿では?! 行方不明になっていると聞いていたが……」
王の言葉に彼は小さく頷いた。
「ああ! やはり!」
「ヒースは? ヒースをどこへやったの?!」
アンナは男のことよりもヒースの方が気になった。
「ヒースは私でございます」
彼の声は確かにヒースの声だった。
「アンナ様。呪いが解けたのでございます」
「呪いが……? でも貴方、人間だなんて一言も言わなかったじゃない!」
「人間であることを知って私を愛すのでは無効だったらからです」
「そんな……!」
アンナは涙目になってヒースクリフを叩いた。
「私はヒースを好きになったのよ! ヒースを返して!」
ヒースはアンナの拳を優しく受け止めながら、悲しげにアンナの目を見つめた。
「人間の私では駄目ですか?」
アンナは困惑し、ポロポロと涙を零しながら、自室へと走って行った。
「アンナ様……!」
残されたヒースクリフはアンナを追うことができなかった。アンナを試し、騙したことになるのを思うと、足が動かなかった。
「して、ヒースクリフ殿はこれからどうされるのかな?」
王がそんなヒースクリフを気づかうように声をかける。
「アンナ様が私を受け入れられないようでしたら、自国へ戻ります」
ヒースクリフの言葉に、王はがっかりして、
「そうか……」
とため息混じりに言った。
ヒースが人間なら結婚するのに何も問題はない。ふたりが上手くいくことを王は祈った。
「今、なんと?」
玉座から立ち上がって、王は震える声で言った。
「お父様、私とヒースの結婚をお許しくださいと申しました」
王妃は卒倒し、王は手を顔の前で合わせて、アンナの言葉が気のせいであることを祈った。
ヒースははらはらしながらアンナと王・王妃を交互に見ていた。
「お父様、私は本気よ。これからずっと一緒に過ごすのはヒースとがいいの」
「アンナや、ヒースは犬なのだよ? 犬と結婚する姫がどこにいるというのだ」
「ここにいるわ。それにヒースはただの犬ではないわ。お父様だってそれは分かっているでしょう?」
王は倒れそうになるのを堪えて、
「では世継ぎはどうするのだ?!」
と声を張り上げた。
アンナは王の言葉に、しばし沈黙した。ヒースも黙っている。
「養子をとればいいわ」
「ああ……! なんてことだ! 神よ!」
王は聞きたくないとでも言うように耳を抑え、がっくりと玉座に腰をおろした。
黙ってふたりを見ていたヒースは、
「アンナ様、もう一度うかがいます。アンナ様は本当に私と結婚したいと思うのですか? こんな私を愛してくださると?」
とアンナに耳打ちした。
アンナは、
「もちろんよ!!」
と強く頷いた。
「では、今、私に口付けできますか?」
「お父様の前で? ……かまわないわ。できるわ」
アンナはヒースを抱えると、その口にキスをした。
その瞬間だった。
ぼわんと煙が上がったかと思うと……。
「な!? ヒース?! ヒースはどこ? 貴方は何なの?」
アンナの前には見慣れない男がひざまずいていた。黒銀の長い髪と海のような青い目をした男だった。
王が立ち上がった。
「なんと! もしやそなたは隣国の第二王子、ヒースクリフ殿では?! 行方不明になっていると聞いていたが……」
王の言葉に彼は小さく頷いた。
「ああ! やはり!」
「ヒースは? ヒースをどこへやったの?!」
アンナは男のことよりもヒースの方が気になった。
「ヒースは私でございます」
彼の声は確かにヒースの声だった。
「アンナ様。呪いが解けたのでございます」
「呪いが……? でも貴方、人間だなんて一言も言わなかったじゃない!」
「人間であることを知って私を愛すのでは無効だったらからです」
「そんな……!」
アンナは涙目になってヒースクリフを叩いた。
「私はヒースを好きになったのよ! ヒースを返して!」
ヒースはアンナの拳を優しく受け止めながら、悲しげにアンナの目を見つめた。
「人間の私では駄目ですか?」
アンナは困惑し、ポロポロと涙を零しながら、自室へと走って行った。
「アンナ様……!」
残されたヒースクリフはアンナを追うことができなかった。アンナを試し、騙したことになるのを思うと、足が動かなかった。
「して、ヒースクリフ殿はこれからどうされるのかな?」
王がそんなヒースクリフを気づかうように声をかける。
「アンナ様が私を受け入れられないようでしたら、自国へ戻ります」
ヒースクリフの言葉に、王はがっかりして、
「そうか……」
とため息混じりに言った。
ヒースが人間なら結婚するのに何も問題はない。ふたりが上手くいくことを王は祈った。
0
あなたにおすすめの小説
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
【完結】森の中の白雪姫
佐倉穂波
児童書・童話
城で暮らす美しいブランシュ姫。
ある日、ブランシュは、王妃さまが魔法の鏡に話しかけている姿を目にしました。
「この国で一番美しく可愛いのは誰?」
『この国で一番美しく可愛いのは、ブランシュ姫です』
身の危険を感じて森へと逃げたブランシュは、不思議な小人たちや狩人ライと出会い、楽しい日々を送ります。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~
☆ほしい
児童書・童話
平凡な女子高生だった私・茉莉(まり)は、交通事故に遭い、目覚めると中華風異世界・彩雲国の後宮に住む“嫌われ者の妃”・麗霞(れいか)に転生していた!
麗霞は毒婦だと噂され、冷徹非情で有名な若き皇帝・暁からは見向きもされない最悪の状況。面倒な権力争いを避け、前世の知識を活かして、後宮の学園で美味しいお菓子でも作りのんびり過ごしたい…そう思っていたのに、気まぐれに献上した「プリン」が、甘いものに興味がないはずの皇帝の胃袋を掴んでしまった!
「…面白い。明日もこれを作れ」
それをきっかけに、なぜか暁がわからの好感度が急上昇! 嫉妬する他の妃たちからの嫌がらせも、持ち前の雑草魂と現代知識で次々解決! 平穏なスローライフを目指す、転生妃の爽快成り上がり後宮ファンタジー!
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる