自分大好き姫と不細工な犬

花木 葵音

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ヒースの秘密と愛するということ

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 アンナとヒースは王と王妃の前でひざまずいていた。
「今、なんと?」
 玉座から立ち上がって、王は震える声で言った。
「お父様、私とヒースの結婚をお許しくださいと申しました」
 王妃は卒倒し、王は手を顔の前で合わせて、アンナの言葉が気のせいであることを祈った。
 ヒースははらはらしながらアンナと王・王妃を交互に見ていた。
「お父様、私は本気よ。これからずっと一緒に過ごすのはヒースとがいいの」
「アンナや、ヒースは犬なのだよ? 犬と結婚する姫がどこにいるというのだ」
「ここにいるわ。それにヒースはただの犬ではないわ。お父様だってそれは分かっているでしょう?」
 王は倒れそうになるのを堪えて、
「では世継ぎはどうするのだ?!」
 と声を張り上げた。
 アンナは王の言葉に、しばし沈黙した。ヒースも黙っている。
「養子をとればいいわ」
「ああ……! なんてことだ! 神よ!」
 王は聞きたくないとでも言うように耳を抑え、がっくりと玉座に腰をおろした。
 黙ってふたりを見ていたヒースは、
「アンナ様、もう一度うかがいます。アンナ様は本当に私と結婚したいと思うのですか? こんな私を愛してくださると?」
 とアンナに耳打ちした。
 アンナは、
「もちろんよ!!」
 と強く頷いた。
「では、今、私に口付けできますか?」
「お父様の前で?  ……かまわないわ。できるわ」
 アンナはヒースを抱えると、その口にキスをした。

 その瞬間だった。
 ぼわんと煙が上がったかと思うと……。
「な!? ヒース?! ヒースはどこ? 貴方は何なの?」
 アンナの前には見慣れない男がひざまずいていた。黒銀の長い髪と海のような青い目をした男だった。
 王が立ち上がった。
「なんと! もしやそなたは隣国の第二王子、ヒースクリフ殿では?! 行方不明になっていると聞いていたが……」
 王の言葉に彼は小さく頷いた。
「ああ! やはり!」
「ヒースは? ヒースをどこへやったの?!」
 アンナは男のことよりもヒースの方が気になった。
「ヒースは私でございます」
 彼の声は確かにヒースの声だった。
「アンナ様。呪いが解けたのでございます」
「呪いが……?  でも貴方、人間だなんて一言も言わなかったじゃない!」
「人間であることを知って私を愛すのでは無効だったらからです」
「そんな……!」
 アンナは涙目になってヒースクリフを叩いた。
「私はヒースを好きになったのよ! ヒースを返して!」
 ヒースはアンナの拳を優しく受け止めながら、悲しげにアンナの目を見つめた。
「人間の私では駄目ですか?」
 アンナは困惑し、ポロポロと涙を零しながら、自室へと走って行った。
「アンナ様……!」
 残されたヒースクリフはアンナを追うことができなかった。アンナを試し、騙したことになるのを思うと、足が動かなかった。
「して、ヒースクリフ殿はこれからどうされるのかな?」
 王がそんなヒースクリフを気づかうように声をかける。
「アンナ様が私を受け入れられないようでしたら、自国へ戻ります」
 ヒースクリフの言葉に、王はがっかりして、
「そうか……」
 とため息混じりに言った。
 ヒースが人間なら結婚するのに何も問題はない。ふたりが上手くいくことを王は祈った。

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