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【後日談】杖の下に回る犬は打てない
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魔物でまだ生きているやつがいないか確認するとか、怪我をした騎士の救護とか、悠長に喋っていないでそういう指示を出すように伝えたのに、あの隊長は英雄を持ち上げるのに一生懸命だったらしい。俺が気絶した後も、動転して埒が明かなかったから、師匠が生き残りの殲滅と怪我人の移送を指示して、あの場を片付けたそうだ。
「……そんなやつが隊長……?」
「……オーウェンには、連絡しとくつもりだ」
オーウェンさんは、第二騎士団の団長だ。町や村を守るのが第二騎士団の役割で、近くに魔物が出れば退治するし、人間同士のいざこざの仲裁をすることもある。日常的な対応はそうだけど、今回みたいな魔物の大量発生があれば、魔物退治に特化した第三騎士団に派遣要請が出る。第二騎士団だけでは倒し切れない可能性があるからだ。
ただ、第三騎士団が来るまでは第二騎士団で持ち堪えることになるから、間に合わずにたくさんの人が死ぬこともある。だから、間に合いそうな場所にいる師匠みたいな人たちにも、モンドール家の情報網を使って呼び掛けられる。
師匠は、人が死ぬのが嫌だからすぐに駆け付けようとする。
「それでも、隊長のままだったら?」
もっと自分勝手になっていいのに。要請されたって必ず応えなきゃいけないわけじゃないし、元々騎士団の仕事なんだから、師匠が責任を負う必要はない。
「……指揮能力以外で、必要な人間ってこったろ……おい、いい加減やめろ!」
引き締まった尻を揉んでたらやめろって叩かれた。体を捻って逃げようとするから、腰と背中を支えてさらに引き寄せる。もっと触り心地のいい尻を揉みたかったけど、せっかく抱き寄せたものに離れられる方が嫌だ。
「テメ……っ、この!」
なかなか大人しくしてくれない。仕方ないから不意打ちで浄化の魔術を掛けて、師匠の気が逸れたタイミングでベッドに押し倒して閉じ込める。体を使って押さえ込むコツが、最近わかってきた気がする。
「ッの……離せ駄犬……!」
抵抗はされるけど全力じゃないから、付け上がって、もがく師匠を無視する。本気になれば俺をはねのけるくらい簡単なのに、師匠が俺に甘いことを最大限利用させてもらう。
それに、気付いててこれだったら、師匠の方が性質が悪い。
「クライヴ」
びくり、と師匠の体が跳ねて、俺を睨むだけになった。無理に言うことを聞かせたいわけじゃないけど、名前を呼ぶと反応してくれるから、セックスの時とか、言い聞かせたい時とか、きちんと向き合いたい時にはそうしている。
「俺の手当て、師匠がしてくれたの?」
「…………あんな、怪我、してんのに……他人に任せられるわけ、ねぇだろ」
ぼそぼそと、言い訳でもするように答える人の頬を撫でる。ちゃんと心配してくれたのは嬉しい。
けど、今はそれだけで終わらせるわけにいかないから、師匠の手を取って俺の腹に当てさせる。
「師匠が怪我した時の俺の気持ち、わかった?」
傷付けた、かもしれない。師匠の視線が揺らいで、迷って、手を当てている俺の腹の方に落ちる。
頭のいい人だから、きっとわかってはくれるはずだ。今回だけの話じゃない。師匠が怪我する度、誰かのために自分をすり減らす度に、俺がどんな気持ちになっていたか。
でも、そういう人だからこそ必要以上に自分を責める時もあるから、ケアもちゃんとしないといけない。
ずたずたにしたいわけじゃない。大切にしたい。けど、自分でも自分を大事に出来るようになってほしい。
「……悪かった」
碧の視線が俺の目に戻ってきて、ぽつりと零す。宝石はまだ割れてない。壊れないように、壊さないようにそっと手を離して、指を絡めて繋ぎ直す。
「…………お前が……お前が怪我したの、すげー嫌だった。お前、も、嫌だった、って、ことだろ……?」
「うん」
もう一度、悪かったと動く唇に、軽いキスを何度も重ねる。ちゃんと、悪かったと思ったら謝れる、素直な人。誰かを守りたいという強さも含めて、全部俺の特別で大事な人だから、自分で自分を使い潰してほしくない。
少なくとも、俺の前でだけは全部緩めて、我儘だって言ってほしい。
「俺も嫌な言い方した。ごめんなさい」
許してくれるかな、と少し様子を窺ったら、頭を引き寄せられてキスされた。舌が擦れ合うと気持ちいい。何となくぽかぽかするから、魔力も渡してくれている、はずだ。
「……お前、俺に甘いよな」
「甘やかしたいから」
即答したら小さく笑われた。粉々にしなくて済んだことにほっとして、こめかみに口付ける。徐々に唇で触れるところを下げていくと、くすぐったそうにまた笑ってくれたから、指を絡めて繋いだ手にちょっとだけ力を入れた。
「したい」
言葉じゃなくて行動で返事をされるのは別に、いいんだけど。
繋いだ手にキスして流し目で見上げてくるのは、ちょっと俺を煽りすぎだと思う。
「……そんなやつが隊長……?」
「……オーウェンには、連絡しとくつもりだ」
オーウェンさんは、第二騎士団の団長だ。町や村を守るのが第二騎士団の役割で、近くに魔物が出れば退治するし、人間同士のいざこざの仲裁をすることもある。日常的な対応はそうだけど、今回みたいな魔物の大量発生があれば、魔物退治に特化した第三騎士団に派遣要請が出る。第二騎士団だけでは倒し切れない可能性があるからだ。
ただ、第三騎士団が来るまでは第二騎士団で持ち堪えることになるから、間に合わずにたくさんの人が死ぬこともある。だから、間に合いそうな場所にいる師匠みたいな人たちにも、モンドール家の情報網を使って呼び掛けられる。
師匠は、人が死ぬのが嫌だからすぐに駆け付けようとする。
「それでも、隊長のままだったら?」
もっと自分勝手になっていいのに。要請されたって必ず応えなきゃいけないわけじゃないし、元々騎士団の仕事なんだから、師匠が責任を負う必要はない。
「……指揮能力以外で、必要な人間ってこったろ……おい、いい加減やめろ!」
引き締まった尻を揉んでたらやめろって叩かれた。体を捻って逃げようとするから、腰と背中を支えてさらに引き寄せる。もっと触り心地のいい尻を揉みたかったけど、せっかく抱き寄せたものに離れられる方が嫌だ。
「テメ……っ、この!」
なかなか大人しくしてくれない。仕方ないから不意打ちで浄化の魔術を掛けて、師匠の気が逸れたタイミングでベッドに押し倒して閉じ込める。体を使って押さえ込むコツが、最近わかってきた気がする。
「ッの……離せ駄犬……!」
抵抗はされるけど全力じゃないから、付け上がって、もがく師匠を無視する。本気になれば俺をはねのけるくらい簡単なのに、師匠が俺に甘いことを最大限利用させてもらう。
それに、気付いててこれだったら、師匠の方が性質が悪い。
「クライヴ」
びくり、と師匠の体が跳ねて、俺を睨むだけになった。無理に言うことを聞かせたいわけじゃないけど、名前を呼ぶと反応してくれるから、セックスの時とか、言い聞かせたい時とか、きちんと向き合いたい時にはそうしている。
「俺の手当て、師匠がしてくれたの?」
「…………あんな、怪我、してんのに……他人に任せられるわけ、ねぇだろ」
ぼそぼそと、言い訳でもするように答える人の頬を撫でる。ちゃんと心配してくれたのは嬉しい。
けど、今はそれだけで終わらせるわけにいかないから、師匠の手を取って俺の腹に当てさせる。
「師匠が怪我した時の俺の気持ち、わかった?」
傷付けた、かもしれない。師匠の視線が揺らいで、迷って、手を当てている俺の腹の方に落ちる。
頭のいい人だから、きっとわかってはくれるはずだ。今回だけの話じゃない。師匠が怪我する度、誰かのために自分をすり減らす度に、俺がどんな気持ちになっていたか。
でも、そういう人だからこそ必要以上に自分を責める時もあるから、ケアもちゃんとしないといけない。
ずたずたにしたいわけじゃない。大切にしたい。けど、自分でも自分を大事に出来るようになってほしい。
「……悪かった」
碧の視線が俺の目に戻ってきて、ぽつりと零す。宝石はまだ割れてない。壊れないように、壊さないようにそっと手を離して、指を絡めて繋ぎ直す。
「…………お前が……お前が怪我したの、すげー嫌だった。お前、も、嫌だった、って、ことだろ……?」
「うん」
もう一度、悪かったと動く唇に、軽いキスを何度も重ねる。ちゃんと、悪かったと思ったら謝れる、素直な人。誰かを守りたいという強さも含めて、全部俺の特別で大事な人だから、自分で自分を使い潰してほしくない。
少なくとも、俺の前でだけは全部緩めて、我儘だって言ってほしい。
「俺も嫌な言い方した。ごめんなさい」
許してくれるかな、と少し様子を窺ったら、頭を引き寄せられてキスされた。舌が擦れ合うと気持ちいい。何となくぽかぽかするから、魔力も渡してくれている、はずだ。
「……お前、俺に甘いよな」
「甘やかしたいから」
即答したら小さく笑われた。粉々にしなくて済んだことにほっとして、こめかみに口付ける。徐々に唇で触れるところを下げていくと、くすぐったそうにまた笑ってくれたから、指を絡めて繋いだ手にちょっとだけ力を入れた。
「したい」
言葉じゃなくて行動で返事をされるのは別に、いいんだけど。
繋いだ手にキスして流し目で見上げてくるのは、ちょっと俺を煽りすぎだと思う。
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